IS問題で思うこと 2
                            2014年11月9日 寺岡克哉


 題名にある「IS」というのは、「イスラム国 (Islamic State)」のことで
すが、

 このシリーズでは、「イスラム国」の問題に関連して、私の思ったことや
考えたことを、書いて行きたいと思います。


              * * * * *


 さて、アメリカ政府によると、

 「イスラム国」などの過激派組織に参加して、シリアで戦っている「外国人
戦闘員」は、

 およそ80の国々からやって来ており、1万5000人以上に上るとされて
います。



 つまり、

 命を懸けて戦うほど、「イスラム国」に共鳴する人間が、

 世界中の、およそ80ヶ国にも存在したのであり、


 「イスラム国」の影響が、それほど世界に広く及んでいるわけです。

 
これは、「ものすごく深刻な事態だ」と言わざるを得ません!



 さらには、

 これら実戦経験を積んだ戦闘員が、自国に戻ってテロ活動を行うこと
が、非常に懸念されています。

 もしもそうなったら、「イスラム国」と連動するテロが、世界中で起こっ
てしまうでしょう。


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 以上のような理由から、

 一体どんな国の人々が、「イスラム国」へ戦闘員として参加しているの
か、とても気になるところです。

 それで、私なりに色々と調べてみたら、「主な国々」は以下のようになっ
ていました。



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    国        シリアにいる戦闘員の数

  チュニジア       およそ3000人
  サウジアラビア    およそ2500人
  ヨルダン            2089人
  モロッコ         およそ1500人
  レバノン              890人
  リビア               556人
  トルコ          およそ400人
  エジプト             358人
  イラク              247人
  チェチェン            186人
  パレスチナ           114人
  クウェート             71人

  ロシア             800人以上
  フランス            700人以上
  イギリス        およそ500人
  ドイツ          およそ400人
  ベルギー        およそ300人
  オーストラリア     およそ250人
  オランダ            120人
  アメリカ             100人以上
  デンマーク           100人
  オーストリア           60人
  ノルウェー            50人
  アイルランド           30人
  スウェーデン          30人

  中国          およそ100人
  インドネシア          100人以上
  マレーシア       およそ40人

  インド          公式数字を出さず
  パキスタン       公式数字を出さず
  バングラディシュ   公式数字を出さず

  アジア太平洋地域   およそ1000人
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           * * * * *


 まず、上の表を見ると、

 中東や北アフリカなどの、イスラム教徒が多い国(イスラム教国)から、

 たくさんの外国人戦闘員が来ていることが分かります。



 これはこれで、ものすごく深刻な問題ではありますが、しかしまだ、その
理由は分かりやすいと思います。

 おそらく、

 前回でも触れましたように、「イスラム国」に同調した各国の過激派
組織が、戦闘員として人々を送り出したり、

 あるいは「イスラム過激思想」に共感した者や、「イスラム国家の建設」
を夢見る者が、自らの意思で「イスラム国」へ赴(おもむ)くのでしょう。


              * * * * *


 ところが一方、

 ロシア、フランス、イギリス、ドイツ、ベルギー、オーストラリア、オランダ、
そしてアメリカなど、

 イスラム教国ではない「欧米諸国」から、かなりの数(3400人以上)
の戦闘員が参加しているというのは、かなり理解に苦しみます。



 この理由として、様々なことが言われていますが、その中でもいちばん
理解しやすいのは、

 欧米から「イスラム国」に来る戦闘員の多くは、イスラム系の移民であり、

 母国(欧米)で2級市民の扱いをされ、貧困や失業に直面し、差別や偏見
を受けているというものです。



 また、

 イスラム教の「信仰が妨げられる」という不満もあるみたいです。

 たとえば欧米では、酒やタバコがあふれ、男女関係も乱れています。

 欧米に住んでいるイスラム教徒の一部には、そんな社会を「世俗的で
不純だ」と見なす者たちがいて、

 そのような信徒たちが、イスラムの教えに厳格な「イスラム国」へと
惹(ひ)きつけられて行くというのです。



 しかしながら、

 シリアに赴(おもむ)く欧米人の多くは、中産階級の出身であり、「貧困」
などでは説明がつかないとする意見もあります。

 このような欧米人が、「イスラム国」に惹(ひ)かれる理由として考えられ
るのは、

 「祖国での退屈な活から抜け出し、自らのアイデンティティーを見出した
い」という願望だとしています。



 さえない町で、将来性のない職についている若者にとって、

 共に戦う兄弟としての絆や、戦場で勝利する栄光や、銃などの武器が、
ゾクゾクするほど魅力的に映るみたいです。

 実際、たとえばベルギー出身の兵士の多くは、面白味のない町から来て
いるといいます。


               * * * * *


 ところで、

 もともとシリアに向かった多くの外国人戦闘員は、「人道的な目的の
ため」と信じて、活動していました。

 シリア内戦が始まった当初、外国人は食糧や医薬品を届けたり、共に
戦ったりすることで、仲間のイスラム教徒を助けようとしていたのです。



 ところが、その後、

 シリア内戦の激しさが増し、武装勢力同士の対立も激化した結果、

 「イスラム国」に最近募集された外国人戦闘員は、以前に募集された
戦闘員よりも、「はるかに過激になっている」と言われています。

 以前は「シリア人を守る」と話していた外国人戦闘員たちが、今では
「領地は地元民のものではない」と、主張しているみたいです。



 たとえば、

 「祖国はイスラム色が薄いから捨てた」と話す欧米出身の戦闘員は、

 「シリア国民が、イスラム法(による統治)を望まなかったらどうなのか」
という質問に対して、

 「それはシリア国民が決めることではない。イスラム法を施行するのは
イスラムのためなのだ」と答えているのです。


               * * * * *


 アメリカの最新の統計によると、

 毎月およそ1000人の外国人戦闘員が、シリアとイラクに入っていると
いうことです。

 しかも上で話したように、戦闘員は以前にくらべて、はるかに過激に
なっています。



 こんな状況では、

 アメリカ軍の主導による「空爆」が続けられているにも拘(かかわ)らず、

 「イスラム国」の勢いが止まることは、今後しばらく無いでしょう。

 これは国際社会にとって、ほんとうに深刻な問題です。



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