イスラム国 1           2014年8月24日 寺岡克哉


 すこし以前になりますが、2014年6月29日。

 シリア内戦のなかで台頭してきた、イスラム過激派組織の1つが、

 「イスラム国」の樹立を宣言しました。



 インターネットの「ユーチューブ」で配信された声明によると、

 シリア北部のアレッポから、イラクのバクダッド北東60キロのディアラ
までを「イスラム国」とし、

 最高指導者のアブ・バクル・バグダディ師を、「カリフ(注1)」に任命
したとしています。

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注1 カリフ:

 「カリフ」とは、イスラム教の開祖であるムハンマドの、「後継者」という
意味です。

 カリフを正しくは「ハリーファ」といいますが、ムハンマドが保持していた
宗教的権限と政治的権限のうち、

 政治的権限だけを継承した、イスラム社会全体における指導者です。
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 ものすごく大変な事態になりました!


 他のイスラム教の国々が、認めるかどうか分かりませんが、

 バグダディ師が「カリフ」を名乗ったからには、世界中のすべてのイスラ
ム教の国々を、支配下に置くつもりなのでしょう。

 その証拠に、イスラム国がインターネットを通じて出した声明では、

 「(バグダディ師に)忠誠を誓うのは、すべてのイスラム教徒に課せられ
た義務だ」と、しているのです。



 ちなみに、

 もともとイスラム国は、国際テロ組織「アルカイダ」の流れをくむ組織
でしたが、

 アルカイダとの仲が悪くなり、現在はアルカイダ本体から関係を断た
れています。

 この不和の原因として、ISIS(イラクとシリアのイスラム国:イスラム
国の前身)の「残虐行為」が挙げられており、

 その後改名した「イスラム国」は、拷問や虐殺などをまったく躊躇(ちゅ
うちょ)しない、

 アルカイダをも凌(しの)ぐほどの残虐な組織だと考えられます。



 そして事実、

 イスラム国は、支配地域の住民に服従を強要して、異教徒には改宗を
命令し、それを拒否すれば殺害すると言われています。

 しかも、女性や子供でさえ攻撃対象にしており、

 アルカイダなどほかのイスラム過激派組織と比べても、残虐性が際立つ
という見方が多くなっています。



 そのように残虐なイスラム国が、

 シリアでは、北部の都市アレッポなどで攻勢を強めて、東部の油田を
支配しており、

 またイラクでは、北部にある第2の都市モスルや、首都バクダットの西
にあるファルージャなどを制圧しています。



 いま現在、イスラム国は、

 シリア全土の3分の1と、イラク全土の3分の1を支配しているという
見方もあり、

 アルカイダをも凌駕(りょうが)する、世界最大規模の過激派組織
なっています。


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 以上、見てきましたように、

 世界の石油生産を担(にな)っている、中東の油田地帯において、

 アルカイダよりも残虐な、世界最大の過激派組織が、台頭してきた
のです。



 これから先、

 「イスラム国」の支配地域が、さらに拡大することになれば、

 世界各国の懸念と緊張が、ますます高まって行くのは間違いありま
せん。



 もちろん、中東の石油に多くを頼っている日本にとっても、

 この問題は、けっして他人事ではないのです。



 しかも今後、イスラム国に対して、アメリカの軍事介入が本格化すれば、

 イラクへの「自衛隊派遣」をしたという既成事実があり、

 さらには、「集団的自衛権」の行使を容認しようとしている日本政府は、

 これまで以上に、アメリカ軍への協力や援助が求められることでしょう。



 さらには、

 アメリカと敵対しているイランが、イスラム国に軍事介入をしたり、

 ロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなども、イスラム国に
軍事介入をするようなことになったら、

 すこし大げさかも知れませんが、「第3次世界大戦」に発展してしまう
可能性さえも、けっして否定できないでしょう。



 なので、この先しばらくは、

 「イスラム国」の動向にたいし、すごく注意をして、見つづけて行きたい
と思っています。



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