原発が攻撃される危険性 10
                            2014年8月10日 寺岡克哉


 6月4日付けの「エッセイ642」から、およそ2ヶ月間にわたって、「原発
が攻撃される危険性」についてレポートしてきましたが、

 今回は、これまで調べて来たことをまとめ、私の思ったことを話したい
と思います。


              * * * * *


 まず、「集団的自衛権」が行使された場合、

 日本の原発に攻撃を仕掛けてくる可能性がある国や組織と、その理由
については、以下のものが考えられました。



(1)北朝鮮

 北朝鮮がアメリカに向けて発射した弾道ミサイルを、日本の自衛隊が
撃墜した場合。

 「朝鮮半島有事」のさいに、集団的自衛権が行使された場合。



(2)中国

 南シナ海の、西沙諸島や南沙諸島における領有権問題がエスカレートし
て、軍事衝突が起こったさいに、集団的自衛権が行使された場合。

 「台湾有事」のさいに、集団的自衛権が行使された場合。

 尖閣諸島における領海・領土・領空侵犯がエスカレートして、軍事衝突が
起こった場合。



(3)中東の反米国家

 中東で有事が起こったさいに集団的自衛権が行使されて、アメリカ軍との
共同作戦に、日本の自衛隊が参加した場合。



(4)イスラム過激派組織

 同上。


              * * * * *


 つぎに、

 上の(1)~(4)の国や組織が、日本の原発に攻撃を仕掛ける場合には、
「テロ攻撃」と「軍事攻撃」が考えられ、


 さらに軍事攻撃については、(a)ミサイル攻撃と、(b)航空機による攻撃
が考えられました。


 以下、それぞれの場合について、まとめて行きたいと思います。


              * * * * *


●テロ攻撃の危険性


(1)北朝鮮

 在日朝鮮人55万人のうち、北朝鮮との関係が深いのは、数万人~10
万人ていどと思われる。

 これら全てがテロリストという訳ではないが、北朝鮮から送られてくる工作
員の手引きをしたり、情報の提供や、潜伏場所を提供する可能性が考えら
れる。

 日本の社会に深く根付いている北朝鮮が、原発にテロ攻撃を仕掛けて
きたら、現在のところ防ぐ手段は無いと思われる。



(2)中国

 在日中国人の数は、およそ69万人。

 中国では「国防動員法」が施行されており、中国で有事が起こったさい
に、中国国籍をもつ者(在日中国人も含む)は、軍隊の作戦への支援等が
義務付けられている。

 日本の社会に深く根付いている中国が、原発にテロ攻撃を仕掛けてきた
ら、現在のところ防ぐ手段は無いと思われる。



(3)中東の反米国家

 日本の社会に深く根付いている中国や北朝鮮とちがい、原発にテロ攻撃
を仕掛けるのは難しいと思われる。

 しかし、「悪魔の歌」という小説を訳した、筑波大学の助教授が暗殺され
る事件が起こっており、テロの実行能力は侮れない。



(4)イスラム過激派組織

 日本の社会に深く根付いている中国や北朝鮮とちがい、原発にテロ攻撃
を仕掛けるのは難しいと思われる。

 しかし、アメリカの同時多発テロのように、大型航空機を原発に衝突させ
る可能性は否定できない。

 また、インドネシアは世界最大のイスラム教国であり、

 日本で今後、インドネシアからの外国人労働者が増加すれば、その中に
イスラム過激派が紛れ込んで、潜伏する可能性が考えられる。


              * * * * *


●軍事攻撃 (a)ミサイル攻撃の危険性


(1)北朝鮮

 北朝鮮は、日本の全域を射程圏内に収めるミサイル「ノドン」を320発
保有しており、同時に最大で50発のノドンを発射できる可能性がある。

 一方、日本のイージス艦だけでは、同時に8~12発程度のノドンしか
撃墜できない。

 なので、原発施設にパトリオット迎撃ミサイルが配備されていない現状
では、北朝鮮が全力でミサイル攻撃を仕掛けてきたら、40発ていどの
ノドンが着弾する恐れがある。

 そのため、ノドンの命中精度(半数命中半径)が、一般的に言われて
いる2000メートル程度だとしても、原発施設が破壊される可能性は
決して無視できない。

 さらには、もしもノドンの命中精度が諸説の中で最も高い場合。つまり
半数命中半径が190メートルならば、ほぼ間違いなく原発施設が破壊
される。



(2)中国

 中国は、250発の核兵器を保有しており、そのうち100発ていどの
核ミサイルが、日本を標的にしているという言論がある。

 まず大前提の話として、中国の核攻撃を防ぐ手段が日本にはない。

 一方、

 通常弾頭の場合では、「人民解放軍の1000発のミサイルが日本に
照準を合わせた」という情報がある。

 中国は、弾道ミサイルの他に、命中精度が非常に高い(平均誤差半径
が10メートルていどの)「巡航ミサイル」も多数保有しており、

 これらのミサイルで、日本の原発施設が一斉攻撃を受けたら、原発の
破壊を防ぐのは不可能である。



(3)中東の反米国家

 イランの「ミサイル開発問題」が気になるが、現在のところ、日本を射程
圏内に収めるような長距離弾道ミサイルが、イランで実戦配備されたと
いう情報はない。



(4)イスラム過激派組織

 射程距離が100キロていどのロケット弾ならば、多数保有していると
思われるが、

 日本を射程圏内に収めるような長距離弾道ミサイルを、保有している
とは考えられない。


            * * * * *


●軍事攻撃 (b)航空機による攻撃の危険性


(1)北朝鮮

 北朝鮮が保有する、第3・第4世代戦闘機は108機。

 それに対して、日本が保有する第3・第4世代戦闘機は337機。

 これを見る限り、北朝鮮の戦闘機は、あまり脅威ではないように思わ
れる。

 しかし、たった1機でも、北朝鮮の戦闘機を原発施設の上空にまで
侵入させてしまったら、

 空対地ミサイルや爆弾によって、ピンポイントで正確に原発が攻撃
される危険性がある。



(2)中国

 中国が保有する第4世代戦闘機は673機。

 それに対して、日本が保有する第4世代戦闘機は281機。

 このため、わが国の劣勢は否めず、中国の戦闘機を原発の上空
に侵入させてしまったら、

 空対地ミサイルや誘導爆弾で、ほぼ確実に、原発施設が破壊され
てしまう危険性がある。

 また中国は、巡航ミサイルを発射できる爆撃機を、およそ120機
ほど運用しているとみられ、

 日本の戦闘機の行動半径外の、不特定多数の場所から、一斉に
巡航ミサイルを発射されたら、

 原発を守り抜くのは、ほとんど不可能だと思われる。



(3)中東の反米国家

 「空母」を保有していないので、戦闘機による攻撃の危険性は、無い
と考えられる。



(4)イスラム過激派組織

 同上。


              * * * * *


 以上のように、まとめてみて、やはり私は思ったのですが、

 原発の危険性は、もはや地震や津波だけではありません!



 集団的自衛権の行使が容認されようとしており、

 尖閣諸島をめぐって中国との対立が激化している現状では、

 テロ攻撃や軍事攻撃の危険性の方が、地震や津波の危険性よりも、

 ずっとずっと大きくなっていると考えるのが妥当でしょう。



 原発の存在は、日本の国防にとって、ものすごく大きな弱点になって
います。

 こんな状況のままで、

 集団的自衛権の行使を容認したり、

 あるいは、無責任で楽観的な「主戦論」を吹聴することは、

 日本国民の生命と生活を、ものすごく大きな危険にさらすこと以外の、

 何ものでもないのです。



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