原発が攻撃される危険性 5
                             2014年7月6日 寺岡克哉


 6月29日に、とても痛ましい事件が起こりました。

 東京都 新宿駅南口の、歩行者用の横断橋の上で、拡声器を使って
「集団的自衛権反対」などと訴えていた50~60代の男性が、

 とつぜんガソリンをかぶって自分の体に火をつけ、焼身自殺を図ったの
です。

 その男性は、全身のやけどで1~2ヶ月の重症を負いましたが、幸いな
ことに命に別状はないといいます。



 ところで、

 日本でこのような事件が起こるのは、極めて稀(まれ)で、ものすごく衝撃
的なことです。

 ところが!

 こんなに重大な事件であるにもかかわらず、テレビなどのマスコミは、ほと
んど報道しませんでした。

 「集団的自衛権反対の世論」が盛り上がる事件に対して、「報道規制」
行われてる気がしてなりません。



 そんな状況の中で、安倍内閣は7月2日。

 これまでの憲法解釈を変更して、「集団的自衛権の行使を容認する
閣議決定」
を行いました。

 安倍首相は閣議後の記者会見で、集団的自衛権の行使は限定的だと
強調し、

 「抑止力」によって日本が戦争に巻き込まれるおそれは、一層なくなって
いくと説明しています。



 しかしながら・・・ 

 集団的自衛権の行使によって、ほんとうに「安全」や「安心」が増すので
しょうか。

 たとえば本サイトで連載しているように、集団的自衛権が行使されれば、

 現状では丸裸どうぜんの日本の原発が、「テロ攻撃」や「軍事攻撃」を
受ける危険性が、ますます増加するのではないでしょうか。

 すくなくても、「地震」や「津波」の危険性よりは、「テロ攻撃」や「軍事攻撃」
の危険性の方が、ずっとずっと高くなると考えるのが普通でしょう。



 なので、

 原子力規制委員会は、地震や津波の対策よりも、それ以上にテロや
軍事攻撃の対策に重点をおいて、原発再稼働の審査をするべきです!


 テロや軍事攻撃に対する、原発の安全対策が不十分なままで、集団
的自衛権の行使を容認するならば、


 それは、日本国民の生命と生活を、ものすごく大きな危険にさらす
行為だと言わざるを得ません!



 そのことを私は、ここで強く主張しておきたいと思います。


             * * * * *


 さて、前回のつづきです。


 中国が、日本の原発を「軍事攻撃」する危険性について、考えて行きたい
と思いますが、

 その前に、やはり中国は「核兵器」を持っている国なので、それについて
も少し見ておきましょう。



 核兵器については、

 今年の6月16日に、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIP
RI)が、世界の核軍備に関する最新報告書を発表しています。

 それによると、2014年1月現在で、中国は250発の核兵器を保有して
いる
ということです。



 そのうちの何発が、日本を標的にしているのか定かではありませんが、

 インターネットには、およそ100基ていどの核ミサイルが、日本を標的に
しているという言論も見られます。



 ここで、

 中国は、これだけの核兵器を持っているのに、わざわざ通常兵器で原発
を狙うようなことをするのか?

 という疑問が起こるかもしれません。



 たとえば5発や10発ていどの核ミサイルなら、

 イージス艦の迎撃ミサイル(SM3)と、地上からのパトリオット迎撃ミサイ
ル(PAC3)による「弾道ミサイル防衛システム」で、おそらく撃墜できるで
しょう。

 しかし、たとえば1度に100発ものミサイルを打ち込まれたら、そのすべ
てを撃墜するのは不可能です。

 だから中国は、わざわざ通常兵器で原発を攻撃しなくても、核兵器で
日本を屈伏させることが出来るはずです。



 ところが中国は、(当てにできるかどうか分かりませんが)表向き上、

 「いかなる非核保有国あるいは非核地帯に対し核兵器を使用することも、
核兵器をもって脅威となることもしない」と、言明しているのです。

 また日本は、(これも当てにできるかどうか分かりませんが)アメリカに
よる「核の傘」に入っており、

 もしも中国が日本を核攻撃したら、アメリカは(自国が核攻撃を受けるの
を覚悟の上で)、中国を核攻撃してくれることになっています。



 いちおう、これらのことから、

 中国が実際に核兵器を使用することは、そう簡単には出来ないのでは
ないかと思います。

 だから核兵器を使わずに、日本を屈伏させるための1つの選択肢として、

 「通常兵器による原発への攻撃」というのも、おそらく中国は考えている
でしょう。

 なぜなら、その方が、

 自衛隊や在日米軍と、まともに正面から戦うよりも、ずっと楽に日本を
屈伏させることができるからです。


               * * * * *


 さて、

 もしも中国が、日本の原発に「軍事攻撃」を仕掛けるとすれば、

 やはり、(1)ミサイルによる攻撃と、(2)航空機による攻撃の、2つが
考えられるかと思います。

 以下、それぞれについて見ていきましょう。



(1)ミサイルによる攻撃の危険性

 中国が保有しているミサイルには、「弾道ミサイル」と、「巡航ミサイル
(注1)」があります。

 これらのミサイルは、地上から発射する他に、潜水艦や軍艦から発射
できるものがあり、

 さらに「巡航ミサイル」の場合は、飛行機から発射できるものもあります。


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注1 巡航ミサイル:

 「巡航ミサイル」というのは、飛行機と同じように、翼とジェットエンジンで
水平飛行するミサイルのことです。

 一般に巡航ミサイルは、統合慣性航法システム、GPS、地形照合シス
テム、デジタル情景誘導装置などを搭載しており、とても高い命中精度を
持っています。

 たとえば、中国に200~500基配備されている「DH-10」と呼ばれ
る巡航ミサイルは、

 射程が1500~2000キロメートルで、命中精度は平均誤差半径で
10メートル
と推定されています。

 なので、この「DH-10」は、日本の原発を確実に狙えるミサイルだと
言えるでしょう
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 ところで・・・ 

 今年の1月22日付けの、共同通信の報道によると

 中国軍と関係が深いシンクタンク、中国軍事科学学会の羅援・副秘書長
(元少将)が、中国のニュースサイト「吉和網」などで、

 「中国と日本が開戦すれば、中国のミサイルで日本は火の海になる」と
語りました。

 また同サイトが、

 「人民解放軍の1000発のミサイルが日本に照準を合わせた」という
情報があると伝えたことに関連して、

 羅氏は、「中国はミサイルでの優勢を利用し、日本を抑え付けるべきだ」
と強調しています。




 1000発ものミサイルが日本を標的にしている!

 これが、もしも本当なら(話半分として500発だとしても)、

 そしてさらには、命中精度が高い「巡航ミサイル」も配備していることを
考えれば、

 中国が本気になって、日本の原発にミサイル攻撃を仕掛けてきた
場合、
それを防ぐことは不可能でしょう。



(2)航空機による攻撃の危険性

 申し訳ありませんが、この続きは次回でレポートしたいと思います。



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