原発が攻撃される危険性 4
                             2014年6月29日 寺岡克哉


 前回のつづきです。


 もしも、尖閣諸島の周辺で・・・ 

 日本と中国の「軍事衝突」が起こり、それがエスカレートして行ったら、

 中国によって、日本の「原発が攻撃される危険性」は、存在するで
しょうか?



 今回は、そのことについて考えてみたいと思います。


             * * * * *


 まず中国は、

 尖閣諸島の周辺で、日本の自衛隊との「軍事衝突」が起こった場合、

 日本の原発などの「本土」を攻撃する前に、

 中国に進出している「日系企業」に対して「資産凍結(注1)」
したり、

 中国に在住している「日本人を拘束」すると言うような、

 そのような「制裁措置」を加えるのではないかと思います。

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注1 資産凍結:

 「資産凍結」とは、国家が資産の処分や移動を禁止する措置のこと
です。
 とくに戦時中において、自国内にある敵国人の資産を、政府が強制
的に取り上げたり、管理することをいいます。
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 ちなみに、

 中国に進出している日系企業の数は、2012年末現在で2万3094社
となっており(注2)、

 中国の在留邦人は、香港とマカオを含め、2013年の速報値で15万
399人
となっています(注3)。

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注2 出所:「2013中国貿易外経統計年鑑」
注3 出所:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成25年速報版)」
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 このように、

 すでに中国は、日本にたいして大量の「人質(ひとじち)」をとっている
のも同然なのです。



 しかしながら、

 ほんとうに中国は、資産凍結や身柄拘束のような「手荒なこと」をする
のか?

 という、疑問をもつ人がいるかも知れません。



 しかし私は、その疑問に対して、

 「中国が、それぐらい手荒なことをやっても当然だ」と、思っています。



 なぜなら、

 2010年の9月に、尖閣諸島の久場島北西の日本領海内で、

 中国の漁船と、日本の巡視船が衝突して、中国人の船長を公務執行
妨害で逮捕・拘置したとき、

 中国当局は、建設会社フジタと現地法人の、日本人社員4人を拘束
したからです。

 さらにそれだけでなく、中国政府は「レアアース(希土類)」の日本向け
輸出を、全面禁止しました。



 たった1人の中国人船長を、逮捕・拘置しただけで、

 中国当局は、それほど凄(すさ)まじい「制裁措置」と取ったわけです。

 いわんや、尖閣諸島で「軍事衝突」が発生する事態になったら、

 日系企業の資産凍結や、在留日本人を拘束することなどは、当然の
ようにやるでしょう。



 おそらく、そのような状況になった時点で、

 日本の経済界は「事実上の降伏」をして、政治家たちに圧力をかけ、

 中国との交戦を中止させようとするでしょう。


              * * * * *


 以上のようなことで、一応の決着を見れば良いのですが・・・ 



 しかしながら「軍事衝突」というのは、

 想定をはるかに超えて、戦火が拡大してしまうことが多々あるのは、
歴史的な事実です。

 もしも戦火が拡大したとき、「想定外」などと言われて誤魔化されるの
は、福島第1原発の事故のときで、もうたくさんです。



 また例えば、1996年に台湾で緊張が高まったとき、

 「台湾問題にアメリカ軍が介入した場合には、中国はアメリカ西海岸
に核兵器を打ち込む」


 と、アメリカ軍の介入を強く「けん制」したと言われています。



 なので、

 日本と中国が、尖閣諸島の周辺で「軍事衝突」をしたときにも、

 「中国は、日本の原発への攻撃も辞さない」という「けん制」、

 つまり脅(おど)しをかけて来るぐらいのことは、平気でやるかも知れま
せん。



 これらのことから、

 中国が「やる気」になれば、日本の原発を攻撃できる能力が本当に
あるのかどうかを確認しておくことは、けっして無駄ではないでしょう。

 また、

 無責任で楽観的な「主戦論」(つまり戦争することを主張する議論)を
戒(いまし)めるためにも、

 中国の能力を、ここで今いちど確認しておくのは、とても重要なことだ
と思います。



 1945年の、太平洋戦争における敗戦・・・ 

 アメリカの能力を「侮(あなど)った」ばかりに、ものすごく悲惨な結果に
終わった過去の経験を、十二分に生かしたいものです。


              * * * * *


 さて、

 中国が、日本の原発を攻撃するとしたら、

 やはり「テロ攻撃」と「軍事攻撃」の、大きく2つが考えられるでしょう。



 また、「軍事攻撃」が行われる場合は、

 「ミサイルによる攻撃」と「戦闘機による攻撃」の、2つが考えられるかと
思います。


 以下、それぞれについて考えて行きたいと思います。


              * * * * *


テロ攻撃の危険性

 外務省のサイトによると、

 在日中国人(在日華僑を含む)の数は、2010年末現在で68万7156名
となっています。



 まず最初に、くれぐれも誤解の無いように断っておきますが、

 もちろん、これら在日中国人のすべてが、テロリストである訳がありま
せん。




 しかしながら、

 普段から日本に住んでいるので、日本の実情には詳しいでしょうし、

 尖閣諸島で「軍事衝突」が起こったら、日本国内の情報提供など、中国に
たいして協力的な行動をする人々が一部にいる可能性は、

 けっして否定できないでしょう。



 また、さらにごく一部だとは思いますが、

 中国本国から送られてくるテロリストの手引きをしたり、匿(かくま)ったり
する人々も、

 おそらく居るかも知れません。



 これらのことを考えると、

 たしかに日本も、原発テロへの対策を整えつつありますが、

 もしも中国から、「テロを実行するための特殊部隊」が送り込まれて
きたら、

 原発へのテロ攻撃を完全に防ぐことは、やはり非常に難しいのでは
ないかと思います。




 しかしながら、

 イスラム過激派などと違って、大きな軍事力を持っている中国は、

 影に隠れてコソコソと「テロ攻撃」を行うよりも、正々堂々と「軍事攻撃」
を仕掛けてくる可能性の方が、

 どちらかと言えば高いかも知れません。



 申し訳ありあせんが、「軍事攻撃の危険性」については次回でレポート
したいと思います。



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