これも放射能汚染テロか
2014年4月20日 寺岡克哉
東京電力は4月14日。
福島第1原発の汚染水処理で、使う予定のない仮設ポンプ4台が動き、
移送先とは異なる「焼却工作建屋」と呼ばれる建屋の地下に、
およそ203トンの「高レベル汚染水」が流入したと、発表しました。
東京電力によると、
誤って移送された「高レベル汚染水」に含まれる放射性物質は、
セシウム134が、1リットルあたり1000万ベクレルで、
セシウム137が、1リットルあたり2700万ベクレル。
これらを合計した「放射性セシウム」は、1リットルあたり3700万ベクレル
としています。
ところで、
これら4台の仮設ポンプは、「焼却工作建屋」と、それに隣接する「プロ
セス建屋」に、それぞれ2台ずつあるのですが、
それらの仮設ポンプは、2011年の6月に、緊急時の汚染水移送用に
設置されたものでした。
また、
仮設ポンプを作動させるスイッチが内蔵された「分電盤」は、それぞれ
の建屋内に設置されていますが、
これらの建屋(焼却工作建屋、プロセス建屋)に、通常は人が立ち入る
ことはなく、
本来の移送作業で使うポンプは、これらとは別の建屋にあったことから、
東京電力は、「誤作動させた可能性は考えにくい」としています。
ちなみに、
仮設ポンプがある「焼却工作建屋」と「プロセス建屋」には、自由に立ち
入りができ、
また、分電盤は「鍵がかかっていない」状態でした。
東京電力の、尾野昌之 原子力・立地本部長代理は、
「予断を持たずに調べる」と述べ、作業関係者が故意にポンプを操作
した可能性も含めて、調査を行なう方針を明らかにしました。
しかしながら、
警察などによる外部の調査は、「現時点ではそこまで考えていない」
と述べて、会社内部の調査にとどめる考えを示しています。
* * * * *
4月15日。
東京電力は、仮設ポンプを起動させる機器類に、異常は無かったと
発表しました。
東電は当初、ポンプ起動のための「機器類の故障」という可能性も
含めて、原因を調査していましたが、
しかし、それらの機器類は「正常に作動すること」が確認されたのです。
今後は、
「誰かが故意にポンプを起動させた可能性」も含めて、人為的な
要因に絞った調査が行なわれる予定です。
事件の発覚前後に、建屋付近で行なわれていた作業内容に関しての
調査を進め、
その当時、現場の近くにいた作業員たちを対象にして、聞き取り調査
を行なう方針です。
* * * * *
4月16日。
原子力規制委員会の定例会合で、更田豊志委員が、「予定外の操作を
防ぐためには管理強化が必要だ」と述べて、
ポンプのスイッチの近くに「監視カメラ」を設置したり、
スイッチが入った「分電盤」に鍵をかけたりするなど、
再発防止策を検討するべきだと指摘しました。
この更田委員の指摘を受けて、原子力規制委員会は東京電力にたいし、
再発防止策を早急に検討して、4月18日に開かれる規制委員会の検討
会で、説明するように指示しました。
* * * * *
4月18日。
東京電力は、原子力規制委員会の検討会で、「誤った移送」に関する
報告を行ないました。
この報告で、
「誤った移送」に使われた4台のポンプを操作した可能性がある、作業
員ら、およそ90人を対象にして、
「聞き取り調査」を始めたことを明らかにしました。
また、
4台のポンプのスイッチは、それぞれ別の分電盤にありますが、
どれも空調設備のスイッチと隣り合っているうえに、番号の表示だけで
機器名が明示されていませんでした。
このため、「空調の操作と間違ってポンプを動かした可能性もある」
と説明しています。
しかしながら、
今年の2月にも、何者かによる「不審な弁の操作」で、およそ100トン
の「高レベル汚染水」が、タンクから溢(あふ)れ出す事件が起きており、
このたびの「誤った移送」の原因も、「ミス」と「故意」の両面で調査中
だとしています。
さらに東京電力は、「作業の管理対策」として、
電源盤の施錠強化、監視カメラの強化に加えて、
GPS(全地球測位システム)などで作業員の位置情報を把握する
方針も表明しています。
これらのことに関連して、
東京電力が、原子力規制委員会に提出した資料の、6ページ目と
12ページ目には、以下のように記載されています。
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原子力規制委員会 特定原子力施設監視・評価検討会(第20回)
資料4−2
福島第一原子力発電所 集中廃棄物処理施設焼却工作建屋への
滞留水の誤った移送について 平成26年4月18日 東京電力株式
会社
調査計画および調査状況(6ページ目)
■ 調査事項
@仮設ポンプ起動時期の推定
a.関連する建屋水位データから、仮設ポンプの起動時期を推定し、
関連作業の抽出の効率化を図る。
A設備不具合の可能性
a.当該分電盤の回路を確認する。
Bヒューマンエラーの可能性
a.当該設備所管の部署、当該建屋所管の部署、当該建屋内設備
の所管部署等にインタビューを行い、ヒューマンエラー発生の可能
性を確認し、今後の調査に資する情報を得る。
b.@において推定した仮設ポンプ起動時期近傍における作業件名
を抽出し、関係者へのインタビューを行なう。
■ 調査状況
@仮設ポンプの起動時間:実施中
A設備不具合の可能性:実施済
a.当該分電盤の回路を確認し、誤動作が発生する可能性がない
ことを確認済。
Bヒューマンエラーの可能性
a.インタビュー対象者は90名。4/17〜実施中(4/20終了目途)
b.作業件名抽出終了(4/21予定)後、作業関係者へのインタビュー
を実施予定(〜4/25終了目途(件数による))
現場管理強化策(12ページ目)
現段階では、誤った移送に至った原因の特定がなされていないが、
福島第一原子力発電所における現場管理強化策として、
●電源盤の施錠強化
●弁の施錠管理強化
●建屋・扉の施錠強化
を進めていく。またこれらに加えて、
●監視カメラの強化
●構内作業員の位置情報の把握
について検討していく。
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以上、ここまで見てきて、私は思ったのですが・・・
東京電力は、4月18日に開かれた原子力規制委員会の検討会で、
「空調の操作と間違って(仮設)ポンプを動かした可能性もある」と説明
しています。
しかしながら、4月14日の東京電力による説明では、
問題の仮設ポンプがある「焼却工作建屋」や「プロセス建屋」には、
「通常は人が立ち入ることがない」としています。
さらには、
仮設ポンプは2011年の6月に、緊急時の汚染水移送用に設置された
ものですが、
それから今まで、およそ3年ちかくもの間、
空調の操作と間違って、仮設ポンプを動かしてしまうようなミスなど、
(恐らく)まったく起こらなかったのでしょう。
これらのことから、
空調の操作と間違って、仮設ポンプを動かしたという可能性は、
とても低いのではないかと思います。
その一方で、東京電力は「現場管理強化策」として、
電源盤の施錠強化や、弁の施錠管理強化、そして建屋・扉の施錠強化
などを進め、
さらには、
監視カメラの強化や、GPSなどによる作業員の位置情報の把握を、
検討していく方針です。
これらは、まさに、
「放射能汚染テロ」への対策であるとしか、私には思えません!
ちなみに、福島第1原発の事故が起こってから3年以上経ちましたが、
これまでは、電源盤、弁、建屋、扉などに「施錠」をしなくても、それほど
問題は起こらなかったのでしょう。
だから、原則としては施錠しなければならないとしても、それを放置して
いたのだと思います。
もちろん管理責任上、それは非常に問題のあることです。
が、しかしそれとは、また別の問題として、
故意に実行された疑いがある、「不可解な弁操作」や「汚染水の誤移送」
など、
近ごろ福島第1原発では、「テロ行為」が行なわれ始めてきたような、
そんな気がしてならないのです!
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