放射能汚染テロの可能性
2914年3月2日 寺岡克哉
2月19日の午後11時25分ごろ、
福島第1原発の「H6エリア」という場所に設置したタンクの上部から、
「高レベル汚染水」が漏れ出しているのを、東京電力の協力企業の
作業員が発見しました。
汚染水の「漏えい」は、翌2月20日の午前5時40分ごろまで続き、
およそ100トンの高レベル汚染水が、タンク群を囲っている堰(せき)
の外側へ流出しました。
ちなみに、
H6タンクエリア北側の、堰の外側すぐ近くにおいて、2月20日に採取
した「漏えい水」の分析結果は、以下のようになっています。
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セシウム134 4200ベクレル/リットル
セシウム137 7300ベクレル/リットル
コバルト60 2900ベクレル/リットル
マンガン54 検出限界値未満
アンチモン125 41000ベクレル/リットル
全ベータ 240000000ベクレル/リットル
資料: 報道関係各位一斉メール2014年 H6エリアタンク
上部からの水の漏えいについて(続報4) 平成26年
2月20日 東京電力株式会社
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なんと、
ストロンチウム90などの「ベータ線を出す放射性物質」を、
1リットルあたり2億4000万ベクレルも含んでいる「高レベル汚染水」
が、およそ100トンも流出してしまったのです!
この事故は、
すでに高レベル汚染水で「満タン」になっていたタンクに、
さらに高レベル汚染水を「注入した」ために、
タンクの上部から高レベル汚染水が「溢(あふれ)れ出た」ものですが、
また例によって、東京電力のやることには、いくつもの「過失」が見られ
ます。
* * * * *
まず、
東京電力が2月20日に発表した、このたびの事故における「時系列」を、
以下に抜粋したので見てください。
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平成26年2月19日
14:01 当該貯蔵タンク(H6N−C1タンク) 水位高高警報発生
水位高:96.3%、水位高高:98.9%(警報設定値)
14:05 協力企業より、当社担当者に連絡。
直ちに、担当者は、タンクパトロール担当者に確認し、移送・点検
等の実施が無いこと、計器関連の作業も無いことを確認。
その結果、計装系のトラブルと判断。
15:00 念のため、当社タンクパトロール担当者が、当該タンクの廻りを
点検し異常は確認されず。
16:00 協力企業作業員による夕方のタンクパトロールを実施し、当該
エリアの異常は確認されず。
23:25頃 タンクエリアパトロールにおいて、H6タンクエリア当該タンク上部
より水が垂れていることを協力企業作業員が発見。
平成26年2月20日
0:30頃 タンク内水面を確認したところ、天板まで水位があることを
確認。当該タンク最上面フランジ部より水が出ており、フランジ
部から漏れた水は、雨桶を伝って堰外へ流出していることを確認。
堰外流出箇所へ土嚢設置準備。
資料: 福島第一原子力発電所 H6エリアタンク上部天板部のフランジ部
からの水の漏えいについて 平成26年2月20日 東京電力株式
会社
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この「時系列」を見たとき、私には理解できないことが2つありました。
まず第1に、
なぜ、警報が鳴っていたのに、いとも簡単に「計装系のトラブル(計器類
の故障)」であると、決め付けたのでしょう?
どうして、移送・点検等の実施や計器関連の作業が無いからこそ、「何か
不測の事態が起こって、警報が鳴ったのだ」と、考えなかったのでしょう?
そして第2に、
「念のため」と称して、東京電力のタンクパトロール担当者が、タンクの
廻りを点検するぐらいなら、
なぜ、念のために、タンク内の水面を確認しなかったのでしょう?
タンク内の水面の確認が、技術的に困難ならば仕方がないですが、
高レベル汚染水が漏れている最中でも、タンク内の水面が確認できて
いるのです。
なぜ、「高レベル汚染水」が溢れだす前に、タンク内の水面を確認
しなかったのでしょう?
これらの疑問にたいする回答らしきものを、
2月28日になって、東京電力が以下のように発表しています。
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本来は供給ポンプを停止し、天板からタンクの実水位を確認すべきで
あったが、
タンク「液位高高」の警報が発生した後、水位計指示が乱高下・低下
等の挙動を示したこと、
また当該タンク廻りを確認しても漏えい等の異常がなかったことなどから、
計装系のトラブルと誤解した。
資料: H6エリアタンク上部天板部からの漏えいとその対策について
平成26年2月28日 東京電力株式会社
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これを見ると、
警報が鳴った後に、水位計が挙動不信になったので、
まず最初に計器の故障を疑ったのは、やむを得えないところでしょう。
しかし、だからといって、
本来やるべきことを、やらなかったこと、つまり「実水位の確認」を
行なわなかったのは、
やはり、「大きな過失」であると言わざるを得ません。
* * * * *
ところで、
このたびの事故には、もう1つ大きな疑問があります。
それは「3つの弁」が、ことごとく開かれたことです!
つまり、「高レベル汚染水」が溢れ出した「H6N−C1タンク」は、
タンクに近い方から順に、「V401C」、「V399」、「V347」と呼ばれる
3つの弁によって、三重に守られていました。
これら3つの弁を、すべて開かなければ、「H6N−C1タンク」に注水する
ことが出来ないのです。
ところが!
「V401C」と「V399」の2つの弁は、当初から開かれており、
ただ1つだけ閉じられ、最後の砦だった「V347」も、一時的に開かれて
しまいました。
そのために「H6N−C1タンク」から、「高レベル汚染水」が溢れ出したの
です。
しかも、さらに不可解なことには、
最後の砦だった「V347」が、一時的に開かれていたとき、
H6エリアとは別の、それよりも下流にある「Eエリア」という所に通じる
弁の「V346」が、
当初は開かれていたのに、このときは閉じられていました。
そのため、Eエリアに移送するはずだった「高レベル汚染水」のすべて
が、「H6N−C1タンク」に流れ込んでしまったのです。
さらにさらに、不可解なことには、
「H6N−C1タンク」からの「汚染水漏れ」が発覚したときには、
「V347(H6N−C1タンク側の弁)」は、ふたたび閉じられ、
「V346(Eエリア側の弁)」は、ふたたび開かれており、
「当初の状態」にもどっていたのです。
* * * * *
東京電力が2月28日に発表した、最新の情報によると、
二重三重の守りであったはずの、「V401C」と「V399」の2つの弁が、
なぜ当初から開かれていたのか、
その原因は調査中であるとしています。
また、
当初は、 タンク側の弁(V347)は閉じられ、Eエリア側の弁(V346)は
開かれていたのに、
一時的に、タンク側の弁(V347)が開かれて、Eエリア側の弁(V346)
が閉じられ、
そしてふたたび、タンク側の弁(V347)は閉じられ、Eエリア側の弁(V
346)は開かれて「当初の状態」にもどっていたのは、上で説明した通り
です。
が、しかしなぜ、弁がそのように「操作」されたのか、
これまでに東京電力が行なった、100人以上の作業員への聞き取り
調査でも、直接に結びつく情報は得られていません。
東京電力は、この不可解な「弁の操作」が、
作業員の「ミス」で起こったのか、
それとも作業員の「故意」によって行なわれたのか、
その調査を継続するとしています。
* * * * *
私は思うのですが・・・
不可解な「弁の操作」が、作業員のミスではなく、
もしも、作業員の「故意」によって実行されたのならば、
それは、「放射能汚染テロ」の可能性があると、十分に言える
でしょう。
東京電力が2月28日に発表した、「弁の開閉操作対策」を見ても、
容易に開操作ができないよう、弁に施錠したり・・・
パトロールを強化したり・・・
監視カメラを強化したり・・・
などなど、「テロの可能性」も視野に入れた対策を、考えているように
思えます。
このたびの「汚染水漏れ事故」を引き起こした「弁の操作」を、
作業員の単純なミスだとするのは、あまりにも不可解で、あまりにも
不自然です。
もしも東京電力だけで無理ならば、国を挙げてでも、真相を究明しなけ
ればなりません。
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