女性科学者による快挙 1
                             2014年2月9日 寺岡克哉


 細胞生物学(発生生物学)の分野で、これまでの歴史を塗り変える
ような、ものすごい大発見がなされました!


 その大発見をしたのは、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子さんを
中心とした研究チームで、「STAP細胞」と呼ばれるものです。



 STAP細胞の発見が、細胞生物学における常識や定説を覆(くつが
え)した
という点においては、

 おなじ分野でノーベル賞を受賞した、山中伸弥さんの「iPS細胞」より
も画期的な研究成果であり、

 小保方さんは将来、日本で初の「女性ノーベル賞科学者」になる可能性
が、非常に高いと思われます。



 世界的な権威のある、イギリスの科学誌「ネイチャー」も、

 最初は小保方さんの投稿論文を、「何百年の細胞生物学の歴史を
愚弄(ぐろう)している」
という厳しいコメントを付けて、送り返したほど
でした。

 しかし、小保方さんは諦めずに研究を重ね、2度目のネイチャー誌への
投稿では、見事に論文が受け入れられたのです。

 それほど、小保方さんの発見した「STAP細胞」は、この分野における
常識や定説を覆した「大発見」だったわけです。


               * * * * *


 さて、ここで、

 「STAP細胞」とは、一体どういうものなのか、すこし説明が長くなり
ますが確認しておきましょう。



 まず最初に、

 ヒトを含めた哺乳類が生まれるとき、卵子と精子が結合した「受精卵」
が、2つ、4つ、8つ・・・ と、どんどん分裂して細胞の数が増えていき
ます。

 やがて、脳を作っている神経細胞、筋肉の細胞、内臓の細胞、皮膚の
細胞、そして白血球、赤血球、リンパ球などの血液細胞・・・ 

 などなど、身体を作っている、さまざまな種類の細胞に分かれていき
ます。

 この、「さまざまな種類の細胞に分かれて行くこと」を、生物学の用語
「分化」といいます。



 つまり「受精卵」は、身体を作るすべての種類の細胞に、分化できる
能力を持っているわけです。

 生物学の用語で、すべての種類の細胞に分化できる「能力」のことを
「多能性」といい、

 そのような能力(つまり多能性)を持った細胞のことを「多能性細胞」
あるいは「万能細胞」といいます。



 しかしながら、

 いったん分化が完了してしまった細胞(生物学の用語で「体細胞」
いいます)は、もはや、ほかの種類の細胞に変化することがありません。

 たとえば神経細胞に分化した体細胞は、その後いくら細胞分裂を繰り
返しても、おなじ神経細胞のままです。

 筋肉細胞に分化した体細胞は、その後いくら分裂を繰り返しても、筋肉
細胞のままであり、

 血液細胞に分化した体細胞は、その後いくら分裂を繰り返しても、血液
細胞のままなのです。

 このように、いったん分化が完了してしまった「体細胞」は、その分化状態
を強く保持します。

 つまり「体細胞」は、自分がどんな種類の細胞であるのかを「記憶」して
おり、その記憶をつよく保持しているわけです。



 しかし!

 体細胞が記憶をつよく保持していても、「特別な処理」を行なえば、

 その記憶を忘れさせること、つまり記憶を消去して、体細胞を「初期化」
できるのです。

 そして「初期化」された体細胞は、受精卵と同じように、さまざまな種類
の細胞に分化することが出来るようになります。



 つまり、

 体細胞を「初期化」することにより、

 
「多能性細胞(万能細胞)」を作ることができるのです。



 そのような、体細胞を初期化する方法の1つに、「クローン技術」があり
ます。

 「クローン技術」というのは、たとえば皮膚などの体細胞から、「細胞核」
だけを取り出し、
 その細胞核を、受精していない卵細胞(未受精卵)の中に、移植する技術
です。

 もちろん、受精していない卵細胞(未受精卵)も、細胞核を持っています。

 なので、その未受精卵の細胞核を取りだし、体細胞の細胞核と入れ替え
るのです。

 そうすると、体細胞の細胞核が「初期化」されて、身体を作るすべての
種類の細胞に分化していきます。

 やがて、元の動物とまったく同じ遺伝子(細胞核)を持った子供、たとえば
「クローンマウス」や「クローン羊」が生まれます。



 また、体細胞を初期化する、もう1つの方法として、「iPS細胞技術」
あります。

 これは、皮膚などの「体細胞」の中に、

 「細胞を初期化する特別な遺伝子(山中因子と呼ばれる)」を、注入すると
いうものです。

 「山中因子」と呼ばれる遺伝子は、実はたった4種類の遺伝子しかありま
せんが、それらを体細胞に注入するだけで、初期化が達成されるのです。

 山中さんは、そのことを証明した功績により、ノーベル賞を受賞したの
でした。



 そしてさらに、

 「STAP細胞技術」というのが、体細胞を初期化する新たな方法として、
このたび開発されたわけです。

 これは、皮膚などの「体細胞」を、「酸性の溶液に浸す」というものです。

 ただ、それだけです。

 酸性の溶液に浸すという「刺激」を与えるだけで、体細胞が初期化
され、

 身体を作るすべての種類の細胞に分化する、「多能性細胞」となる
のです。


 それが、「STAP(刺激惹起性多能性獲得)細胞」なのです!


              * * * * *


 ところで、もしかしたら・・・ 

 体細胞を「酸性の溶液に浸しただけ」なのに、何がそんなにすごい
のか?

 と、そのように思う人がいるかも知れません。



 しかし、それが「すごいこと」なのです!

 「酸性の溶液に浸すだけで、体細胞の初期化が起こる」というのが、

 細胞生物学の歴史を塗り変えた「大発見」なのです。



 なぜなら、

 これまでの細胞生物学の定説によると、動物の体細胞を初期化する
ためには、

 細胞核の移植(クローン技術)や、遺伝子の注入(iPS細胞技術)など、

 細胞内部への「人為的な操作」が、絶対に必要だとされてきたからです。



 逆に言うと、(植物ではなく)動物の体細胞の場合において、

 細胞が置かれている環境(細胞外環境)変えるだけで、自動的に初期化
が達成されるというような、

 「自発的な初期化」は、一般に起こりえないと固(かた)く信じられて
きたからです。

 世界的権威のあるイギリス科学誌「ネイチャー」が当初、小保方さんの
投稿論文にたいし、

 「何百年の細胞生物学の歴史を愚弄(ぐろう)している」という、厳し
いコメントを付けて送り返したのも、そのためです。



 つまり、

 動物の体細胞における、「自発的な初期化」の発見!

 これがまさに、細胞生物学の歴史を塗り変えた「大発見」なのです。


              * * * * *


 それではなぜ、小保方さんの研究チームは、

 細胞生物学の常識で「とうてい不可能」とされていることに、挑戦した
のでしょう?


 どのようにして、

 自分たちの研究方針に、自信を持ちつづけることが出来たのでしょう?


 どのようにして、

 自分たちの研究成果を、ネイチャー誌などの「第三者」が納得できる
ように証明したのでしょう?



 科学の研究に携わった経験のある私は、そのようなことに、ものすごく
興味があるのです。

 なので次回は、その辺のことについて、レポートしたいと思います。



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 今回のレポートを書くにあたって、以下の資料を参考にしました。

 2014年1月29日付、理化学研究所 報道発表資料 「体細胞の分化
状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 −細胞外刺激による細胞
ストレスが高効率に万能細胞を誘導− 」

 2014年1月30日付、理研CDB科学ニュース 「細胞外からの強い
ストレスが多能性幹細胞を生み出す」
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