JR北海道の「改ざん」問題
2014年1月26日 寺岡克哉
前回のエッセイ622で書いた「会社ぐるみの犯罪」について、
最近、いちばん私の念頭にあったのは、
JR北海道が、レール幅の検査データを「改ざん」していた
問題です。
北海道は、私が住んでいる地元でもあり、
この大規模な企業犯罪にたいしては、それが発覚して以来ずっと、
すごく憤(いきどお)りを感じていた次第です。
* * * * *
ところで・・・ JR北海道は1月21日。
レール幅の検査データの「改ざん」に対する、「社内調査結果」を発表
しました。
それによると、
全道の44保線部署のうち、33の保線部署で「改ざん」が行なわれ、
保線担当の社員795人のうち、合計で129人が「改ざん」に関与して
いました。
関与した129人のうち、
2人を懲戒解雇、3人を論旨解雇、野島社長ら経営陣の役員報酬を
減額するなど、
合計で75人を処分しています。
なんと、
保線部署の75%で「改ざん」が行なわれ(33/44=0.75)、
保線担当社員の16%が「改ざん」に関与していたのです(129/795
=0.162)。
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この「大規模な企業犯罪」が発覚してきた経緯は、およそ以下のよう
になっています。
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2013年9月19日。
JR北海道・函館線大沼駅構内で、貨物列車が脱線。
2013年9月21日。
JR北海道が、9ヶ所で、レール幅の異常を放置していたと発表。
2013年9月22日。
JR北海道が、新たに88ヶ所で、レール幅の異常を放置していた
と発表。
2013年9月25日。
レール幅の異常放置が、新たに170ヶ所で判明。
2013年10月4日。
国土交通省が、レールの異常放置は合計で270ヶ所と発表。
2013年10月28日。
JR北海道は、レールが分岐するポイントに関し、およそ2100ヶ所
が調査から漏れていたと発表。
2013年11月12日。
JR北海道が、函館保線管理室で「改ざん」があったと発表。
2013年11月22日。
衆議院の国土交通委員会が、JR北海道の野島社長ら3役員を
参考招致。合計9ヶ所の保線部署で「改ざん」があったことを明らか
にした。
2013年12月12日。
JR北海道が、9月19日の貨物列車脱線事故直後にも、「改ざん」
が行なわれていたと発表。
2014年1月21日。
JR北海道が、合計で75人の「大量処分」を発表。
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上の経緯を見ると、
レールの「異常放置」が270ヶ所。
レール分岐ポイントの「調査漏れ」が約2100ヶ所。
さらには、事故発生の直後にも「改ざん」が行なわれており、
ものすごく大規模で、その上、きわめて悪質な「企業犯罪」である
ことが分かります。
* * * * *
このような、
JR北海道による「大規模な企業犯罪」が生じた背景として、
慢性的な「資金不足」と「人材不足」が挙げられます。
そのために、
レールの補修がどんどん後回しになって「異常放置」され、
さらにそれを隠すために、「改ざん」が広い範囲で常態化する
ようになりました。
もちろん、どんな理由があろうとも、
「安全」や「人の命」を軽視した、これら「異常放置」や「改ざん」は
言語道断であり、
犯罪の「実行者」は、きびしく処罰されなければなりません。
しかしながら、
JR北海道が行なった、このたびの「大量処分」にも、
疑問を感じるところがあります。
というのは、同社で働いている複数の社員の声として、
「現場社員が5人も解雇されたのに、経営陣は報酬の減額だけ。差が
大きすぎる」
「正直者がバカを見た。現場で改ざんせざるを得ない状況を放置して
きた経営陣こそ問題なのに、経営陣の処分は甘い」
「現場に責任を押しつけるだけでは何の問題解決にもならない」
などなどの意見が、マスコミで採り上げられているからです。
そして、このような意見が反映したのかどうか分かりませんが、
最新の情報として1月25日に、複数の政府関係者が明らかにした
ところによると、
政府は、JR北海道の小池会長や野島社長らを、3月に交代させる
ことを決めました。
レールの異常放置や検査データ改ざんなどの、「安全管理上の問題」
が相次いでいることから、「経営責任」は免れないと判断したためで、
事実上の「更迭」となります。
* * * * *
以上ここまで見てきて、私は思うのですが・・・
責任を現場だけに押しつけるような、「トカゲの尻尾きり」で終わらな
かったのは良いのですが、
北海道全体における「鉄道の安全確保」は、これから実現して行か
なければならない、とても深刻で大きな課題です。
それが本当に実現できるかどうかが、いちばん肝心なところでしょう。
北海道民の一人として私は、
可能なかぎり早く、「安全な鉄道」を回復してほしいと願ってやみません。
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