原発がテロに狙われる
2013年12月22日 寺岡克哉
政府は12月17日。
「国家安全保障戦略」というのを、国家安全保障会議(日本版NSC)と
閣議で決定しました。
これは、自衛隊創設3年後の1957年5月20日に、国防会議および
閣議で決定した「国防の基本方針について」というのに代わるもので、
戦後日本の安保戦略において、大きな「転機」となるものです。
「国家安全保障戦略」の原文を見てみると、32ページ分の量があり
ましたが、
その中には、前回のエッセイ617で触れたような、
武器輸出三原則の見直しや、防衛産業(防衛生産)の強化、そして
愛国心などについても明記されています。
さらに「国家安全保障戦略」では、
日米関係や、日中関係、日朝関係、核兵器への対応など、その他いろ
いろな事に触れていましたが、
それら中でも、とくに私の目を引いたのは、「テロ」に関する部分でした。
以下、その部分を抜粋してみましょう。
* * * * *
V我が国を取り巻く安全保障環境と国家安全保障上の課題,
1グローバルな安全保障環境と課題,
(3)国際テロの脅威 6〜7ページ(注1)
テロ事件は世界各地で発生しており、国際テロ組織によるテロの脅威
は依然として高い。グローバル化の進展により、国際テロ組織にとって、
組織内又は他の組織との間の情報共有・連携、地理的アクセスの確保
や武器の入手等がより容易になっている。
こうした中、国際テロ組織は、政情が不安定で統治能力が脆弱な国家・
地域を活動や訓練の拠点として利用し、テロを実行している。加えて、
かかる国際組織のイデオロギーに共鳴した他の組織や個人がテロ実行
主体となる例も見られるなど、国際テロの拡散・多様化が進んでいる。
また、我が国が一部の国際テロ組織から攻撃対象として名指しされ
ている上、現に海外において邦人や我が国の権益が被害を受ける
テロが発生しており、我が国及び国民は、国内外において、国際テロ
の脅威に直面している。
こうした国際テロについては、実行犯及び被害者の多国籍化が見られ、
国際協力による対処がますます重要になっている。
W我が国がとるべき国家安全保障上の戦略的アプローチ,
1我が国の能力・役割の強化・拡大,
(6)国際テロ対策の強化 15ページ
原子力関連施設の安全確保等の国内における国際テロ対策の
徹底はもとより、
世界各地で活動する在留邦人の安全を確保するため、民間企業が
有する危険情報がより効果的かつ効率的に共有されるような情報交換・
協力体制を構築するとともに、平素からの国際テロ情勢に関する分析
体制や海外における情報収集能力の強化を進めるなど、国際テロ対策
を強化する。
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注1:
国家安全保障戦略の構成は、T〜Wの4つの章から成っており、
各章の下には1,2,3・・・という節が置かれ、さらに各節の下に(1),
(2),(3)・・・という項が置かれています。
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上に抜粋した、国家安全保障戦略のV−1−(3)の項目と、W−1
−(6)の項目とは、じつは8ページも離れているのですが、
両者を並べて見ると、
日本は、国際テロ組織から「攻撃対象」として名指しされており、
政府は、「原発が狙われる可能性」をいちばんに危惧している
こと(注2)が、読み取れます。
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注2:
「原発が狙われる可能性をいちばんに危惧している」ことは、
W−1−(6)の項目において、いちばん最初に明記されている
ことから読み取れます。
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ところで私は・・・
2007年5月27日付けの「エッセイ275」で、原発がテロの標的に
される可能性を指摘していました。
それから6年経ってみると・・・
「政府の公式見解」として、原発がテロに狙われる可能性が明記
されたわけです。
上で抜粋した、「国家安全保障戦略」で書かれているように、
原発がテロに狙われる可能性が、いちばんに危惧されるほど高い
とすれば、
もはや、いくら地震や津波の対策を行なっても、原発は絶対に安全
ではなくなってしまいます。
なぜならこれは、エッセイ257で指摘しましたように、「科学技術
では、どうすることもできない問題」だからです。
さらには、
もしも将来、日本人の原発作業員の確保が難しくなり、
外国人の作業員を多用することにでもなったら、
国際テロ組織による原発のリスクは、さらにもっと高くなるでしょう。
「廃炉の問題」や、高レベル放射性廃棄物の「最終処分場の問題」
など、原発が根本的に抱えている問題は言うまでもありませんが、
ここで取りあげた「テロのリスク」という問題から見ても、原発を推進
するのは狂気の沙汰であり、
やはり日本は、絶対に「ゼロ原発」を目指して行かなければ、ならない
と思います。
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