COP19に思うこと
2013年12月8日 寺岡克哉
今回は、
COP19について、私の思ったことや考えたことを、お話したいと
思います。
* * * * *
それでは、まず最初に、
以下の、二酸化炭素排出量の「最新データ」を見てください。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
各国の二酸化炭素排出量(2012年)
国・地域 二酸化炭素排出量 全体への割合
中国 99億トン 29%
アメリカ 52億トン 15%
EU 38億トン 11%
インド 21億トン 6%
ロシア 17億トン 5%
日本 14億トン 4%
その他 104億トン
全体 345億トン
出典: 2013年10月30日の、オランダ環境評価庁の発表
を基に作成)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上のデータを見ると、
いまや、中国の二酸化炭素排出量は99億トンになり、
アメリカの52億トンにくらべて、1.9倍にもなっています。
ちなみに、
中国の二酸化炭素排出量が、アメリカを抜いて世界1位になった
のは2007年ですが、
その後、
アメリカの排出量は、「すこしばかり減少」したのに対して、
中国の排出量は、「ものすごく増加」してきました。
つまり中国は、2007年〜2012年までのたった5年間で、
およそ「アメリカがさらに1つ増えたのと同じ」ぐらい、
二酸化炭素排出量が増加したわけです。
このような、
「中国のすさまじい排出量増加を、なんとか食い止めなければなら
ない」というのが、
近年のCOP(国連気候変動枠組み条約 締約国会議)における、
いちばん重大な「本当の課題」なのだと、私は思っています。
* * * * *
ところが、中国などの新興国は、
各国が提出することになった、2020年以降における温室効果ガス
の「自主的な削減目標」について、
その目標が妥当かどうか、事前に互いの国々が評価することに強く
反対して、「相互チェック」の合意を見送らせたり、
「コミットメント(必達目標)」という義務的な意味合いが強い表現を、
「コントリビューション(貢献)」という拘束力のない緩やかな表現に修正
させたりと、
COP19においても、「足を引っ張ること」ばかりしていたのです。
たしかに日本も、
2020年までの削減目標については、1990年比25%減から、2005
年比3.8%減(1990年比3.1%増)へと、大きく後退しました。
そのためCOP19では、世界各国から日本への批判が相次ぎました。
しかしながら、1990年における日本の二酸化炭素排出量は11.4億
トンなので、その3.1%増だと11.8億トンとなり、
最新データ(2012年)の14億トンと比べても、減少することになるの
です。
だから、中国のすさまじい排出量増加にくらべれば、
日本の排出量「自体」は、世界の温暖化対策の足を大きく引っ張って
いるとは、私には思えません。
それよりは、むしろ、日本の削減目標が後退したことで、
先進国の責任を強調している中国などの新興国に、2020年以降
の温暖化対策を進めないための「口実」を与えてしまったこと。
それがCOP19において、日本が足を引っ張った原因になったのだと、
私は考えています。
* * * * *
ところで、中国などの新興国が主張するように、
先進国には、1850年ごろの「産業革命」以降から、ずっと二酸化
炭素を出しつづけてきたという「歴史的責任」が、確かにあります。
また、
国民「1人あたり」の二酸化炭素排出量を、2012年のデータに基づ
いて計算してみると、
アメリカは16.6トン、日本は11.0トンなのに比べて、中国は7.3
トンであり、まだ低い値になっています。
なので、
「まず先進国から温室効果ガスを削減せよ」という、中国など新興国
の主張にも、一理あるかと思います。
そうではありますが、しかし、
中国の二酸化炭素排出量の、すさまじい増加を「野放し」に
すれば、
地球の生態系や人類社会が、「破滅的な被害」を受けてしまい
ます!
これは、
二酸化炭素削減のための経済的な負担がどうであろうが、先進国の
歴史的な責任がどうであろうが、そんな人間の思惑にはまったく関係なく、
二酸化炭素の排出量をどんどん増やせば、ただ自然法則のみに従って
必然的に、
豪雨、洪水、土砂崩れ、突風、干ばつ、熱波、山火事、海面上昇、高潮
などによる、
ものすごく大きな自然災害が、世界中で多発するようになってしまうの
です。
* * * * *
なので、私は思うのですが、
とりあえず、中国の二酸化炭素排出量を、1人あたり年間10トン
を超えないようにさせるべきです。
それには、中国に「口実」を与えないために、
日本も、できるかぎり早急に、1人あたり10トン以下にまで削減しな
ければなりません。
アメリカは現在、1人あたり16.6トンで、とても話にならないレベル
ですが、
中国が1人あたり10トンを超える前に、アメリカも1人あたり10トン
まで削減するべきです。
もし、そうしなければ、
中国にたいして、1人あたり10トンを超えさせる「口実」を与えてしまう
でしょう。
ところが、
日本や、さらにアメリカでさえ、1人あたり10トンに削減できたとしても、
中国は、「先進国の歴史的責任」を盾にして、1人あたり10トンを超え
るための口実にするかも知れません。
しかし、それについては、
新興国は、先進国が長年の研究開発によって得られた技術をすぐに
導入できる(つまり、研究開発に必要だった何十年もの長い時間を省略
できる)わけです。
だから、今後における温室効果ガスの削減にたいしては、
(技術導入の期間を除けば)新興国を特別扱いにする必要はなく、
先進国と同等の取り扱いにするべきだと、私は考えています。
このたびのCOP19を見ていて、私は以上のようなことを、思ったり考え
たりした次第です。
目次へ トップページへ