消費税が8%に!
2013年10月6日 寺岡克哉
10月1日。
政府は閣議を開いて、これまで5%だった消費税率を、来年の4月から
8%に引き上げる決定しました。
同日の夜、安倍首相は記者会見をひらき、
「わが国の経済が再び希望と活力、成長への自信を取り戻して、国の
信認を維持し、社会保険制度を次世代にしっかり引き渡す。これらを
同時に進めていくことが、私の内閣に与えられた責任だ」と述べた上で、
「消費税率を、法律で定められたとおり、来年4月から現行の5%
から8%に、3%引き上げる決断をした」と、表明したのです。
安倍首相は、消費税率を引き上げる決断をした理由について、
「15年間にわたるデフレマインドによってもたらされた、日本経済の
”縮みマインド”が変化しつつある。大胆な経済対策を果敢に実行し、
景気回復のチャンスをさらに確実なものとすることにより、経済再生と
財政健全化は両立しうる。これが熟慮したうえでの結論だ」と、強調
しました。
また安倍首相は、消費税率の引き上げに備えた「新たな経済対策」
について、
「目先の経済を押し上げるだけの一過性の対策ではない。社会保障
の充実や安定などのためのにお願いする負担を緩和しながら同時に、
将来にわたって投資を促進し、賃金を上昇させ、雇用を拡大する。まさ
に”未来への投資”だ」と述べて、
今年の12月上旬に、5兆円規模の経済対策を策定する考えを
示しました。
さらに、このことに関連して、
「私は法人対個人という考え方をとらない。長いデフレの間、企業は、
投資や従業員への還元を行なわずに、ためこんできた状況がある。
企業にとっては投資をしたり従業員に還元したりしていかなければ、損を
していく方に変えていく。企業が国際競争力に打ち勝ち、賃金という形で
従業員へ還元し、それが消費に回っていければ好循環に入っていく」と
述べて、
企業収益の増加によって、賃金の上昇や雇用の拡大につなげていく
考えを強調しています。
その一方で安倍首相は、法人税に上乗せしている「復興特別法人税」
について、
「廃止が賃金の上昇につながっていることを踏まえたうえで12月中に
結論を得ることにしたい。復興財源はしっかりと確保していくことが前提
だ。19兆円から25兆円に増やした復興財源を減らすことはない」と述べ
ました。
また、法人税の実効税率の引き下げについては、
「国際競争に打ち勝ち、世界から日本に投資を呼び込むため、真剣に
検討を進めていかなければならない課題と考えており、しっかりと与党に
議論を進めてもらいたい」と述べています。
ちなみに再来年の2015年10月に、さらに消費税率を10%に引き
上げるかどうかの判断について安倍首相は、
「改めて消費税率引き上げ法の付則第18条にのっとって、経済状況
などを総合的に勘案して判断時期も含めて適切に判断していきたい」
と述べています。
* * * * *
以上のことに対して、
共同通信社が10月1日〜2日に実施した、全国緊急電話世論調査に
よると、
以下のようになっています。
まず、消費税率を8%へ引き上げることに対しては、賛成が53.3%、
反対が42.9%となり、賛成が反対を上回りました。
5兆円規模の経済対策に対しては、「評価する」が36.1%で、「評価
しない」が48.5%でした。
復興特別法人税の廃止については、賛成が23.8%なのに対して、
反対が65.3%。
消費税率の10%への引き上げに対しては、賛成が31.0%で、反対
が61.6%でした。
ちなみに、
食料品などの生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」の導入に
対しては、「した方がよい」が79.0%で、「しなくてもよい」が15.8%。
消費税が8%に引き上げられた際に、家計支出を「控えようと思って
いる」と答えた人は69.3%で、「控えようとは思っていない」が28.6%
でした。
* * * * *
以上、ここまで見てきて私は思ったのですが、
まず第一に、このたび決定された消費増税にたいする世論調査で、
賛成が53.3%と過半数になり、反対の42.9%を上回ったのには、
ものすごく驚きました!
「消費税の増税」は、
(細かなことを措いて)いちばん大局的な見方をすると、
「法人税を減税するためのもの」といえるでしょう。
それを国民の多くの方々は、ほんとうに納得できるのでしょうか?
たしかに、
法人税を下げることによって、企業の国際競争力や収益が上がり、
労働者の賃金が、消費増税などによる物価上昇にくらべて、さらに
上がるのならば、
(年金暮らしの人は大変でしょうが)まだ消費税の増税を認めることが
できるでしょう。
しかし、その保障は、まだどこにもありません!
その証拠に、これまでの実例として、
たとえば1997年に、消費税率を3%から5%に引き上げました。
それにともなって、法人税は2012年度までに12ポイント下がって
います。
それなのに、民間勤労者の平均年収は、
1997年では467万円でピークを記録したのに対し、
2012年になると408万円まで下がり、59万円も減っているのです。
日本の企業は、
これまでのデフレ状況下にもかかわらず、そのような「賃下げ」に
よって、
過去最高の水準にまで、「利益剰余金」とか「内部留保」と呼ば
れる金を、積み上げてきました!
つまり企業側は、「賃下げ」によって儲けたお金を、ひたすら
溜め込んできたのです。
それなのに、今でもまだ、経済界は「賃上げ」に後ろ向きの姿勢を
崩していません。
一方、信金中央金庫の調査によると、
「この先1年以内に賃上げを予定している中小企業」は、全体の
1割にも満たないといいます。
法人税の減税は、大企業は優遇されても、中小企業への恩恵は、
ほとんど無いと言わざるを得ません。
安倍首相は、
法人減税も追い風に企業が業績を向上させて、その分を「賃上げ」に
回せば、中間所得層を含めて「景気回復の実感が広がる」と強調して
います。
政府は、政労使協議などで企業に賃上げを促すほか、法人減税が
賃金に反映されているかを調査して公表する方針です。
しかしながら、個別企業名は明らかにしないので、ほんとうに実効性
があるのかどうか、疑問を抱かざるをえません。
そしてまた、企業側も、
「業績向上分は変動費のボーナス増額で対応するのが基本であり、
固定費を膨らませる所定内給与の引き上げは競争力を弱める」(電気
メーカー幹部)
などとして、「本格的な賃上げ」には慎重な姿勢を崩していないのです。
ところで、もしも賃金が上がらなかったら、
これまでのデフレ脱却政策による物価上昇と、その上さらに消費税の
増税による物価上昇とで、
GDP(国内総生産)の6割を占める「個人消費」が、先細りしていく
のは必至です!
上で挙げた世論調査の結果でも、消費税が8%に引き上げられた際に、
家計支出を「控えようと思っている」と答えた人は69.3%で、「控えよう
とは思っていない」の28.6%を、大きく上回っているのです。
なので、やはり、「賃上げ」がほんとうに実現されるのかどうか。
とくに非正規雇用など、「低所得者層」の賃上げが実行されるかどうかが、
安倍政権の試金石となるでしょう。
ほんとうに労働者の賃金が上がるのかどうか、これから安倍首相の
お手並みを拝見です!
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