IPCC第5次報告書が公表
                            2013年9月29日 寺岡克哉


 9月27日。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)注1の第1作業部会が、

 第5次の報告書を公表しました。

 これは、2007年の第4次報告書から、6年ぶりの改定となります。



 詳しい内容については、また後日に見ていくことにしますが、

 このたびの第5次報告書で、まず一番に注目されるのは、

 「20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な原因は、(化石燃料
の使用など)人類の活動である可能性が極めて高い(95%を超え
る確率)


 と、前回の報告書よりも、さらに踏み込んだ表現で警告していること
です。



 ちなみに、前回の第4次報告書では、

 「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんど
は、人為起源の温室効果ガスの観測された増加によってもたらされ
可能性が非常に高い(90%を超える確率)

 という表現になっていました。



 以上のように、

 人類の活動が原因で、地球温暖化が起こっていることが、

 ますます確実になってきました。


 もはやそれは、「ほぼ確定した」と言ってもよいでしょう。



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注1 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)

 IPCCとは、地球温暖化とその影響に関する科学的知見を各国に提供
するために、
 WMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)が1988年に設立した
国際組織であり、現在は195ヶ国が参加しています。

 IPCCは、第1作業部会(地球温暖化に関する科学的根拠を検討)、
第2作業部会(温暖化による自然や社会経済への影響を検討)、第3
作業部会(温暖化対策を検討)の、3つの作業部会から成っており、
 このたび公表された報告書は、その中の「第1作業部会」によるもの
です。

 ちなみにIPCCは、2007年にノーベル平和賞を受賞しています。
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 ところで・・・ 

 IPCC第4次報告書が公表された6年前には、

 「温暖化懐疑論」というのが、まだ世間に蔓延(はびこ)っていて、

 かなり常識的な人々でさえも、少なからずそれに影響されていた
ように思えます。



 そのため私も、温暖化懐疑論の払拭(ふっしょく)には、けっこう頭を
悩ませていました。

 以下の文章は、そのような当時に、懐疑論者を念頭において書いた
ものです。

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 (2007年2月11日付け エッセイ260より抜粋)

 もしも、今回の第4次報告の結果を覆(くつがえ)そうと企むならば、これまで
以上の観測事実(実際の証拠)を集め、地球シュミレーターよりも高性能の
コンピューターを作らなければなりません。

 しかし、もしそのようにしても、地球温暖化の人為的な原因で起こっている
ことが、さらに確実(95パーセント以上の可能性とか、99パーセント以上
の可能性)になる公算の方が、はるかに大きいでしょう。

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 今ここで、上の6年前の文章を読み返してみると、

 このたびのIPCC第5次報告書で、人為的温暖化の可能性が95%
を超えたことにより、

 6年前の私の予想が、ピタリと当たっていたことが確認できます。



 もはや、

 常識的な人で、人為的温暖化にたいする懐疑論を信じる者は、ほと
んど居なくなったと思います。

 現在でもまだ、人為的温暖化への懐疑論を唱(とな)えている者は、

 ものすごく非常識な者か、過去に流布された間違った情報やデマを
頑固(がんこ)に信じ込んでいる者か、

 あるいは「何らかの利害や利権」に絡んだ者だけに、なったと言って
よいでしょう。


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 ところで、今年の夏も・・・ 

 日本は「異常気象」に見舞われました。



 高知県の四万十市では、8月12日に全国史上最高の41.0℃を
記録し、

 全国の143地点で、最高気温の記録(タイ記録を含む)を更新し
ました。

 西日本では、6〜8月の平均気温が平年よりも1.2℃高くなり、
観測史上で最高の記録となっています。



 一方、

 東北地方では、7月の降水量が平年比で182%となり、これも
観測史上で最高の記録です。

 また、山口、島根、秋田、岩手の一部地域では、「過去に経験の
無い豪雨」
が降りました。

 その逆に、

 九州南部や奄美地方では、7月の降水量が平年比で11%の少雨
となり、これも観測史上で第1位の記録です。



 気象庁は9月2日に、異常気象分析検討会を開きましたが、

 会長の木本昌秀 東京大学・大気海洋研究所教授は記者会見で、

 「極端な高温や大雨、少雨を総合すると、(30年に1度の)異常気象
だったと言わざるを得ない」

 と述べています。


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 このような「異常気象」にたいして、

 「地球温暖化」も影響していることは、もはや否定でません。



 木本・異常気象分析検討会会長は、

 「今夏の猛暑は気圧配置が主な原因だが、地球温暖化や都市化の
影響が加わり、より暑くなった」と分析しており、

 その上で、「温暖化が進むと今夏のような極端な天候はさらに増える
だろう」という見解を示しています。



 また、このたびのIPCC第5次報告書でも、

 「(地球温暖化による)気候変動によって乾燥地域ではさらに乾燥が
進み、雨の多い地域(日本を含めた中緯度地域)では強い雨が頻繁に
降る」と警告しており、

 気候変動が原因とみられる異常気象が、世界各地で発生している
ことにも言及しています。



 このように「地球温暖化」は、確実に進行しているのです!

 そして、人類が排出する二酸化炭素などの温室効果ガスが、その
主な原因であることは、もはや否定することが出来ません。


 まず第一に、(とくに中国やアメリカなど)日本を含めた世界各国
の人々が、

 この事実から目を背(そむ)けることなく、心の底から認めなければ
なりません。


 そうしなければ、温室効果ガスを大幅に削減するための、つよい
動機と原動力は、けっして生まれないでしょう。




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