原発事故は継続中 9
                           2013年8月25日 寺岡克哉


 本サイトでは、

 福島第1原発でトラブルが発生するたびに、「原発事故は継続中」
という記事をシリーズで載せており、

 原発事故が、けっして「終息」などしていないことを、訴えつづけて
います。


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 さっそくですが、8月19日。

 東京電力は、メルトダウンした原子炉の冷却に使った後の「高レベル
汚染水」を貯槽したタンクの周辺で「水たまり」が見つかり、

 その水たまりの真上50センチで、最大毎時100ミリシーベルトと
いう、ものすごく高い空間線量を計測した
ことを明らかにしました。

 東京電力は、「タンク内の汚染水が漏れた可能性が高い」としており、
少なくても120リットルが漏れたと見られます。



 原子力規制委員会は、この放射能漏れ事故にたいして、

 INES(原子力事故の国際評価尺度)における「レベル1」に相当する
と、暫定評価しました。

 INESは、レベル0〜レベル7の「8段階」になっていますが、その中で
「レベル1」は、下から2番目の「逸脱」にあたります。



 東京電力などによると、8月19日の午前9時50分ごろ。

 見回り中の社員が、水漏れが発生したときの流出防止のために、タンク
の下を囲っている鉄筋コンクリート製の「堰(せき)」の排水弁2ヶ所から、
水が流れているのを発見しました。

 「堰」の外部には、

 縦横3メートル、深さ1センチの、90リットルの水たまりと、

 縦50センチ、横60メートル、深さ1センチの、30リットルの水たまりの、
2つが見つかっています。



 また、原子力規制庁によると、

 「堰(せき)」の内側にも水たまりが広がっており、数基のタンクが、
1センチ〜2センチの水に浸(つ)かっていたほか、

 堰の外側の水たまりから離れた場所でも、高い放射線量が計測され
たことから、汚染水が広範囲に広がった可能性があります。



 ちなみに、

 26基のタンク群を囲っている、高さ30センチの「堰(せき)」は、汚染水
の漏れを防ぐためのものですが、

 堰にたまった雨水を排出するための排出弁は、開けたままにして
ありました。

 その排出弁を閉じたことで、「堰(せき)」の外への流出が止まったの
です。

 東京電力は、「雨水を排出しておかないと、堰にたまった水がタンク
から漏れた水か判断できないため、排出弁はふだんから開けていた」
としています。


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 8月20日。

 東京電力は、「漏れた汚染水の量が300トンに達する」と発表しま
した。

 東京電力によると同日、26基あるタンク群(高さ11メートル、直径12
メートル)の水位を確認したところ、そのうちの1基で、水量がおよそ2.9
メートル下がっていました。

 しかしながら、そのタンクにおける漏えい箇所は特定できていません。



 漏れた汚染水を分析したところ、

 セシウム134が、1リットルあたり4万6000ベクレル。

 セシウム137が、1リットルあたり10万ベクレル。

 そして、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が、1リットル
あたり8000万ベクレル検出されました。



 このような汚染水が、300トン(300000リットル)漏れたのですから、

 (46000+100000+80000000)×300000=2404380000
0000で、

 24兆438億ベクレルの放射性物質が、タンクから漏れ出したことに
なります。


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 8月21日。

 原子力規制委員会は、漏れた放射性物質の量が、「モリブデン換算で
数千兆ベクレルていど」
であると推定しました。

 さらには、事故の潜在的な影響なども考慮すれば、INES(原子力事故の
国際評価尺度)における「レベル3」に相当するという、「再評価案」を公表
しました。

 レベル3は、8段階のうちの下から4番目の「重大な異常事象」にあたり
ます。



 しかしながら、同日のうちに、

 規制委員会の田中委員長は、レベル3に相当するという「再評価案」の
決定を保留しました。

 田中委員長は、「福島第1原発の状況は海外に細かく発信したい」と
しながらも、

 「お化け屋敷みたいに次から次へといろいろなことが起こる。(レベル)
2だ3だとやっていくのは必ずしも適切ではない」と述べて、

 事態の推移をみながら、IAEA(国際原子力機関)と慎重に協議する考え
を示しています。



 同8月21日。

 東京電力は、タンクから漏れた汚染水が、近くの排水溝を通じて外洋に
流出した可能性を、(これまで否定していましたが)初めて認めました。

 汚染水の貯蔵タンクが並ぶ一帯の脇には、雨水などを外洋に流すため
の「排水溝」がありますが、

 その排水溝の内部でも、毎時6ミリシーベルトの高い放射線量が計測
されたのです。

 この排水溝は、堤防に囲まれた港湾内ではなく、外洋と直接つながって
いるため、

 東京電力の関係者は、「外洋に流れた可能性が高い」としています。



 また、東京電力は同8月21日。

 2011年の5月から、現在までの850日間に、海に漏れ出した放射性
物質の量が、

 セシウム137は、最大で20兆ベクレル。

 ストロンチウム90は、最大で10兆ベクレルという試算を公表しました。

 これらの値は、港湾内における海水の、放射性物質の濃度から求めた
ものです。


 今まで東京電力は、汚染された地下水が、海へ流出していると説明
してきました。

 しかし汚染地下水だけでは、こんなに大量の放射性物質の説明が
できません。

 (汚染地下水の流出量を基にした試算では、セシウムが最大で3億
ベクレル、ストロンチウムが2000億ベクレル。)


 そのため、

 2号機と3号機のトレンチ(配管などが通る地下トンネル)に溜まった
「高レベル汚染水」が、

 トレンチ底部の「砕石層」などを通じて、直接に海に漏れ出していると、
東京電力はみています。


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 8月22日。

 東京電力は、300トンの汚染水が漏れ出したのと「同じ型」のタンク
300基を点検したところ、

 べつの2基のタンクの底部で、最大毎時100ミリシーベルトの高い
放射線量を計測したと発表しました。

 「高レベル汚染水」が、それらのタンクから漏れ出した可能性があり
ます。



 ちなみに、

 「高レベル汚染水」が貯蔵されている、これら300基の同型タンクは、

 鋼板を溶接して作られたものではなく、鋼板の間をパッキンでふさぎ、
ボルト締めにした「簡易構造」になっています。

 つまり、手間のかかる溶接を省(はぶ)いて、急造されたものなのです。

 そのため以前から、「汚染水が漏れ出すという懸念」が指摘されていま
した。



 汚染水が漏れた可能性のある、これら2基のタンクは、

 水位が95%〜97%とほぼ満水で、当初の水位と変わっていません
でした。

 このことから東京電力は、汚染水が大量に漏れ出した訳ではないと
みています。


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 以上、見てきましたが・・・ 


 福島第1原発は、ムチャクチャな状態になっています!


 本サイトの「エッセイ599」で、原発事故が発生した直後から現在に
至るまで、35万トンもの汚染された地下水が、海に流出した可能性を
指摘しましたが、

 その上、トレンチ内に溜まっている「高レベル汚染水」さえも、直接に
海に流出している可能性が濃厚になってきました。



 ボルト締めで急造された「簡易構造のタンク」からは、300トンもの
「高レベル汚染水」が流出し

 しかも、汚染水の漏れを防ぐための「堰(せき)」は、排出弁が開けっ
ぱなしにしてありました。

 8月21日の夜に開かれた、原子力規制委員会の汚染水対策を検討
する作業部会で、更田(ふけた)委員は排出弁が開いていたことに関し、

 「何のための堰なのか。たまった水が雨水だと確認できてから弁を
開けるのが、まっとうなやり方だ」と厳しく批判しています。

 私も、全くその通りだと思います。

 じつは東京電力は、裏で「汚染水が流出してもかまわない」と考えて
いるとしか、私には思えません。



 また、8月23日に原子力規制委員会は、汚染水が漏れたタンクなど
を「現地調査」しましたが、

 これに参加した更田(ふけた)委員は、「点検記録が残されておらず、
ずさんであったと言わざるを得ない」と、東京電力の対応を厳しく批判
しています。

 私は思うのですが・・・

 点検記録は、わざと残さなかったか、あるいは過失の証拠が残らない
ように闇に葬(ほうむ)ったのではないでしょうか?

 東京電力の、これまでの態度(つまり前科)を見ていると、そのように
勘ぐられても仕方がないでしょう。



 東京電力の態度は、本当にどうしようもありません!

 それなのに、原発を再稼動させようとしているのですから、

 まったく開いた口がふさがらないというか、怒りさえ込み上げて
きます。




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