1リットルあたり31億ベクレル!
2013年8月4日 寺岡克哉
「安倍政権に思うこと」の、続きについて書くつもりでしたが、
福島第1原発が、たいへんな事態になっているので、
今回は、そのことについてレポートしたいと思います。
* * * * *
東京電力は7月27日。
新たに観測孔(注1)を設置し、2号機取水電源ケーブルトレンチ(注2)
の海水配管基礎部から7月26日に採取した水で、
セシウム134が、1リットルあたり7億5000万ベクレル。
セシウム137が、1リットルあたり16億ベクレル。
ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物資が、1リットルあたり
7億5000万ベクレル検出されたと発表しました。
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注1 観測孔: 地下水を観測するための井戸。
注2 トレンチ: 地下にある配管用のトンネル。
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上の3つを合計すると、
放射性物質の濃度は、1リットルあたり31億ベクレル!
なんという高レベルの、放射能汚染水でしょう。
ちなみに、この新たな観測孔は「B1-1」と呼ばれ、
地下水観測孔No.1(注3)の西側(建屋側)、海から約50メートルの距離
にあります。
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注3 地下水観測孔No.1:
2号機タービン建屋の東側(海側)、海から約25メートルの距離にあり、
最初に問題になった井戸。
5月24日に採取した水から、ストロンチウム90が1000ベクレル、トリ
チウム(三重水素)が50万ベクレル検出された。
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ところで東京電力は、
このたび、2号機取水電源ケーブルトレンチ(海水配管基礎部)で見つ
かった高レベル汚染水が、
2011年の4月に、2号機取水口付近から海に流出した高レベル汚染
水と、
放射性物質の濃度が、おなじ程度だとしています。
つまり、
東京電力が7月27日に発表した、「福島第一原子力発電所における
港湾内海水のトリチウム測定結果について(続報21)」という資料によ
ると、
観測孔B1-1:2号機取水電源ケーブルトレンチ(海水配管基礎部)で、
7月26日に採取した水から検出されたのは、
セシウム134が、1リットルあたり7億5000万ベクレル。
セシウム137が、1リットルあたり16億ベクレル。
ベータ線を出す放射性物質が、1リットルあたり7億5000万ベクレル
だとしています。
一方、おなじ資料によると、
2011年4月の2号機取水口スクリーン付近から漏えいした汚染水の
性状として、
セシウム134が、1リットルあたり18億ベクレル。
セシウム137が、1リットルあたり18億ベクレルとしています。
両者の合計を比べると、
観測孔B1-1の「高レベル汚染水」に含まれる放射性物質は、1リットル
あたり31億ベクレルで、
2011年の4月に流出した「高レベル汚染水」に含まれる放射性物質
は、1リットルあたり36億ベクレルなので、
たしかに、おなじ程度の濃度だと言えるでしょう。
ところが!
東京電力が2011年の4月21日に発表した、
「福島第一原子力発電所2号機の取水口スクリーン付近のコンクリート
亀裂部からの流出量について」という資料によると、
流出水の放射性物質濃度は、2011年4月2日午後4時30分に試料
採取された、2号機スクリーン流入水の分析結果から、以下の通りとして
います。
ヨウ素131 1リットルあたり54億ベクレル。
セシウム134 1リットルあたり18億ベクレル。
セシウム137 1リットルあたり18億ベクレル。
これらを合計すると、2011年の4月に流出した「高レベル汚染水」に
含まれる放射性物質の濃度は、
1リットルあたり90億ベクレルとなります。
さらには、
本サイトの「エッセイ477」を書いた、2011年4月10日の時点で
東京電力は、
海に流出した「高レベル汚染水」に含まれる放射性物質の濃度を、
1リットルあたり170億ベクレル相当だとしていたのです。
つまり!
2011年4月1日〜4月6日にかけて、海に流出した「高レベル汚染
水」に含まれる放射性物質の濃度が、
1リットルあたり170億ベクレルから、90億ベクレルへ、そして36億
ベクレルへと、
時間が経つごとに東京電力の発表値が、だんだんと小さくなっている
のです。
これは、
海に流出した「高レベル汚染水」の放射性物質の濃度を、
できるだけ小さく印象づけようと「情報操作」をしているように、
私には思えてなりません。
* * * * *
ところで、原子力規制委員会の検討会は7月29日。
福島第1原発で発生している、放射性物質の汚染水問題への対策
を協議しました。
この会合では、まず、
規制委員会の事務局である原子力規制庁が、データをもとに汚染水
の拡散経路の予測結果を公表しました。
それによると、コンクリート製のトレンチからの漏えいだけでなく、
トレンチの下にある、地盤を安定させるために砕いた石を敷き詰めた
「砕石層」を通じて、
汚染水が地中に広がり、海にも流出した可能性を指摘しています。
その上で、
原子力規制委員会は、東京電力にたいして、
トレンチに溜まっている汚染水を、抜き取るように指示しました。
これに対して東京電力は、
砕石層に薬剤を入れて、汚染水が海に流出するのを防ぐとともに、
今年の9月から、トレンチの汚染水をいったん処理をして、放射性物質
の濃度を減らしたうえで、
来年の4月以降に「汚染水を抜きとる」計画を、示しています。
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ところで東京電力は、7月29日付けの、
「福島第一原子力発電所2号機取水電源ケーブルトレンチの調査結果
と現時点での評価(訂正版)」という資料の4ページ目で、
このたび発見された、1リットルあたり31億ベクレルという「高レベル
汚染水」について、
「事故直後の汚染水が、そのまま滞留していると考えられる」と
しています。
その根拠として、
「セシウム137の濃度が、事故直後の汚染水とおなじ程度である
こと」と、
「水位の変動が、確認されていないこと」の、2つを挙げています。
・・・ なんと言うことでしょう!
1リットルあたり31億ベクレルという「高レベル汚染水」が、
原発事故の発生後、2年以上もの間、トレンチ内に放置されてきた
のです。
そして、その「高レベル汚染水」が、
事故発生の当初から、いま現在においても、地下で広がり続け、
海にも流出し続けている可能性があるのです。
ほんとうに、「恐るべきこと」だと言わざるを得ません!
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