大飯原発が運転を継続!
                            2013年6月30日 寺岡克哉


 原子力規制委員会が6月24日に開いた会合で、

 大飯原発(福井県)の運転継続が、つぎの定期点検に入る9月まで、

 認められる見通しになりました。



 しかし! これには大きな疑問を感じます。



 というのは、

 原発の「新しい規制基準」が、7月8日から施行(しこう)されるのですが、

 大飯原発は、その「新規制基準」を十分に満たしているとは、けっして
言えないからです。



 「新規制基準」を十分に満たしているとは言えないままで、大飯原発の
運転継続が認められるならば、

 これから行なわれる、全国の原発の再稼動に向けた審査が、

 なし崩し的に「骨抜き」にされ、有名無実化してしまう恐れが、けっして
払拭(ふっしょく)できないでしょう。


                * * * * *


 大飯原発が、「新規制基準」を十分に満たしているとは言えない理由
は、色々とあるのですが、

 その中でも最大の理由は、

 「原発の敷地内に、”活断層”が存在している可能性がある」こと
です。



 つまり、

 大飯原発の2号機と3号機の間を通っている「F6断層(破砕帯)」が、
もしも活断層であるならば、原発の稼動を認めることは絶対にできません。

 逆に言うと、

 「F6断層が活断層ではない」と証明されていないにもかかわらず、昨年
の7月に、大飯原発の3号機と4号機を再稼動させたこと自体が、ものすご
く異常なのです。



 原子力規制委員会の調査団は、

 昨年の11月と12月の、2回にわたって、「F6断層」を現地調査しました。

 しかしながら、いま現在でも、活断層かどうかで専門家の見解が分かれ
ています。



 原子力規制委員会の専門家会議は、

 関西電力が実施している追加調査の結果が提出されしだい、

 今年の7月にも、さらなる現地調査を行なうとしています。



 このように大飯原発は、まだまだ「現地調査」が必要な段階なのに、

 「直ちに安全上重大な問題が生じるものではない」として、運転継続
が認められる見通しになったのです。


 まさに、これこそが、ものすごく不可解で、とても疑問に感じるところ
です。



                * * * * *


 ところで、

 大飯原発の活断層をめぐる問題には、さらに不可解な事態が発生して
いました。

 それは、

 原子力規制委員会が、地層のボーリング調査資料などのデータ整理
を、外部に委託するために「入札」を行なったところ、

 まったく応募がなく、不成立が3回も続いていたことです。



 原子力規制委員会は、今年の1月。

 大飯原発の断層について、調査の範囲を拡大することを決定し、

 関西電力の資料などを、外部の専門機関に整理してもらうことを
決めました。



 データ整理の内容は、

(1)ボーリング資料などを基に断層(破砕帯)を抽出し、位置や性質、
  状態などを一覧表にまとめる

(2)断層(破砕帯)の分布を地質断面図にまとめる

 というもので、調査団の専門家が科学的な判断をしやすくするために、
かならず必要なことです。



 そのため、

 原子力規制庁(原子力規制委員会の事務局)は、一般競争入札を
実施しました。

 1回目は、契約期間を1ヶ月ていどに設定して募集しましたが、期限
の2月12日までに応募がありませんでした。

 2回目は、契約期間を長めに取って8月末までの契約としましたが、
期限の4月5日までに応募がなく断念しました。

 3回目は、契約期間を10月末までに設定したのですが、期限の5月
28日までに応募がなかったのです。



 専門家は、

 「規制委が独自にデータ整理できるように、事務方の専門能力を拡充
すべきだ」と指摘しています。


 しかし一方、原子力規制庁は、

 「もともと専門の業者は限られる。今後どうするかは未定だが、断層の
資料整理には高い専門性が必要で自前では難しい」と説明しています。



 ところで・・・ なぜ入札に、まったく応募がないのでしょう?

 このままでは、現地調査のデータが整理されず、いつまで経って
も、活断層かどうかの判断ができません。


 やはり、どこからか、「何らかの圧力」がかかっているとしか、
私には思えません!



                * * * * *


 私は思うのですが・・・・ 


 そもそも大飯原発は、たった2日間で策定された「暫定基準」によって、
暫定的に再稼動が認められたという、「例外づくりの前科」を持っています。

 そして今度も、新規制基準を十分に満たしているとは言えないのに、運転
の継続が認められるという、「さらなる例外」を作ろうとしています。

 どうやら大飯原発は、「例外を認める既成事実づくり」として、利用され
ているみたいです。



 このたび、大飯原発の運転継続が認められるかどうかは、

 全国の原発再稼動に向けた「審査のテストケース」として注目されており、

 他の原発における「審査の参考」と位置づけられていました。



 なので、

 大飯原発が「新規制基準」を十分に満たしていないのに、運転の継続
が認められるようでは、

 新規制基準が有名無実化してしまうというか、

 「再稼動ありきの新規制基準にすぎない!」という批判を避けること
は、絶対に出来ないでしょう。



 ここで、いまいちど過去を振り返ってみると、

 そのような「胡散(うさん)臭いことの積み重ね」によって、

 福島第1原発の大事故を起こしてしまったのは、けっして否定できない
でしょう。

 その反省が生かされているとは、まったく思えないのです。



      目次へ        トップページへ