原発事故は継続中 5
                            2013年4月21日 寺岡克哉


 いま現在、福島第1原発では、

 「地下貯水槽」に溜めてある放射能汚染水が、漏れ続けています。

 だから一刻も早く、地下貯水槽の汚染水を、地上のタンクに移さなけれ
ばなりません。



 とくに、

 120トンもの汚染水が漏れた「2号貯水槽」は、最優先で移送を開始
する必要があります。

 が、しかし、4月14日に予定していた「2号貯水槽」の移送開始が、4月
16日まで延びてしまったのです。



 その理由は、次のようなことでした。

 まず4月11日。2号とは別に漏れが見つかっていた「3号貯水槽」の
汚染水を、「6号貯水槽」に移す作業をしていました。

 ところが、その作業中に、ポンプと配管の接合部分から、およそ22リット
ルの汚染水が漏れ出すトラブルが発生したのです。

 このため、3号から6号への移送作業が、予定していた4月14日までに
終わらなくなってしまいました。

 一方、

 3号から6号への移送で使った配管の一部は、「2号貯水槽」から「地上
タンク」への移送にも使用します。

 そのため、3号から6号への移送が終わるのを待ってから、さらに配管を
付け替えたり、水漏れがないかのチェックしなければなりません。

 このような理由で、「2号貯水槽」から「地上タンク」への移送開始が、遅れ
てしまったわけです。



 ちなみに、

 4月16日現在で、「2号貯水槽」に溜まっている放射能汚染水は、900
トンとなっています。

 この汚染水を、南東に400メートルほど離れた「地上タンク」へ、およそ
1週間かけて移す予定です。



 その移送をしている間にも、

 「2号貯水槽」から外部への「汚染水漏れ」は続くことになりますが、

 東京電力は、漏れ出た汚染水を、ポンプで抜き出して再び貯水槽に
もどすことで、環境への影響を極力抑えるとしています。



 しかしながら、

 間違いなく、いま現在も「放射能漏れ」は続いているのであり、

 やはり、「原発事故は継続中」だと言わざるを得ません!


               * * * * *


 ところで!

 このたびの「汚染水漏れ」については、「原子力規制委員会」の対応
にも、

 けっして見過ごすことのできない、「不味(まず)さ」がありました。



 というのは、

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、4月13日に福島第1原発
を訪れて、「地下貯水槽」を視察したのですが、

 視察後の記者会見で田中委員長は、「あれだけの(大規模な)貯水槽
をビニールシートで(敷いて)作るのは普通じゃない」と述べ、

 東電の場当たり的な汚染水対策を批判しました。

 ところが、

 規制委員会による東電への指導が甘かったとの批判については、

 「今は誰の責任と言っても仕方ない。住民が早く安心できるように努力
する」と、田中委員長は述べたのです。



 これについて、私の思うことですが・・・ 



 まず第1に、

 当初、原子力規制委員会は、水漏れが起こった地下貯水層について、

 法的な「使用前検査」などを実施せず、東電が作成した建設計画を
事実上「追認」しただけ
でした。

 東京電力の尾野昌之 原子力・立地本部長代理は、

 「貯水槽の建設計画を提出した段階で、規制委の承認を受けたと認識
している」と、述べています。



 そして第2に、

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、4月10日の記者会見で、
地下貯水槽から汚染水が漏れた問題について、

 「全く予想外。たまたまかと思ったら(漏れた貯水槽が)2つも3つも
なので、原因を明確にしていく必要がある」と、述べています。

 また、汚染水漏れが判明した当初、原子力規制庁が別の貯水槽に
移送するように東電に指示した判断について、記者から「誤りではない
のか」と指摘されると、

 田中委員長は「他に持って行きようがないから」と反論しています。



 これらを整理してみると、つまり原子力規制委員会は、

 「あれだけの(大規模な)貯水槽を、ビニールシートで(敷いて)作るの
普通じゃない」という、認識を持っていながら、

 法的な「使用前検査」などを実施せず、東電が作成した建設計画を
事実上「追認」しただけで、

 いざ「汚染水漏れ」が起こると、「全く予想外」などと惚(とぼ)けて、

 「今は誰の責任と言っても仕方ない」と居直ったのです。



 また、原子力規制委員会は、

  「あれだけの(大規模な)貯水槽を、ビニールシートで(敷いて)作るの
普通じゃない」という、認識を持っていながら、

 汚染水漏れが判明した当初、原子力規制庁が別の貯水槽に移送
するように東電に指示した
ため、

 2号貯水槽の汚染水を移送した先の、「1号貯水槽」でも水漏れ事故を
起こしてしまいました。

 それを記者から「誤りではないのか」と指摘されると、原子力規制委員会
「他に持って行きようがないから」と反論していますが、

 しかし実際には、

 地上にある「H2タンク」や「ろ過水タンク」など、汚染水の持っていく場所が
あった訳です。



 こんなお粗末な、

 原子力規制委員会の対応を、見過ごすわけには行きません!



               * * * * *


 ところで、東京電力は4月19日。

 地下貯水槽から漏れ出た「放射性ストロンチウム」が、地下水によって
およそ880メートル離れた海に流れ出るまで、

 100年以上かかるとする試算結果を公表しました。



 ところが、同じく4月19日。

 日本原子力開発機構と、原子力規制委員会は、

 120トンの放射能汚染水が漏れたと見られる「2号貯水槽」の場合、

 早ければ10年ていどで、

 海に流れ出る「放射性ストロンチウム」の濃度が、法令の上限を超える
という試算結果を公表したのです。



 ちなみに、

 放射性ストロンチウム(ストロンチウム90)の半減期は28.8年なので、

 海に到達するまで100年かかるのか、あるいは10年なのかでは、大きな
違いがあります。

 もしも100年かかるのなら、ストロンチウム90は崩壊して、およそ10分
の1に減ります。

 しかし10年しか、かからないのなら、ストロンチウム90は、ほとんど減り
ません。



 100年と10年。

 しかも、長い方の試算結果を出したのが東京電力。

 なぜ試算結果に、これほど大きな差が出るのか、ものすごく疑問に感じる
ところです。



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