原発事故は継続中 4
2013年4月14日 寺岡克哉
いま現在、福島第1原発では、
7つの地下貯水槽(1号〜7号貯水槽)が、「構造的な欠陥」のために
使えなくなり、
ものすごく大変な事態になっています。
今回は、そのような事態に至った経緯について、レポートしたいと思い
ます。
* * * * *
・・・4月5日。東京電力は、
福島第1原発の敷地内にある地下貯水槽(2号貯水槽)から、土壌に
汚染水が漏れ出した可能性があると発表しました。
この貯水槽は、地面を掘った「池」のような構造をしており、大きさは
縦60メートル、横53メートル、深さ6メートルで、容量は14000トン。
その中に、13000トンの汚染水を保管していました。
この貯水槽の内側には、「3重の防水シート」が敷かれているので
すが、
いちばん外側のシートと、真ん中のシートの間に溜まった水を測定した
結果、
1立方センチあたり、6000ベクレルの放射性物質が検出されたという
ことです。
また、いちばん外側のシートと、地盤の間に溜まった水からも、ごく微量
の放射性物質が検出されました。
この「2号貯水槽」の汚染水は、
浄化装置によって、放射性セシウムは除去されているのですが、
「放射性ストロンチウム」などは残っています。
* * * * *
4月6日。東京電力は、
2号貯水槽から漏れ出した汚染水の量が、推定で最大およそ120トン。
その120トンの水に含まれる放射性物質は、ストロンチウムを中心に、
およそ7100億ベクレルになると発表しました。
これは、
2011年の12月に、野田前首相が「冷温停止状態」を宣言して以来、
最大の放射能漏れです。
東京電力は、今後も漏れる恐れがあるとして、この日の朝からポンプを
使い、
2号貯水槽の西隣にある、おなじ構造をした1号貯水槽(容量13000トン)
に、汚染水を移す作業を始めました。
さらには、移送時間を短縮するため、2号貯水槽の南側にある6号貯水槽
(容量10000トン)にも移送を始め、
合計5台のポンプを使って、1時間あたり200トンのペースで移しています
が、移送が終わるまでに3日以上かかる見通しです。
その間にも汚染水は漏れ続けており、最大で47トンほどが、さらに漏れ
出す可能性があるといいます。
* * * * *
4月7日。東京電力は、
2号貯水槽の東隣にある、おなじ構造をした3号貯水槽(容量11000トン)
でも、水漏れがあったと発表しました。
この貯水槽には、10000トン余りの汚染水を保管していますが、
東電は、漏れた量を最大3リットル程度と推定し、「大量漏えいはない
と考えている」としています。
* * * * *
4月9日。東京電力は、
2号貯水槽から汚染水を移していた、西隣にある1号貯水槽でも、
水漏れがあったと発表しました。
これにより、
2号、3号、1号と、大きさは違うけれど「おなじ構造」をした貯水槽から、
相次いで汚染水が漏れ出したことで、
地下貯水槽は、「構造的な欠陥」のために、保管機能を十分に果た
せないことが「確定的」となりました!
東京電力は、汚染水が漏れている3つの貯水槽のうち、
1号と2号にある、およそ9000トンの汚染水を優先的に、べつの地下
貯水槽や、地上にある別用途のタンクに移す方針です。
3号については、移送先の確保が難しいという理由で、当面は使い続け
るといいます。
東京電力の、尾野 原子力・立地本部長代理も記者会見で、「1号は
状況として違う」と述べています。
しかし、その一方で、
全貯水槽が使えなくなると「保管先が不足する」として、3号(容量11000
トン)、5号(容量2000トン)、6号(容量10000トン)、そして7号貯水槽
(容量4000トン)は、
旧来の方針通りに、水位を8割以下に保ちながら使用するとしています。
4号貯水槽(容量4000トン)は、汚染度の少ない水を貯蔵しており、すで
に満杯になっています。
* * * * *
4月10日。
茂木経済産業相は、衆議院の経済産業委員会で、
「(汚染水は)速やかに(地上の金属製の)タンクに移し、貯水池(1号〜
7号の地下貯水槽)は貯蔵場所としては使わないようにする」
と述べ、地下貯水槽の使用をできるだけ早期にやめさせる方針を示し
ました。
同日。
東京電力は、地下貯水槽の汚染水を、すべて地上のタンクに移すと
発表しました。
ちなみに、この時点での汚染水は、1号6000トン、2号1100トン、3号
8400トン、4号3000トン、5号0トン(未使用)、6号8100トン、7号0トン
(未使用)となっています。
東京電力の計画では、漏れ出す量の多い、1号と2号の汚染水を優先的
に移します。
1号の汚染水の一部と2号の汚染水は「廃液タンク」に移し、1号の残りは
「ろ過水タンク」に移す予定で、いずれも5月初旬までの完了を目指します。
3号と6号の汚染水は、5月後半に敷地内に増設する19000トン分のタン
クに、6月までに移す予定です。
汚染度が低い、4号貯水槽の水も、5・6号機原子炉建屋の近くのタンクに
移します。
また、
事態が深刻な1号貯水槽と2号貯水槽には、小型ポンプを取り付け、漏れ
た汚染水を貯水槽にもどすことで、「大量漏えい」を防ぎます。
さらには、
地元の自治体などからの、「汚染水が海へ流出するのではないか」と懸念
する声が強いため、地下水の監視を強化するとして、
これまでの7ヶ所に加えて、新たに貯水槽の周辺や海側に近い場所など
30ヶ所で、5メートル〜30メートルの穴を掘り、継続的に地下水を分析する
としています。
同日の午後。
東京電力の廣瀬社長は、福島県の楢葉町にある復興本社で記者会見し、
「(昨年7月に実質国有化されて以降)社会に与えた影響が最も深刻な
事故と受け止めている」
「あらゆる資源を総動員して、対処しなくてはならない」と、話しました。
* * * * *
4月11日。東京電力は、
同日の午後2時ごろ、汚染水漏れが確認されている3号貯水槽の水を、
6号貯水槽に移そうとポンプを動かしたところ、およそ3分後に、配管の
つなぎ目から水漏れが起こったと発表しました。
漏れた汚染水の量は22リットルとみられ、その中(22リットルの水)に
含まれる放射性物質は、63億8000万ベクレルと推定しています。
東電が移送を中止して調べたところ、配管の接合部にある、ゴム製パッ
キンが不良だったと判明しました。
移送を始めるにあたって、実際の水を通して漏れの有無を調べる「事前
検査」を、実施していなかったといいます。
東京電力は、1号〜7号の地下貯水槽は使わない方針で、汚染水を
すべて地上のタンクに移すとしていました。
しかし、移し替えには時間がかかるため、
漏れが確認された3号貯水層の汚染水の一部を、今のところ問題が
ない6号貯水槽に、一時的に移すことにしたといいいます。
* * * * *
以上、
7つの地下貯水槽が、「構造的な欠陥」のために使えなくなった経緯に
ついて見てきましたが、
それによって「一体どんな状況になったのか」を、ここで整理してみま
しょう。
まず、7つの地下貯水槽の「容量」を、今いちど確認してみると、
1号(容量13000トン) 2号(容量14000トン) 3号(容量11000トン)
4号(容量 4000トン) 5号(容量 2000トン) 6号(容量10000トン)
7号(容量 4000トン)
と、なっており、合計で58000トン分の貯水場所が使えなくなりました。
これら7つの貯水槽に入っている「汚染水の量」は、4月10日現在で、
1号(汚染水6000トン) 2号(汚染水1100トン) 3号(汚染水8400トン)
4号(汚染水3000トン) 5号(汚染水 0トン) 6号(汚染水8100トン)
7号(汚染水 0トン)
と、なっており、合計で26600トンになります。
この26600トンの汚染水を、すべて地上のタンクに移さなければなら
ない訳ですが、
しかし、地上のタンクの空き容量は、およそ22000トンしかありま
せん。
なので東京電力は、「廃液タンク」や「ろ過水タンク」と言った、別用途の
タンクも移送先にすることを検討していますが、それでも用意できそうな
のは、合計7300トン程度しかないのです。
22000トンと、7300トンを足し合わせれば、空き容量は29300トン
になり、たしかに26600トンの汚染水を移すのは可能でしょう。
しかし、その一方で、
汚染水は1日に400トンずつ、毎日、毎日、増え続けています。
これは、原子炉建屋にヒビが入っているために、メルトダウンした核燃料
を冷却した後の「高レベル汚染水」に、「地下水」が流れ込んでいるから
です。
つまり、
29300トンの空き容量に、26600トンの汚染水を移せば、2700
トンの空き容量しかなくなり、
2700/400 =6.75なので、7日ほど経てば、汚染水が「ダダ漏れ」
になってしまいます。
そんなことは絶対に許されないので、東京電力は6月の初めまでに、
19000トン分の地上タンクを新設する予定です。
そして恐らく、タンクの新設状況を見ながら、汚染水を順次移していく
のでしょう。
東京電力の廣瀬社長は、「最も厳しい時期でも5000トン、12〜13日
分の余裕はある(5000/400 =12.5)」との試算を示しています。
しかしながら、
汚染水を完全に浄化できるシステムが実用化されないかぎり、
つまり、海に捨てても許される低いレベルにまで、汚染水中の放射性
物質を除去できるシステムが実用化されないかぎり、
このままだと汚染水がどんどん増え続けて、原発の敷地内に溜めて
おけなくなり、
いずれ「破綻」を来たしてしまうでしょう。
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