原発事故は継続中 1 
                            2013年3月10日 寺岡克哉


 3月11日で、東京電力 福島第1原子力発電所の「大事故」が発生して
から、まる2年になります。

 しかしそれは、事故の「発生」から2年が経ったのであり、事故が「終息」
したわけでは、決してありません。


 福島第1原発の事故は、いま現在も「継続中」なのです!


(2011年の12月に、当時の政府が「収束」宣言をしましたが、メルトダウ
ンした原子炉は、今でも放射性物質を「汚染水」として放出しつづけており、
原発事故は決して「終息」などしていません。)



 しかしながら年月が経つと、原発事故に対する「人々の意識」というのは、
どうしても薄れがちになってしまします。それは私も、けっして例外ではあり
ません。

 ところが、それをいいことに、

 安倍首相は2月28日の施政方針演説で、「安全が確認された原発は
再稼動する」と明言し、「原発回帰」への姿勢を鮮明にし始めたのです。


 ほんとうに、すこしも油断がなりません!


 そのため本サイトでも、機会があるごとに「原発事故は継続中」である
ことをアピールして、原発にたいする問題意識を呼び起こしていきたいと
考えています。


              * * * * *


 まず・・・ 

 つい先日の2月28日にも、すごくショッキングな出来事がありました。



 福島第1原発の港湾内でとった、「アイナメ」という魚から、

 1キログラムあたり510000ベクレルの「放射性セシウム」が検出
されたと、東京電力が発表したのです。

 これは、国が定める基準値(1キログラムあたり100ベクレル)の
5100倍に相当し、

 魚類から検出されたものでは、過去最大の値となりました。



 このように、

 生物の種類によっては、現在でも放射能汚染が進行中であり、

 原発事故の影響は、けっして終息などしていないのです。



 ところで、

 東京電力は今年の2月8日に、港の外に魚が出るのを防ぐ「網」を設置
しています。

 しかしながら、

 網を設置する前の、昨年12月にとった「ムラソイ」という魚から、1キロ
グラムあたり254000ベクレルの、放射性セシウムが検出されているの
です。

 おそらく他にも、高濃度に汚染された魚が居たはずで、その中には、
港から出ていった魚もあるでしょう。

 そのような形でも、「放射能汚染」というのは広がって行くのです。



 東京電力は、魚が港から出るのを防ぐ対策をさらに強化するとともに、
港の中で魚の駆除を進めることにしています。

 しかしながら、港から出る魚を完全に防ぐことは、おそらく不可能だと
思います。


               * * * * *


 つぎに・・・ 

 いま現在、廃炉作業で最大の懸案になっているのは、毎日々々増え
つづけている「汚染水」の問題です。



 つまり、

 原子炉に水を注入し続けて、メルトダウンした核燃料を冷却し続けな
ければならないのですが、

 原子炉に穴が開いているため、放射能に汚染された冷却水が外に
漏れ出して、原子炉建屋やタービン建屋の「地下」に溜まっています。

 その溜まった汚染水をくみ上げて、浄化処理し、ふたたび冷却水として
使用していますが、

 しかし建屋の地下には、そのように循環させて使用している冷却水の
ほかに、外部から「地下水」が流れ込んでいます。

 そのため、1日に400トンの汚染水が増え続けているのです。



 ところが、

 現在の浄化装置で除去できるのは、放射性セシウムだけで、ストロン
チウムなど他の放射性物質は除去できません。

 そのため「浄化処理をした水」であっても、海などに捨てることはできず、
タンクに溜めておくしかないのです。

 このような理由でタンクに溜めてある汚染水は、すでに26万トンにもなっ
ており、それがさらに毎日400トンずつ増えているわけです。

 現在設置されているタンクは約930台で、その容量をすべて合わせると
およそ32万トンになりますが、

 そのうちの26万トン分が汚染水でいっぱいになっており、あと6万トンの
余裕しかありません。



 このままでは、

 いずれ汚染水が増えすぎて、タンクに溜めておけなくなります!




 この問題に対して東京電力は、2014年の前半までに約8万トンの
タンクを増設し、2015年9月までに敷地を造成して計70万トンの容量
を確保する計画です。

 しかしながら福島第1原発の高橋所長は、「地盤調査の必要があり、
70万トンを現時点で確保できるとはいえない」
と認めています。


 また東京電力は、汚染水増加の原因になっている「地下水」を、井戸
を掘ってくみあげ、建屋地下への流入を抑える対策を進めることにして
います。

 しかし地下水の「流入経路」は、まだ特定されていません。


 さらに東京電力は、ストロンチウムなど62種の放射性物質を除去する
「ALPS(多種核種除去設備)」を設置し、近く、汚染水を使った試験を始め
る計画です。

 しかし、この装置(ALPS)では、「トリチウム」という放射性物質を取り除く
ことができません。

 このため、ALPSで浄化処理した水でさえも、海などに捨てることはできず、

 結局、汚染水の問題を「根本的に解決する見通し」は、まだ立って
いないのです!



              * * * * *


 さらには・・・ 

 放射性物質の「除染」が進められている福島県内で、

 住宅や学校、公園など少なくても4811ヶ所の汚染土を運び出す先が
なく、現場に置いたままになっていることが、3月2日に県のまとめで
分かりました。

 これは、昨年12月の集計のため、箇所数がさらに増えている可能性も
あります。

 国や県は、「専用の袋に入れたり土中に埋めたりしているので、放射線
量は低く安全だ」としていますが、

 「最終的な処分の方法が決まっていない」ことは変わりがありません。


              * * * * *


 そしてさらには・・・ 

 今なお、全国の各地で「避難生活」を強いられている人々・・・ 

 放射能汚染したガレキの焼却灰・・・ 

 日本全国の人々が、(基準値以下とはいえ)放射能に汚染された食品
を食べ続けなければならず、「内部被ばく」が体内にどんどん蓄積されて
いくこと・・・ 


 これらは、

 福島第1原発や、その周辺だけでなく、「全国規模」に広がっている
問題なのです!



               * * * * *


 以上から、

 原発事故が終息していないことは明白であり、議論の余地があり
ません。




 しかし!

 事故の実情が、こんな酷(ひど)い状況であるのに、安倍首相は原発
を推進しようとしているのです。

 その証拠に、安倍内閣が発足してから最近までの、原発に関連した
首相や政府の動きは、以下のようになっています。


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 昨年12月20日。
 内閣が発足してから3日後に直ぐ、安倍首相は福島県を視察し、民主党
政権の「原発ゼロ」方針について、「直ちに政策にはならない」と見直しを
示唆しました。

 1月30日。
 安倍首相は衆議院の代表質問で、民主党政権の「原発ゼロ」方針を、
「ゼロベースで見直す」と答弁しました。

 2月22日。
 安倍首相が訪米し、日米首脳会談で「原発ゼロ」方針の見直しを伝達し
ました。

 2月28日。
 安倍首相は施政方針演説で、「安全が確認された原発は再稼動する」
と明言し、「原発回帰」への姿勢を鮮明にしました。

 3月1日。
 政府は、閣議決定した答弁書で、エネルギー戦略を見直す中で「原発の
新設も検討していく」方針を示しました。
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 このように、

 安倍首相や政府が、原発を推進しようとしていることは、疑う余地が
ありません。


              * * * * *


 ・・・福島第1原発の「廃炉が完了」するまでには、40年ぐらいかかる
とされています。

 その時が来るまで、原発事故は継続していき、決して終息することが
ありません。



 ところが!

 その事実から国民の目を逸(そ)らさせて、

 原発を推進させようと企(たくら)む者が、まったく後を絶ちません。



 このような理由から、

 今後も、廃炉作業や除染作業などで、さまざまな事故やトラブルが
発生して行くでしょうが、

 その度(たび)ごとに、「原発事故は継続中」であることをアピールし、

 問題意識を呼び起こしていきたいと考えています。



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