ロシアに小惑星が衝突!
                          2013年2月24日 寺岡克哉


 北朝鮮が「核実験」をやったと思ったら、

 今度は、ロシアに隕石が落下して、たくさんの負傷者が出ました。

 世界中を騒がせる出来事が、立てつづけに起こっています。


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 現地時間で、2月15日の午前9時20分ごろ(日本時間で、同日の
午後0時20分ごろ)。

 ロシア中部のチェリャビンスク州などで、空から火の玉のような物体
が、白い煙を残しながら落ちていくのが目撃されました。

 ロシア非常事態省によると、落ちてきた物体は「隕石」とみられ、

 落下中に強い光を発しながら爆発して、空中でバラバラになったと
いうことです。



 ロシア軍などが捜索を行なった結果、

 州都のチェリャビンスク市から西におよそ70キロ離れた「チェバルクリ
湖」の凍結した水面に、直径8メートルの穴が見つかり、

 岸辺では直径6メートルの、クレーターのようなものが確認されました。

 このほか、チェリャビンスク市から100キロ圏内において、少なくても
4ヶ所で、隕石の一部と思われる破片が見つかったという情報があり
ます。



 一方、日本の気象庁でも、

 2月15日の午後0時23分から40分にかけて、ロシアの西部やカザフ
スタンなどに設置された6ヶ所の地震計で、

 隕石の落下に伴うとみられる「振動」を観測しました。

 気象庁の精密地震観測室によると、震源は、北緯56度、東経58度
付近で、チェリャビンスク市の近くでした。

 観測された振動の波形は、通常の地震とは異なり、最初から揺れ幅が
大きいのが特徴的で、

 気象庁は、隕石の落下や爆発による衝撃、または大気中に発生する
衝撃波などを捉(とら)えていた可能性があるとみています。


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 これらの隕石落下にともなう「衝撃波」で、広い範囲に被害が出ました。

 チェリャビンスク市を中心にして半径100キロにわたり、

 窓ガラスが割れるなどの被害が、7420棟に上っています。

 このうちの94%が、アパートなどの集合住宅で、被災世帯は12万に
達するといいます。

 また、ガラスの破片などによる負傷者は、1586人にも上りました。



 チェリャビンスク市に住む人々からは、隕石落下時の状況について、

 「寒い部屋でストーブをつけたように、急に熱を感じた。暖かく感じた方
を見たら光が走っていた。」

 「この世の終わりが来たのかも。」

 「誰も何が起きたか分からなかった。みんな大声で叫びながら、逃げ
ようと出口に向かった。」

 「核戦争の始まりかと思った。原爆は最初、強い光を発したと習った
から。」

 などなどの証言が得られています。



 ちなみに「チェリャビンスク市」は、モスクワから真東に1560キロの
距離にあり、同市から南に120キロ行くと、カザフスタンとの国境に
なっています。

 チェリャビンスク市は、シベリア鉄道の起点になっている交通の要衝で、
およそ109万人が住んでいるロシアで9番目の大都市です。

 なので、もしも隕石が「市街地」に落下していたら、大惨事になるところ
でした。

 このたびの災害で、死者が1人も出なかったのは、不幸中の幸いだった
と言えるでしょう。


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 ところで、ロシア科学アカデミーの発表によると、

 隕石の重さは推定およそ10トンで、

 大気圏に突入したときのエネルギーの大きさは、数キロトンとみられる
としています。



 しかし一方、NASA(アメリカ航空宇宙局)の発表では、

 隕石の重さはおよそ10000トン、直径はおよそ17メートル。

 上空20キロ前後で爆発し、そのときのエネルギーは、およそ500キロ
トンとしています。

(広島に投下された原爆のエネルギーは、およそ15キロトンとされていま
すから、500キロトンというのは、その33倍のエネルギーになります。)



 ここで興味深いのは、大気圏突入前の「隕石の重さ」について、

 ロシア科学アカデミーが、およそ10トンと推定しているのに対し、

 NASAは、およそ10000トンと発表しており、

 両者の間に、1000倍もの違いがあることです。

 はたして、どちらの値が本当に正しいのか、とても興味が湧いてきます。


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 またNASA(アメリカ航空宇宙局)は、隕石が地球に至るまでの推定軌道
を公表しましたが、

 それによると、太陽に近いところでは金星付近、遠いところでは火星の
外側を通る楕円(だえん)軌道で、

 1周するうちに2回、地球の軌道と交差するとしています。



 この楕円軌道は、日本の探査機「はやぶさ」がサンプル(砂粒)を回収
した、小惑星「イトカワ」の軌道と似ているといいます。

 NASAの専門家は、大気圏に突入する前の隕石の大きさを、直径が
およそ17メートル、重さがおよそ10000トンと推定していますが、

 これはイトカワと同様の、「地球近傍小惑星」だったと見られています。



 つまり、このたびの隕石落下は、

 じつは「地球と小惑星の衝突」だったわけです!



 この小惑星は、地球の表面にたいして20度未満の浅い角度で、

 秒速18キロ(時速6万4800キロ)の猛スピードで大気圏に突入し、

 ロシア上空の高度15〜25キロで爆発し、分解したと見られています。


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 ところで「小惑星」といえば、

 直径が45メートル、重さが推定で130000トンの、「2012DA14」と
いう小惑星が、

 日本時間で2月16日の午前4時25分ごろ、地球に最接近しました。



 最接近したときの、「2012DA14」と地球との距離は、2万7700キロ
であり、

 気象衛星ひまわり(静止衛星)の軌道である3万6000キロよりも、
さらに近いところを通過したのです。

 ちなみに、地球の直径は1万2740キロですから、

 「2012DA14」が最接近したときには、およそ地球2個分の距離しか
ありませんでした。(27700/12740=2.17)



 事前の報道により、「2012DA14」自体は、地球に衝突しないことが
分かっていたので、それについては心配しませんでした。

 が、しかし・・・ 

 ロシアに小惑星が衝突した(隕石が落下した)日時と、「2012DA14」
が最接近する日時が、かなり近かったので、

 この衝突した小惑星と、「2012DA14」との関係が、当時はものすごく
気になっていました。

 なぜなら、

 もしも「2012DA14」が、いくつかの小惑星をともなった「集団」を形成
していて、その1つが地球に衝突したのだとしたら、

 さらに続いて、また小惑星が地球に衝突するかも知れないからです。



 しかしながら、NASA(アメリカ航空宇宙局)の研究者によると、

 ロシアに衝突した小惑星と、「2012DA14」は、反対の方向から地球
に接近してきた(つまり、まったく軌道が異なる小惑星だった)ので、

 両者には、まったく関係がなく、ものすごく偶然の出来事として、たま
たま同じ時期に、地球に接近したのだとしています。



 ちなみに「2012DA14」は、地球に影響を及ぼすことなく、無事に
通過しました。

 人工衛星や宇宙ステーションへの被害も、無かったとみられます。

 この「2012DA14」が、ふたたび地球に最接近するのは2046年で
すが、

 そのときは今回よりはるかに遠く、最接近時でも100万キロは離れて
いるといいます。(たとえば地球と月の距離は、およそ38万キロです。)


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 ところで、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、

 今回ロシアに衝突したのと、おなじ規模の小惑星が地球に衝突する
のは、

 「100年に1回の出来事」だとしています。



 もしも、そうだとすれば、

 地球の表面のおよそ70%は海であり、およそ30%が陸なのだから、

 だいたい3回に2回は海に衝突し、3回に1回が陸に衝突することに
なります。

 つまり、今回とおなじ規模の小惑星が「陸に衝突する」のは、

 「300年に1回の出来事」と、いうことになります。



 しかしながら・・・ 

 今回とおなじ規模か、それよりも大きな規模の小惑星が、ロシアに
衝突した事例は、

 1908年の、ツングースカ大爆発(注1)。

 1947年の、シホテアリニの隕石落下(注2)と、

 およそ100年の間に、今回を合わせると3回もあります。



 地球の陸地全体の、どこかに衝突するのでも、300年に1回の出来
事だとされているのに、

 それよりも、さらに狭いロシアの領土内(陸地の11.4%、地球全体
の3.3%)で、

 およそ100年間に、3回も衝突が起こるというのは、ものすごく奇異な
感じがします。



 NASAが言っている「小惑星の衝突確率」を、そのまま単純に面積比
で計算すれば、

 今回とおなじ規模の小惑星が「ロシアに衝突する」のは、およそ3000
年に1回の割合になるはずです。

 しかしそれが、たった100年の間に、3回も起こっているわけです。



 このように考えて来ると、

 NASAが言っている「小惑星の衝突確率」は、ほんとうに正しいのか?

 実際は、衝突確率がもっと高いのではないか?

 そんな疑問や心配が、どうしても私の心をよぎってしまうのです。



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(注1)
 「ツングースカ大爆発」は、1908年6月30日に、中央シベリアの
ポドカメンナヤ・ツングースカ川上流の、上空で起こった爆発で、

 小惑星か、あるいは彗星が、地球に衝突したのだとされています。

 半径およそ30キロにわたって森林が炎上し、衝撃波によって2150
平方キロの範囲の樹木が、なぎ倒されました。1000キロ離れた家の
窓ガラスも割れたといいます。


(注2)
 「シホテアリニの隕石落下」は、1947年の2月12日に起こった出来
事で、
 ウラジオストクから北東およそ440キロの山中に、大小無数の隕石
が降りそそぎました。

 最大で、直径およそ26メートル、深さおよそ6メートルの「クレーター」
ができています。

 ウラル連邦大学のグロホフスキー教授は、今回のチェリャビンスク
で起こった隕石落下の規模が、シホテアリニの隕石落下に匹敵すると
いう認識を示しています。
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