北朝鮮が核実験!
                          2013年2月17日 寺岡克哉


 今回は、

 どうして中国の大気汚染が、ここまで酷(ひど)くなったのか、すこし
考えてみたいと思っていましたが、

 急きょ、その予定を変更して、

 北朝鮮が核実験を行なったことと、それをめぐる関係各国の動き
についてレポートします。


               * * * * *


 2月12日の午前11時57分50秒。

 日本の気象庁は、核実験によると見られる人工的な地震波を観測
しました。

 震源は北朝鮮の北東部で、地震の規模を示すマグ二チュードは、
5.2だったとしています。



 また韓国の気象庁も、日本時間で同日の午前11時58分ごろに、

 北朝鮮北東部の豊渓里(ブンゲリ)付近を震源とする、人工的な地震
を観測しました。マグニチュードは4.9としています。



 そして、同日の午後2時40分ごろ。

 北朝鮮は、国営の朝鮮中央通信を通じて、

 「3回目の地下核実験が成功した。以前の実験よりも爆発力が
大きいうえに小型化した核弾頭を使い、高い水準で安全に行なわ
れた」

 として、核実験を行なったことを発表したのです。



 韓国国防省の報道官は、同日の記者会見で、

 北朝鮮で2006年と2009年に行なわれた核実験のときよりも、
地震の規模が大きいという分析結果を発表しました。

 爆発の規模は、1回目が1キロトン、2回目が2〜6キロトンであった
のに対して、

 今回は6〜7キロトンに、威力が増していると推定しています。


 ちなみに、広島に投下された原爆の規模は、およそ15キロトンと
されています。


              * * * * *


 北朝鮮が「核実験」を行なったことに対して、同2月12日のうちに、

 関係各国が「非難声明」を出しました。



 アメリカのオバマ大統領は、

 「昨年12月の弾道ミサイル発射に続いて、地域の安定を損ね、
国連安全保障理事会の決議に反する非常に挑発的な行為だ」と述べ
て、つよく非難しました。

 その上で、「北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの計画は、アメリカの
安全保障と国際社会の平和と安定にとって脅威だ」と述べ、つよい危機
感を表明しています。



 中国の外務省は、

 「北朝鮮は、国際社会の反対を顧(かえり)みず、ふたたび核実験を
行なった。これに対して中国政府は、断固として反対する」として、北朝鮮
を非難しました。

 その上で、「北朝鮮に対しては、非核化の約束を守り、ふたたび局面
を悪化させるような行動をとらないように強く促(うなが)す」としています。

 さらには、「朝鮮半島と北東アジアの平和と安定は、関係国の共通の
利益に合致する」として、
 各国に冷静な対応を求めるとともに、6ヶ国協議の枠組みの下で対話
と協議を行い、核問題の解決を目指していくべきだと呼びかけています。



 ロシアの外務省は、

 「北朝鮮は国際規則を無視し、国連安全保障理事会の決議を軽視する
行動に出た。長年わが国と善隣関係にある国だけに二重に遺憾だ」と
する声明を発表し、事実上、北朝鮮を非難しました。

 ロシア外務省筋によると、「われわれは北朝鮮のこうした行為を非難
するとともに、(12月の)弾道ロケット発射と合わせ、国連安全保障理事
会の決議に違反するものとみなす」としています。



 日本の安倍首相は、

 「わが国の安全に対する重大な脅威であるとともに、核兵器不拡散条約
を中心とする国際的な軍縮不拡散体制に対する重大な挑戦であり、北東
アジアおよび国際社会の平和と安全を著しく損なうものとして断じて容認
できない。北朝鮮に対して厳重に抗議し、断固として非難する。」

 という主旨(しゅし)の声明を出しています。


               * * * * *


 一方、国連の安全保障理事会は、

 日本時間の2月12日午後11時すぎから、ニューヨークの本部で緊急の
会合を非公開でおこない、

 北朝鮮が安保理決議に違反したと強く非難する声明を発表しました。



 安保理の今月の議長国である韓国の、キム・ソンファン議長は、会合の
終了後に記者会見を行なって、

 「北朝鮮による核実験は、安保理決議の重大な違反であり、国際社会
の平和と安定を脅かすものだ。核実験を強く非難する」

 という報道声明を読み上げました。



 アメリカのライス国連大使も、記者団にたいし、

 「北朝鮮の行動は受け入れるわけにはいかず、見逃すわけにもいかな
い。北朝鮮はさらに孤立を深め、安保理の圧力を受けることになる」

 と述べています。



 日本の西田国連大使は、記者団にたいし、

 「声明はきわめて厳しく、断固たるものだと理解し、日本として歓迎する。
北朝鮮に対する厳しい制裁を含む安保理決議をもとめてゆくよう、日本と
しても協力し努力していきたい」

 と述べました。



 また、国連のパン・ギムン事務総長は、安全保障理事会の公開討論
で発言し、

 「国際社会の再三の呼びかけを完全に無視した北朝鮮の無謀な行為
を強く非難する」と述べた上で、

 「北朝鮮の核実験は安保理にたいする挑戦だ。安保理が一つにまと
まって対応してもらいたい」として、

 安全保障理事会にたいして、一致して厳しい措置をとるように求めま
した。


               * * * * *


 核実験から一夜明けた、2月13日。

 北朝鮮は、「実験成功」を同国民に向けて大々的に宣伝しました。

 朝鮮労働党の機関紙である「労働新聞」は、2月13日の1面トップで、
核実験の公式発表を掲載しています。

 同紙の、「国の安全と自主権を守るための正々堂々たる対応措置」と
題した記事では、
 「国力を誇示し痛快だ」などと核実験を支持する、政府機関の幹部や
大学教員らの発言を紹介しています。


 また、キム・ジョンウン第1書記の側近である、キム・ギナム朝鮮労働党
書記は、集会で演説をしました。

 その演説でキム・ギナム書記は、「わが国は、世界的な軍事強国として
そびえ立ち、3回目の核実験を成功させた核保有国、人工衛星打ち上げ
国の隊列に堂々と入ることになった」と、宣言しています。



 同2月13日。

 韓国国防省の報道官は、北朝鮮の核の脅威に対処するため、北朝鮮
の全域を射程に収める「巡航ミサイル」を開発し、実戦配備していること
を明らかにしました。

 韓国メディアによると、この巡航ミサイルは、射程が1500キロの艦対
地ミサイルで「玄武3C」と呼ばれており、昨年の春までに開発が終了した
と見られています。


 また、この日。

 韓国国防省の関係者が明らかにしたところによると、韓国軍の陸海空
それぞれで今週から来週にかけて予定されている軍事訓練について、

 参加する兵士の規模を拡大するとともに、部隊間の連携を強化する
内容を加えておこなうことを決めました。



 日本時間で同日の午前11時すぎ。

 アメリカのオバマ大統領が、上下両院の合同会議で、教書演説を行い
ました。

 その中で、北朝鮮の核実験については、「挑発行為はさらなる孤立を
まねくだけだ」と批判しています。

 北朝鮮の指導部にたいし、「国際的な義務の履行だけが安全保障と
繁栄を手に入れる道だと知るべきだ」として、
 核・ミサイル開発の中止を求めた国連安保理決議などを履行するよう
に求めました。

 またオバマ大統領は、「(北朝鮮の挑発行為は)同盟国を結束させ、
われわれのミサイル防衛を強化し、脅威に対する国際社会の断固たる
措置につながるだけだ」と述べて、

 北朝鮮に対する政策を、「対話と圧力」から「圧力強化」へ転換する
ことを、事実上宣言しました。


               * * * * *


 2月14日。

 北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙である「労働新聞」は、核実験について
の社説を1面のトップに掲載し、

 キム・ジョンウン第1書記が、「われわれの偉業は正当であり、最後
の勝利はわれわれのものだ」と、述べたことを紹介しました。

 その上で、「わが核抑止力は、地球上のいかなる敵の拠点もせん滅
する能力を十分に持っている。3回目の核実験は、世界的な軍事強国、
核保有国としての地位を強固にした」と主張して、核実験の成功を誇示
しました。

 さらには、「今アメリカが核実験に対して再びいかなる圧力を加えよう
とも、われわれには絶対に通じない。制裁にも戦争にも準備ができて
いる」と強調しています。


 この日。

 北朝鮮のピョンヤン中心部の広場で、「核実験成功の祝賀集会」が
行なわれました。

 この集会には、北朝鮮のナンバー2であるキム・ヨンナム最高人民
会議常任委員長ら、北朝鮮指導部のメンバーをはじめ、軍人や市民
らが参加しています。

 集会の冒頭で、キム・ギナム書記が演説をしましたが、このたびの
核実験について、
 「アメリカの敵視政策に対処した、正々堂々たる自衛的措置であり、
圧力を強めつづけるならば、より高いレベルの対応措置を相次いで
講じることになる」と述べて、さらなる挑発の可能性を改めて示唆しま
した。

 また、つづいて演説した軍の代表は、「朝鮮半島とその周辺のアメリカ
基地はもとより、アメリカ本土まで攻撃圏内に置いている」と主張してい
ます。



 同2月14日。

 韓国の国防省は、新たに実戦配備した北朝鮮全域を攻撃できる艦対地
巡航ミサイルの映像を公開しました。

 その映像には、イージス駆逐艦や潜水艦から発射されたミサイルが、
標的に正確に命中している様子が映されています。

 この巡航ミサイルについての事前報道で、射程1500キロの「玄武3C」
と報じた韓国メディアもありましたが、

 韓国国防省はミサイルの名称を明かさず、射程も「北朝鮮全域を攻撃
できる程度」と述べるにとどめており、中国や日本への刺激を避けた可能
性があります。

 関係筋によると、この巡航ミサイルは、射程が500〜1000キロの
「玄武3Cの軽量型」とみられていますが、

 韓国国防省の当局者は、「朝鮮半島のどこからでも、北朝鮮の指揮部
事務室の窓を狙って攻撃できる精密誘導武器だ」と強調しており、

 ミサイル公表の理由については、「北朝鮮が核とミサイルの開発を続け
る中で、韓国軍も対応する能力を整えていることを示すためだ」と説明して
います。



 同日。

 アメリカと韓国の「空軍」は、2日間の日程で、「朝鮮半島戦時作戦準備
訓練」と名づけた合同訓練を開始しました。

 北朝鮮機との空中戦を想定したり、地上の建造物を爆撃したりする訓練
を行なっています。



 同日。

 韓国国会の本会議で、北朝鮮が強行した3回目の核実験について、
「韓国国民の生命と安全を脅かす深刻な挑発行為」として強く非難する
決議を、全会一致で採択しました。

 決議では北朝鮮にたいし、「挑発行為の深刻さを明確に認識し、根本的
な核問題解決のため核物質や核施設を含むあらゆる核開発計画を放棄
せよ」と要求しています。

 また韓国政府にも、国際社会と協力して北朝鮮の核保有を断固として
阻止し、国民の生命と主権を守るため断固たる対応を取るように求めて
います。



 同日。

 日本の衆議院本会議で、核実験を強行した北朝鮮を非難する決議案
が、全会一致で採択されました。

 決議案では、「度重なる核実験は、国際的な核不拡散に対する重大な
挑戦。唯一の被爆国のわが国として断じて容認できない暴挙」と、厳しく
非難しています。

 北朝鮮にたいして、「速やかに全ての核を放棄し、国際原子力機関
(IAEA)の査察を受け入れ、朝鮮半島の非核化に取り組む」ことを強く
求めるとしています。

 日本独自の対応については、「制裁の徹底および追加的制裁など断固
たる措置を引き続き実施する」として、核、ミサイル、拉致問題の早急な
解決を図るように政府の努力を求めています。


               * * * * *


 2月15日。

 日本の参議院本会議で、北朝鮮の核実験強行にたいし、

 「明らかに国連安全保障理事会決議違反であり、国際社会に対する
挑発行為だ。速やかに全ての核を放棄することを強く要求する」

 と非難する決議を、全会一致で採択しました。



 同日。

 アメリカ下院の本会議で、北朝鮮が3回目の核実験を行なったことを
非難する決議案が、賛成412、反対2の賛成多数で採択されました。

 決議案では、核開発などを禁じた国連安全保障理事会の一連の決議
にたいする「目に余る違反」だとした上で、

 北朝鮮に核開発やミサイル開発をやめさせるため、中国にたいして
経済的な支援を控えるように求めています。

 さらには、国際社会による北朝鮮への制裁を強めるため、アメリカ
政府が国連安全保障理事会で新たな制裁決議を目指すように、求めて
います。


               * * * * *


 以上、見てきましたように、

 北朝鮮が3回目の核実験を強行したことについて、

 関係各国や国連が、「大々的な非難」をしているにもかかわらず、

 北朝鮮は、まったく省(かえり)みないどころか、さらなる挑発の可能性
さえ示唆しています。



 それに対して韓国も、

 北朝鮮の全域を射程に収める「巡航ミサイル」の実戦配備を公表し
たり、

 アメリカ軍との合同訓練を開始したりして、まさに「一発触発」の状態
だといえるでしょう。



 しかしながら、

 「北朝鮮の緊張外交」は、今に始まったことではないので、

 まさか、「大規模な軍事衝突」が勃発(ぼっぱつ)するようなことは、
おそらく無いと思います。



 が、しかしそれでも、

 また北朝鮮がミサイルを発射したり、4回目の核実験を行なったりして、

 挑発行為をさらにエスカレートさせる可能性は、けっして否定できない
でしょう。



 北朝鮮は、全くもって困った国です!

 こんなことが続いて行けば、日本においても「右翼化」が加速されて、

 「憲法改正論」や「核武装論」などの広まりに、歯止めが、かからなく
なってしまうでしょう。


 北朝鮮の挑発行為は、本当にやめてもらいたいものです。



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