アルジェリアの人質事件 1
2013年1月27日 寺岡克哉
アルジェリアの「イナメナス」という所にある、天然ガス関連施設が、
武装したテロリストの集団に襲われ、人質として拘束された外国人が、
たくさん殺されました。
この「人質事件」によって、
現地に駐在していた日本人17人のうち、10人が殺害されています。
また、殺害された外国人の人質は、日本人の10人をふくめて、37人
にも上りました。
犠牲になられた方々には、心からご冥福をお祈りします。
今回は、
この「アルジェリア人質事件」に関した事柄の、おおよその経緯に
ついて、
確認しておきたいと思います。
* * * * *
まず、「アルジェリア」という国ですが、
この国は、アフリカの北部に位置しており、地中海の南岸に接していて、
地中海を挟(はさ)んだ北側の対岸には、フランスやスペインがあります。
アルジェリアの面積は238万平方キロで、日本の6.3倍もあります。
しかしながら砂漠地帯(サハラ砂漠)が、約200万平方キロ(国土の約
84%)も占めています。
アルジェリアの人口は3542万人(2010年、世界銀行)で、その99%
が「イスラム教のスンニー派」を信仰しています。
人質事件が起こった、天然ガス関連施設のある「イナメナス」は、
アルジェリアの首都アルジェから、南東におよそ1000キロほど離れ
た「砂漠の中」にあります。
東の隣国であるリビアとの、国境近くに位置しており、イナメナスから
東に向かって60キロほど行くと、リビアとの国境になっています。
なお、
アルジェリアに在留している日本人は、2009年10月現在で、954人
となっています。
* * * * *
つぎに、
「アルジェリア人質事件」に関連した事柄についての、おおよその経緯
ですが、
各種のマスコミ報道によると、(日本時間で)以下のようになっています。
1月16日。
14時ごろ イスラム武装勢力がアルジェリア・イナメナスの天然ガス
関連施設を襲撃。日本人を含む外国人40人前後とアル
ジェリア人100人以上を拘束し籠城。
16時40分 日本政府が邦人拘束の情報を把握。
19時ごろ プラント建設大手、日揮(にっき)のアルジェリア事務所
が、日本人が拘束されたとみられると認める。
20時ごろ フランスのメディアが、国際テロ組織アルカイダ系グルー
プの一員と称する人物が犯行を認めたと報道。
21時すぎ 菅 官房長官が、記者会見で「邦人が拘束された」と
発表。
23時半ごろ 外務省、与党対策本部で「3人拘束の可能性」を伝達。
1月17日。
0時ごろ 岸田外相がアルジェリア外相と会談、早期解決に向けた
協力と人命優先で対応することを要請。
3時ごろ アルカイダ系のイスラム過激派が、犯行声明を発表。
11時ごろ 岸田外相がキャンベル米国務次官補と会談し、日米の
連携を確認。
11時半ごろ 首相官邸で政府対策本部の初会合。
16時10分ごろ 外国人の人質3人がアルジャジーラの電話取材に応じ、
人質の日本人男性がアルジェリア軍の発砲で負傷したと
語る。
20時41分 モーリタニアのANI通信が、犯行グループの話として、
アルジェリア軍が施設への空爆を始め、日本人2人が
負傷したと報道。
21時10分ごろ 駐アルジェリアの英国大使から日本政府に、人質解放の
ためアルジェリア軍が攻撃を開始したと連絡。
21時45分 ロイター通信が、アルジェリア治安筋の情報として、
日本人2人を含む外国人25人が解放されたと報道。
22時ごろ ANI通信が、人質34人と犯人15人が空爆で死亡した
と報道。
22時34分 官房長官が会見し、現地の英国大使から救出作戦開始
の連絡を受けたと発表。
23時ごろ ANI通信が、残る人質は日本人1人、アメリカ人2人、
ベルギー人3人、イギリス人1人の計7人であると、犯行
グループ側が語ったと報道。
1月18日。
0時半 安倍首相が、アルジェリア首相との電話会談を行い、
軍事作戦の中止を要請。
6時1分 ロイター通信が、日本人2人を含む外国人の人質7人が
死亡したと報道。
8時ごろ 官房長官が、日揮からの情報として、日本人スタッフ3人
の安全が確認され、14人の安否が不明と発表。
13時40分ごろ 加藤官房副長官が、安倍首相の外遊を切り上げて
19日に帰国すると発表。
16時すぎ 鈴木外務副大臣が、駐日アルジェリア大使を呼んで、
速やかな情報提供と人命優先の対応を要求。
21時20分ごろ 日揮が、新たに日本人4人の無事を確認したと公表。
1月19日。
22時ごろ アルジェリア軍の「最終的な作戦」が終了したと報道。
1月20日。
1時ごろ 安倍首相が、アルジェリアのセラル首相との電話会談
で「厳しい情報に接した」と、記者団に語る。
1時20分ごろ 官房長官が、日本人死亡情報の提供があったと発表。
4時ごろ アルジェリア内務省が、外国人23人と犯行グループ
32人の死亡を公表したと報道。
9時半ごろ 日揮が、日本人駐在員10人の安否が依然不明と
発表。
1月21日。
0時ごろ 現地に、城内(きうち)外務政務官らが到着したと、
官房長官が発表。
16時ごろ 城内氏らが、現地の病院で、日本人7人の死亡を
確認。
深夜 日揮の遠藤IR部長が、日本人7人のほか、現地
スタッフのフィリピン人2人、マレーシア人1人の死亡
も確認したと発表。
23時00分 アルジェリアのセラル首相が、外国人の人質37人
が死亡、犯行グループ29人を殺害、3人を拘束した
と発表。
1月23日。
夜 官房長官が、安否不明だった日本人3人のうち、
2人の死亡が新たに確認されたと発表。
1月24日。
19時45分ごろ 官房長官が、安否不明になっていた日本人の、
最後の1人の死亡が確認されたと発表。
* * * * *
以上が、
このたびの「アルジェリア人質事件」に関した事柄についての、
おおよその経緯です。
日本人10人の方々を含む、犠牲になられた人質37人の方々には、
重ねて、ご冥福をお祈りします。
しかし、それにしても・・・
このたびの人質事件では、なぜ、外国人ばかりが殺されたのでしょう?
アルジェリアの内務省などによると、人質事件から解放されたのは、
外国人が107人なのに対して、アルジェリア人は685人にもなって
います。
しかしながら一方、
外国人の人質が37人殺害されたのに対し、アルジェリア人の人質が
殺害されたという報道は、見たことがありません。
とくに日本人の場合は、現地に駐在していた17人のうち、半数以上の
10人もが犠牲になっているのです。
以上のことを表にまとめると、次のようになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
解放された人数 死亡した人数
アルジェリア人 685人 0人
外国人(日本人を含む) 107人 37人
日本人 7人 10人
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このように比較してみると、「アルジェリア人質事件」の不可解さが、
如実(にょじつ)に伝わってきます。
上は1つの例ですが、その他にも「アルジェリア人質事件」については、
日本人である私から見て、理解に苦しむことがたくさんあります。
次回では、
この「アルジェリア人質事件」についての、さまざまな疑問もふくめて、
私が思ったことや感じたことを、お話してみたいと思います。
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