COP18で思ったこと
                           2012年12月16日 寺岡克哉


 今日行なわれた衆議院選挙で、自民党が大勝しました。

 原発問題やTPP、尖閣問題、対中国外交、地球温暖化対策などが、

 この先どのようになって行くのか、とても心配なところです。



 さて、今回は、

 このたびのCOP18(気候変動枠組み条約 第18回締約国会議)
を見てきて、

 私の思ったことや、考えたことを、お話したいと思います。


               * * * * *


 COP18で、まず第一に思ったことは、

 もはや中国を、「発展途上国扱い」にするべきではないということ
です。

 なぜなら、すでに日本を抜いて、中国は世界第2位の「経済大国」
なっているからです。



 事実確認のため、各国におけるGDP(国内総生産)の最新データを、
ここで紹介しましょう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          各国のGDP(2011年)

 アメリカ  15兆 756億7500万ドル
 中国     7兆2980億9700万ドル
 日本     5兆8685億7100万ドル
 ドイツ    3兆5687億7900万ドル
 フランス   2兆7738億1600万ドル
 ブラジル   2兆4766億5100万ドル
 イギリス   2兆4291億8400万ドル
 イタリア   2兆1975億3400万ドル
 インド    1兆8975億1600万ドル
 ロシア    1兆8951億1900万ドル

 (出典:国際貿易投資研究所 国際比較統計)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 上のデータを見ると、中国のGDPは、たしかに日本よりも大きくなって
おり、中国が世界第2位の「経済大国」であるのは間違いありません。



 しかし、それなのに、

 中国政府代表の蘇偉・副団長(閣僚級)は、COP18を開催していた
カタールでの、マスコミのインタビューにたいし、

 「2020年以降の国際枠組みの議論でも、公平性と”共通だが差異
ある責任”の原則は必要だ」と述べて、

 中国は「途上国の一員」であることを強調していたのです。



 世界第2位の経済大国である中国にたいして、もうそろろそ、そのよう
な「途上国扱い」は、やめた方が良いと思います。

 つまり国際社会が、「中国は先進国の一員である」と認めることに
よって、

 中国にも、先進国なみの責任と義務を、負ってもらうべきだと思うの
です。


               * * * * *


 ところで、COP18で行なわれた報告によると、

 途上国への温暖化対策支援で、先進国が2010年〜2012年に拠出
した資金の額が、
 2012年10月末の時点で、合計336億ドル(およそ2兆7000億円)
に達しており、当初計画していた300億ドルを上回ったとしています。

 このうち、日本は133億ドルと約4割を占めて最多であり、EUの
92億ドル、アメリカの75億ドル、ノルウェーの19億ドル、カナダの10億
ドルと続いています。

 とくに日本の場合は、民間資金を合わせた「鳩山イニシャチブ」として
の支援額が、174億ドル(およそ1兆4000億円)にも上っています。



 しかしなぜ、日本が4割も負担しなければ、ならないのでしょう?

 ごく普通に考えたら、まず大原則として特別な理由が無いかぎり、
支援額の割合は「GDP比」にするべきではないでしょうか。

 つまり途上国への支援額の大きさは、それぞれ先進国の経済規模に
合ったものに、するべきだと思うわけです。

 だからアメリカやEUの支援額が、日本よりも少ないというのは、どうに
も解せません。



 さらには、中国が「発展途上国扱い」になっているために、

 世界第2位の経済大国であるにもかかわらず、支援金を出していませ
んが、これも非常に理解しかねます。

 やはり中国は、もう「途上国扱い」にするのを止めて、「先進国」として
の支援義務を負ってもらうべきでしょう。


               * * * * *


 ところで以下は、各国における二酸化炭素排出量の、最新データ
です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        各国の二酸化炭素排出量(2011年)

 中国        98億6000万トン
 アメリカ      54億4000万トン
 EU         37億4000万トン
 インド       20億4000万トン
 ロシア       17億トン
 日本        13億6000万トン


(出典:2012年7月18日 欧州委員会共同研究センター発表)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 上のデータを見ると、

 いまや中国の二酸化炭素排出量は、アメリカの1.8倍にもなって
いることが分かります。
(986000/544000=1.81)

 中国の排出量が、アメリカを抜いて世界1位になったのは2007年で
すが、

 その後、アメリカの排出量は、だいたい横ばいから、若干減少したの
に対して、

 中国の二酸化炭素排出量は、「破滅的な増加」をしているのです!



 おそらく、中国の2007年〜2011年までの「増加分」だけで、日本の
排出量の3倍程度になっているでしょう。

 つまり、もしも日本の排出量が「ゼロ」にできたとしても、中国のたった
数年の「増加分」だけで、それがキャンセルされてしまうわけです。

 もちろん日本も、排出削減の努力をしなければならないのは当然で
すが、

 しかし、もはや世界にとって、いちばん大きな問題は、中国の排出量
の「破滅的な増加」を、いかに食い止めるかです。

 このままでは、地球に引導を渡す(地球を破滅させる)のが、「中国」に
なってしまうのは確実でしょう。


              * * * * *


 ところが、COP18のスピーチで、中国政府代表の解振華・副主任は、

 今年の1月〜9月までのGDPに対する中国国内のエネルギー消費量
が、前年の同じ時期にくらべて3.4%減ったとして、

 中国で実施されている温暖化対策の、成果を強調しているのです。



 しかし本サイトでも、GDPと二酸化炭素排出量の最新データを紹介し
ましたので、ちょっと計算して、日本と中国の状況を比べてみましょう。

 そうすると、以下のようになります。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     排出量(万トン)  GDP(万ドル)   排出量/GDP(キロ/ドル)

 中国  986000     729809700       1.35

 日本  136000     586857100       0.23
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 上の表を見ると、

 日本は1ドルを稼ぐために、0.23キログラムの二酸化炭素を出すの
に対して、

 中国は1ドルを稼ぐために、1.35キログラムもの二酸化炭素を出して
いるのが分かります。

 つまり「同じ1ドル」を稼ぐのに、中国は日本の、およそ6倍もの二酸化
炭素を出しているわけです。(1.35/0.23=5.87)



 逆に言うと、中国が日本と同じような「低炭素技術」を導入すれば、

 (つまり省エネや、エネルギー利用の効率化、石炭エネルギーから
の脱却など、二酸化炭素の排出を減らす技術を導入すれば)、

 中国の排出量が、現在のおよそ6分の1にまで削減できるわけ
です。




 なので、

 まず中国は、日本と同じような「低炭素技術」を、早急に大々的
に導入するべきです!


 そのためにも国際社会は、中国を「途上国扱い」にして、いつまでも
甘やかすのではなく、

 中国に対しては、先進国としての責任と義務を負ってもらうことにより、

 少なくても日本レベルの低炭素社会を、一刻も早く実現させなければ
ならないのです。


               * * * * *


 このたびのCOP18で、日本は国際社会から、少なからず非難の目
で見られました。

 というのは、京都議定書の第2約束期間に参加しなかったり、

 「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減」という
国際公約に、言及しなかったからです。



 たしかに日本にとって、それらは大きな問題でしょう。

 しかしそれより、もっともっと大きな問題は、中国の二酸化炭素排出
量の「破滅的な増加」
なのです。

 国際社会が、この問題をすごく深刻に捉えているのは、まず間違い
ないと思いますが、

 しかしCOP18では、「中国の破滅的な排出量増加」に対する言及が、
まったく無かったように思えてなりませんでした。



      目次へ        トップページへ