今世紀末までに4℃上昇! 
                          2012年11月25日 寺岡克哉


 11月18日。

 世界銀行(※注1)が、地球温暖化による被害を分析した報告書を
発表しました。

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(※注1)

 世界銀行とは、国連の専門機関の1つであり、国際復興開発銀行
(IBRD)と国際開発協会(IDA)を合わせて、「世界銀行」と呼びます。

 世界銀行は、各国の中央政府や、または同政府から債務保証を
受けた機関に対して、融資を行います。

 おもな目的は、加盟国の戦災などからの復興や、発展途上国の
開発であり、融資の他に技術協力なども行っています。
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 その報告書によると、

 各国が現在約束している地球温暖化対策を実行したとしても、
世界の平均気温は21世紀末までに、18世紀後半の産業革命
前に比べて4度上昇するとしています(※注2)。


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(※注2)

 11月19日付けの時事通信では、このように(上の太字のように)
報道していますが、

 報告書の原文 「TURN DOWN THE HEAT: WHY A 4℃ 
WARMER WORLD MUST BE AVOIDED」 によると、

 上の報道記事に該当すると思われる箇所(Executive Summary
の最初のページ)には、以下のように記述されています。

 Without further commitments and action to reduce
greenhouse gas emissions, the world is likely to warm
by more then 3℃ above the preindustrial climate.
 Even with the current mitigation commitmetns and
pledges fully implemented, there is roughly a 20 per
-cent likelihood of exceeding 4℃ by 2100.
 If they are not met, a warming of 4℃ could occur as
early as the 2060s.



 英語はすごく苦手ですが、私なりに上の文を訳してみると、だいたい
以下のようになると思います。

 「(各国が)温室効果ガスの排出を削減するために、さらなる対策の
強化をしなければ、世界の平均気温は、産業革命前よりも3℃以上
高くなりそうだ。」

 「(各国が)現在約束している温暖化対策を、完全に実行したとして
も、2100年までに4℃を超える可能性がおよそ20%ある。」

 「もしも(各国が温暖化対策に)応じなければ、2060年代にも4℃
の気温上昇が起こり得るだろう。」
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              * * * * *


 さて、

 上の(※注2)のように、報告書の原文を見みると、

 今世紀末までに、産業革命前にくらべて4℃の気温上昇が
起こるのは、

 20%の可能性であることが分かりました。



 しかしながら、このように言うと、

 「20%の可能性なんて、低い確率じゃないか」

 「そんなに心配する必要はない」

 と、思う人がいるかも知れません。



 ところが、この20%という確率は、けっして小さくない値です。

 例えば、もしもこれが、

 福島クラスの「原発事故」が起こる確率だったなら、

 あるいは、心臓の手術などが失敗したり、不慮の事故などで
死亡する確率だったら、

 かなり深刻な値だと思います。



 しかも、各国が現在約束している温暖化対策を、完全に実行した
としても、この20%という値なのです。

 たとえば日本は、2020年までに温室効果ガスの排出を、1990年
にくらべて25%削減すると約束していますが、

 それを明記した「地球温暖化対策法案」が、衆議院の解散にともな
い、11月16日に「廃案」となってしまいました。

 だから日本は、温暖化対策の約束を完全に実行できるかどうか、
とても怪しい状況になっています。



 さらには、「エッセイ558」でお話しましたように、

 中国における温室効果ガスの排出量が、「破滅的に増加している」
ことも考えると、

 今世紀末までに、4℃の気温上昇が起こる可能性が20%という
のは、

 ものすごく楽観的な予測ではないかと、私には思えてなりません。


              * * * * *


 ところで、4℃の気温上昇が起こると・・・ 


 世界銀行の報告書では、

 海面が0.5メートル〜1メートル上昇し、

 発展途上国では、水害や干ばつ、食料不足などの深刻な影響が
現れ、

 夏季には多くの地域で、数百年に1度の規模の熱波が、頻繁に
起こるようになると、警告しています。



 また、本サイトの「エッセイ346」では、

 産業革命前にくらべて、4.6℃の気温上昇が起こった場合につい
て考察していますが、

 以下に、その結論の部分を抜粋してみます。

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          エッセイ346の結論部分の抜粋

 以上、あまり具体的なことは詳しく分かりませんでしたが、(産業革命
前にくらべて)4.6℃の気温上昇で一体どうなるのかを、とても大ざっぱ
に見てきました。

 その結果、だいたい間違いなさそうなことは、

 地球規模での重大な絶滅がおこり始め、
 アマゾンの生態系は壊滅し、
 毎年、何百万人もの人々が洪水に襲われ、
 31億人以上の人々が、水不足の危険にさらされ、
 世界的な食糧不足がおこり、
 患者の増加によって医療機関がマヒし、
 最終的には海面が12メートル上昇して、海沿いにある世界中の主要
都市が、ことごとく水没してしまうでしょう。

 具体的な死者数や経済損失は、ちょっと分かりませんでしたが、しかし
例えば第二次世界大戦などは、はるかに超える被害になるのは確実で
しょう。

 まさに、目を覆いたくなるほどの被害です!
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 「エッセイ346」では、4.6℃の気温上昇について、考察を行ったの
ですが、

 4℃の気温上昇でも、これに準じるほどの、大きな被害になると思わ
れます。

 なので、

 「現在の温暖化対策が完全に実行されたとしても、20%の確率で
4℃の気温上昇が起こる」というのは、

 もしもこれが、「福島クラスの”原発事故”が起こる確率だったなら」
と、例えてみたのと同じように、

 けっして小さな確率ではなく、ものすごく深刻な値だと言えるのです。


              * * * * *


 このたびの報告書で世界銀行は、

 「温暖化対策を一段と強化する必要がある」と警告していますが、

 私も、まさにその通りだと思います。



 また、世界銀行のキム総裁は、

 「世界銀行の重要な役割は化石燃料から再生可能エネルギーに移る
よう積極的に後押しすることだ」と強調していますが、

 私も、「再生可能エネルギーの大々的な普及」が、ものすごく重要だと
思っています。



 とくに日本は、「福島第1原発の事故」が起こったことにより、

 もはや「原子力」は、主要なエネルギー源として使うことができま
せん!


 そのため、「再生可能エネルギーの大々的な普及」が、

 ますます重要で早急な課題となっているのです。



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