野田首相へ批判爆発!
2012年7月1日 寺岡克哉
6月26日。衆議院の本会議で、消費税の増税法案が可決されました。
これで野田首相は、「原発の再稼動」と「消費税の増税」の、両方を強行
したことになります。
そのため野田首相への批判が、爆発的に広がっているように、私には
感じられます。
* * * * *
前回でレポートしましたが、 6月22日に首相官邸前で、「再稼動の
撤回」を政府に求めて、
およそ4万5000人もの人々が参加した、大規模なデモがありました。
そして6月24日には、野田首相の地元である千葉県の船橋市で、およ
そ2200人が参加したデモがありました。
集会では、作家の雨宮処凛さんが、「黙っていることが安全神話を守っ
てしまいました。いま、声を上げることが大切です」と話しました。
また、翻訳家の池田香代子さんは、「再稼動なんてとんでもありません。
みなさん、共にがんばりましょう」と呼びかけました。
小学3年生の長女と参加した39歳の女性は、「地元の有権者として
反対の意思を表したかった。エネルギー政策を争点に選挙をやってほし
い。みんなで歩いて集団の力を感じました。私たちは少数派ではないと
勇気づけられました」と話しています。
船橋市にある、うたごえライブハウスの59歳のスタッフは、「うたごえ
は、平和を守る、人を大切にする、弱いものを大切にするというポリシー
でやっています。野田首相は国民に顔を向けていない」と、憤(いきどお)
りました。
東京都杉並区の女性は、「デモや官邸前の抗議行動をしてきたの
に再稼動が決まってしまった。もっと他の地域も巻き込んで拡げたい」
と語っています。
ところで、
これら最近に起こっている一連のデモは、参加する人員を、とくに動員
したわけではありません。
ツイッターなどの呼びかけで、ゆるやかな個人のつながりであるにも
かかわらず、大規模なデモが実現されています。
この現象について、翻訳家の池田香代子さんは、「若い人たちの思い
つきはすごい。脱帽する」と話したうえで、
旧来の動員型のデモと違いが出る理由を、「いわゆる左翼の人たち
は論理で原発に反対してきたけれど、今は一人一人が存在をかけて
”もういやだ”と感情を吐露している」と分析しています。
同じく6月24日。大阪市で、150人が参加したデモがありました。
デモを呼びかけたのは22歳の若者で、「国民の声を無視する野田
内閣に退陣してもらいたい。若い人たちの思いをつなげる場にしたい」
と、ネットなどで参加を呼びかけたところ、大阪府内だけでなく、近畿
各地から人が集まったといいます。
飛び入りの市民や、落語家の笑福亭竹林さんも参加し、「原発いら
ない」「大地を汚すな」「再稼動やめて」などと唱和し、沿道の人々の
目を引きました。
23歳の男性は、「将来のことを考えると再稼動はしてほしくない」と
思ってデモに参加したといい、
友人に誘われてデモに参加した27歳の女性は、「原発に未来は
ありません」と話しました。
* * * * *
6月25日。 野田首相は、衆院の消費増税関連特別委員会で、
「毎週金曜日、官邸周辺ではデモが行われ、シュプレヒコールもよく
聞こえている」と述べました。
これは、社民党の安部知子氏らが、「国民に不安や怒りが渦巻いて
いる」と、ただしたのに対して答えたものです。
抗議デモの動きは、どんどん広がっており、
野田首相は、「先週末もあった。私の地元、船橋市でもある」と指摘
しました。
その上で、「国民が昨年の原発事故を踏まえて大変複雑な思いを
持っていることは十分承知している」と語っています。
ところが、それなのに野田首相は、
「国論を二分するテーマでも、判断するのが政府の役割だ。折にふれ
説明していきたい」と述べて、
あくまでも、国民に理解を求めて行く考えを示したのです。
前回のレポートでも指摘しましたが、やはり野田首相は、
市民による「再稼動反対」の大きな声が聞こえていても、
そして国会内で、議員から、ただされても、
誰が何を言っても、「再稼動の撤回」については、まったく聞く耳を持た
ないのだと、私は確信しました。
* * * * *
6月26日。
衆議院の本会議で、「消費税増税法案」が賛成多数で可決されま
した。
しかしながら採決では、民主党の小沢元代表の議員グループを中心
に57人が反対票を投じ、
欠席や棄権をふくめると、70人を超す「大量造反」が、民主党内
からでました。
また、6月5日に野田首相へ提出した、原発再稼動に反対する民主党
議員の署名が122人であったことも合わせると、
「原発の再稼動」と「消費税の増税」を強行した、野田首相を批判する
民主党内の国会議員は、
(とうぜん重複はあると思いますが)かなりの数に上るのではないかと
思われます。
* * * * *
そして6月29日。
首相官邸の周辺において、ものすごく大規模なデモがありました。
官邸前から、霞ヶ関の官庁街まで、1キロ近くにわたって人々が路上
にあふれ、
参加者の数は、主催者側によると20万人と発表されており、警察庁
は2万人弱としています。
デモは午後6時から始まり、参加者がマイクで「名誉ある撤回を」
「国民の声を聞け」などなど、次々と声を張り上げました。
東京都足立区の36歳の主婦は、7歳の長男と、3歳の次男を連れて
初めてデモに参加しました。
「政府は私たちの生活をまったく考えていない。これまで黙って見ていた
が、我慢の限界に達した」と話し、
「私たちは、選挙かデモでしか訴えられない。自分たちの気持ちを伝え
ていくうえで、結局、数にまさるものはない」と力を込めました。
2歳の男児を抱いて、子育て仲間と参加した、東京都杉並区の34歳
の主婦は、
「いま声をあげなかったら、子どもから『なんでお母さんとお父さんは
私たちの未来を守ってくれなかったの?』と言われるかもしれない」と
話しました。
埼玉県蓮田市の38歳の会社員は、勤務先からスーツ姿で初めて
参加し、
「集会やデモに出たことはないが、もう無関心ではいられない。政治色
もなさそうなので抵抗感はなかった」と言います。
6〜15歳の子供3人と、初参加した44歳の女性は、
「平和的に抗議しているとネットで知り、子供を連れて来た。参加者は
『普通に生きたい、家庭を守りたい』という思いだけ。私も一緒です」と
話しました。
東京都練馬区の31歳の主婦は、9ヶ月の赤ちゃんを抱いて初めて
参加し、
「原発事故などが起きて子どもに何かあってはいけないと思い、来た。
安心して暮らせるようなエネルギー政策を国民みんなで考える社会に
なるべきだ」と話しました。
このたびの大規模なデモは、中高年から、子ども連れまで、実にさま
ざまな年齢層の人々が参加しています。
主催者側によると、従来のデモや集会のような雰囲気を一掃し、誰でも
参加できる器づくりに徹しているといいます。
デモが行われる場所の中に、「ファミリーエリア」と呼ばれる一角が設け
られており、ここに集まるのが、子連れの主婦や、お年寄りたちです。
ファミリーエリアの参加者は、「孫を連れているのは珍しかったが、先週
から増えた」と話しています。
午後6時に始まったデモでしたが、午後7時には、参加者が歩道から
あふれ出しました。
警察車両も出動したので、午後8時までの予定だったデモは、同7時
45分に打ち切られました。
主催者はマイクを握り、興奮が冷めない参加者にたいして、「ここで
事故が起きても原発は止まらない。冷静に判断して岐路について」と
促しました。
* * * * *
・・・ところで野田首相は、
デモが行われている真っ最中の午後7時前に、首相官邸から、隣接
する首相公邸に戻りました。
構内にも響いている「再稼動反対」のかけ声を、野田首相は歩きなが
ら聞き、
「大きな音だね」 と、警護の警官に話しかけたといいます。
* * * * *
以上、
いま現在、爆発的に広がっている、野田首相への批判について
見てきました。
それにしても・・・
デモに参加した「人々の声」にたいして、
「大きな音だね」とは、いったい何たる言いぐさでしょう。
野田首相は、再稼動に反対する国民の大きな声を、
「人の声」ではなく、もはや「単なる音」としか、認識していないという
ことでしょうか。
ところで、すこし過去を振り返ってみると、大飯原発の再稼動を正式
決定した6月16日。
野田首相は、記者会見を開くなどして、国民に直接説明することは
ありませんでした。
会見を見送った理由について、首相の周辺筋によると、「6月8日の
会見で説明は尽くしているので、必要ない」としています。
このことも考え合わせると、
野田首相は、言葉巧みな「弁論術」には長(た)けていますが、
国民への接し方や、国民に対する考え方、つまり彼の本性や本音が、
如実(にょじつ)に透けて見えるのです。
私は思うのですが・・・
「原発の再稼動」と「消費税の増税」を、あくまでも強行する野田首相は、
もともと「本来の民主党」として、まったく似つかわしくありません。
どうして、このような人物が民主党に存在し、さらには首相として選出
されたのか、ものすごく理解に苦しみます。
つぎの総選挙が行われたら、おそらく民主党は、「支持率の低下」や
「党の分裂」によって、いちじるしく議席を減らしてしまうことでしょう。
もしかしたら野田首相は、
自民党や経団連、あるいは経済産業省などから、民主党に壊滅的な
ダメージを与えるために送り込まれていた、
「刺客」あるいは「トロイの木馬」だったのでは、ないでしょうか。
近ごろ野田首相には、そんなことまで妄想(もうそう)したくなるほどの、
大きな矛盾や疑惑を感じています。
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