再稼動に批判噴出!
                              2012年6月24日 寺岡克哉


 大飯原発3・4号機の再稼動にたいして、

 市民団体、各政党(や国会議員)、地方自治体の首長などから、

 批判が噴出しています。


 今回は、それらについて、現在までの状況を纏(まと)めておきたい
と思います。


              * * * * *


 市民団体など


 おそらく、全国各地の反原発市民団体から、再稼動にたいして批判
の声が噴出していることでしょう。
 しかしながら、それら全てについて網羅することは出来ませんでので、
福井県内の市民団体や、とくに目立った市民活動などについてのみ挙げ
ると、およそ以下のようになります。


 「原発設置反対小浜市民の会」の中さんは、「知事や首長の判断は
決して若狭の住民や県民、国民の方には向いていない。原子力ムラの
勢力の顔色をうかがった決定だ」と怒りをあらわにしました。
 多くの福島県民が今も避難生活を余儀なくされている現実を指摘し、
原発事故は決して収束していないことを強調して、「原子力政策を推進
してきた国や原子力ムラの面々は、喪に服さなければならない。再稼動
をうんぬんする資格はない」と訴えています。


 「脱原発グループ若狭連帯行動ネットワーク」の松下さんは、防波堤の
かさ上げや、免震事務棟の設置などが未実施となっている点を挙げて、
「国は福島と同じ事故を起こさないとしているが、効果的と思える対策さえ
なされていない。安全性を無視しており、不安はぬぐい去れない」と強く
批判しました。


 「原発反対県民議会」の吉村代表委員は、「先に運転再開ありの方針。
(安全対策は)みんな先送りだ」と指摘しました。


 「原発を考える県女性議員の会」の代表世話人、今大地敦賀市議は、
「国と県と電力会社による三位一体の推進だ」と語りました。
 今大地市議は、原子力防災計画が未整備のままの同意に、「何か
あったときにどこへ逃げるのか。知事は京都や滋賀などと協議すらして
いない」と憤っています。
 県議にたいしても、「知事に一任とは情けない。傍聴もさせないような
議会は県民をバカにしている」と切り捨てました。


 「サヨナラ原発福井ネットワーク」の山崎代表は、「国民の意思を無視
して国、県、県会は恥知らずなことをやっている」と述べました。
 山崎代表は、報道機関の世論調査で再稼動反対が5割を超えている
として、「民意が反映されないことに政治の問題の根幹がある」と指摘し、
「民意を反映する政治システムを作らないこの国は、ゆがんだまま進ん
でいく。この国の政治のありようが問われている」と話しています。



 6月17日。福井市の中央公園で、再稼動に抗議する集会が開かれま
した。主催した福井県の市民団体によると、参加者はおよそ2200人と
なっています。
 ルポライターの鎌田さんが、「再稼動には正当性も合理性もない。
われわれが頑張れば脱原発は進められる」と挨拶(あいさつ)し、
 福井県だけでなく、関西や九州などから訪れた約80グループの代表ら
がマイクの握りました。
 その後、参加者たちは福井県庁の周囲を行進し、「再稼動を撤回しろ」
などとシュプレヒコールを上げました。



 6月18日。日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は、再稼動決定に反対する
声明を出しました。
 野田首相の再稼動の決断を、「根拠のない”原発安全神話”を蒸し返す
ことでしかない」などと批判し、
 今やるべきは、脱原発の「行程表を具体的に明らかにする」ことだなど
として、再稼動の判断を撤回することを求めています。



 同6月18日。京都弁護士会(吉川会長)は、「(再稼動は)容認できる
ものではない」とする会長声明を発表しました。
 声明では、福島第1原発事故の調査が完了しておらず、「原因が解明
されていない」と指摘しています。
 安全対策についても、「免震棟の建設や、フィルター設置などの対策が
なされていない」、「安全設計審査指針が2001年以来改定されていない」
などとして、「万全の対策がなされているとは認められない」と批判してい
ます。



 そして6月22日。

 東京・永田町の首相官邸前で、再稼動撤回を政府に求める抗議行動
がありました。

 参加した人々の数は、主催者側によると約4万5000人、警視庁に
よると約1万1000人となっています。

 周辺の道路を埋め尽くした人々が、「原発を許すな!」「再稼動反対!」
「大飯を止めろ!」「再稼動決定は許せない!」などなど、およそ2時間に
わたって声を上げました。


 俳優の山本太郎さんは、「この声が聞こえないなら、(首相は)即刻退場
すべきだ」と述べ、

 作家の落合恵子さんは、「私たちは一歩も後ろに引かない。これほど
市民を裏切る人々を許さない」と、野田政権を批判しました。

 また、ルポライターの鎌田さんは、「原発がなくても日本社会は混乱し
ない」と強調しました。


 抗議行動に一般参加した人々からも、

 「政府の判断は非常に愚か。エネルギー問題を次世代にまで背負わせ
てはいけない。いま私たちが止めなければならない。」

 「フェイスブックで今日の活動を知った。核廃棄物の処理方法も決まって
いないのに、再稼動するなんてあきれてしまう。黙っていては、いけないと
思った。」

 「声を上げないと、賛成したのと同じになってしまう。再稼動を認めると、
なし崩し的に他でも始まるのでは。」

 などなどの声が聞かれました。


 この抗議行動は、複数の市民グループ有志でつくる「首都圏反原発連合」
が、ツイッターなどで呼びかけをして行われました
 3月に始めた当初は300人程度でしたが、回数を重ねるごとに参加者
が増え、この日(6月22日)に集まった人々の列は、およそ700メートル
にも達したといいます。


              * * * * *


 各政党(や国会議員)


 自民党の石原幹事長は、「新しい(原子力規制)組織の下、これで安全
だと政府が例外なく言えるような状況になって、地域の方々がそれで結構
だというのがあるべき姿だ」と述べて、再稼動は時期尚早だとの考えを
示しました。

 また、自民党の町村元外相は、「専門家がつくった安全基準にのっとり、
政府が最終的に判断する手順を踏めばこんな混乱はなかった」と指摘して
います。


 公明党の山口代表は、「政府の判断は、電力の安定供給確保に傾き、
安全確保を軽視した部分があり遺憾だ」と指摘しました。
 そして、「なし崩し的に安易に、他の原発の再稼動につなげることは
避けるべきだ」と、くぎを刺しました。


 みんなの党の渡辺代表は、「役人と電力会社に引きずられ政治判断し
た」とコメントし、
 「消費増税、原発再稼動の前にやるべきことをやらない、野田佳彦
首相に対する問責決議案を提出する」と強調しました。


 共産党の志位委員長は、「国民の命と安全を守る立場に立つなら、
ぜったいに(原発再稼動を)やってはならない。国民の多数は再稼動に
反対だ。決定の撤回を求める」と訴えました。


 社民党の福島党首は、「安全性が担保されていないのになぜ大慌て
で動かすのか。野田内閣は国民の命と生活を破壊する無責任内閣だ。
暴挙であり、強く抗議する」と批判しました。


 民主党の平智之衆院議員は6月18日。再稼動に抗議し、執行部に
離党届を提出したことを明らかにしました。当面は無所属で活動すると
しています。
 平衆院議員は、「16日に政府で再稼動の決定がなされた時点で離党
を決意した」と説明するとともに、
 再稼動については、「新しい文明の転換点に対峙(たいじ)する国民の
行動権を剥奪する愚行」と批判しています。


              * * * * *


 関西広域連合の首長


 大阪市の橋下市長は、「停電による人命リスクもあった中、再稼動は
関西にとって助かった面もある。おおい町、福井の皆さんには感謝しな
いといけない」と、立地自治体への謝意を示しました。
 しかしながら、その一方で、「暫定的な安全判断だから、限定稼動が
当たり前。経済とか電力コストの話をして限定稼動を否定する政府の
説明は一貫していない」と述べて、再稼動は電力不足が懸念される夏季
に限定するべきだとの考えを、あらためて強調しました。


 大阪府の松井知事は、「安全基準が暫定的である以上、稼動は限定
的にするのが道筋。電力が足りる時期になれば止めるべきだ」と語り
ました。
 再稼動を正式決定した野田政権については、「国民の目線になって
いるとは全然思えない。結局は電力会社と経済産業省が利益を得るだけ
ではないか」と批判しています。
 また、「今の安全基準では国民に不安が残る。原子力規制委員会を
早急に立ち上げて、しっかりと検討してほしい」と語りました。


 滋賀県の嘉田知事は、「確実な監視体制を強化するなど、県民の不安
が少しでも緩和されるよう十分な配慮を国にお願いしたい」とコメントしま
した。
 そして、大飯原発の緊急対策拠点である「オフサイトセンター」に、京都
府とともに職員を派遣する考えを明らかにしました。


 京都府の山田知事は、「新たな規制機関のもとで速やかに安全基準を
策定し、安全性の向上に全力を挙げていただきたい。また、原発のあり
方について国民的な理解を得るためにも、脱原発依存に向けた中長期
的なエネルギー対策の道筋を、早急に明らかにしていただきたい」との
談話を出しました。
 また京都府は、大飯原発のオフサイトセンターに、職員1人を派遣した
と発表しました。


              * * * * *


 その他の首長


 福島県の佐藤知事は、「東京電力福島第1原発事故の検証さえ終わ
らず、原子力安全規制体制も確立していない中での再稼動決定は非常
に残念」と話しました。

 また、被災県の立場として再三にわたり、政府や東電に要請している
県内全原発10基の廃炉については、「一刻も早い事故の収束と全基
廃炉を引きつづき求めていく」と述べています。



 2007年の新潟県中越沖地震で、火災が発生した柏崎刈羽原発を
かかえる、新潟県の泉田知事は、
 「福島第1原発事故の検証も進行中で、事故原因が特定されなけれ
ば、対策を講じることができないのは自明の理」としたうえで、
 「このような状況下で、安全性を確認した(という)前提で、手続きが
進められたことは誠に遺憾」とコメントしています。
 そして、「事故が起きた場合、ふたたび混乱する恐れが極めて高く、
”新たな安全神話の創造”にほかならない」と断言しました。


 新潟県柏崎市の会田市長は談話で、「関電管内の電力不足を懸念
しての”時間切れ判断”だ」と批判しました。


 新潟市の篠田市長は、「(福島第1原発事故の)総括がなされない中で
原発再起動は考えられないと言ってきたが、大飯原発再起動の判断が
なされたのは残念。多くの国民の理解は得られないと思う」とする談話を
発表しました。



 1999年に、ウランを加工する工場で「臨界事故」が起こった、茨城県
東海村の村上村長は、
 「国民の原発の安全性に対する深刻な懸念を無視した、そのずさんな
判断に抗議する」とのコメントを出しました。

 村上村長は、野田政権が「脱原発依存」を掲げながら、原発停止や
廃炉の行程表がつくれないまま、再稼動を進めていることに対して、
 「”安全神話”から政府も原子力界も、一歩も抜け出していないことの
証左だ。ご都合主義で考える国では、原発事故から国民の生活は守ら
れない」と、きびしく批判しています。

 さらに村上村長は、政府に廃炉を提案している、東海第2原発の再稼
動に対しても、「認めるわけにはいかない」と述べています。



 6月17日。全国35都道府県の市区町村長ら73人でつくる「脱原発
をめざす首長会議」が、大飯原発の再稼動決定に抗議する声明文を
発表しました。

 記者会見では、まず、同首長会議の事務局長をつとめる東京都国立
市の上原元市長が抗議文を読み上げ、
 原発の新たな規制組織が発足する前に、暫定的な安全基準をもとに
再稼動を決めるのは、安全性を無視しているなどとした上で、
 「決定は誠に遺憾だ」として、再稼動に抗議する考えを明らかにしま
した。

 また、同首長会議の世話人で、茨城県東海村の村上村長は、「運転
再開は、不十分なストレステストや、原発の立地自治体だけの同意を
前提とした、でたらめでいい加減なプロセスで進められてきた。決定には
失望と憤りを覚えるとともに、改めて地元の東海第2原発を廃炉にする
という決意を新たにした」と述べました。

 同じく世話人をつとめる、静岡県湖西市の三上市長は、「再稼動は、
新しい原子力規制組織が判断するべきだ」としたうえで、
 「事故の補償を明らかにするため、万一に備える保険に入らなければ
再稼動は認められない」と主張しています。


               * * * * *


 市議会


 6月20日。福島県の合津若松市議会は、定例議会の本会議で、関西
電力大飯原発3・4号機の再稼動に反対する決議案を、賛成多数で可決
しました。

 この決議では、「再稼動の前に、福島第1原発事故の徹底した総括が
不可欠」であり、
 「暫定的な新安全基準は、政府主導で決められた不十分なもの」など
としています。



 6月21日。茨城県の取手市議会は、再稼動方針を撤回して「原発ゼロ
の日本」をめざすことを政府に求める意見書案を、賛成多数で可決しま
した。

 この意見書は、共産党の議員によって提出されたものですが、同議員
は、「福島第1原発事故の原因究明はいまだなされず、大飯原発は安全
対策が確立していない。安全神話こそが、事故を引き起こした最大の
教訓」と、提案理由を説明しています。


              * * * * *


 以上、ここまで見てきましたように、

 市民団体、各政党や国会議員、地方自治体の首長、さらには市議会
などからも、

 原発再稼動にたいする批判が噴出しています。



 とくに6月22日。 「首相官邸前」で行われた抗議行動は、

 べつに反原発の市民団体に所属しているわけではない、ごく一般
市民の参加が増えたことにより、

 4万5000人もの「大規模なデモ」へと発展しました!

 こんなにも、「再稼動反対の声」は、ものすごく大きくなっているの
です!




 しかし私は思うのですが、再稼動の撤回については、

 もはや誰が何を言っても、野田首相は、まったく聞く耳を持たないの
では、ないでしょうか。

 決して、市民による抗議行動を否定するわけではありませんが、

 それほどの「再稼動に対する異常な執念(しゅうねん)」を、私は野田
首相に感じているのです。



 そこで、野田首相に少なからずインパクトを与えることができる、唯一
の方法だと私は考えているのですが、

 民主党の、再稼動に反対する署名をした122人の国会議員。

 自民党や公明党の、再稼動に反対している国会議員。

 みんなの党、共産党、社民党の国会議員。

 そして、無所属であるけれども、再稼動に反対する国会議員。

 これら「超党派議員」の方々に、勇気を出して抗議行動にまで参加した
一般市民の声を汲(く)んでもらうことにより、

 ぜひとも、「超党派による野田首相への問責決議案」を、提出して
頂きたいと望んでいます!




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