原発再稼動が最終決定!
                           2012年6月17日 寺岡克哉


 大飯原発3・4号機の再稼動が、政府により「最終決定」されて
しまいました!


 さまざまな意見や、批判などが噴出していますが、

 まず今回は、再稼動が最終決定されるまでの「経緯」について、

 事実確認(いつ誰が、どんな言動をしたかの確認)を、しておきたい
と思います。


              * * * * *


 6月8日。

 この日、大飯原発の再稼動について行われた野田首相の記者会見
(前回のエッセイ538参照)にたいし、

 立地の県町、関西広域連合、その他の知事から、以下のようなコメント
が出されました。



 福井県の西川知事は、「総理の強い思いを、国民に向けて語っていた
だいた」と評価しました。
 その上で、「安全専門委、おおい町、県議会の意見を聞く」一方、「東京
電力福島第1原発のような事故を絶対に起こさせないとの強い意思で
臨みたい」として、大飯原発を自ら視察して安全対策を点検する考えを
強調しました。

 おおい町の時岡町長は、「原発の必要性と立地の取り組みを明言して
もらった。時間がかかったが、納得できた」と、首相発言を歓迎しました。



 兵庫県の井戸知事(関西広域連合の連合長)は、「安全性の確保を
前提に、国民生活や社会経済の悪影響を考慮し国民にメッセージを出し
たものと考える」とのコメントを出して、首相の判断に理解を示しました。

 京都府の山田知事(関西広域連合の委員)は、「(野田首相は)発電
コストの問題を全面に出して説明したが、電力需給が理由という今まで
の政府の話とは変わっている。唐突な印象だ。政府としてきちんと説明
してほしい。(首相の説明は)十分満足できるものではない」と訴えました。
 また、大飯原発の「特別な監視体制」への(京都府の)参加について、
「監視について権限は持っている。いざとなれば必要な監視は行う」と
述べています。

 滋賀県の嘉田知事(関西広域連合の委員)は、「国民はまだ安全性に
不安なのに、フル稼働と言ったのは釈然としない」と話しました。
 政府の安全基準は「暫定的」と強調し、「生活を守るために夏季限定
でいけない、というのは分からない」と不満を述べました。

 大阪市の橋下市長(関西広域連合の委員)は、「夏季限定の再稼動
でも十分に関西府県民の生活は守ることができる。守れないのは電力
会社の経営だ」として、野田首相が期間限定の稼動を否定したことに
対して、批判をしました。



 岐阜県の古田知事は、「直接国民に率直に語られたことは評価したい。
ただ安全基準を暫定的なものとしつつ結論を急いだ感は否めない」との
コメントを出しました。
 また、安全監視体制について、「東京電力福島第1原発事故の検証を
踏まえた上で、早急に法とルールにのっとって確立していただきたい」と
述べています。

 新潟県の泉田知事は、「安全を軽視した宣言となっており、極めて遺憾
だ」と文書でコメントしました。
 福島第1原発事故の検証が終わっていないことなどを挙げ、「専門家
でもない首相が安全性を確認できるはずもない」と指摘しています。(ちな
みに新潟県には、東京電力柏崎刈羽原発があります。)


              * * * * *


 6月9日。

 大阪府と大阪市による、エネルギー戦略会議(座長・植田和弘京大
教授)は、
 大飯原発の再稼動について、9月までの節電要請期間が終わった後
は、ふたたび原発を停止することなど7項目を、政府や関西電力に求め
る声明文を発表しました。

 声明文によると、大飯原発について「安全性が確認されていない以上、
再稼動は必要最小限の期間にとどめること」を要請し、節電期間終了後
の、即時稼動停止を求めています。

 このほか、現在審議中の新たな原子力規制機関については、「国会
の原発事故調査会による報告書を踏まえたものにすること」と指摘して
います。
 その上で、新たな国際標準の安全基準をつくり、厳格な安全審査を
すべての原発に適用することを求め、規制機関には外国人を含む専門
人材の登用も提案しています。

 また、大飯原発で重大な事故が発生した場合の、放射性物質の拡散
シミュレーションを直ちに実施し、再稼動前に国民に公表するとともに、
原発から100キロ圏内の住民を対象とした避難対策や被曝(ひばく)
防止対策の確立を、政府に訴えています。


 同エネルギー戦略会議の古賀委員は、「安全性が確保できないと、
運転再開は容認できないという考えは変わらない。夏に電力が足りな
くて大変なことになるということで、再稼動の話があった。足りる時期に
なれば止めるのが当然だ」と、記者会見で語りました。



 同日。

 民主党の小沢元代表は、宇都宮で開かれた民主党衆議院議員の
パーティーであいさつし、
 「消費税や原発・放射能の問題が大きなテーマになっているが、最終
的には国民の生活のためでなければ意味がない」と述べて、
 野田首相が、消費税の増税や、大飯原発の再稼動を進めていること
を批判しました。



 同日。

 民主党の鳩山元首相は、大阪市で開かれた民主党衆議院議員の
パーティーであいさつし、
 野田首相が原発再稼動の意向を明らかにしたことについて、「気持ち
は分からないでもないが、反対だ」と表明しました。

 鳩山元首相は、「まだ東京電力福島第1原発事故の原因も全て判明
しているわけではない。しっかりした再検証ができるまで(再稼動は)
待った方が良い」と語っています。


              * * * * *


 6月10日。

 福井県の原子力安全専門委員会は、福井市の県庁で会合を開き、
政府の暫定的な安全基準を妥当と認めたうえで、大飯原発3・4号機
の安全性を確認できたとする「報告書案」をまとめました。

 出席した関西電力の担当者は、大飯原発付近の斜面崩落の危険
性や、制御棒の挿入時間などについて、安全上の問題はない

改めて説明しました。

 経済産業省原子力安全・保安院の担当者も、原発付近の「破砕帯」
は活断層と連動しない
と報告しました。

 県の専門委は、いずれも妥当と判断し、議論を打ち切りました。


 「報告書案」では、政府が4月に策定した再稼動を判断する新基準に
ついて、「事故の進展に従って何重にも歯止めをかける対策となって
いる」と評価しています。

 その上で、「福島第1原発事故を教訓に想定すべき地震・津波が来襲
しても、原子炉の安全を確保するために必要な対策は確保できている
ものと評価できる」と、明記しています。

 しかしながら、事故時の災害拠点となる免震重要棟の建設や、フィ
ルター付きベント(排気)の設置、津波を防ぐ防潮堤の整備など、
 2015年度に先送りした抜本策は、「計画の進み方を確認する」と
触れたのみで、問題視しませんでした。


 一方、今後の安全確保に向けては、国に対して、原子力規制庁の早期
設置や、福島第1原発事故で新たに判明した知見を迅速に安全規制など
に反映させること、などを要望しており、
 災害時における、必要な要員の確保や、資材や機材を搬送するための
道路の整備なども、求めています。


 県の原子力安全専門委員会の、中川委員長(福井大名誉教授)は、
「わたし自身はもっと早く結論が出ると思っていたが、委員によってさま
ざまな考え方があり、それなりの時間がかかった。今は少し安心している」
と述べました。

 その上で、報告書については、「きょう出た意見を反映する必要がある
が、大きな変更はないと考えていて、できるだけ早く福井県に報告したい」
と語り、表現の一部を調整する作業を急ぐ考えを示しました。



 同6月10日。

 野田首相は講演で、大阪府市のエネルギー戦略会議が6月9日に出し
た声明について、

 「1年前の事故の生々しい記憶が残っている中で、国民は複雑な思いを
持っていると思うが、夏場だけの対策ではない」と述べて、

 原発の再稼動を、夏場だけに限定することを、あらためて否定しま
した。



             * * * * *


 6月11日。

 福井県の原子力安全専門委員会は、大飯原発3・4号機の再稼動に
おける安全性を検証した報告書を、西川知事に提出しました。

 西川知事は、「報告書の内容をしっかりと受け止めて、さらに県議会
やおおい町の意見を踏まえ、運転再開を判断したい。私自身も現場で
安全対策の実施状況を見極めたい」と述べました。

 西川知事は翌日の12日に、大飯原発の視察を行う予定で、今週中
にも運転再開を判断するものと見られます。


 おおい町の時岡町長は、「報告書は分量も多く、あす、あさってと2日間、
十分時間をかけて検討したい」と述べて、
 町長としての再稼動の判断は、13日か14日になるとの見通しを明らか
にしました。


 報告書を提出した、原子力安全専門委員会の中川委員長は、「われ
われは、原子炉の安全を科学的・技術的な観点から検証し安全性を確認
した。今後、福井県が大飯原発の運転再開を判断していくうえで、1つの
判断材料を与えたという考え方だ」と述べました。

 その上で、「今後も各委員の意見を聞きながら原発の安全性をさらに
高めるいろんな方策を考えていきたい」と述べました。

 また、委員会で、原子力防災が検証の対象にならなかったことについて
は、「われわれの立場で検証することが本当に適当か考える必要はある
が、原子力防災は重要なので、まずは国がはっきりとした指針を示す必要
がある」と述べ、国にたいして防災指針の策定を急ぐように求めています。



 同日。

 経団連の米倉会長(住友化学会長)は、「野田総理大臣は、政治的な
判断を自分の責任で行うと明言し、そのとおり判断された。冷静に日本の
将来を見据え、経済だけでなく国民生活への影響を考えての判断だ」と
述べて、

 原発の再稼動を速やかに行いたいとする野田首相の判断を、評価する
考えを示しました。



 同日。

 大阪市の橋下市長が、引きつづき「夏季限定」の原発再稼動を求めて
いることについて、

 経団連の米倉会長は、「ああいう発言にはあまりコメントしたくないが」
と前置きしたうえで、
 「経済活動や事業を全然ご存じない方の発言と理解している」と皮肉り
ました。

 また、経済同友会の長谷川代表幹事(武田薬品工業社長)も記者団に
たいし、
 「静観したいが、率直に言って動かしたり止めたりというのは、あまり
現実的でないと感じる」と語っています。


              * * * * *


 6月12日。

 滋賀県の嘉田知事は、定例記者会見で、6月8日に行われた野田首相
の会見について、
 「立地地元の福井に対してだけのメッセージ。(滋賀県は)眼中に入れ
てもらっていない」と述べて、周辺自治体の意向が反映されない政府判断
を改めて批判しました。

 また、「3・11以前の安全神話に戻ったような発言。(参加を提言した)
監視体制で京都、滋賀について何の言及もない」と指摘しました。

 さらに嘉田知事は、野田首相が福島第1原発事故で「記憶」という言葉
を使ったことも取りあげ、
 「記憶は過去に言及する言葉。福島の事故を過去に追いやっている」
と述べました。

 その上で、「京都、滋賀の周辺自治体はもちろん、福島の皆さん、国民
全体へのメッセージになっていない」と批判し、
 今後の国への発言については、「どう動くのが効果的か少し時間がほし
い。眼中に入っていない時に何を言っても取り上げてもらえないので」と
こぼしました。



 同日。

 福井県の西川知事は、大飯原発を視察しました。

 県の原子力安全委員会の中川委員長と、県の職員をふくむ視察団は、
午後1時すぎに現地に到着し、関西電力の豊松副社長(原子力事業
本部長)の出迎えを受けました。

 視察に先立ち、西川知事は、「皆さんが現場でどのように取り組んで
いるのかを直接見て、今後の判断に役立てたい」と、視察の意義を述べ
ました。
 豊松副社長は、「今後も、安全最優先で事業に当たりたい」と述べて
います。


 視察は、地震や津波で交流電源をすべて失った場合に、蒸気発生器
に水を供給する1号機の補助復水タンクの説明から始まりました。

 その後、3号機の原子炉建屋の外に配備された、空冷式の非常用電源
装置の、接続・起動訓練を確認しました。

 そして、福島第1原発事故後に施された、3号機の原子炉建屋の安全
対策を視察し、
 格納容器内にも足を踏み入れて、緊急時に格納容器内部に散水する
装置などを確認しました。


 視察は、およそ3時間にわたって行われました。

 その後、西川知事は、「現場で、津波対策や深刻な事故への対策など
ができているか、時間をかけ、私なりに見せてもらった結果、委員会の
報告どおり、対応はできている」と評価し、

 このたびの視察により、「安全性が確認できた」とする考えを示しました。


              * * * * *


 6月13日。

 民主党原発事故収束対策プロジェクトチーム(PT)は、国会内で集会
を開いて、近く原発再稼動を最終決定する野田首相を、批判する声明を
発表しました。

 この集会には、PT座長の荒井衆議院議員ら、民主党所属の国会議員
35人と、一般参加者の、およそ220人が出席しました。

 野田首相が6月8日の会見で、大飯原発の安全性について「福島と
同規模の地震、津波でも、事故を防止できる」と明言したことに対して、

 このたびの声明では、「福島原発の事故原因が明らかにならない
中で安全宣言を断言するのは”安全神話の復活”だ」
などと批判して
います。
 また、6月5日に首相へ提出した、再稼動に反対する民主党議員の
署名が、5人増えて122人となったことも公表しました。



 同6月13日。

 野田首相は、参議院の予算委員会で、大飯原発の再稼動方針につい
て「安全性のチェックをしっかりやったうえで、現実的な対応をしなければ
いけない」と理解を求めました。

 その上で、「日本経済、国民生活への影響など不足のことが起こって
はいけない。国民生活のもう一つの面も守るのが我々の責任だ」と強調
しました。



 同日。

 福井県議会では、各会派が明日(6月14日)の全員協議会で、西川
知事に意向を伝えるのを前にして、
 最大会派で過半数を占める「自民党県政会」と、第2会派の「民主・
みらい」が、昨日(6月12日)に引き続いてそれぞれが会合を開き、対応
を協議しました。

 「自民党県政会」は、西川知事が県民に十分な説明を行うことなどを
条件に、再稼動の判断を事実上、西川知事に一任する方針を決めました。
 自民党県政会の山本会長は、「私たちが運転再開の是非を判断する
べきでないという意見が多かった。全国で注目されているので、慎重に
判断してもらいたい」と話しています。

 第2会派の「民主・みらい」は、再稼動の是非については統一見解を
まとめず、6月14日には、福井県が取り組むべき防災対策などの課題を
示すとともに、西川知事に慎重な判断と県民への説明を求めることにして
います。
 民主・みらいの野田富久会長は、「地元おおい町の実情や県民の不安
を踏まえ、福井県が取り組むべき課題をきちんと知事に示したうえで、
慎重な判断と速やかな対応を求めたい」と話しました。



 同6月13日。

 経団連の米倉会長は、大阪市内で記者会見し、「安全性が確保された
原子力発電所を地元の理解を得ながら動かすのは当然」と述べ、大飯
原発3・4号機以外についても、順次再稼動すべきとの見解を示しました。

 また、関西電力管内の計画停電については、「原発が再稼動しても電力
不足は続くが、昨年の東京のような節電に取り組めば防げるのではない
か」と述べています。

 野田首相が6月8日に再稼動の意向を表明したことについて米倉会長
は、「賢明な判断」と評価し、「経済性のある電力が安定的に供給されない
と国民生活を守れないばかりでなく産業界も経済活動が続けられない」と
述べました。

 橋下大阪市長ら関西広域連合の一部首長が、「夏季限定」の再稼動を
求めていることについては、
 「発電所の仕組みをよくご存知ない方の発言。人気取りの政治ではなく、
国民生活を考えて経済活動を確保する政治判断をしてほしい」と批判しま
した。
 その上で、 「専門家が安全と判断しているものに不信感を抱かせるよう
な発言の根拠を明らかにするべきだ」と注文をつけました。

 また米倉会長は、再稼動に向けて「地元の首長の判断をきちんと評価
しなければならない」と強調し、西川福井県知事の再稼動同意へ期待を
示しています。


              * * * * *


 6月14日。

 おおい町の時岡町長は、この日の午前に開かれた、おおい町議会
の全員協議会で、
 大飯原発3・4号機に関し、「運転再開について容認することを決定
した」と述べて、再稼動に同意する考えを示しました。

 時岡町長は、再稼動に同意する理由として、
 (1)野田首相が、大飯原発再稼動の必要性を国民に直接説明した
  こと。
 (2)県の原子力安全専門委員会により、安全性が確認されたこと。
 (3)再稼動時に、特別な監視体制が行われること。
 (4)町議会により、再稼動が同意されたこと。
 (5)消費地に対して、電力の供給責任があること。 の5点を挙げて
  います。

 時岡町長は、「同意を判断した背景には国のエネルギー事情がある。
産業活性化などには原子力は一定期間必要だ」と述べて、同日中に、
福井県の西川知事に直接伝えたいとしています。



 同日。

 藤村官房長官は記者会見で、「(おおい)町議会の中で、町長から
再稼動を容認する発言があったと聞いている。様々な批判があるなか
で、判断したことに敬意を表したい。国としては、福井県、おおい町の
理解が得られしだい、4大臣会合で議論をして、最終的な判断をした
い」と述べて、

 立地自治体の同意が得られしだい、野田総理大臣と関係閣僚らに
よる会合を開いて、再稼動を最終決定する考えを示しました。



 同日。

 大阪市の橋下市長は、おおい町の時岡町長が、再稼動に同意する
考えを発表したことについて、
 「非常にありがたい」と感謝の言葉を述べる一方で、「あくまでも暫定
的な安全判断(に基づく再稼動)にすぎない。例外中の例外だ」として、
原発の稼動は、電力不足が懸念される夏場に限るべきだとの認識を、
あらためて示しました。

 また、「(立地自治体に)どれだけ消費地から税や電気料金のお金が
行ったか。正直にそこの認識はもってもらいたい」とした上で、
 「原発立地のメリットもあったはず。供給地、消費地という言い方は
やめないと消費地と溝ができる」と指摘しました。

 橋下市長は、再稼動問題で、福井県やおおい町など立地自治体と、
消費地の自治体の意向が対立しがちだったことを踏まえ、
 「消費地は感謝しているが、そろそろ消費地、供給地という言葉を
使うのはやめて、関西、日本全体で原発問題を考えるべきだ」と述べて
います。



 同日。

 福井県議会は全員協議会で、再稼動の是非をめぐって各会派が、
西川知事に意見表明をしました。

 最大会派で過半数を占める「自民党県政会」は、整備が遅れている
防災対策や、原発と共存してきた福井県の立場などを知事に正したうえ
で、再稼動の判断を事実上、西川知事に委ねる意向を表明しました。

 第2会派の「民主・みらい」は、会派として統一した意思表明を行わず、
県民への説明や、安全対策の強化などを知事に要請しました。

 共産党と無所属の一部県議は、「未実施の対策もあり、県民に100%
安全を保障できない」として、反対の立場を示しました。


 各会派の意見表明後、田中議長が、「再稼動にたいする県議会の意見
と受け止め、再稼動の判断にさいしては適切に判断してほしい」と総括し
ました。

 これに対して西川知事は、「県議会の意向とおおい町長の判断に加え、
関西電力の今後の安全対策の考え方も聞いて、最終的に判断したい」
と述べたうえで、

 政府に同意を伝える際には、みずから県民に説明して理解を得る考え
を示しました。



 同日の午後。

 おおい町の時岡町長は、福井県庁において、西川知事と会談をしま
した。

 会談で時岡町長は、野田首相が6月8日に記者会見し、再稼動の必要性
を訴えたことや、県の原子力安全専門委員会が「安全は確保できている」
と評価したことを理由に挙げ、西川知事に、再稼動に同意する意向を伝え
ました。
 その上で、時岡町長は、「町の意向をしん酌し、県として判断してほしい」
と述べました。

 これに対して西川知事は、「関電の対応を確認し、県として最終判断を
行いたい」と応じています。


 会談後、時岡町長は、「ほっとしている」としたうえで、

 日本全国から、再稼動に反対する声が大きく寄せられるなかで判断
を迫られた
ことについて、
 「東日本大震災のあとで、再稼動の判断にいろいろな意見があるなかで、
時間をかけて安全を確認し、容認の判断ができたことは意義があると感じ
ている」と述べました。


              * * * * *


 6月15日。

 枝野経済産業相は、閣議後の記者会見で、大飯原発の再稼動後に
節電の目標を修正することについて、
 「スムーズに発電供給できる状況にならなければ見直さない」と強調
しました。

 大飯原発3・4号機のフル稼働には時間がかかる上、トラブルが起こ
るリスクもあることから、電力が十分供給できるかどうかを見極めて
判断する姿勢を示しています。

 再稼動にむけては、「(福井県の)西川知事が関西電力の対応を確認
したうえで最終判断する。それを踏まえて対応する」と語り、具体的な
日程への言及を避けました。



 同日。

 福井県の西川知事は、関西電力の八木社長と会談し、再稼動にむけ
た体制や対策などを確認しました。

 会談で西川知事は、「大飯原発の運転再開を判断するにあたり、電力
事業者の姿勢や覚悟を改めて伺いたい」と述べて、
 再稼動に向けて配置される人員の体制や、今後実施する予定の安全
対策などについて確認しました。

 これに対して八木社長は、関西電力やメーカーなどの人員を増やし、
みずから陣頭指揮をとることや、
 原発事故など緊急時の対応拠点となる「免振事務棟」と呼ばれる建物
など、3年後に設置するとしている計画を、できるだけ早く実施していく
ことなどを伝えました。
 八木社長は、「わが国の原子力発電の在り方も左右する大変重要な
ものと強く肝に銘じ、安全・安定運転を進めていきたい」と述べています。

 これを受けて西川知事は、「大飯原発の安全性について社長の考えを
確認できた」として、
 6月16日に、野田首相と会談し、原発再稼動への同意を伝えることに
しています。



 同6月15日。

 藤村官房長官は記者会見で、6月16日の午前に、大飯原発3・4号
機の再稼動をめぐり、野田首相と、福井県の西川知事が、首相官邸で
会談すると発表しました。

 西川知事は、再稼動に同意する意向を、正式に伝える見通しです。

 その後、首相と関係3閣僚が協議をして、原発の再稼動を最終判断
する予定です。


             * * * * *


 6月16日。

 福井県の西川知事は、総理大臣官邸を訪れ、野田首相らと会談を
しました。

 西川知事は、再稼動にあたり、使用済み核燃料の中間貯蔵を、福井
県外で国が責任を持ってやることや、地震と津波の予測を太平洋側
だけでなく日本海側でも積極的に行うことなど、「8つの前提条件」を示し
ました。

 これに対して、枝野経済産業相ら担当閣僚は、真摯(しんし)に対応
する考えを示しました。

 それを受けて西川知事は、「大飯原発の再稼動は、国から安全確保
のいっそうの努力の約束をいただいたことから、主な電力消費地である
関西の国民の生活と産業の安定に資するため、同意する決意を伝え
たい」と述べて、再稼動に同意する方針を伝えました。

 これに対して野田首相は、「決断に深く感謝申し上げる」と謝意を表明
しました。


 以上のような、前もって決まりきっていた「儀式色」のつよい会談は、
わずか20分ほどで終わりました。



 同日。

 政府は、野田首相と関係閣僚による、4大臣会合を開きました。

 野田首相は、「福井県の西川知事に大飯原発の再起動について了承
をいただいた。40年以上にわたり、電力消費地に電力供給を続けて
きた立地自治体の決断に感謝したい。西川知事の言葉を重く受け止め
るとともに、要請について引きつづき、政府として取り組んでいく。地元
の了承が得られた今、大飯原発の3・4号機を再起動することを政府
の最終判断とする
」と述べ、

 政府として、大飯原発の再稼動を、「最終決定」したことを表明し
ました!


 その上で野田首相は、「政権として、原子力行政や安全規制への国民
の信頼回復に向けて、さらなる取り組みを始めていく決意だ。政府として、
原子力に関する安全性を確保し、さらに高めていく努力をどこまでも不断
に追求していく」と述べています。


              * * * * *


 以上、

 政府が再稼動を「最終決定」するまでの経緯を、事実確認してきました。

 もう既に、さまざまな批判が噴出していますし、私なりに思うことも多々
あります。

 それらについては、次回で取りあげたいと思います。



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