原発再稼動の動きが急加速!
                           2012年6月10日 寺岡克哉


 いま現在、

 大飯(おおい)原発3号機・4号機の、再稼動への動きが、急激に
加速しています!


 これは、今まで再稼動に強硬な反対姿勢をとってきた関西広域連合が、

 「限定的」としながらも、再稼動を事実上容認する声明を出したことに
よります。

 その、関西広域連合が出した声明とは、以下のようなものです。


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            原発再稼動に関する声明

 関西地域は、40年以上にわたって、若狭湾に立地する原子力発電所
から安定的な電力を受け続け、産業の振興と住民生活の向上が図られ
てきた。また、その安全確保のため、立地県である福井県が独自に特別
な安全管理組織と専門委員会を設置し、常時厳しい監視体制がとられて
きた。関西の現在の発展は、こうした取組がなければありえなかったと
いっても過言ではない。

 そのようななか、関西電力大飯原子力発電所第3号機・第4号機が
定期検査を終え、再稼動の時期を迎えているが、関西広域連合は、東京
電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、安全性が確認できなけれ
ば再稼動すべきではないとの立場から、政府に対し三度にわたる申し
入れを行い、これに基づいて、5月19日と本日の広域連合委員会におい
て説明を受けた。

 「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」は、
原子力規制庁等の規制機関が発足していない中での暫定的な判断基準
であることから、政府の安全判断についても暫定的なものである。従って、
大飯原発の再稼動については、政府の暫定的な安全判断であることを
前提に、限定的なものとして適切な判断をされるよう強く求める。

                    平成24年5月30日  関西広域連合


 連合長 井戸敏三(兵庫県知事) 副連合長 仁坂吉伸(和歌山県知事)

 委員  嘉田由紀子(滋賀県知事)   山田啓二(京都府知事)
      松井一郎 (大阪府知事)   平井伸治(鳥取県知事)
      飯泉嘉門 (徳島県知事)   橋下徹  (大阪市長)
      竹山修身 (堺市長)
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 上の声明文で、第3番目の段落が、いちばん肝心なところですが、しか
しながら、その文中にある「限定的なもの」とは、一体どういう意味なの
か、よく分かりません。

 関西広域連合事務局の担当者によると、声明における「限定的なもの」
とは、「期間限定の運転」という意味合いがあるほか、「大飯原発3号機、
4号機に限定して、政府の安全基準が適用される」ことだといいます。



 また、同担当者は、「関西広域連合として再稼動を容認したわけでは
ない」と説明していますが、

 しかしながら声明発表後の記者会見で、井戸 関西広域連合長は、
「政府の出した判断は受け止める。再稼動を期間限定にするかは政府
の判断だ」と表明しました。

 また、大阪市の橋下市長は、「仮に動かしたとしても期間限定は譲れ
ない」と述べ、早期の再稼動を事実上容認しています。

 さらに5月31になると、橋下市長は「事実上容認する」と明言し、

 滋賀県の嘉田知事は、「臨時的な運転再開はやむをえないという
気持ちに近い」と語っています。

 しかし、そうではありますが、広域連合加盟の知事の中には、「容認
ではない」「判断の権限はない」という、苦しい胸の内を明かしている
者もいました。


 「事実上の容認」とは、いったい何のことやら、良く分からない所が
ありますが、だいたい上のような意味合いが、混在しているのだと思い
ます。


               * * * * *


 ところで・・・

 政府は、大飯原発の再稼動にあたって、「特別な監視体制の強化」
というのを打ち出しています。

 それによると、とくにトラブルが起こりやすい、原子炉の起動からフル
出力運転に入るまでの1週間から10日間ていどは、
 経済産業省の副大臣ら政務三役も、おおい町入りして、オフサイトセン
ターなどで緊急時に備える方針になっています。
 政務三役の現地入りで、政府が責任を持って再稼動に対応することを
明確にするといいます。

 また、情報共有のため、大飯原発では、関西電力本店と原発を結ぶ
テレビ会議システムに、総理大臣官邸と保安院を組み入れることになり
ました。
 これにより、事故やトラブルが起きた場合の、情報収集に備えると
いいます。



 このことについて、私は思うのですが・・・

 「特別な監視体制の強化」とは、いったい何を意味するのでしょう?


 たしかに、電力会社による「事故やトラブル隠し」の監視を強化する
のならば良いのですが・・・

 もしかしたら、情報を一元化し、それを政府が独占することによって、

 もしも原発再稼動の妨(さまた)げになるような、小さな事故やトラブル
が発生した場合、

 それらの情報を、政府自らの手で歪曲(わいきょく)したり、隠蔽(いん
ぺい)して、あくまでも再稼動を中止させないようにするために、

 「特別な監視体制の強化」というのを、行おうとしているのでは、ないで
しょうか?



 あまりにも「行け行けドンドン」で、狂気じみた、政府の再稼動推進の
姿を見ていると、

 何となく、そんな疑いも湧き起こってくるのです。


               * * * * *


 6月4日。

 野田首相は、「日本経済・社会全体の発展のために(原発の)
再稼動は必要との認識だ」と明言しました。


 首相は、地元の福井県の同意が得られ次第、週内にも、自らと藤村
官房長官、枝野経済産業相、細野原発事故担当相を交えた会議を
開いて、再稼動を最終決定する意向です。

 野田首相は、「立地自治体の理解が得られるなら、最終的に関係
閣僚との会合で判断する。その判断の最終責任者は私だ」と述べて、
 首相自身が再稼動を決める政治判断の責任を負うことを強調しま
した。
 それと同時に、「二度と事故を起こさない決意で安全対策には万全
を期す」と訴えています。



 同日の夕方。

 野田首相は、細野原発事故担当相、斉藤官房副長官らを福井市に
派遣しました。

 福井県の西川知事は、会談の席上でまず、「政府部内からいろいろな
見解、矛盾した主張が出て県民にとって迷惑」と指摘した上で、

 「再稼動の必要性について首相は国民に訴えていただいて、様々な
疑問に答えていただくことが国民の安心と支持につながる」と強調しま
した。


 また西川知事は、政府側にたいし、「夏場だけの稼動とか大飯原発
に限定した稼動に限定した一部の言い方があるが、政府がそうした
考え方ではないと示して頂きたい」と要請しました。

 これに対して、同行した斉藤官房副長官は、「大飯3、4号機はこの
夏場をしのぐだけの限定した稼動だと考えていない。
関西広域連合
にもしっかり説明したし、この考えに揺るぎはない」と答えています。


 このほか、大飯原発の再稼動に向けて政府が準備する「特別な監視
体制」
について、
 西川知事は、福井県の専門職員の派遣を求める意向を、表明しま
した。

 これに対して細野原発担当相も、「福井県の皆様にも入っていただき
たい」と応じました。

(このことについて私は、再稼動時における事故やトラブルの、政府に
よる情報の独占や隠蔽にたいして、西川知事がクギを刺したのではない
かと思っています。)



 ところで、

 福井県は近く、県の原子力安全専門委員会を開く予定です。

 その会議で同委員会は、再稼動に向けた報告書をまとめ、西川知事
に提出します。

 西川知事は、その報告書と、おおい町の時岡町長および県議会の
意向も踏まえたうえで、

 政府に再稼動を了承するかどうか判断する見通しです。


               * * * * *


 6月5日。

 福井県おおい町の、時岡町長は、「総理が国民に対して原子力の
位置づけをはっきり示すべきだ。福井県やおおい町が、関西をはじめ
とした国民全体に理解をしてほしいといっても無理だと思う」と述べま
した。

 その上で、「野田総理大臣が国民への呼びかけの会見をするべき
だと思う」と述べています。

 さらに時岡町長は、運転再開について、県の原子力安全専門委員会
の報告書を踏まえて判断する考えを、改めて示しました。



 同日。

 民主党原発事故収束対策プロジェクトチームの荒井座長は、再稼動
について「一層慎重である」ことを求めるとした、同党国会議員の反対
署名を集め、野田首相に提出しました。

 署名者には、小沢元代表や、鳩山元首相も名を連ね、全部で117人
に達しました。
 117人というのは、民主党に所属する国会議員の、およそ3割にも
なります。その内訳は、衆院議員81人、参院議員36人で、小沢グルー
プが全体の半数に上っています。

 プロジェクトチームの荒井座長は、「民主党は再稼動推進で一致して
いないことを示すことが重要だ」と述べて、
 再稼動手続きが大詰め迎えた段階での、署名提出の意義を強調しま
した。


               * * * * *


 6月6日。

 滋賀県の嘉田知事と、京都府の山田知事は、大飯原発の運転再開を
めぐる再提言をまとめ、同日付で政府に申し入れました。

 両知事は、4月17日に「7項目の提言」をしていましたが、その後の
情勢変化を考えて、再提言では内容を修正しています。


 このたびの再提言では、運転再開にあたっての政府の判断基準や
安全性の判断は暫定的だとして、「再稼動は電力がひっ拍している
時期に限定するべき」
だとしています。

 また、「特別な監視体制」について、事故の際に被害をうける恐れが
ある滋賀県と京都府も加えるよう、強く求めるとしています。

 さらには、いま政府に求められるのは、国民の不安を解消するため、
原発依存からの脱却に向けた指針を示すことだとしています。


 再提言発表後の記者会見で、滋賀県の嘉田知事は、「事故の被害を
防ぐための計画などが、不十分なまま運転を再開するのならば、電力
がひっ迫しているときに限るべきだ。被害を受けるおそれがある”被害
地元”として、言うべきことは言わせてもらう」と述べました。

 また、京都府の山田知事は、「運転再開の判断も大切かもしれないが、
安全基準も策定されず、”脱原発依存”の道も固まっていないなか、野田
総理大臣は、安全性をどう高めるのか道筋を示し、国民の不安を払拭
(ふっしょく)してほしい」と述べています。


               * * * * *


 6月8日の夕方。

 野田首相が記者会見し、「国民の生活を守るために大飯発電所を
再起動すべきというのが私の判断だ」と明言しました。


 この記者会見で野田首相は、「夏場の電力需要ピークが近づき、結論
を出さなければいけない時期が迫りつつある。国民生活を守ることが、
国論を二分している問題に対してよって立つ、唯一絶対の判断の基軸
であり、国として果たさなければならない最大の責務と信じている」と述べ
ました。

 そして、「次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して
起こさない。福島を襲った地震や津波が起こっても、事故を防止できる
対策や体制は整っており、これまでの知見を最大限生かして、もし万が一、
すべての電源が失われるような事態になっても炉心損傷に至らないこと
が確認されている」と述べ、安全性を強調しました。

 一方で、「原子力発電を今、止めてしまっては、また、止めたままでは、
日本の社会は立ち行かない。関西での15%の需要ギャップは、昨年の
東日本大震災でも経験し、厳しいハードルだ。突発的な停電が起きれば、
命の危険にさらされたり、仕事が成り立たなくなる人、また、働く場がなく
なる人も出てくる」と述べ、再稼動の必要性を訴えました。

 また野田首相は、「電力需給だけの問題ではない。化石燃料の依存を
増やし価格が高騰すれば、ギリギリの経営を行っている小売店や中小
企業や家庭にも影響する。空洞化を加速し、雇用の場が失われる。夏場
限定の再稼動では国民の生活は守れない
」と述べました。

 その上で、「関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町だ。40年
以上にわたり原子力発電に向き合い、電力消費地に電力供給を続けて
きたことに敬意と感謝の念を新たにしなければならない」と述べました。

 そして野田首相は、「国民の生活を守るために大飯発電所を再起動
すべきというのが私の判断だ。その上で立地自治体の理解を改めて
お願いしたい。理解していただいたところで再起動のプロセスを進めた
い」と述べ、福井県とおおい町に理解を求めました。



 上の首相会見は、福井県の西川知事が先日、「再稼動の必要性に
ついて首相は国民に訴えていただいて、様々な疑問に答えていただく
ことが国民の安心と支持につながる」と強調したのを、受けたものです。

 この会見を受けて、福井県の西川知事は6月8日の夜、「首相の強い
思いを国民に向けてしっかり語っていただいたものと重く受け止めてい
る」という談話を発表し、再稼動に向けた手続きを進める考えを明らか
にしました。

 福井県は、原子力安全専門委員会を6月10日に開いて、再稼動の
安全性を確認し、
 6月12日にも県議会各会派の代表者会議を、6月14日にも県議会
の全員協議会を、それぞれ開く予定です。
 この間にも、おおい町の時岡町長から了承を得て、6月15日にも知事
が再稼動に同意する方向で調整しています。

 これを受けて、政府は6月16日にも首相と関係3閣僚が協議し、再稼
動を最終決定する予定です。その際に、西川知事が上京し、県の了承を
正式に伝える見通しです。


               * * * * *


 以上、ここまで見てきましたように、原発再稼動への動きが、ものすご
く加速しています。


 しかしながら野田首相は、「夏場限定の再稼動では国民の生活は守れ
ない」と述べ、期間限定の再稼動を否定したので、

 大阪の橋本市長や、滋賀県の嘉田知事など関西広域連合が、今後
どのような対応を見せるのか注目されます。



 また、民主党の国会議員の117人もが、再稼動にたいして慎重な
姿勢を見せており、

 この勢力が、今後さらに拡大して行くのかどうかも、非常に注目され
ます。

 野田政権の運営にとって、このことが大きく影響するのは、絶対に
間違いありません。



 そして、私たち国民の一人ひとりが、

 原発問題についても、政府や与党、あるいは野党の言動をしっかり
と見定め、

 次の選挙における一票として、反映させなければ、ならないでしょう。



 このように、

 いま現在、原発の再稼動問題は、ますます目が離せなくなって
います!




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