ホルムズ海峡が封鎖? その16
2012年6月3日 寺岡克哉
近ごろ、イラン情勢をめぐる世界の動きが、活発になってきました。
前回に引きつづき、それらの動向について、追いかけて行きたいと
思います。
* * * * *
5月21日。
IAEA(国際原子力機関)の天野事務局長は、核開発疑惑について
イランと協議するため、テヘラン入りしました。
天野事務局長は出発前、ウィーンの空港で記者団にたいし、「今が
合意を模索する、まさにその時だ」と述べ、疑惑の解明に期待感を示し
ました。
実際に合意できるかどうかについては、「確かなことは何も決まって
いない」としながらも、「前向きな気持ちでいる」と強調しています。
この日、天野事務局長は、アバシ原子力庁長官やジャリリ最高安全
保障委員会事務局長と会談をしました。
会談後、天野事務局長は、「(21日の)協議は非常に有益だった。
良好な雰囲気の中、幅広く突っ込んだ話し合いをした」と述べ、
「(これらの)協議の進展が、イランと6ヶ国の協議にプラスの影響を
与えることは確実だ」と語りました。
しかしながら、「IAEAには見解があり、彼らも固有の見解がある」と
述べて、溝が残っていることも示唆しました。
一方、ジャリリ事務局長は会談後、イランは「(核拡散防止条約)の
核技術の平和利用や核兵器拡散防止に取り組み、世界的な軍備縮小
の動きを真剣に支持している」として、
「天野事務局長とは、この3つの分野について良好な協議をしており、
われわれは将来、これらの分野でIAEAとうまく協力できることを期待
している」と語りました。
また、イラン原子力庁は、アバシ長官と天野事務局長との会談後、
「イランとIAEAとの協力関係を高めるために率直な議論を行い、問題
点の解決に向けた提案が行われた」との声明を発表しています。
このように、天野事務局長、イラン側ともに、「協議は有益だった」と
強調しましたが、
しかしながら焦点となっていた、パルチン軍事施設の査察受け入れ
などでは、大きな前進がなかったとの見方も出ています。
同5月21日。
アメリカ上院が、新たなイラン制裁法案を、全会一致で可決しました。
(ちなみに下院では、昨年12月に可決されていました。)
オバマ政権は、昨年の12月に大統領が署名した「国防権限法」に
よって、イラン中央銀行と海外金融機関の取引を禁止しています。
しかし、イラン国営石油会社や、タンカー輸送会社は、依然として一部
の原油輸出を続けており、新たな法案は、そのような取引の規制を
目指すものです。
今後は、アメリカ上院と下院で、法案のすり合わせを行う予定になって
います。
同日。
玄場外相は、シカゴ市内でEU(欧州連合)のアシュトン外交安全保障
上級代表と会談し、
イラン産原油の輸送にからむ再保険の提供を禁じる、EUの対イラン
制裁について、「例外措置」の検討を要請しました。
アシュトン代表は、「日本のロビー活動が非常に効果的だ。状況はよく
承知している」と述べて、近くEU内部で議論する考えを明らかにしました。
EUによる対イラン制裁では、「EU域内の保険会社がイラン産原油の
輸送に絡んだ再保険を禁ずる」と明記しており、すでに貨物保険と船舶
保険の新規契約は禁止されました。
7月からは、原油流出事故に備えた賠償責任保険も禁止される予定
で、原油輸送が全面的に停止する公算が大きくなっています。
なので日本政府は、再保険の大半を肩代わりする新法案も、準備して
います。
* * * * *
5月22日。
ウィーンに戻ったIAEAの天野事務局長は、空港で記者団にたいし、
「イランの核開発の軍事的な側面を検証する方法について、合意に
向けた決定がなされた」と述べて、近く合意文書に署名する見通しで
あることを明らかにしました。
イランは、懸案だったパルチン軍事施設への査察を容認し、天野
事務局長は「合意文書で取り上げることになる」と語りました。
新しい検証の枠組みには、核関連施設への査察、核技術者との面会、
関連資料の閲覧などが盛り込まれる見通しです。
天野事務局長は、「協議で大きな前進があった」と強調し、「まだ意見
の相違があるが、ジャリリ氏は合意の妨げにはならないと説明した」と
いいます。
上のような署名予定の合意文書は、「ほぼ整理が出来ている」と語って
います。
この日、ウィーンのアメリカ政府代表部は、「天野事務局長による中身
のある合意に達するための努力を高く評価する」という声明を発表しま
した。
一方、イランの姿勢には「依然として懸念がある」とクギを刺し、合意
内容を直ちに履行するように求めました。
アメリカのIAEA代表団のナンバー2である、ロバート・ウッド氏は、
「天野IAEA事務局長の実質的な合意への努力は評価するが、イランが
査察に完全に強力し、具体的な措置を履行する義務を負わせることが
できるか懸念している」とし、
「この機会に、核計画をめぐるすべての懸念を払拭させるよう、イラン
に要求する」と強調しています。
この日、アメリカ ホワイトハウスの、カーニー報道官は記者会見で、
「正しい方向に向けた前進だ」としつつも、「われわれはイランの態度を
約束や合意ではなく、実際の行動に基づいて判断する」と、慎重に見守る
姿勢を示しました。
アメリカ国務省のヌーランド報道官も、同日の記者会見で、「(イランが)
求められているのは実行だ」と語っています。
同日。
イラン原子力庁は、同国の科学者らが製造した「純国産」の核燃料2個
を、医療用アイソトープをつくる研究用原子炉に運び、そのうちの1つを
装填したと発表しました。
イランは2月にも、国産核燃料の製造成功と同原子炉への装填を表明
していましたが、今回の核燃料は別物とみられます。
あらためて同様の内容を発表した背景には、5月23日にイラクで行わ
れる6ヶ国との核協議を前にして、核開発は軍事利用を意図したものでは
なく、平和利用目的であることを強調するねらいがありそうです。
* * * * *
5月23日。
国連安保理常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)に
ドイツを加えた6ヶ国と、イランとの核協議が、イラクの首都バグダットで
始まりました。
この核協議に参加したのは、6ヶ国の窓口であるEU(欧州連合)の
アシュトン外交安全保障上級代表と、6ヶ国の次官級、そしてイラン側
のジャリリ最高安全保障委員会事務局長です。
この日、アシュトン上級代表の報道官は記者団にたいし、「欧米側が
核開発問題の解決のため、経済制裁の緩和も含めた新たな提案を行っ
た」ことを明らかにしました。
提案の詳細については明らかにできないとしていますが、6ヶ国側が
「核兵器を短期間でつくれる濃縮度20%のウランの、生産停止をふくむ
提案を、イラン側に示した」と指摘しています。
欧米側の外交筋によると、アメリカ製の航空機部品をイランの国営航空
向けに輸出することを禁じた制裁措置を緩和することや、イランによる非
軍事用原子力開発の支援を提案したということです。
また、その見返りとして、イランが濃縮度20%のウラン製造を凍結し、
すでに製造した20%ウランについては第三国に出荷するように、イラン
に正式に提案したと語っています。
一方イラン側は、「欧米側の提案は、目新しい内容がないうえ、不公平
だ」などと不満を示したうえで、逆に5項目にわたる新たな提案を示したと
いうことです。
この日、イラン国営通信は、協議が実を結ぶには(欧米側の)提案が
大幅に変更されなくてはならないとの見方を伝えました。
欧米側はイランに多くの妥協を期待しながら、インセンティブはほとんど
提案していないとしています。
その一方で、「イラン側の提案では、ギブアンドテイクのバランスが取れ
ている」と伝えています。
同日。
アメリカ国務省のヌランド報道官は、イランとの核協議で、「信頼醸成
措置をふくむ詳細な提案をした」と述べました。
提案は「イラン側が(受け入れて)次の段階に進めば、われわれもすぐ
に行動するという、相互の段階的な内容をふくんでいる」と指摘し、
交渉を進めるための初期段階の内容で、イラン側の反応を待っている
といいます。
ヌランド報道官は、イランがこの提案を受け入れれば、「核開発が平和
目的であり、安保理決議を順守する姿勢を明確に示す」ことにつながる
との考えを表明しています。
同日。
6ヶ国とイランとの核協議で、イランは協議前進の条件として、欧米側
のイラン産原油禁輸措置の解除を求めることを示唆しましたが、
アメリカのホワイトハウスは、「これは選択肢にない」と強調しました。
ホワイトハウスのカーニー報道官は、「われわれは同盟国やパート
ナーとともに、前例のない制裁体制をつづけていく。一方、P5+1(国連
安保理常任理事国+ドイツ)のパートナーとともに、この外交的対立状態
の打破に向けた試みをつづける」としています。
同日。
ロシアのラブロフ外相は、モスクワで記者会見し、「イランが具体的な
行動を段階的に取る用意があるという明確な印象を持っている」と述べ、
譲歩に傾いているとの見方を示しました。
また、アメリカが、対イラン制裁を強化する動きを見せていることに
ついて、「今回の協議にプラスにならない」と批判しました。
同日。
中国外務省の洪報道官は定例会見で、「中国の企業は、イラン側と、
正常で透明な取り引きを行っており、こうした取り引きは、国連安保理
の決議にも違反していない」と述べて、イラン産原油の輸入の正当性
を強調しました。
その上で、アメリカなどがイランにたいし、経済制裁による圧力を強め
ていることについて、
「国内法が国際法をしのぐような形で、一方的な制裁を行うことに反対
する」と述べ、欧米諸国をけん制しました。
* * * * *
5月24日。
6ヶ国とイランとの核協議が、前日に引きつづき行われました。
しかしながら、互いに相手側が先に行動を示すことを要求し、議論の
進展がありませんでした。
イラン側は、ウラン濃縮を行う権利を主張し、濃縮を停止する前に、
イラン産原油の禁輸措置や金融制裁の見直しをするこを、強く要求しま
した。
一方6ヶ国側も、制裁を解除する前に、まずイラン側がウラン濃縮活動
を停止すべきとの主張を譲りませんでした。
次回の協議を、モスクワで6月18〜19日に開催することでは意見が
一致し、かろうじて「協議決裂」だけは回避されたという格好です。
6ヶ国側の調整役をつとめる、EUのアシュトン上級代表は、協議終了
後の記者会見で、「集中し詳細な協議だった」と評価し、
「双方が進展を望んでいるのは明白。立場を共有できた部分もあった
が、深刻な意見の不一致が残っている」と述べました。
一方、イラン側のジャリリ事務局長は、「6ヶ国側は平和利用を目的
としたイランの濃縮活動継続の権利を認めている。濃縮度約20%の
ウラン(製造停止)は、双方の協力や今後の協議で重要になる」と指摘
し、将来の製造停止に含みを残しました。
今回、「協議決裂」が回避された背景には、今年の11に大統領選を
控えているオバマ大統領が、
「外交的解決」に失敗し、中東で新たな混乱が発生するのを、恐れて
いることがあります。
一方、イラン側は協議が続くかぎり、イスラエルによる軍事攻撃はない
とみており、
協議の早期決裂を避ける点で、アメリカとイラン双方の利害は一致して
いたのです。
同日。
アメリカのクリントン国務長官は、6ヶ国とイランとの核協議について、
双方の提案には「明らかに隔たりがある」と述べた上で、協議を進め
る間も、対イラン制裁強化を続けていく方針を表明しました。
同日。
日本政府は、この日までに、イラン産原油を日本へ運ぶタンカーが
油流出などの事故を起こした場合、
賠償支払いの大半を肩代わりする制度を創設する、法案の検討に
入りました。
これは、EU(欧州連合)が域内の保険会社を対象に、イラン産原油
を運ぶ船舶に関連した「再保険」の引き受けを、禁止する制裁に備えた
ものです。
具体的には、タンカーを所有する日本の海運会社などは、JPI(日本
船主責任相互保険組合)に、まず加入します。
JPIの支払い上限は800万ドル(およそ6億4000万円)ですが、それ
を超えた分については、
EUの保険会社による再保険がカバーしていた76億ドル(およそ6080
億円)を上限に、政府が交付金を支払うことで、再保険機能を提供すると
いう方針です。
* * * * *
5月25日。
IAEA(国際原子力機関)の天野事務局長は、イランの核開発に関する
報告書をまとめ、理事国に配布しました。
その報告書では、イランがこれまでに製造した濃縮度20%のウラン
が、145.6キログラムに達していると指摘されており、
今年2月の報告書に記されていた95.4キログラムに比べて、およそ
1.5倍に増加したとなっています。
このためIAEAは、核兵器開発の疑いを払拭するためにも、イランに
たいして関連施設の検証に協力するよう、あらためて求めました。
また、同報告書では、イラン中部フォルドウの地下核施設で、今年2月
に採取されたサンプルから、微量の27%濃縮ウランが検出されたと
指摘しています。
5月になってイランに説明を求めたところ、「操作員のコントロールミス
による技術的な理由で、目標を超える濃縮度のウランが生産された
可能性がある」との回答を受けたということです。
ちなみに核専門家によると、申告済みの施設では、濃縮行程を「5%
→20%→60%→90%以上」の、4段階に分けて高めるしくみになって
います。
このため、20%ウランをさらに濃縮する行程で27%が製造される
可能性は低く、
むしろ5%→20%へ濃縮度を上げる行程で、何らかの事情によって
予定より高い濃度のウランが製造された可能性が高いそうです。
同日。
EU(欧州連合)の報道官は、イラクの首都バグダットで行われた6ヶ国
とイランとの核協議が、合意に至らなかったことをうけ、
イラン産原油の禁輸を、予定通り7月から実施することを確認しました。
EUの報道官は、バグダットでの協議を振り返り、ウラン濃縮停止という
「具体的な話し合いを初めて(イランと)できた」と評価し、
来月にモスクワで行われる次回協議での進展に期待を示す一方で、
「(EUの)制裁は7月から実施される」と語っています。
同5月25日。
三菱東京UFJ銀行は、アメリカ ニューユーク州地裁の指示で凍結
していたイラン政府関連の口座が使えるようになり、イラン産原油の輸入
などの貿易決済を再開しました。
州地裁から担当が代わった連邦地裁が、「米国以外の資産の差し押さ
え指示は無効」との判決を下したためです。
三菱東京UFJ銀行は、日本におけるイラン貿易決済の7〜8割を担っ
ていますが、決済の再開により、原油の調達不安はひとまず回避されま
した。
三菱UFJ側は、「連邦地裁が適切な判断をしたと理解している」と、コメ
ントしています。
しかしながら、原告が再び上級裁判所に上訴する可能性も残っており、
三菱UFJ側は「顧客に迷惑をかけないように、関係省庁と連絡を取り合い、
対応していきたい」と話しています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
※参考 前回のレポートより抜粋
5月17日。
三菱東京UFJ銀行は、イラン政府の口座を一時的に凍結し、原油
取引の決済を停止していることを、明らかにしました。
これは、アメリカのニューヨーク州地裁が、イラン政府への損害賠償
訴訟の賠償資金を確保するため、口座凍結と資産調査を指示したの
を受けた措置です。
同地裁の指示は5月2日付けで出されており、三菱東京UFJ銀行に
たいし、イラン政府関連の資産内容を今月中に報告するように求めた
うえで、26億ドル(およそ2000億円)を上限に、資金が口座外に移動
するのを止めるようにとの内容になっています。
ニューヨーク州地裁では、1983年にレバノンの首都ベイルートで
起きたアメリカ海兵隊司令部爆破テロ(241人死亡)で、イランの関与
を主張する遺族が賠償を求めて提訴しました。2007年に、賠償を認め
る司法判決が下されましたが、イランは賠償金を支払っていません。
今回のニューヨーク州地裁による指示は、その賠償を確実にする
ためのものです。
この指示に従わなければ、約26億ドル(およそ2000億円)の罰金
が科せられる可能性があるため、三菱東京UFJ銀行は当面、資産を
凍結し、決済を停止することを決定しました。
ちなみに、2011年における、日本とイランの貿易総額は1兆1600
億円で、このうち、原油などの輸入が1兆273億円を占めます。その
決済の7〜8割が、三菱東京UFJ銀行にある、イラン政府の口座で
行われています。
当面の輸入代金は決済しているので影響は出ませんが、決済停止
の状態が長引けば、イラン産原油の輸入が滞る懸念もあります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
* * * * *
5月26日。
イラン原子力庁のアバシ長官は、核協議で6ヶ国側が、濃縮度20%
ウランの製造停止を求めていることに対して、
「自国に必要な量を製造しているだけであり、譲歩する理由はどこに
もない」と述べました。
さらにアバシ長官は、核兵器開発の疑惑が持たれている、テヘラン
郊外にあるパルチン軍事施設への、IAEAの査察立ち入りについて、
「許可するうえでの証拠や書類がIAEAから提出されていない」として、
立ち入りを拒否する姿勢を示しました。
また、アバシ長官はこの日、原発が稼働中の南部ブシェール州に、
新たな原発(出力100万キロワット)の建設を、来年中に開始すること
を明らかにしました。
同長官によれば、それとは別に、さらにもう1基の原発建設も計画して
いるとのことです。
イランは、新たな原発建設の計画を示すことで、「核の平和利用」では
譲歩しないとの姿勢を強調するねらいがあるようです。
* * * * *
5月28日。
情報セキュリティーの専門家は、イランをふくむ中東の一部システム
が、非常に高度かつ強力なコンピューターウィルス「フレーム」に感染
していると明らかにしました。
このウィルスは、国家が背後にいる「サイバー攻撃」の一環として、
少なくても5年前に仕掛けられて可能性があるといいます。
ロシアの情報セキュリティー会社 カペルスキーは、「フレーム」に
ついて、
2010年にイランの核施設へ、ウィルス「スタクスネット」を使ってサイ
バー攻撃を仕掛けた国が、背後にいると指摘しました。
しかしながら、特定の国の名指しは避け、今回の「フレーム」が、「スタ
クスネット」のように明確な狙いを持っているかどうかも、まだ分からない
としています。
同日。
石油元売り各社でつくる「石油連盟」の新しい会長に、JX日鉱日石エネ
ルギー社長の木村康氏が就任し、「イランは石油の供給源として重要だ」
という認識を明らかにしました。
木村氏は、イランからの原油輸入について、「イランは産油国として非常
に大きい地位を占めている。一方で、国際世論の動きがあるなか、バラン
スをどうとるか、石油の長期安定性を踏まえて、きちんとしたつきあいを
したい」と述べ、
引きつづき、原油の調達先としてイランが重要だという認識を、明らかに
しています。
* * * * *
以上、5月21日〜28日までの動きについて見てきました。
IAEAの天野事務局長が5月21日にイラン入りし、関係改善の兆し
が見えたかのように、一時的には思いました。
が、しかしその後、6ヶ国とイランとの核協議が不調に終わると、
IAEAは、濃縮度20%のウランが増えていることや、濃縮度27%の
ウランが検出されたことなど、イランへの非難的な報告書を発表しま
した。
一方イラン側は、濃縮度20%ウランの製造停止については拒否する
構えを見せ、
パルチン軍事施設への、IAEAの査察立ち入りも、拒否する姿勢を
示しています。
ところで、日本について見れば、
アメリカ国防権限法の制裁対象から、日本が除外されたのは良かった
のですが、
EUの保険会社による、イラン産原油の輸送に絡んだ再保険の、引き
受けの停止や、
ベイルート爆破テロによる死亡者の遺族が、上級裁判所に上訴する
可能性があるなど、まだまだ予断は許されません。
以上のように、さまざまなことが、けっして楽観視できない状況となって
います。
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