ホルムズ海峡が封鎖? その13
                          2012年4月29日 寺岡克哉


 今回は、前々回に引きつづき、

 イラン情勢をめぐる世界の動きについて、見て行きたいと思います。


              * * * * *


 4月11日。

 野田首相は党首討論で、イランを訪問した民主党の鳩山元首相へ
の批判が強まっていることに対して、「政府の基本姿勢を踏まえて対応
したと思う」と語りました。

 イラン国営テレビで、鳩山氏がIAEA(国際原子力機関)を批判した
と報道されましたが、帰国後に在日イラン大使館が鳩山氏に陳謝した
ことなどを踏まえて、「問題がない」との認識を示した格好です。



 同日。

 UAE(アラブ首長国連邦)で開かれた、軍事問題についてのシンポ
ジウムで、
 ペルシャ湾岸諸国でつくるGCC(湾岸協力会議)のザヤニ事務局長
は、「イランのミサイルの脅威は差し迫っており、各国は合同で対策に
乗り出すべきだ」と述べて、
 アメリカの支援の下、各国のミサイル防衛システムの指揮系統を、
統合する方向で協議を進めていることを明らかにしました。

 計画案では、各国のシステムを束ねる統一司令部を設置して、各国が
集めたデータを一元化し、アメリカの支援を得ながら、これまでより効率
的な迎撃態勢を整えるとしています。


 この日。

 アメリカの防衛器大手であるロッキード・マーチン社の幹部は、イラン
との緊張感の高まりを背景にして、ペルシャ湾岸諸国ではミサイル迎撃
システムの売却が増えるとの見通しを示しました。

 ロッキード・マーチン社は昨年の12月に、UAE(アラブ首長国連邦)
にたいして、落下段階に入る弾道ミサイルを迎撃するTHAAD(高高度
防衛ミサイル)システムを、36億ドル(およそ2900億円)で売却してい
ます。

 武器・ミサイル防衛プログラム担当バイスプレジデントの、デニス・カビ
ン氏は、「政府間の関係を通じ、他の(湾岸)諸国とも話し合いを行って
いる」と述べて、
 GCC(湾岸協力会議)の加盟国が、THAAD(高高度防衛ミサイル)に
関心を持っていることを明らかにしました。



 同4月11日。

 国連などの特使として、シリア情勢をめぐる仲介にあたっている、アナ
ン前事務総長は、
 シリアと同盟関係にあるイランを訪問し、サレヒ外相と会談をして、シリ
アでの停戦に向けた協力を要請しました。

 イランは、シリアのアサド政権の後ろ盾として、秘密裏に武器などを
供与してきたとも指摘されており、アナン氏としては、イランがシリアに
影響力を行使することに期待を寄せています。

 イランは、アナン氏の停戦案がアサド政権に退陣を迫るものではない
ことから、それを指示する立場を示していますが、
 しかし、その一方で、「外国勢力による内政干渉には反対する」として、
アサド政権を非難する欧米や、ほかのアラブ諸国をけん制しました。



 同日。

 G8(主要8ヶ国)の外相会合において、シリアやイランなど、地域情勢
への対応について討議をしました。

 この中で、イランへの対応については、アメリカのクリントン国務長官
が、
 4月14日にトルコで開催する予定の、6ヶ国(国連安保理常任理事国
+ドイツ)と、イランとの核協議の進展に、期待感を示しました。

 また玄場外相は、「圧力を対話につなげ、核問題を平和的、外交的に
解決することが大切だ」と指摘して、関係各国での情報共有の重要性を
訴えました。


              * * * * *


 4月12日。

 イランのアフマディネジャド大統領は、2日後に行われる6ヶ国との
核協議について、

 「イランは基本的な権利を主張しているだけであり、いかなる圧力を
かけられても、みじんたりとも核の権利を放棄することはないだろう」
と述べ、あらためて強硬姿勢を示しました。



 同日。

 来日しているバーレーンのハリド外相は、イランがホルムズ海峡を
封鎖する可能性を示唆していることについて、
 「もしイランがホルムズ海峡の封鎖に乗り出した場合、ペルシャ湾岸
のアラブ諸国は黙っていない。アメリカと連携して対抗する準備はでき
ている」と述べて、
 バーレーンに司令部があるアメリカの第5艦隊と共に、軍事的な対抗
措置を取ることになると警告しました。

 また、アメリカの支援の下、湾岸諸国のミサイル防衛システムの指揮
系統の統合を目指していることについては、現在、専門家レベルで検討
が進められていて、近く政治的な決断が行われるとの見通しを示しま
した。

 その一方で、ハリド外相は、「緊張の緩和に向けて、日本政府がイラン
政府にたいし働きかけを続けてほしい」と述べて、日本の役割の期待を
示しています。


              * * * * *


 4月13日。

 サウジアラビアの、ヌアイミ石油相は、サウジは高水準にある原油価格
を押し下げる決意だと表明しました。

 世界の原油供給は不足していないとした上で、必要があれば、サウジ
は余剰生産能力を活用する用意があるという考えを、あらためて示して
います。


              * * * * *

 4月14日。

 国連安保理常任理事国にドイツを加えた6ヶ国と、イランとの核協議
が、1年3ヶ月ぶりに、トルコのイスタンブールで開催されました。

 アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、ドイツの6ヶ国からは外務
次官級が出席し、イランからは最高安全保障委員会のジャリリ事務局長
が参加しました。また、EU(欧州連合)のアシュトン外交安全保障上級
代表も、協議に加わっています。

 10時間にわたる協議の末、今後も対話をつづけ、5月23日に再び
イラクの首都バグダットで協議することで合意しました。

 欧米によるイラン制裁が強化され、イスラエルによるイランの核施設
攻撃の可能性が取りざたされている中、
 協議決裂によって、中東地域の軍事的な緊張が高まるという「最悪
の事態」は、いちおう回避されたことになります。


 EUのアシュトン上級代表は、「建設的で有用だった」と、協議結果を
評価しました。イランの民生用核開発の権利を尊重する一方で、NPT
(核拡散防止条約)を協議の土台にすることで両者が合意したと説明
しています。

 イランの交渉責任者である、ジャリリ事務局長も、この協議を「成功」
と位置づけました。イラン側は核兵器開発の意図がないことを強調し、
次回協議の議題に制裁解除が含まれるべきだと主張したといいます。

 今後は、イランの濃縮ウラン製造や、欧米による経済制裁の緩和
などの案件を軸にして、実務担当者が次回の会合にむけて草案作り
に入ります。



 同日。

 アメリカの、ローズ大統領副補佐官(戦略広報担当)は、オバマ大統
領の訪問先のコロンビアで記者会見し、
 6ヶ国とイランとの核協議が再開したことについて、「前向きな最初の
一歩だ」と評価しました。

 ローズ大統領副補佐官は、6ヶ国はイランにたいして、核開発計画を
軍事利用しない具体的措置を講じるように、明確なメッセージを送った
と述べました。

 さらには、国際社会がイランと核問題を協議する上で、NPT(核拡散
防止条約)が基礎になると指摘しました。


              * * * * *


 4月15日。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、6ヶ国とイランとの核協議で、具体
的な成果が出ないまま、来月に再び会合を開くとしたことについて、
「イランによる時間稼ぎだ」と厳しく批判しました。

 ネタニヤフ首相は、「イランは次の会合まで5週間、何の制限もなし
にウラン濃縮を続けることができ、イランが得をしただけだ」と述べて、
強く批判しました。

 その上で、「イランはすべての濃縮活動を即時に停止し、イラン中部
フォルドゥの濃縮施設を解体するべきだ」とする考えを示しました。

 現時点でイスラエルは、欧米が強化しているイランへの制裁措置や、
核協議などの進行状況を、見守る姿勢を保っていますが、
 イランが核開発をやめなければ、軍事行動も辞さない構えも見せて
います。



 同日。

 アメリカのオバマ大統領は、訪問先のコロンビア・カルタヘナで記者
会見し、
 今後数ヶ月以内に、イランの核問題をめぐる協議に進展がなければ、
追加制裁を行う考えを示しました。

 オバマ大統領は、「対話を長引かせることはしない」と述べ、「アメリ
カはイランに一切譲歩していない」と指摘しました。

 また、「この問題を外交的に解決する窓口はまだあるが、窓は閉じら
れようとしており、イランはそれを考慮に入れる必要がある」と述べて、
イラン側に譲歩を促しました。


              * * * * *


 4月16日。

 イランのサレヒ外相は、核兵器への転用が懸念される20%の濃縮
ウランの製造は、自国の権利だとする一方で、
 「欧米がイランに必要分のウランを供給すると保障するならば、それ
はまた別の話となる」と述べて、
 欧米側の対応によっては、濃縮ウランの製造を停止する可能性を
示唆しました。

 その一方でサレヒ外相は、「欧米がイランとの信頼関係の構築を望む
なら、まずは制裁の解除について議論を始めるべきだ」と述べて、
 事態を進展させるには、欧米各国による経済制裁の解除が、前提
条件になるという考えを示しました。



 同日。

 アメリカ国務省の、トナー副報道官は、6ヶ国との核協議に関連し、

 イランが制裁緩和などの「友好的な措置」を求めていることについて、

 制裁の解除や、制裁緩和の可能性を否定しました。



 同日。

 イランの、カセミ石油相は、イランが制裁を受けて原油供給が不足
した場合、サウジアラビアは長期的には、イラン産原油の減少分を
埋め合わせることが出来ないという認識を示しました。

 カセミ石油相は、「私の私見では、サウジは現在、最大限生産して
いる。サウジが増産しようとしても、一時的なものに過ぎないだろう。
長期的には、増産は長続きしない」と語っています。


              * * * * *


 4月17日。

 イランの各地で、大規模な軍事パレードが行われました。
 これは、1979年のイスラム革命後に国軍を編成したときの、記念
日に合わせたものです。

 首都のテヘラン郊外で、アフマディネジャド大統領は演説し、
 「外国勢力の介入は、破壊や混乱しか招かない。敵国がイランを
攻撃したならば、イラン軍の攻撃によって必ず後悔させてみせる」と
述べて、欧米やイスラエルを強くけん制しました。



 同日。

 UAE(アラブ首長国連邦)が、サウジアラビアなど湾岸のアラブ諸国
6ヶ国に呼びかけをして、緊急の外相会合が開かれました。

 これは、4月11日にイランのアフマディネジャド大統領が、UAEと
領有権を争っている、ホルムズ海峡に近いアブムーサ島を強行訪問
して、領有権を強調したことによるものです。

 緊急の外相会合では、イランの行動はUAEの主権を侵害する挑発
行為だと避難する、共同声明を採択しました。


 一方、アフマディネジャド大統領も、同4月17日。

 「イランの軍隊は、領土に対するいかなる敵対行為も許さない」と
述べるなど、強硬な姿勢を崩していません。


              * * * * *


 4月18日。

 イラン外務省の報道官は、UAE(アラブ首長国連邦)など湾岸アラブ
諸国が、4月17日に採択した共同声明にたいして、

 「声明には根拠がなく、イランへの内政干渉にあたり遺憾である」と
述べて、反発をしました。

 またイラン議会でも、湾岸アラブ諸国を非難する意見を、取りまとめ
ました。



 同日。

 複数の石油業界関係者によると、EU(欧州連合)のイラン産原油
輸入禁止措置が、7月1日から施行されるのを前にして、
 欧州の石油会社が、イラン産原油の調達を減らしていることが分か
りました。

 イランは昨年、EUに日量50万バレル以上の原油を供給していま
したが、
 ロイターの推計や関係者の話によると、今年3月には約42万5000
バレルに減少し、4月にはさらに7万5000バレル減ります。

 イラン産原油の輸入を減らした欧州の企業は、サウジアラビアや
イラク、ロシアからの供給で、賄(まかな)っていると言うことです。



 同日。

 複数の業界関係者の話によると、日本における4月のイラン産原油
の輸入量は、1月と2月の平均を77%下回る見通しです。

 これは、欧米によるイラン制裁に、日本も応じたためです。

 1月と2月のイラン産原油輸入量の平均が、日量32万2900バレル
だったのに対して、
 4月は、日量7万5000バレルとなる見込みで、24万7900バレルの
減少となります。



 同日。

 野田首相は衆議院の予算委員会で、鳩山元首相のイラン訪問に
関して、1月末に首相官邸で鳩山氏と会談した際に、「私もひと肌
脱ぎたい」と相談を受けていたことを明らかにしました。

 鳩山氏は会談で、「日本とイランは長い信頼関係もある。独自の
パイプをもっと使うべきではないか」と助言し、
 野田首相は、「それぞれの立場で力を発揮するのはありがたい」
と謝意を伝えたといいます。

 しかし首相は、「まさかこのタイミングでイランを訪問するとまで
詰めた話ではなかった」と釈明しました。

 鳩山氏が日本を出発する直前に、野田首相は電話で「慎重な対応」
を求め、鳩山氏が「十分、分かっている」と答えたことも明かしました。


              * * * * *


 4月19日。

 国連安保理の対イラン制裁委員会は、この日までに、昨年1年間
の活動をまとめた報告書を公表しました。

 報告書では、イランが核兵器の搭載可能な弾道ミサイル関連の
活動を行うなど、計6件の制裁違反および違反の疑いがあったと
指摘しています。

 6件のうち、3件は、加盟国が通常兵器の入ったイランからの貨物
を検査して押収したケース。
 2件は、軍事と民生の両方で利用可能な、イラン行きの物品を
押収したケース。
 残りの1件は、「核兵器を搭載できる弾道ミサイル関連の活動」
などとみられるケースだとしています。



 同日。

 イランの、カセミ石油相は記者会見で、ドイツやギリシャ、スペイン
への原油輸出を、継続していることを明らかにしました。

 イランの国営メディアは、イラン産原油の禁輸を決めたEUに対抗
するため、
 ドイツ、ギリシャ、スペインの3国への原油輸出を停止したと報じて
いましたが、それを打ち消した格好です。

 カセミ石油相によると、イギリスとフランスにたいする原油販売は、
完全に停止したとのことです。

 しかし他国への販売に関しても、金融部門にたいする制裁で、決済
に支障がでるケースもあるといいます。


              * * * * *


 4月20日。

 UAE(アラブ首長国連邦)の、ハミリ エネルギー相は、欧州向け
の原油供給を増やす計画がないことを明らかにしました。

 原油価格の高騰が需要を圧迫する場合に、産出量を変更するか
どうかについては、言明を避けています。

 ハミリ エネルギー相は、「供給側として市場供給は十分で、原油
不足もない」と述べました。

 増産の可能性については、「(生産)能力を増強しているが、それは
長期の事業だ。継続して行っており、一夜にして能力(の増強)は実現
しない」と述べています。

 ちなみに、UAEの生産能力は、日量およそ270万バレルとなって
います


              * * * * *


 4月22日。

 イラン革命防衛隊の司令官は、アメリカ軍の無人偵察機「RQ170
センチネル」の、システムやメモリーの解読に成功したと述べました。

 イランは昨年の12月に、アフガニスタンに隣接する東部の国境地帯
で、アメリカ軍の無人偵察機を撃ち落とし、アメリカのオバマ大統領が
返還を求めていました。

 イラン革命防衛隊の空軍司令官は、「われわれがこの無人偵察機
の情報システムと端末に、どれほど深く侵入できるかを、米国人に
知らしめる」と述べて、
 同機の記憶装置から引き出した情報として、パキスタンに潜伏して
いたアルカイダ指導者のオサマ・ビンラディン容疑者が昨年5月に
殺害される2週間前に、同機が潜伏地の上空を飛行していたことが
分かったと発表しました。
 さらには、修理や出動の記録についても、暗号解読が出来たとして
います。その上で、獲得したアメリカの軍事技術をもとに、イランが無人
偵察機を量産するとの方針を示しました。

 イラン革命防衛隊の同司令官は、「我々がもし無人偵察機のソフト
ウエアとHDDにアクセスできていなければ、こうした情報を入手でき
なかった」と強調しています。

 イランの国防当局者が語ったところによると、同機の情報を求める
要望が諸外国から多数来ており、とくに中国とロシアが大きな関心を
示しているといいます。

 一方、アメリカ政府は、イランが偵察機から重要な情報を入手する
可能性は、低いとの見方を示しています。



 同日。

 イランのアフマディネジャド大統領は、同国を訪問しているイラクの
マリキ首相と会談をしました。
 昨年にアメリカ軍が、イラクから完全撤退したあと、マリキ首相が
イランを訪問したのは初めてのことです。

 アフマディネジャド大統領は、「両国が関係を強化すれば、この地域
からアメリカやイスラエルなどの居場所はなくなるだろう」と述べて、
イラクとの関係をさらに強化する意向を示しました。

 イランの大統領府によると、マリキ首相も両国の繁栄のためにイラン
との関係強化を進めたいと応じたということです。

 今回の会談では、経済協力のほか、5月23日にイラクの首都バグ
ダットで開催される、6ヶ国とイランとの核協議についても意見交換を
したとみられますが、その詳細は明らかにされていません。



 同日。

 イランの石油省や国営石油会社、主要な石油輸出ターミナルの、
インターネットなどの通信システムが、サイバー攻撃を受けました。

 攻撃は22日の夜遅くに発生しましたが、石油省の民間防衛の責任
者は、当局が危機対策本部を設置したと述べ、
 ウイルスの拡散を防ぐために、同省や国営石油会社のインターネット
接続も遮断されました。

 これについてイラン石油省の報道官は、サイバー攻撃を受けた事実
を認めたうえで、
 「主なサーバーは隔離されており、石油省の重要なシステムのデータ
に問題はない」と述べ、
 今回のサイバー攻撃によって、イランの石油産業に、大きな被害は
出なかったことを強調しています。

 ちなみに、イランでは2009年〜2010年に、核関連施設が「スタッ
クスネット」というウイルスに感染したとされています。
 イラン当局は、イランの核開発を妨害するために、アメリカとイスラエ
ルが同ウイルスを開発したと非難していますが、両国はこれについて
コメントしていません。


              * * * * *


 4月23日。

 アメリカのオバマ大統領は、シリア政府とイラン政府が、インターネット
を監視するなど情報通信技術を使って、人権侵害を行っているとして、
 シリアの諜報機関のトップや、イランの革命防衛隊、さらには技術を
提供している両国の通信会社などを対象に、
 資産を凍結したり、ビザの発給を規制する、制裁措置を発動しました。

 アメリカ財務相によると、制裁対象となるのは、シリアの携帯電話会社
シリアルや、シリアのGID(総合情報局)、イランのインターネット接続
業者ダタック・テレコムなど、合わせて6つの団体と個人1人です。

 オバマ大統領は、首都ワシントンのホロコースト記念博物館で演説し、
「こうした(情報通信)技術は、市民が力を持つために使われるべきで
あって、市民を抑圧するために使われることがあってはならない」と
強調しています。


 また、オバマ大統領は、世界の残虐行為防止を目的とした委員会を
設置したことも発表しました。

 反政府勢力の弾圧をつづけるシリアを念頭に、「国家主権が国民を
虐殺するための口実になってはならない」と強調しています。

 集団虐殺の防止は、「国家安全保障上の利益の中核を成す」としまし
たが、しかし、
 「これは残虐行為が犯されるたびに、軍事的に介入するという意味で
はない。それは不可能であり、やってはならない」と述べており、
 11月の大統領選に向けて、大統領批判を強める共和党の候補者ら
をけん制しています。


              * * * * *


 4月24日。

 イラン外務省のメフマンパラスト報道官は、アメリカのオバマ大統領
が4月23日に新たな制裁措置を発動したことについて、
 「欧米諸国によるいかなる否定的な決定も、今後の協議に影響を
与える」と述べて、欧米との核協議への影響を警告しました。

 同報道官は、「新たな制裁を科すことは誤りだ。制裁を解除すること
が、過去の過ちを正す適切な行動だ」と訴えています。

 また、5月23日にイラクの首都バグダットで開催される、6ヶ国とイラ
ンとの核協議を前にして、IAEA(国際原子力機関)の訪問を受け入れ
る用意があることも表明しました。

 しかしながら、核兵器開発に関連した実験を行ったとされる、首都
テヘランの郊外にあるパルチン軍事施設への、IAEAの立ち入りに
ついては、
 「義務ではない。双方の合意なしには実現しないだろう」と、語って
います。



 同日。

 アメリカ国防総省は、戦闘地域以外の諜報(ちょうほう)活動を担う
ための、新組織を立ち上げる方針を決めました。

 核開発疑惑があるイランや、海洋進出を急ぐ中国など、アメリカの
安全保障への脅威となりつつある国や地域を対象に想定し、
 アジア太平洋重視を柱とする、新たな国防戦略の具体化に向けた
政策の、企画や立案能力の強化を目的とします。

 アメリカ国防総省のカービー報道官(海軍大佐)は、記者団にたいし
て、新組織は「国防機密局」と名づけられると説明しました。
 新設する理由については、「偵察衛星などを利用した国防総省の
情報収集能力は高いものの、要員による情報収集能力は向上させる
余地が多く残っている」ことを指摘しています。
 新しい組織は、既存の予算と人員の範囲内で立ち上げますが、将来
的には、数100人単位の専門職員を配置する構想です。

 アメリカ国防総省は、新組織の発足にともない、CIAなど他の情報
機関との連携も強めるとしています。
 しかしながら過去においては、国防総省とCIAが情報収集や特殊作戦
の進め方などをめぐって、対立する場面が目立っていました。
 また、アメリカ政府内には、情報機関の乱立により、情報収集活動が
重複し、行政の非効率化につながる可能性を指摘する向きもあります。
 さらには、中国やイランなど対象国の反発を招き、潜在的な対立関係
をあおりかねないとの懸念も出ています。


              * * * * *


 以上、4月11日〜24日までの動きについて、見てきました。


 アメリカ軍が完全撤退した後のイラクと、イランとの関係が、親密に
なってきました。

 イランのアフマディネジャド大統領は、「両国が関係を強化すれば、
この地域からアメリカやイスラエルなどの居場所はなくなるだろう」

 と述べて、イラクとの協力関係を、さらに強化する考えを示してい
ます。


 イランとイラクの関係が強化されれば、相当に大きな勢力となり、

 さすがのアメリカ軍といえども、かなりの覚悟をしなければ、そう簡単
には軍事介入ができなくなるのでは、ないかと思います。


 これは中東情勢にとって、「ものすごく重大な動き」だと言えるでしょう。



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