原発について思うこと 1
2012年4月8日 寺岡克哉
近ごろ、福井県の大飯(おおい)原発をめぐって、3号機と4号機を
「再稼動」させようとする「政府の動き」が、活発になってきました。
現在、日本で稼動しているのは、北海道の泊(とまり)原発3号機
の、1基だけですが、それも5月5日には、定期点検のために停止
する予定になっています。
そうなれば、いよいよ日本は、「ゼロ原発時代」に突入します。
政府としては、そのような「ゼロ原発時代」という既成事実ができて
しまうのを、「阻止したい」という思惑が、恐らくあるのでしょう。
そのため政府は、大飯原発の再稼動を急いでいるのだという論調
が、テレビや新聞などのマスコミで散見されます。
しかし、私は思うのですが・・・
日本にある54基の原発のうち、北海道の片隅(かたすみ)に、たっ
た1基だけの原発が稼動している状態というのは、
首都圏や太平洋ベルト地帯、つまり日本の経済や産業の主要部
にとって、
すでに事実上、「ゼロ原発時代」に突入しているというのが、
実際の状況でしょう。
「日本から、原発が無くなった状態」というのは、いま正に、この
状態のことを言うのです!
べつに、日本経済が壊滅するとか、何万人もの大量の餓死者や
凍死者がでるとか、そんな酷(ひど)いことには、ぜんぜんなっていま
せん。
あとは、政府の補助金を増やしたり、あるいは政府が、ゼロ金利で
一般国民にお金を貸しつけるなどして、
まずは日本の家屋のほとんど全てに、できる限り早急に、どんどん
太陽電池を取りつけて行けば、
日本は原発が無くても、何とかやっていける国になるだろうと思い
ます。
この他にも私は、原発について、いろいろ心配に感じたり、疑問に
思っていることがあります。
なので今回は、それらのことについて、お話したいと思いました。
* * * * *
東京電力は、先月の3月26日・・・
福島第1原発2号機の原子炉内を、テレビカメラで撮影した映像
を公開し、
原子炉内の水位が、底部から60センチの高さしか無かったと、
発表しました。
それまで予想していた水位よりも、およそ3メートルも低かったと
いいます。
この報道を知って、まず私が最初に驚いたのは、
(おそらく配管の水圧から)予想していた水位より、3メートルも
低かったことです。
これでは、実際に原子炉の中を見てみるまで、今までのモニター
方法では、原子炉内の水位がまったく分からないことになります。
1号機や3号機の水位も、実際にはどうなっているのか、分かった
ものではありません。
それにしても、原子炉内の水位が、たったの60センチ・・・
これでは、原子炉中心部の「圧力容器」が、ぜんぜん水に浸かっ
ていないことになります。
圧力容器内に残っている核燃料は、本当に冷やされているので
しょうか?
それとも、核燃料のほとんどが「メルトスルー」してしまい、圧力
容器を突き破って下に落ちてしまったので、
圧力容器が水に浸かっていなくても、今まで大丈夫だったのでしょ
うか?
何とも疑問に感じるところです。
そして、やはり・・・
原子炉内に注入した水は、すべて「ジャジャ漏れ」状態だったの
です。
漏れた「高レベル汚染水」は、一体どこに行ったのでしょう?
おそらく大部分は、原子炉建屋の地下などに溜まって、回収され
ていると思いたいですが、
漏れた高レベル汚染水は、本当にすべて回収されているので
しょうか?
もしかしたら、
地下水などに混ざって、あるいは、知られていない海中の亀裂
などから、
高レベル汚染水が、海へ漏れ続けているのではないでしょうか?
その他にも、
浄化システムのトラブルによって、汚染水がちょくちょく漏れ出し
ており、その中には、海にまで漏れ出たものもあります。
このように、原発事故による放射能汚染は、いま現在でも、まだ
拡大し続けています。
だから福島第1原発の事故は、けっして「収束」などしていま
せん!
* * * * *
ところで・・・
放射能に汚染されたガレキを、全国の自治体に分散させて処理
させようという、
いわゆる「広域処理」についても、いろいろと疑問に感じることが
あります。
まず第1に、
ガレキを焼却すると、かならず放射性物質が、大気中に放出
されます!
たとえば焼却施設に、どんなに優れたフィルターを設置したと
しても、
大気中に放出される放射性物質を、完全にゼロにすること
は、絶対に不可能です!
だから、どうしても、ガレキの処理を受け入れなければならない
と言うのならば、
どれくらい放射能汚染された(1キログラムあたり何ベクレルの)
ガレキを、
どれくらいの量(何トン)焼却すれば、
どれだけの放射性物質が、大気中に放出されるのかを、
それぞれ各自治体の、さらには、それぞれの各焼却施設ごとに、
机上の計算や、シミュレーションなどではなく、
実際の施設で、かならず「実証テスト」を行って、その結果を
公表しなければ、ならないでしょう。
そうしなければ、とても納得などできません!
くり返しますが、放射能に汚染されたガレキを焼却すれば、かなら
ず放射性物質が、大気中に放出されます。
だから、焼却施設の近くに住む人々は、その放射性物質を、かな
らず「吸い込む」ことになるのです。
その被曝量(しかも内部被曝)を、きっちりとした「実証テスト」に
よって明らかにしなければ、
焼却施設の近くに住む人々は、けっして納得なんか出来ないで
しょう。
* * * * *
そしてまた、
ガレキの「広域処理」に関しては、焼却した後にのこる、
放射性物質が濃縮されて、放射能が高くなった「焼却灰」を
どうするのか?
ということにも、大きな疑問を感じます。
政府は、焼却灰の放射能が、1キログラムあたり8000ベクレル
までなら、
ふつうの廃棄物とまったく同じように、埋め立てることが可能だと
しています。
しかしながら、1キログラムあたり8000ベクレル・・・
この汚染レベルについて、私なりに調べ、考察してみたら、
以下のことが分かりました!
たとえば「土壌」が、1キログラムあたり8000ベクレルの汚染
をしていた場合、
文部科学省による換算方法を採用すれば、1平方メートルあた
り52万ベクレルの汚染になります(※1)。
そして一方、
文部科学省の、「警戒区域及び計画的避難区域における航空機
モニタリングの測定結果について(平成24年2月24日付)」という
資料を見ると、
1平方メートルあたり30万〜60万ベクレルの、放射性セシウ
ム(セシウム134+セシウム137)に汚染された地域は、
福島第1原発の、南〜南南西の方向や、西南西の方向。つまり、
比較的汚染の少ない方面では、
原発から15キロメートル離れた場所が、そのような汚染レベルに
なっていました。
つまり、
1キログラムあたり8000ベクレルというのは、
福島第1原発から、たった15キロメートルしか離れていない
場所と、おなじレベルの放射能汚染なのです。
この汚染レベルの場所には、福島県の楢葉町や、大熊町の
西部など、いま現在でも「警戒区域」に指定されている地域が
あります。
そんな高いレベルに汚染された「焼却灰」を、ふつうの産業
廃棄物と同じように埋め立てることなど、
絶対に認めることは出来ません!
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※1 ベクレル/キログラム から ベクレル/平方メートル への
文部科学省による換算方法
文部科学省の土壌検査では、地表から深さ5センチまでの土壌
を採取しており、土壌の比重を1.3グラム/立方センチ として
います。
だからまず、1キログラムの土壌は、769.2立方センチの体積
になります(1000/1.3 =769.2)。
つぎに、769.2立方センチの土壌(つまり1キログラムの土壌)
を、5センチの深さで敷き詰めたとすれば、153.8平方センチの
面積になります(769.2/5 =153.8)。
そして、1平方メートルとは10000平方センチなので、土壌を
5センチの深さで、1平方メートルの面積を敷き詰めるには、65
キログラムの量が必要になります(10000/153.8 =65.0)。
さて、ここで、
この土壌が、1キログラムあたり8000ベクレルの、放射能汚染
をしているとします。
その土壌が、深さ5センチで、1平方メートルの面積に敷き詰め
られていれば、そこには65キログラムの土壌があるので、全体
では52万ベクレルの放射能になります(8000×65=520000)。
つまり、地表から深さ5センチまでの土壌を採取し、その土壌の
比重が1.3グラム/立方センチ である場合は、
1キログラムあたりの放射能(ベクレル/キログラム)から、
1平方メートルあたりの放射能(ベクレル/平方メートル)に
換算するためには、
65倍すれば良いのです。
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原発については、他にも色々と思うことがありますが、機会をみて
また後日にでも、お話したいと思います。
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