ホルムズ海峡が封鎖? その10
2012年3月18日 寺岡克哉
今回も引きつづき、
イラン情勢をめぐる世界の動きについて、見て行きます。
* * * * *
3月8日。
イスラエルのネタニヤフ首相は、数日や数週間以内に、イランの
核施設を、イスラエルが攻撃することは無いと述べました。
ネタニヤフ首相は、テレビのインタビューで、「私はストップウォッチ
を手にして構えているわけではない。数日、数週間という問題では
ないが、数年という問題でもない」と語りました。
また、「この問題(イランの核問題)が平和的に解決され、イランが
核プログラムの停止を決めれば、喜ばしい」とも語っています。
同日。
イスラエルの当局者が明らかにしたところによると、イスラエルは、
イランの地下核施設への攻撃力増強につながる、地下攻撃用特殊
爆弾の「バンカーバスター」と、空中給油機の提供を、アメリカに要請
しました。
当局者は、ネタニヤフ首相の訪米前後に、「そのような要請が
行われた」と述べていますが、
「アメリカが武器を提供する上で、イスラエルが年内にイラン攻撃
をしないとの約束を条件にした」という、イスラエル・メディアの報道
は「非現実的」と指摘しています。
アメリカ・ホワイトハウスの、カーニー報道官は、ネタニヤフ首相の
訪米中にそうした要請があったかとの、記者団の質問にたいして、
オバマ大統領との会談や、ほかの高官との会談でも、「そのような
取り決めは提案されなかったし、成立もしていない」と述べています。
しかしながら、この件がパネッタ国防長官や、ほかのアメリカ当局者
に提起されたかとの質問にたいしては、「情報がない」と答えました。
アメリカ当局者は匿名を条件に、ネタニヤフ首相とパネッタ国防長
官との会談で、
軍事協力に関する協議があったことを明らかにしましたが、詳細
には言及せず、会談ではどのような合意も無かったとしています。
同日。
この日付けの、イスラエル紙ハーレツが報道した、世論調査結果
によると、
アメリカが軍事攻撃をしないのであれば、イスラエルは単独攻撃に
踏み切るべきでないと答えた人が、58%に上りました。
この世論調査は、3月4日〜5日に実施されたといいます。
同日。
イランの最高指導者ハメネイ師は、
アメリカのオバマ大統領が前日に、「(イランの核問題は)まだ外交
的に解決する機会が残されている」と発言したことに対し、
「これらの言葉は良い言葉であり、もはや妄想に陥っていないこと
を示している」と述べました。
「しかし、アメリカの大統領は引きつづき、イラン国民を屈服させる
イランへの制裁について語っていた」とし、
発言のこの部分は、核問題について「まだ妄想的だ」と述べました。
同日。
複数のアメリカ政府高官が、この日までに、イランによるシリアへの
物的、人的支援が加速し、懸念材料になっていることを明らかにしま
した。
イランとシリアは同盟関係にあり、イランは、反体制派への弾圧を
続けているアサド政権存続のために、最大のてこ入れを図っている
とされています。
アメリカ政府高官によると、イランはシリアに反体制派鎮圧のため
の兵器、暴動鎮圧用の装備品、訓練や資金を提供しているほか、
コンピューター通信監視などのための技術支援も実施しています。
また、支援物資を運ぶために、イラン政府関係者のシリア訪問も
続いているとのことです。
同3月8日。
国連安保理常任理事国にドイツを加えた6ヶ国は、IAEA(国際
原子力機関)の定例理事会で、
イランにたいし、核開発疑惑の解明に向けて無条件に全面協力
するように迫る、「共同声明」を発表しました。
イランは、核関連施設への査察を受け入れる方針を、すでに表明
しているのですが、
その実行性を疑っている6ヶ国が、声明を出すことによって、イラ
ンに圧力をかけた格好です。
共同声明では、「核問題を外交で解決することを今後も支持する」
という合意を確認し、
イランにたいして、「前提条件をつけずに、真剣な議論に入るべき
だ」と迫っています。
6ヶ国のうち、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツの4ヶ国は、経済
制裁などでイランに強硬姿勢で臨んでいますが、
中国とロシアの2ヶ国は、硬軟両方を使い分ける姿勢を、崩して
いません。
このため共同声明は、核査察への協力をイランに強く求める一方
で、あくまでも外交交渉での解決を訴える内容となりました。
ちなみに欧米諸国には、さらに警告度が高い「非難決議」の採択
を目指す動きがありました。
が、しかし、発展途上国を中心に「イランの動きを見守るべきだ」
という声が根強かったことから、
6ヶ国だけで発表することができる「共同声明」に、切り替えたと
いうことです。
ところで、核兵器の開発が疑われている、イランのパルチン軍事
施設では、
敷地内で重機をしきりに動かすなど、「証拠隠滅」を思わせる活動
が確認されており、欧米側の懸念を呼んでいます。
アメリカの代表団は、「もし、イランが(IAEAに)必要な協力をしな
ければ、6月の定例理事会で、次の措置を取らなければならない」
と発言し、
イランの対応次第で、さらに厳しい対抗手段にでる可能性を示唆
しました。
また、パルチンでの証拠隠滅疑惑について、「事実ならきわめて
深刻だ」と述べています。
同日。
IAEAの定例理事会が、イランの核兵器開発疑惑に関する集中
討議を終えて、閉幕しました。
疑惑の調査方法をめぐっては、IAEAで最大勢力の「非同盟諸国」
がイラン側の主張に理解を示したのにたいし、欧米などはIAEA事務
局の方針を支持しました。
IAEA事務局は、「幅広い調査方法」を主張しましたが、イランは、
調査の対象や順番を固定し、いちど調べた項目には再びもどらない
という調査方法を主張しています。
このイランの主張は、2007年にIAEAと合意した「作業計画」に
基づくものです。
最大勢力である「非同盟諸国」の議長国エジプトは、イランとIAEA
の「実質的な関与の継続を奨励する」と述べましたが、
しかし調査方法については、「(イランの主張する)作業計画に従う
べきだ」と言明しました。
一方、EU(欧州連合)の議長国デンマークは、「IAEAの取りくみ方
は正しい」と指摘し、
アメリカも、「定評のあるIAEAの検査方法に基づかなければならな
い」という主張を、譲りませんでした。
イラン側は、パルチン軍事施設への、IAEAの査察を受け入れる
条件として、「調査方法の合意」を挙げており、打開のめどは立って
いません。
同日。
IAEAの天野事務局長は、定例理事会の閉幕後に記者会見し、
核兵器開発疑惑をめぐるイランの姿勢について、「合意を不可能
にしている」と述べ、イランとの協議が不調に終わったことを、明ら
かにしました。
天野事務局長は、イランとの「調査方法の合意」において、「あま
りにも多くの制限を課せられれば、われわれは業務を遂行できない」
と訴えています。
IAEAは、今後も「調査方法」に関する協議をつづけて行く方針で
すが、イランと合意できるかどうか不透明な状況です。
天野事務局長は、「IAEAだけで全てのことに対処できない」として、
6ヶ国とイランとの交渉に期待を示しています。
* * * * *
3月9日。
アメリカのホワイトハウス当局者は、イランへの国際包囲網の形成
で、中国が「建設的な役割」を果たしていると評価し、
朝鮮半島問題やグローバルな課題をめぐって、中国との協力関係
を継続していくと強調しました。
また、ホワイトハウス当局者は、6ヶ国とイランが4月にも再開する
見通しの核協議が、オバマ政権にとって当面の主要課題になると
表明しています。
また同日。
ホワイトハウスの高官は、オバマ大統領がソウルで3月26日から
開催される「核安全保障サミット」で、
北朝鮮とイランの核問題を、積極的に取り上げるとの見通しを示し
ました。
ちなみに、今回のサミットを主催する韓国政府は、
福島第1原発の事故を踏まえ、「原発を狙ったテロの防止などを
主要議題に据える方針」を示しています。
* * * * *
3月13日。
イスラエルの当局者は、イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザの
武装組織が、3月9日から続けている交戦について、
イランとの紛争が起きた場合の、「有効な目安」になると語りました。
イスラエル軍は3月9日に空爆を行って、パレスチナ武装組織の
指導者2人を殺害しましたが、
これを受けてパレスチナ側の武装組織である、イスラム聖戦と民衆
抵抗委員会が、攻撃を激化させました。
イスラエル側によると、イスラエルの南部に打ち込まれたロケット弾
の数は、150発を超えたといいます。
イスラエルの高官は匿名を条件に、パレスチナ武装勢力からの
ミサイル攻撃について、
イスラエルの防衛能力にたいする、「抜き打ち検査」的なものに
なったと指摘し、
イランとの紛争が起きた場合に、どのような対応をするかの、有効
な目安になったとして、「ある意味、これは小規模な軍事演習だった」
と述べました。
さらには、「もちろん大きな違いはあるが、”次の日”のシナリオに
関する基本原則は同じようなものだ」とコメントしています。
「次の日」とは、イスラエルがイランの核施設へ先制攻撃を仕掛け
た場合に、
その報復として、イランがイスラエルに、ミサイルで攻撃するケース
を指したものと思われます。
同3月13日。
イラン外務省の、メフマンパラスト報道官は、パルチン軍事施設
の証拠隠滅を図っている可能性があるとした報道について、
「根拠のない情報だ」と否定しました。
メフマンパラスト報道官は、「仮に核兵器開発に関する実験が
行われたとすれば、証拠を隠すことはできない」と強調し、
「パルチン軍事施設で、核兵器開発の意図を隠す作業が行われ
ているという主張は正しくない」と強く批判しました。
また、1月と2月にイランを訪問した、IAEA(国際原子力機関)の
高官級調査団が、パルチン軍事施設への立ち入りを拒否された件
については、
「調査団がもっと長く滞在していれば、日程や手順などについて
合意でき、おそらく(立ち入りが)実現しただろう」と語っています。
同日。
アメリカのシンクタンクの、ISIS(科学国際安全保障研究所)は、
パルチン軍事施設で、核兵器開発に使われる高性能爆薬の
実験を行った疑いがある建物を「特定した」として、衛星写真を
公表しました。
同日。
ロイターとイプソスが行った、アメリカの世論調査によると、イラン
の核兵器製造を示す証拠が見つかれば、
イランにたいする軍事攻撃を支持すると答えた人が、全体の
56%を占めました。一方、反対した人は39%です。
ガソリンの価格が上昇しても、攻撃を支持するかという質問にたい
しては、53%が支持すると答え、「支持しない」と答えた人は42%
でした。
また、同様の状況で、イスラエルによるイランへの軍事攻撃を
支持すると答えた人は、62%でした。
同日。
クウェートで、産油国と消費国の、合計およそ80ヶ国の閣僚級
による会議、IEF(国際エネルギーフォーラム)が開幕しました。
中東筋が明らかにしたところによると、アメリカはこの席で開いた
サウジアラビアとの2国間協議で、
「イランへの制裁が適用される7月に、サウジとして融通が可能か
どうか打診した」みたいです。
サウジ側の回答は、「必要であれば市場の需要に応じる用意が
あるが、政治には関与したくない」と言うものでした。
また、「今後数ヶ月間のサウジの産油量に、サプライズは予想
されない」と、付け加えたそうです。
ちなみにイランは、サウジアラビアなどが増産に踏み切った場合
には、報復措置をとると警告しており、
今後、サウジアラビア産の原油を乗せたタンカーが通過するホル
ムズ海峡などで、軍事的な緊張が一段と高まる恐れもあります。
今回アメリカが、サウジアラビアに原油の増産を打診したことは、
国際市場の今後について、アメリカが懸念を深めていることを、示し
たものと受けとられています。
サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は、IEF(国際エネル
ギーフォーラム)の席上で、
「必要があれば喜んで増産に応じる」と述べ、消費国にくすぶる
需給のひっ迫懸念を打ち消しました。
これに対して石油関係筋は、「数ヶ月以内にサウジが大幅増産
することは予想しにくく、増産するにしても7月以降だろう」という
見通しを示しています。
牧野 経済産業副大臣は、クウェートで、サウジアラビアのヌアイ
ミ石油鉱物資源相と会談をしました。
牧野副大臣が、中東有事などで石油供給に支障が出た場合の、
支援を要請したのに対して、
ヌアイミ石油鉱物資源相は、「そういう状況になったら、かならず
日本を支援する」という考えを示してくれました。
牧野副大臣はまた、アメリカ・エネルギー省の、ポネマン副長官とも
会談しました。
日本が原発停止にともなう火力発電増加への対策として、アメリカ
政府が本土からのLNG(液化天然ガス)の日本輸出を許可するよう
に、あらためて要請しました。
それに対してポネマン副長官は、「アメリカ経済への影響などを調査
してから判断する」という考えを示しています。
同日。
日本政府は、この日の閣議で、イランのテジャラート銀行を、新たに
制裁の対象とすることに決めました。
テジャラート銀行は、イラン国内におよそ2000の支店を持っており、
イランで第3位の資産規模を誇っています。
日本は、イランに自動車や鉄鋼など、おもに工業製品を輸出しており、
昨年の輸出総額は1360億円に上りますが、その決済の大半は、この
銀行を通じて行われていました。
しかし日本政府は、欧米諸国と協調し、イランへの制裁を強める必要
があるとして、
テジャラート銀行と、日本の金融機関との間の、取引きを禁止する
ことに決めました。
制裁の実施にあたっては、資本金が10億円を超える企業は半年、
10億円以下の企業は9ヶ月の移行期間を設け、イランのほかの金融
機関を通じた決済を、うながす方針です。
玄場外相は、閣議のあと記者団にたいし、「日本経済に若干の影響
があるかもしれないが、国際協調が今いちばん大切な局面だと思っ
ている。何が効果的な制裁たりえるのか、いつも考えているが、その
一環であると考えていただきたい」と述べています。
* * * * *
3月14日。
アメリカのオバマ大統領は、国賓として訪れているイギリスのキャメ
ロン首相と、ホワイトハウスで会談をしました。
オバマ大統領は歓迎式典で、「世界で最も危険な兵器で人々を危険
にさらす者たちから国を守るために、我々はともに立つ」と述べ、イラン
をけん制しました。
また、「歴史の変遷(へんせん)や紆余曲折(うよきょくせつ)の中でも、
米英間の磐石な同盟関係は不変」と強調し、
世界経済回復や、核不拡散、中東民主化支援などで、米英両国が
指導力を発揮していく決意を示しました。
さらには、「米英同盟は世界の人々の安全と繁栄に欠かせない」と
指摘するとともに、「米英間はこれまでで最も強固だ」と宣言しました。
キャメロン首相も、「米英間のパートナーシップは、世界史上で最も
強力。両国首脳は今後も団結しつづける」と述べています。
オバマ大統領と、キャメロン首相の会談は、2時間にわたりました。
その中でオバマ大統領は、これまでのイランとの協議について、
「イラン指導部は、遅らせたり、引き延ばしたり、口約束をするだけで、
実際にはボールを前に進めてこなかった」と批判しています。
会談後の記者会見でオバマ大統領は、「米英にはイランの核開発
にたいする外交的解決を目指すのに、十分な時間と余地がある」と
いう認識を示しました。
しかしながら、「この問題を外交的に解決できる余地は小さくなって
来ている」と述べて、
「外交交渉が失敗に終わった場合には、軍事行動が選択肢になる」
と、イランにたいして強く警告しています。
キャメロン首相も、外交的解決を目指すとしたうえで、「イランが国際
的な義務を果たさないなら、あらゆる選択肢を排除しない」と述べ、
アメリカと連携して、イランへの圧力をさらに強めていく姿勢を示しま
した。
同日。
アメリカABCテレビと、ワシントンポスト紙が、世論調査の結果を発表
しました。
それによると、「イランが本当に核兵器を開発していると思うか」と
いう質問には、84%に上る人々が「開発していると思う」と答えました。
その解決策について、「イランの核関連施設への、イスラエルによる
空爆を支持する」と答えた人が42%なのに対して、「反対する」と答え
た人は51%に上っています。
アメリカによる、イランへの空爆についても、「支持する」が41%なの
に対して、「反対」が53%と過半数に達しました。
「問題を解決するため、アメリカとイランの直接対話を支持するか」
という質問には、
81%が「支持する」と答えており、大多数の人が、外交的な解決を
探るように求めています。
「もしもイスラエルがイランを攻撃した場合、中東の他の地域を巻き
込む戦争に発展する危険性はあるか」という質問にたいしては、
88%が「危険性はある」と答えており、ほとんどの人が、イランへの
軍事攻撃による、中東全体への戦火の拡大を懸念していることが分か
りました。
この世論調査は、3月7日〜10日に、1003人の成人を無作為に
抽出して電話で行われました。
同日。
イラン国会は、アフマディネジャド大統領を喚問しました。
イランの国会が、大統領にたいして喚問を行ったのは、1979年の
イスラム革命以来、初めてのことです。
大統領が進めた補助金の削減により、急激な物価高騰をまねいた
との議員からの批判に、
大統領は「理由はほかにある」と指摘し、欧米の経済制裁や、世界
的な経済危機などが影響していることを示唆しました。
また、大統領が昨年の4月に、モスレヒ情報相を解任しようとして、
最高指導者ハメネイ師に阻止されたため、およそ10日間にわたって
公の場に出なかったことについて、国会議員は、「ハメネイ師にたいす
る反抗だ」と非難しました。
それに対して大統領は、「仕事を中断したわけではない。私はハメ
ネイ師をつねに尊敬している」と答えています。
その上で、「議会は私への喚問ではなく、国民のためにすべきことが、
他にあるのではないか」と述べ、議会を批判しました。
国会議員選挙前の喚問に応じなかった理由について、反大統領派
が説明を求めたのに対して、
大統領は、「選挙結果に影響を与えかねなかったからだ」と答えま
した。
大統領は、1時間ちかい喚問の最後に、「私の政権で重大な過失が
あったとは証明されていない。100点満点でないとの評価を下すなら
(100点満点が当然であり、そうではないと評価を下すなら)、それは
不公平かつ卑劣だ」と述べ、重ねて議会を批判しました。
このような大統領の答弁には、正面から答えるのを避けたり、反対
に問いかけたりする場面も見られ、不真面目だと批判する声も上がっ
ています。
今後イラン国会は、アフマディネジャド大統領の回答を十分だとして
「さや」を収めるか、
大統領への不信任投票を発表して、弾劾(だんがい)のプロセスに
入るかの、どちらかを選択することになります。
これについてイラン問題の専門家は、「弾劾はありえない。ハメネイ
師は、混乱を起こしたくないと思っているからだ。アフマディネジャド大
統領との対立が、さらに先鋭化すれば、大統領はイランの政治体制を
崩壊させかねない」と分析しています。
同日。
この日付けの、ロシア有力紙のコメルサントによると、
アメリカのクリントン国務長官は3月12日。ロシアのラブロフ外相に
たいして、
イスラエルによる、イランへの攻撃を回避するには、6ヶ国とイラン
との間で来月に行われる見通しの協議が、「最後のチャンスになる」
という考えを示しました。
コメルサント紙によると、ロシア外交筋の話として、クリントン長官が
ニューヨークで、ラブロフ外相と話し合った際に、
こうしたアメリカ側の姿勢を「はっきりと示し」、それをイラン指導部に
伝えてほしいと要請したとのことです。
また、コメルサント紙によると、あるロシア外交筋は、「イスラエルは
事実上、オバマ大統領を脅迫している。イスラエルはオバマ氏を、戦争
を支持するか、それとも(再選をめざす次の大統領選で、ユダヤ系
ロビーの)支持を失うか、どちらかを選択する状況に追い込んだ」と語っ
ています。
(※ユダヤ系ロビーは、アメリカで屈指の勢力を誇っており、その支持
を失えば、大統領選には勝てないと言われています。)
ロシア外務省の報道官は、コメルサント紙の報道内容を、確認も、
否定も、しませんでした。
アメリカ国務省の報道官は、「プライベートな外交上のやりとりについ
てはコメントしないが、以前から言っているように、われわれはイラン
が国際社会の懸念に真剣に対処する姿勢があるかぎり、外交的解決
のための時間はあると、引きつづき信じている」と述べています。
同3月14日。
アメリカと産油国との間で行われた協議の、参加者が明らかにした
ところによると、
アメリカは、サウジアラビアや、UAE(アラブ首長国連邦)、そして
クウェートから、
イランへの経済制裁による影響を打ち消すための、原油の生産
拡大について、「確約」を得たとのことです。
原油の増産について、正式の要請や交渉、合意などはありませ
んが、
アメリカ当局者は、「サウジとUAEが、石油価格の高騰回避のため
に、十分な増産を実施すると確信している」と語っています。
同日。
サウジアラビアの、ヌアイミ石油鉱物資源相は、クウェートで開か
れているIEF(国際エネルギーフォーラム)で講演し、
「現在、原油市場は総じて均衡しており、十分な生産量と精製能力
がある。サウジアラビアやその他の国は、認識上のものであれ、実質
的なものであれ、原油供給におけるいかなる不足分でも埋める準備
ができている」と述べました。
同日。
イランの交渉担当者であるジャリリ氏は、EU(欧州連合)の外交
安全保障担当のアシュトン上級代表に書簡を送り、
6ヶ国とイランとの間で行われる「核関連交渉」について、日時の
設定を要請しました。
* * * * *
以上、3月8日〜14日までの動きについて、見てきました。
前回のレポートで、3月5日にイスラエルのネタニヤフ首相は、
イランの核武装化について、
「イスラエルは、根気よく国際社会による外交的解決を待っていた
が、これ以上は待てない」と語っていました。
そして今回のレポートで、3月8日にネタニヤフ首相は、「私は
ストップウォッチを手にして構えているわけではない。数日、数週間
という問題ではないが、数年という問題でもない」と語っています。
これらから推察すると、イスラエルは今後数ヶ月の間に、イランに
対して軍事攻撃を仕掛ける可能性があるように思えます。
一方、アメリカのオバマ大統領は、前回のレポートで3月6日に、
「代償を払うのは(米軍の)兵士と家族だ」と述べて、イランへの軍事
攻撃にたいして慎重な姿勢を示し、
「来週や2週間後、あるいは1ヶ月や2ヶ月後に、イラン攻撃の決断
を迫られることはない」と、明言していました。
しかし今回のレポートで、3月14日にオバマ大統領は、「(イランの
核開発)問題を、外交的に解決できる余地は小さくなって来ている」
と述べ、
「外交交渉が失敗に終わった場合には、軍事行動が選択肢になる」
と、イランにたいして強く警告するようになりました。
これらから推察すると、イランが今後3ヶ月以内に核開発を放棄
しなければ、アメリカは軍事行動の選択肢をとる可能性があるように
思われます。
それにしても・・・
パレスチナ・ガザ地区での交戦を、「ある意味、これは小規模な軍事
演習だった」と言ってのけたり、
つぎの大統領選を人質にして、オバマ大統領さえも脅迫するという、
(もしも、これらが本当のことなら)イスラエルという国は、いったい
何なのだろうという思いが隠しきれません。
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