ホルムズ海峡が封鎖? その8
2012年3月4日 寺岡克哉
今回も引きつづき、イランをめぐる世界情勢について、見て行き
たいと思います。
* * * * *
2月22日。
イスラエルのリーベルマン外相は、イランへの軍事攻撃について、
決断するのは「イスラエル政府だけだ」と述べて、アメリカやロシア
からの自制要求をはねつけました。
リーベルマン外相は、「イスラエル市民の安全や国家の未来」に
責任を負うのは、イスラエル政府だけだと強調し、
国際社会の意向に構わず、必要ならイラン攻撃を決断するという
政府の方針を示しました。
同日。
イランの最高指導者ハメネイ師は、首都テヘランで演説し、
「イランは核兵器を求めている訳ではない」と述べ、核開発は、
あくまでもエネルギーの確保が目的だと強調しました。
その上で、「核開発は断固として続けなければならず、経済制裁
や、科学者を狙った暗殺でも妨げることはできない」と述べ、核開発
を推し進める意思をアピールしました。
またハメネイ師は、「米欧が何と言おうと、核開発はイランの国益
に直結する」と強調し、
「核兵器を保有する(一部の国の)優位性を打ち崩したい」と述べ
ています。
同日。
イランに調査団を送っていた、IAEA(国際原子力機関)は、「期待
した成果が得られなかった」という声明を発表しました。
IAEA調査団は、1月末の訪問につづき、今回もパルチンにある
核関連施設(核兵器開発の疑いが持たれている軍事施設)への
立ち入りを要求しましたが、イラン側が許可しなかったと言います。
IAEAは声明で、「イランの核開発計画に関する懸案事項の解明
に向けて集中的に取り組んだが、残念ながら、そのための文書に
ついて合意に達することは出来なかった」としています。
天野IAEA事務局長は、この声明のなかで、「イランが2度にわた
り、パルチン訪問の要請を拒否したことには失望している。われわ
れは建設的な態度で臨んだが、合意には達しなかった」と述べてい
ます。
同日。
アメリカ ホワイトハウスの、カーニー報道官は、「(IAEAとイランの)
協議が失敗したことは残念だ。国際法を守ろうとしないイランの姿勢
が、また明らかになった」と述べ、イランを批判しました。
その上で、「アメリカとしては、核開発をめぐり、イランが交渉する
用意があるのか見極めたい」と話し、
イランがEU(欧州連合)に対して、核開発問題をめぐる交渉を再開
する用意があると伝えたことを踏まえ、今後の出方を慎重に見極め
ていく考えを示しました。
同日。
クウェートの、サバハ・ハリド副首相兼外相は、記者会見で、
アメリカ軍のイラク撤退にともない、クウェート駐留米軍の兵力が
増強されていることについて、
「クウェートが、対イラン攻撃の拠点になることはない」と強調しま
した。
その上で、「制裁やその他の手段でなく、対話を通じて解決する
べきだ」と述べ、イランと欧米との、核交渉の再開をつよく求めま
した。
外交筋によると、クウェートには推計で1万〜1万5000人のアメ
リカ軍が駐留していましたが、
イラク撤退後の現在は、さらに1万人ていど増えていると言いま
す。(ただしクウェート当局は、駐留米軍の具体的な人数を明らか
にしていません)。
サバハ・ハリド副首相も、駐留米軍の人数については言及を
避けつつ、「規模や装備は1992年に両国が合意した軍事協力
の枠内であり、イラク撤退とは関係ない」と説明しました。
その上で、「クウェートが陸海空いかなるうえでも、対イラン攻撃
の発進地になることはない」と語っています。
また、サバハ・ハリド副首相は、イランにたいしてIAEA(国際原子
力機関)への協力を呼びかけるとともに、
イランの核開発の目的は「平和利用」であるとの認識を示して、イラ
ンへの配慮も見せています。
イランは、「湾岸地域の平和と安定に重要な役割を追っている」と
語り、
クウェートや湾岸諸国は、事態を打開するために、イランと対話す
る用意があると表明しました。
同日。
ロシアのメドベージェフ大統領は、イランのアフマディネジャド大統
領と、市民への弾圧がつづく「シリア情勢」について電話で協議し、
「平和的手段で、外部からの介入なしで、危機を早期に克服すべき
だ」との考えで一致しました。
ロシア、イランの両国大統領は、シリアでの暴力行為を停止する
必要があると強調し、
シリアのアサド政権と、反体制派が、「前提条件なしで建設的対話
を始めること」を求めました。
また、アサド政権と反体制派の、双方の指導者により、政治、社会、
経済分野の改革を、「静かな状況のなかで、一貫して実施していく」
ように求めています。
* * * * *
2月23日。
イランの国会議員選挙の、選挙戦がスタートしました。投票は、
3月2日に行われます。
今回の選挙戦は、民主化を求めて反政府デモを行い、弾圧を
受けている「改革派」の主要候補が、選挙への参加を辞退したた
め、事実上、保守派どうしの争いとなっています。
イランの国会議員定数は290ですが、今回の選挙では、5400
人以上が立候補を届け出ました。
ところが、保守派が権限をにぎる「護憲評議会」が、事前の資格
審査を行い、多くの候補者を失格にしました。そのため最終的な
立候補者は、3444人となっています。
イランでは、2009年に大統領選挙の集計をめぐって大規模な
反政府デモが起こったあと、当局の厳しい規制で、「改革派」が力を
失っています。
このため、アフマディネジャド大統領と、ハメネイ師の確執が伝え
られるなか、保守派どうしの激しい争いとなっています。
イランは、核開発問題によって欧米の経済制裁が強化され、イン
フレが加速するなど、国内経済が疲弊(ひへい)しています。
アフマディネジャド大統領を批判する、さらに保守的なハメネイ師
の勢力は、
生活必需品にたいする補助金を削減した、大統領の経済政策を
批判して、攻勢を強めています。
(後日、「護憲評議会」はハメネイ師の影響下にあり、事前審査で
多くが失格にされたのは、アフマディネジャド大統領に近い候補者
であることが判明しました。このため大統領派は、苦しい選挙戦を
強いられることになります。)
* * * * *
2月24日。
IAEA(国際原子力機関)は、イランによるウラン濃縮活動の大幅
な拡大を示す報告書をまとめ、天野事務局長が、日、米、欧などの
35の理事国に配布しました。
報告書では、イランは同国の核開発計画が、純粋に平和目的で
あることを立証するための取り組みに非協力的であり、
核開発が軍事目的である可能性にたいして、「重大な懸念がある」
としています。
またイランは、フォルドゥの地下にあるウラン濃縮施設に、合計で
700台の遠心分離機を設置し、
濃縮度20%のウランを13.8キログラム製造したと、報告書では
指摘されています。
ちなみに、核兵器の製造には、濃縮度90%以上のウランが必要
ですが、濃縮度が20%に達すれば、行程の大半を終えたことになる
みたいです。
現在、イランが保有する濃縮度20%のウランは、原爆1個分にも
足りない量ですが、
濃縮度5%以下のウランも合計すると、濃縮度を高めれば原爆
数個分に相当する量が、すでに製造されています。
同日。
ニューヨーク・タイムズ紙は、「アメリカの情報機関は、イランが核
兵器製造を決断したことを示す、確実な証拠はないと判断している」
と報道しました。
同紙によると、欧米やイスラエルの情報機関は、イランがウラン
濃縮や核エネルギー生産に必要なインフラ整備を進めていること
では、意見が一致しています。
しかしアメリカの情報機関は、イランが2003年に一度断念した
核弾頭の製造について、再開するべきか否かの決定を、まだ下し
ていないという見方をしています。
こうした、アメリカ情報機関の見方にたいして、イスラエルや欧州
の批判が強まっており、
イラク戦争に先立つ2002年、フセイン政権の大量破壊兵器保有
で誤った判断をしたことが、アメリカ情報機関のトラウマになり、イラ
ンについては慎重になっているという指摘もあります。
同日。
アメリカ国防総省が、イラン軍によるホルムズ海峡封鎖の有事に
備え、新型機雷探知システムの配備や、ミサイル対処能力を強化
するための予算措置を、議会に要望していたことが分かりました。
アメリカ海軍は、イラン軍によるホルムズ海峡への大量の機雷
敷設(ふせつ)や、アメリカ艦艇を狙った沿岸からの巡航ミサイル
発射を警戒しています。
中東を管轄するアメリカ中央軍は、新型の機雷探知システムが
今秋前に配備されることを、要望していると言います。
同日。
玄場外相は、閣議後の記者会見で、「ホルムズ海峡が仮に軍事
オプションで封鎖されたとしても、長期戦にはならないだろう。経済
的にも、イランにとって得策ではない」と述べました。
その上で、イランがホルムズ海峡の封鎖を実行した場合の、日本
への影響について、
「国内には200日分の石油の備蓄があり、LNG(液化天然ガス)
も70日分の備蓄がある。」
「また、サウジアラビアとアラブ首長国連邦には、(ホルムズ海峡
を)迂回するパイプラインがある。日本が迂回パイプラインを全部
使えるわけではないので、それで足りるわけではないが、さまざまな
事態に対応できるように政府としてしっかり想定しており、万が一の
事態になっても、国民への影響は最小限にとどめたい」と述べてい
ます。
* * * * *
2月25日。
IAEA(国際原子力機関)が、イランによるウラン濃縮活動の大幅
な拡大を示す報告書を公表したのを受けて、
イスラエル政府は声明を出し、「われわれの分析が正しかったこと
が証明された」として、イランが核兵器を開発しているという見方を
強調しました。
また、「イランは国際社会の要求を無視して、20%までウランを
濃縮し、とどまることなく濃縮活動を続けている」と、改めてイラン
を強く非難しました。
同日。
中国の税関総署が発表した、1月の貿易統計によると、
イランからの原油輸入量を減らす一方で、ロシア、ベネズエラ、
リビアなどから代替原油を集めていることが分かりました。
イラン空爆などの事態に備えるとともに、値引き交渉でイラン
に圧力をかける狙いがあると見られます。
同日。
安住財務相が、ガイトナー米財務長官と会談をしました。
アメリカの国防権限法で、邦銀にたいして例外規定を適用する
問題について、両者は「(早期の)合意が望ましい」という認識で
一致しました。
安住財務相は、「対立点が浮かんでいる状況ではない」と、
楽観的な見方を示しています。
* * * * *
2月26日。
アメリカのガイトナー財務長官は、G20(20ヶ国・地域)財務相・
中央銀行総裁会議が閉幕した後の記者会見で、
イランに対する経済制裁について、2国間会談などを通じてイラン
からの原油輸入の大幅な削減をめぐり、「勇気づけられる内容の
協議を行った」と述べました。
このガイトナー長官の発言は、邦銀をふくむ制裁除外の最終決定
に向けた調整が、進展したことを示唆したものとみられます。
* * * * *
2月27日。
イスラエルは、イランの核施設攻撃に踏み切る場合でも、アメリカ
に予告しない方針であると、AP通信が報道しました。
複数のイスラエル当局者は、イスラエルを止められなかったという
アメリカへの責任追及論を抑えるためだと、アメリカ側に説明して
います。
イスラエルは、これまでのアメリカ側との協議から、アメリカには
イランを攻撃したり、イスラエルの攻撃に協力する考えは無いと
分析しており、
必要であるならば、イスラエルが単独で軍事攻撃に踏み切るしか
ないと、結論付けています。
2月27日現在。
イランでは、3月2日が投票日の、国会議員選挙(定数290)に
向けた選挙戦が行われています。
国際社会との対話を志向する「改革派」の大半は、政府の弾圧
を受けて不参加を決めており、事実上、保守派どうしの争いになっ
ています。
選挙では、イスラム指導体制に忠実な「反大統領派」が勢力を
伸ばす可能性が高くなっており、選挙後のイランは、核問題で一層
の強硬姿勢を取るとの見方も出ています。
イランでは、保守派のアフマディネジャド大統領が再選した2009
年6月の大統領選挙で、開票結果への疑惑から、改革派が抗議
デモを繰り広げました。
政府は、デモを徹底的に弾圧し、昨年の2月以来、改革派指導者
のムサビ元首相と、カルビ元国会議長を自宅軟禁に置いています。
このため改革派は、今回の国会議員選挙についても、「自由で
公正な選挙が望めない」として、正式候補者を立てることを見送り、
市民に投票のボイコットを呼びかけています。
改革派陣営では、一部が「穏健改革派」などを名乗って立候補し
ているだけで、全体の2割弱である改革派の現議席数を、さらに
減らす見通しです。
一方、保守派内では、最高指導者ハメネイ師を支持する派と、
アフマディネジャド大統領を支持する派が、対立しています。
聖職者ではない大統領は、宗教者層から「(思想が)イスラム体制
を逸脱している」と非難を浴びており、
「都市部を中心に大統領派候補が大敗する」との見方が強まって
います。
ハメネイ師に近い、ラリジャニ国会議長らの「反大統領派」が圧勝
すれば、選挙後のイランは宗教色が強まり、核問題での政策転換
はさらに難しくなると見られます。
イランが「正当な民主国家」であると、国際社会に印象づけたい
政府は、前回の選挙では51%だった投票率の低下を警戒し、
「敵国が選挙を妨害している」と主張する一方で、国民に選挙への
参加を促しています。
* * * * *
2月28日。
イランのサレヒ外相が、スイスのジュネーブで行われた軍縮会議
で講演をしました。
その中でサレヒ外相は、「イランは核兵器には何の栄光も誇りも、
力も感じていない」と強調し、
「イランの核開発は、間違いなく平和目的である」と、核兵器開発
の疑惑を改めて否定しました。
また、「核兵器の製造、保有、使用などは大きな罪」だとして、
「正当性を欠き、無益で有害だ」とも述べました。
これに対して、アメリカの代表が、「イランの核開発計画は、国連
安保理の決議案に違反しており、国際的な責務を果たしていない」
と批判をしています。
イランのサレヒ外相の演説では、また、イスラエルを念頭におき、
「NPT(核拡散防止条約)に加盟せずに核武装をする、1つの国が
中東地域の平和にとって深刻な脅威になっている」と批判をしてい
ます。
中東を非核地帯とするIAEA(国際原子力機関)などの構想には
理解を示し、「中東の核武装国が、構想の実現を阻んでいる」と
指摘し、重ねてイスラエルを批判しました。
イランは、核兵器開発の疑惑にたいする追及が激しくなるにつれ
て、イスラエルへの批判を強めている格好です。
同日。
トルコのダウトオール外相は、国連安全保障理事会の常任理事
国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)にドイツを加えた6ヶ
国と、イランとの核問題をめぐる協議が、4月に再開される可能性が
あると述べました。
ダウトオール外相は、「1ヶ月以内、遅くとも4月には協議が行われ
ると思う。トルコでの開催が希望なら、いつでも主催する」と述べてい
ます。
6ヶ国とイランとの協議は、昨年の1月以来、途絶えています。ダウト
オール外相は、来週にもイランのサレヒ外相と会談し、協議について
話し合う予定です。
同日。
アメリカのクリントン国務長官は、連邦議会の公聴会で証言し、イラ
ン産原油の輸入削減について、日本の対応を評価する姿勢を示しま
した。
クリントン国務長官は、「日本は昨年の東日本大震災や福島原発
の事故で、電力の供給が落ちているのに、イラン産原油の輸入量を
昨年にくらべて15%〜20%減らそうとしていることは、注目に値す
る」と強調しました。
日本政府による、イラン産原油輸入の削減幅が明らかになったの
は、これが初めてです
クリントン長官が、このように日本側の削減幅を評価したことは、
日本にたいして「国防権限法の例外規定」を適用する可能性が、
高まっていることを示唆したものと見られます。
* * * * *
2月29日。
IAEA(国際原子力機関)は、イランの核開発問題について、非公
式の説明会を行いました。
出席した外交筋によると、IAEAのナカーツ事務長は、「(核兵器
開発の疑惑が持たれているイラン郊外の)パルチン軍事施設では、
特定できない何らかの作業が行われている可能性があり、立ち入り
の必要性が高まった」と主張しています。
また、べつの外交筋によれば、IAEAは衛星を使って、軍事施設
の監視を続ける方針を表明したといいます。
IAEAの調査団は、先月と今月に2回にわたって、イランでの査察
を行ったものの、パルチン軍事施設への立ち入りは認められません
でした。
説明会に出席した外交筋からは、「イランが立ち入りを拒むのは、
隠していることがあるからだ」と指摘する声が上がりました。
その一方で、イランのソルタニエIAEA担当大使は、査察を拒否
した覚えはないと反論しています。
同日。
イランの、アッバシ副大統領兼原子力庁長官は、閣議後の記者
会見で、
イラン郊外のパルチン軍事施設について、「いかなる核関連活動
も行われていない」と明言し、
「IAEA(国際原子力機関)が視察する理由も、われわれが見せる
理由もない」と述べました。
アッバシ氏は、原子力庁が立ち入りを許可できるのは核関連施設
に限られるという見解を表明し、
IAEAによる、パルチン軍事施設への立ち入りが認められるかどう
かは、「(最高指導者ハメネイ師や、最高安全保障委員会など)高位
の当局者による決定が必要だ」と強調しました。
同日。
アメリカ国防総省の統合参謀本部では、イランとの紛争が起きた
場合に、イランの核施設を軍事攻撃する選択肢の用意が整ってい
ることを明らかにしました。
シュワルツ参謀総長は、ワシントンで記者団にたいし、「アメリカ
の実行能力は、誰も寄せ付けないものになる」と述べましたが、
軍事攻撃は、アメリカのオバマ政権が、イラン問題に取りくむ上で
の選択肢の一部だとしており、選択肢には経済制裁や外交圧力も
含まれると話しています。
同日。
アメリカ財務省が、イラン制裁に関連して、ドバイのヌール・イスラ
ミック・バンクの一部業務を、中止させたことが報じられました。
複数の関係筋の話によると、イランは主に、この銀行を通じて外貨
建ての石油収入をイラン国内に還流させていると、アメリカ政府が
主張しています。
ヌール・イスラミック・バンクは、昨年の12月に関連業務を中止す
ることに同意したといいます。
この銀行は、アメリカの同盟国である、ドバイ政府が出資しており、
アメリカ政府は難しい判断を迫られた格好になりました。
同日。
アメリカのパネッタ国防長官が、訪米中のイスラエルのバラク国防
相と会談し、イランの核問題やシリア情勢について協議をしました。
国防総省のリトル報道官は、「両国の定期協議は、イスラエルの
安全保障問題について連携(れんけい)する機会となる」という声明
を出しました。
パネッタ長官は、「いつでもバラク国防相との会談を歓迎する」と
語り、
イスラエルが単独でイラン攻撃に走らないよう、意思疎通を欠かさ
ないことが重要だとの認識をにじませています。
また、カーニー大統領報道官は記者会見で、国際社会が、イラン
制裁や外交努力を通じて問題解決を模索する時間は、「まだある」
と訴えました。
同日。
日本は、国防権限法の「例外規定」が適用されるように、アメリカ
に対して求めていますが、
この問題について玄場外相は、「制裁をめぐる協議は大詰めの
段階に来ており、相互の理解は、かなりの程度深まっている。現時
点で、日本が制裁対象になると懸念する状況だとは認識していな
い」と述べました。
また、アメリカのクリントン国務長官が、「日本はイラン産原油の
輸入を、昨年にくらべて15%〜20%減らそうとしている」と、日本
の削減幅を明らかにしたことについて、
玄場外相は、「(クリントン長官の)発言は承知しているが、マー
ケットに影響を与える可能性もあり、数字は申し上げられない」と
述べるにとどまりました。
同日。
資源エネルギー庁が発表した、石油統計速報によると、1月の
イランからの原油輸入量は、前年の同月にくらべて22.5%減少
しました。
日本政府の、イラン産原油の輸入削減方針を受け、石油元売り
各社が対応し始めたようです。
その一方で、サウジアラビアからの輸入量は19.6%増加して
おり、イラン産原油の代替需要として増えたものと見られます。
同日。
石油会社、OPEC(石油輸出国機構)当局者、アナリストなどへの
ロイターの調査で、
OPEC加盟12ヶ国の、2月の産油量は日量平均3123万バレル
と、1月の3095万バレルから増加し、約3年ぶりの高水準に達して
います。
アンゴラやサウジアラビアからの供給増に加え、リビア産原油の
一段の回復が、全体を押し上げました。
EU(欧州連合)が、7月から禁輸措置をとるイラン産原油も、大き
く落ち込まなかったと言います。
* * * * *
以上、2月22日〜29日までの動きについて、見てきました。
IAEA調査団の2度にわたるイラン訪問でも、核兵器の開発が
疑われている「パルチン軍事施設」への立ち入りが、イラン側に
よって拒否されました。
そのためIAEAは、イランの核開発が軍事目的である可能性に
ついて、「重大な懸念がある」と結論し、
パルチン軍事施設では、特定できない何らかの作業が行われて
いる可能性があり、「立ち入りの必要性が高まった」と主張するよう
になりました。
これらのことから、イランの核兵器開発にたいする疑惑が、かな
り深まったように思います。イラン側の弁明が、しらじらしく聞こえる
ようになって来ました。
一方、イスラエルのリーベルマン外相は、イランへの軍事攻撃に
ついて、
決断するのは「イスラエル政府だけだ」と述べて、アメリカやロシア
からの自制要求をはねつけています。
イスラエルの頭に血が上り、暴走してしまう可能性が、さらに高まっ
て来たと言えるでしょう。
また玄場外相は、
「ホルムズ海峡が、仮に軍事オプションで封鎖されたとしても、長期
戦にはならないだろう。」
「国内には200日分の石油の備蓄があり、LNG(液化天然ガス)
も70日分の備蓄がある。」
と、ホルムズ海峡の封鎖に関して、「かなり具体的なこと」を言うよう
になってきました。
以上のことから推察すると、イラン問題に対する世界の緊張は、
決して緩和に向かっているのではなく、さらに高まっているとしか
思えません。
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