ホルムズ海峡が封鎖? その6
2012年2月12日 寺岡克哉
今回も引きつづき、イランをめぐる世界情勢について、見ていきたい
と思います。
* * * * *
2月2日。
日米両政府は、アメリカの国務省内で、イラン制裁をめぐる第2回
の実務者協議を開きました。
アメリカ側からは、国務省のアイホーン調整官(対イラン・北朝鮮
制裁担当)と、財務省のグレーザー次官補(テロ資金・金融犯罪
担当)が出席し、
日本側は、代表の村上外務省中東アフリカ局審議官のほか、
財務省、経済産業省、金融庁の担当者らが出席しました。
日本側は、イラン産原油の輸入量を削減してきた過去の実績を
指摘するとともに、今後の削減案も具体的な数字を挙げて表明し
ました。そして、制裁を定めた国防権限法(※1)から、邦銀を例外
規定とするように、あらためて求めました。
これに対してアメリカ側は、制裁の実施と例外規定の適用に関す
る、追加的な説明を行ったということです。
日米の双方が、イランへ国際的な圧力をかけることで協調していく
方針を確認し、今後も協議をつづけることで意見が一致しました。
村上審議官は、協議終了後の記者会見で、
「(日米双方の)理解は非常に深まった」ことを強調し、「協調的な
雰囲気の中で協議はつづいており、できるだけ早く共通の理解に
達したい」と述べました。
このことに関連して、カーニー米大統領報道官は、
制裁措置の適用では「同盟国や原油市場に意図せぬ損害が
及ぶことがないように確認していきたい」と述べ、日本をふくむ
アメリカの同盟国に、一定の配慮をする姿勢を示しました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(※1)国防権限法(国防授権法)
この法律により、イランの中央銀行と取引をした、世界各国の
民間銀行や中央銀行は、アメリカの金融機関と取引が出来なく
なります。
つまり、イランの中央銀行は、イラン産原油の取引における
決済の大部分を担っているので、もしもイランから原油を輸入
すれば、その決済をした(たとえば日本など)輸入国の金融機関
は、アメリカの金融機関との取引が一切できなくなるのです。
アメリカ金融機関との取引が出来なくなれば、たとえば日本の
場合では、円とドルの為替ができなくなり、アメリカとの貿易も
不可能になるでしょう。
ただし国防権限法には、イランとの取引を著しく減らした金融
機関は制裁が免除されるという「例外規定」が設けられています。
これまで日本は、消費する原油のおよそ1割を、イランから輸入
してきました。そのため日本銀行や、日本の3大メガバンクも、
イランの中央銀行と取引をしています。
なので、もしも日本に「例外規定」が適用されなかったら、日本は
大変なことになってしまうのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
* * * * *
2月3日。
玄場外相は、閣議後の記者会見で、昨日行われた日米の実務
者協議について、
「イランの核開発に対する懸念を共有し、国際社会が強調する
ことがまず大事だ。その上で、例外措置の適用をふくめて協議を
行った」と述べました。
イランからの原油輸入量の削減目標については、具体的な数値
をアメリカ側に示したとして、
「数字は言えないが、国際協調のなかで私たちの考え方をふく
めて提案した」と述べました。
また、「よい雰囲気のなかで着実な進展が得られた。(日米)双方
の認識は共有に至るところまで来始めている。できるだけ早期に
協議を終えることが出来るようにしたい」と述べ、早期にアメリカと
合意したいという考えを示しました。
同2月3日。
イランの最高指導者ハメネイ師は、
「原油制裁や戦争の脅迫に対抗して、われわれにも適切なとき
に発動できる脅迫手段がある」と述べ、欧米のイラン産原油の
禁輸措置や、イスラエルによる核施設攻撃の観測を、強くけん制
しました。
ハメネイ師は、「イランを脅迫し、イランを攻撃すれば、アメリカ
に危害が及ぶことになる。制裁は、核開発をつづけていく我々の
決意に何ら影響しない。原油輸入禁止や戦争の脅迫に対抗し、
われわれにも適切な時期に実行できる独自の脅迫手段がある」
と語り、
その上で、「シオニスト体制(イスラエル)に立ち向かって戦う
国家や組織を、支持・支援すると明言することに何のためらいも
ない」と強調しました。
これらハメネイ師の発言は、あくまでもイランが核開発をつづけ
る意思であることを表明しており、
また、イランへの制裁強化や、イランの核施設が攻撃された場合
には、
レバノンのイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」などを支援
することで、イスラエルやアメリカの権益を狙った攻撃を仕掛ける
用意があることを示唆したものと見られ、
中東情勢が、さらに緊迫化するのは必至です。
同日。
イランは、国産観測衛星「ナビッド(先駆者)」を打ち上げ、地球
の周回軌道への投入に成功しました。
イランが人工衛星の打ち上げに成功したのは、2009年以降、
これで3回目となります。
今回の人工衛星「ナビット」は、重量が50キロで、地表から250
〜370キロ上空の軌道を、90分で1週します。
およそ18ヶ月にわたって軌道上にとどまり、撮影した画像データ
を、イラン国内にある数ヶ所の地上局に送り、災害時の観測など
に利用されます。
イランのアフマデネジャド大統領は、「偉大な業績で、さらに多く
の衛星を打ち上げる」と述べ、近くほかの衛星も打ち上げる計画
を示唆しています。
これに対して欧米諸国は、人工衛星用のロケット技術は、核弾頭
の運搬手段となる弾道ミサイルの開発にも応用できるとして、さら
に警戒を強めるものとみられます。
同日。
先月の末にイランを訪れていた、IAEA(国際原子力機関)が、
核兵器を起爆させるために必要な高性能爆薬の実験を行ったと
指摘されている、首都テヘラン郊外の軍事施設への立ち入り調査
を要請したものの、
イラン側が拒んでいことが、明らかになりました。
この時のIAEAの調査は、「非公開」で行われたため、詳細が
明らかになっていませんでしたが、
イランが調査団の軍事施設への立ち入りを拒んだことが、明ら
かになったことで、
外交筋は「イランが調査に協力していないことは明らかだ」と
述べ、不満を示しています。
同日。
ドイツ南部のミュンヘンで、
欧米などの外交・国防担当者が安全保障問題を話し合う「ミュン
ヘン安全保障会議」が、3日間の日程で始まりました。
この会議には、アメリカのクリントン国防長官や、ロシアのラブ
ロフ外相、イタリアのモンティ首相、ゼーリック世界銀行総裁らが
出席します。
48回目の今回は、イランの核兵器開発疑惑のほか、欧州債務
危機が安保問題に及ぼす影響などについて、協議することになっ
ています。
* * * * *
2月4日。
イランの精鋭部隊で、イラン指導部の親衛隊的性格をもつ
「革命防衛隊」が、
イラン南部のファルス州で、空挺(くうてい)作戦などを盛り込ん
だ、陸上での軍事演習を開始しました。
演習の司令官は、イランに敵対する勢力に対して軍事力を示す
のが目的で、最新の軍事技術を披露するとしています。
革命防衛隊は、ペルシャ湾のホルムズ海峡でも、近く大規模な
軍事演習を行うと発表しており、さらなる緊張をもたらしかねない
状況になっています。
またこの日、イラン海軍の艦隊が、サウジアラビアのジッダ港
に入港しました。
海賊掃討の演習のため、周辺海域を航行しているとし、
イラン海軍の幹部は、公海でイランの力を示すのが目的だと
話しています。
同日。
イランのガセミ石油相は、
「一部のEU(欧州連合)加盟国向け原油輸出を停止する」と
述べました。
具体的な国名や時期については、明らかにしませんでしたが、
「他の加盟国向けも追って検討する」としています。
また、「輸入元を変えればコストが高くつく」と述べ、EUに対し
て、イラン産原油の輸入禁止措置を見直すように求めました。
さらに、ガセミ石油相は、
「わが国が一滴の原油も輸出できなくなったとしても、正当な
核開発の路線を断念することはない」と述べ、
イランの原油輸出に急ブレーキがかかったとしても、核開発
プログラムを断念することはないと明言しました。
また、「残念ながら、EUはアメリカの圧力に屈した。イランから
の原油供給が途絶えれば、原油価格に予想外の影響が生じ、
国際原油市場は混乱するだろう」と述べています。
* * * * *
2月5日。
イラン革命防衛隊の、ホセイン・サラミ副司令官は、
「イランに対する、敵の軍事作戦に使われた、いかなる国や
場所でも、わが軍の報復攻撃の対象となる」と述べました。
ただし、具体的な国名には言及しませんでした。
ちなみに、ペルシャ湾岸の親米6ヶ国で構成されたGCC(湾岸
協力会議)は、自国の領土を、イラン攻撃に使わせない意向を
表明しています。
しかしながらGCCのうち、カタール、バーレーン、クウェートの
3国は、アメリカ軍基地を擁(よう)しており、
イランがそれらの基地を攻撃してきた場合、アメリカ政府が、
同基地をイラン攻撃目的に使用できるように、圧力をかけてくる
可能性があります。
同日。
アメリカ連邦議会は、この日までに、
イスラエルの対外情報機関モサドの長官が、アメリカを訪問し
て、情報機関当局者や一部の議員と会談し、
イスラエルがイラン攻撃に踏み切った場合の、アメリカ側の
対応の分析に努めたことを、明らかにしました。
議会筋によると、モサドの長官は一連の会議で、イスラエルが
先制攻撃をした場合に、イランへの対抗措置をふくむアメリカ側
の具体的な対応について、見極めようとしたといいます。
また議会筋は、「先制攻撃の実行前に、イスラエルはアメリカ
に通告しないと判断している」とも述べています。
同日。
アメリカのオバマ大統領は、
「イランは核兵器の保有を断念するべきだ」と重ねて強調した
上で、
「イスラエルはイランを攻撃するかどうか、まだ決定していない。
中東地域での新たな軍事活動は、原油価格にも影響を及ぼす
可能性があり、この地域での軍拡競争を避けるためにも、外交
努力による解決が望ましい」と指摘しました。
その一方で、イランに対するアメリカの対応については、
「イランの核兵器保有を防ぐため、あらゆる努力をしていく。今
の段階では、どの選択肢も排除していない」と述べ、
イランの核開発を阻止するためには、軍事行動も含めたあら
ゆる手段を尽くしていく考えを強調しました。
* * * * *
2月6日。
アメリカのホワイトハウスは、
オバマ大統領が、イラン政府と中央銀行、そしてイランの金融
機関を対象にした、追加制裁措置を発動する大統領令に、署名
をしたと発表しました。
この追加制裁の発動により、
イラン政府や、イラン中央銀行などが保有する、アメリカ国内の
すべての資産が凍結されます。
そして、資産を米国内外で移動させたり、預金の引き出しや、
貿易代金の決済などが、すべて禁じられます。
オバマ大統領は、アメリカ議会に送った手紙のなかで、
「イラン中央銀行やイランの金融機関は、制裁対象者の金融
取引を偽装し、マネーロンダリング(資金洗浄)への取り締まりも
不十分なままにしている」などとして、「追加制裁を取るべきだと
の結論に達した」と説明しています。
アメリカの財務省は、この発動に合わせて声明をだし。
イラン政府が、核兵器開発に対する国際社会の懸念をぬぐい
去らなければ、「経済・外交面での圧力の増大に直面する」と
警告をしました。
同日。
ロイター通信は、外交筋の話として、
イランが、中部フォルドウの地下にあるウラン濃縮施設に、
濃縮ウランを製造するための、複数の遠心分離機を設置し、
順調に稼動させているもようだと報じました。
同日。
中国が、イランからの原油輸入量を削減する措置を、今年の3月
分についても継続して実施する意向であることが、複数の関係筋
の話によって分かりました。
支払い方法や、価格をめぐる条件で、両国の折り合いがつかな
いことが背景にあります。
中国は、イランにとって最大の原油輸出国ですが、今年の1月
と2月の2ヶ月間つづけて、イランからの輸入量を前年の半分以下
に減らすことで、交渉上有利なポジションを獲得しつつあります。
3月分の削減規模については、1〜2月と概ね同じていどか、
それ以上となる見込みです。
* * * * *
2月7日。
イラン外務省の、メフマンパラスト報道官は、
アメリカのオバマ大統領が、イランに対する追加制裁を発動する
大統領令に署名したことについて、
「敵対的な行為だ。心理戦であり、イランの核開発に影響を与え
ることはない。(制裁は)30年以上つづいて来たことで、なんら新し
いことではない」と反発しました。
同日。
イラン国会は、アハマディネジャド大統領を来月の国会に呼び、
経済政策などについて問いただすことを明らかにしました。
イラン革命後、大統領が国会への出席を求められるのは、初め
てだと言います。
ところで3月2日に予定されている、イランの国会議員選挙を前に、
最高指導者ハメネイ師と、アハマディネジャド大統領の対立が激化
しています。
大統領は2010年の12月以降、燃料や生活必需品の価格抑制
のために支出されていた政府補助金の、段階的な廃止を実施して
きました。
その上に、欧米による経済制裁の影響もあって、物価の高騰や、
イランの通貨リヤルが値下がりし、国民生活に大きな影響が出て
きており、大統領の経済政策への批判が高まっています。
290人の国会議員のうち、およそ100人が、大統領の出席を
求める書簡に署名しました。イランの法律によると、大統領は1ヶ月
以内に、国会で答弁に応じなければなりません。
同日。
イランが、インド産のコメ約20万トンの輸入にたいする支払い
を、滞らせていることが分かりました。
全インドコメ輸出業者協会が、イランへの輸出停止を呼びかけ
ており、イランの主食であるコメの輸入が、妨げられている状態
です。
全インドコメ輸出業者協会の代表は、「深刻な事態であり、これ
以上の不払いを見過ごすわけには行かない」と述べています。
一方、イラン側の貿易関係者や当局者からのコメントは、得ら
れていません。
不払いの影響で、イラン向けに穀物を積んだ5つの貨物が、
途中で目的地を変えたほか、イランの沖合いで停泊しつづけて
いる貨物船もあるといいます。
また、イランの通貨リヤルが急激に下落していることも、輸入に
打撃を与えています。
ちなみに、イラン最大のコメの輸入国はインドで、年間消費量
のおよそ3割を、インドからの輸入に頼っています。
同日。
アメリカのクリントン国務長官は、
ワシントンを訪れている、イスラエルのリーベルマン外相と会談
をしました。
詳しい内容は明らかにされていませんが、国務省のヌーランド
報道官は、
この日の会見で、「アメリカはイランへの制裁を強化し、イランの
原油を買わないよう各国に働きかけていることを説明した」と述べ
ています。
このことからクリントン長官は、リーベルマン外相にたいし、イラン
への軍事攻撃に踏み切らず、外交努力を尽くすように求めたもの
とみられます。
同日。
日本の石油元売最大手の、「JX日鉱日石エネルギー」は、
今年4月に更新時期をむかえるイラン産原油の輸入契約につい
て、更新しない方向で調整を進めていることが明らかになりました。
JX日鉱日石エネルギーが扱っているのは、日本がイランから
輸入している原油全体のおよそ10%にあたりますが、
削減分は、サウジアラビアなどほかの産油国からの調達を検討
しています。
JX日鉱日石エネルギー側としては、日米両国が、イラン産原油の
輸入削減で合意した場合、それに沿った対応をするべきだと、判断
しているものと見られます。
日本政府は、石油元売り各社から、どれだけ輸入を削減できる
か聞き取りを進めていますが、
最大手のJX日鉱日石エネルギーの動きは、ほかの元売り各社
にも、影響を与えるものとみられます。
* * * * *
2月8日。
イランの、サッジャーディ駐ロシア大使は、モスクワで記者団に
たいし、
「アメリカがイランに軍事攻撃を行った場合、アメリカは自殺行為
に等しい重大な過ちを犯すことになる」と述べ、警告を発しました。
サッジャーディ大使は、「アメリカ人はイランがどんな国か知って
いる。われわれ国民の結束を熟知している」と話しました。
その上で、「攻撃されても、われわれには数々の対抗策がある。
(アメリカは)自ら犯した重大な過ちを後悔するだろう」と述べ、
イランは、世界中にあるアメリカの権益にたいして、軍事攻撃を
加えることが可能であるとの考えを、明らかにしました。
ただし、イラン側から先制攻撃をすることは、「決して無い」と述べ
ています。
また、この日、イラン軍北東防空部隊のレシャディ司令官は、
イラン国境をふくむ地域内における敵対勢力の活動を、イラン軍
は厳重に監視しているとし、攻撃されれば反撃の用意が整っている
と明言しました。
レシャディ司令官は、「イランの防空部隊は外国の軍事行動を
警戒しており、イランに対する脅威には、いかなるものでも反撃する
準備が十分に整っている」と述べています。
同日。
アメリカの、元カーター政権(民主党)で、大統領補佐官(国家
安全保障担当)を務めた、ズビグニュー・ブレジンスキー氏は、
イスラエルがイランの核施設を攻撃するとすれば、10月に行わ
れる可能性が高いとの見方を示しました。
その理由としてブレジンスキー氏は、11月のアメリカ大統領選挙
直前に攻撃することにより、
イスラエルは、アメリカの支援や理解が得やすくなると判断する
と、分析しています。
現在野党である、共和党からの大統領候補は、イランにたいする
武力行使に言及するなど、強硬姿勢を強めています。
* * * * *
2月9日。
この日付けのAFP通信によると、アメリカおよび、同盟8ヶ国は、
アメリカの東海岸で、イランを仮想敵国にしたと見られる、軍艦
25隻を動員した、大規模な揚陸演習を実施しています。
演習は、すでに1月31日から開始されており、2月の中旬まで
つづく予定です。
アメリカ艦隊総軍の、ジョン・ハービー司令官は、
「同総軍が指揮するものでは、過去10年で最大の揚陸演習」だ
と、述べています。
演習は、ヴァージニア州〜ノースカロライナ州沖の、広い範囲で
行われ、
アメリカ軍およそ2万人のほか、イギリス、フランス、オランダ軍
から数百人、イタリア、スペイン、ニュージーランド、オーストラリア
から連絡将校が、それぞれ参加しています。
また、アメリカの空母1隻のほか、フランス軍の強襲揚陸艦ミスト
ラル、カナダ軍の掃海艇数隻、航空機数十機が展開しています。
演習のシナリオは、港湾には機雷が仕掛けられ、沿岸には対艦
ミサイルが配備されているという状況下での、上陸を想定していま
す。
沿岸域の機雷に、対艦ミサイル、小型艇配備といえば、イラン
海軍を想起させますが、
ハービー司令官たち演習司令部は、特定の国を想定したシナリ
オではないと否定しています。
同2月9日付けの、NHK報道によると、
欧米による経済制裁の影響は、イラン国内の各地で見られるよう
になり、貿易にも支障を来たしているようです。
ホルムズ海峡を臨む最大の港湾都市、バンダル・アッバースでは、
海外からの輸入品が、はげしく値上がりしています。
地元の商店主からは、「輸入品が高くなって仕入れることができず、
客も購買力を失っている」などと不安の声が聞かれました。
これまでイランへの輸出が最も多かったUAE(アラブ首長国連邦)
や、カタールでは、
それぞれの国の中央銀行が、イランとの信用状を使った取引を
やめるように通達を出したことから、今後、輸出が落ち込むことが
予想されます。
インドでは、(前述のように)コメの代金が支払われていないとして、
イランへのコメの輸出を、やめようとする動きが出ています。
マレーシアでは、イランへのパーム油などの食料品の輸出を停止
しており、
ウクライナでも、イランへの穀物の輸出が先月では、前の月にくら
べて4割も減少したとみられています。
イラン政府は、欧米による経済制裁の影響は無いとして、核開発
問題でも強気の姿勢をみせています。
しかしながら、イラン国内の各地や、イランと各国の貿易において、
既にさまざまな影響が出始めており、
欧米の制裁によって、イラン経済が深刻なダメージを受ける可能
性が出てきています。
* * * * *
以上、2月2日〜9日までの動きについて、見てきました。
アメリカのオバマ大統領は、イラン政府、イラン中央銀行、イラン
金融機関の資産を、すべて凍結しました。
これは、暗黙の「宣戦布告」にも相当するような対応だと、私は
思うのですが、どうなのでしょう?
そして、今頃になってAFP通信が、かろうじて報道しましたが、
すでに先月から、アメリカと同盟国は、過去10年で最大の、非常
に大規模な軍事演習を始めていました。
一方、イランは、
あくまでも核開発を止めようとせず、人工衛星の打ち上げまで
行っています。
このままでは、「軍事的な衝突」へと発展する可能性が、どうして
も否定できず、
イランをめぐる情勢については、まだまだ目が離せない状況が、
つづいて行くように思われます。
目次へ トップページへ