ホルムズ海峡が封鎖? その4
                          2012年1月29日 寺岡克哉


 前回は、1月13日〜19日までの、ホルムズ海峡やイランをめぐ
る世界情勢について、見てきました。

 今回は、1月19日における「日本の動き」から、引きつづき見て
行きます。


            * * * * *


 1月19日。

 アメリカ国務省のアインホーン調整官(対イラン・北朝鮮制裁
担当)や、アメリカ財務省のグレーザー次官補(テロ資金・金融
犯罪担当)らと、

 日本の外務省、財務省、経済産業省、金融庁の幹部らとの、
2日間の協議が終わりました。


 協議の終了後、グレーザー次官補は、

 「今後も協議は継続する」と答えたのみで、協議内容について
のコメントを控えました。


 外務省によると、日本側は、

 原発の稼動停止で、火力発電への依存度が高まっており、原油
の調達を簡単には削減しにくい状況であることや、
 イラン産原油の輸入量を、過去5年間で4割削減した実績などを
説明し、
 邦銀に対して、国防権限法の「例外規定」を適用するように要請
しました。
 (もしも例外規定が適用されなければ、イラン中央銀行と取引を
した日本銀行や、日本の3大メガバンクなどが、アメリカの金融機関
とドル取引をすることが禁止されます。)

 邦銀への制裁を回避するために必要な、イラン産原油輸入の
削減幅などの詳細については、
 制裁が発動される今年の6月末に向けて、引きつづき協議を
つづけて行くことになりました。


 また、今回の協議では、

 イラン産原油の最大輸入国である中国や、インドなどの協力が
なければ、制裁効果が限定されてしまう点についても、話し合われ
たみたいです。

 なお、欧米による経済制裁で、ドルやユーロ建ての決済が難しく
なったイラン産原油の輸出は、
 「円建て」が主軸となっていますが、その点については議題になら
なかったと言います。



 同日。

 石油連盟の天坊会長は、アメリカの国防権限法について、

 「政府が企業にたいして(イラン産原油の)輸入をするなと言える
関係にないが、銀行が取引きできなくなったら、輸入の決済もでき
ない」

 「銀行が、アメリカの制裁が恐いから、イランとの取引きを止め
ますと言ったら終わりだ」

 「現実的な対応として、(石油元売)各社は、(イラン以外の)ほか
の国から輸入する努力をするしかなく、3ヶ月後に(イラン産原油
輸入の)数量が今までに比べて少なくなると思う」

 と述べ、3ヵ月後からイラン産原油の輸入が減少すると予想しま
した。


 また天坊会長は、イランからの輸入の代替措置について、

 「サウジアラビアは、イランが輸出している原油の量に匹敵する
くらいの供給余力がある」

 と述べ、直ちに原油の需給がひっ迫することはないという認識を
示しました。


 さらには、

 「イランが核武装して、イスラエルとドンパチしてほしくない」と
述べつつ、

 「日本が、イランに対して出来るのは原油を買うこと」と指摘し、

 制裁よりも経済活動を通じた、イランとの対話の重要性を強調
しました。


            * * * * *


 1月20日。

 イスラエルを訪問した、アメリカのデンプシー統合参謀本部
議長(アメリカ軍制服組のトップ)は、

 エルサレムで、ネタニヤフ首相、バラク国防相、ガンツ軍参謀
総長らと、相次いで会談をしました。


 デンプシー議長は、イスラエル側にたいし、

 対イラン政策ではアメリカと協調し、いまの時点においては
単独攻撃を思いとどまるように、促したとみられます。


 イスラエル国防省によると、

 デンプシー議長は、バラク国防相にたいし、「われわれはこの
地域で多くの国益を共有している」と語り、

 緊密な協調関係を、これからも継続するように要請しました。


 アメリカ政府は、

 イスラエルがイランを単独攻撃する可能性を懸念しており、

 アメリカ・イスラエル両軍が近く実施する予定だった、大規模な
軍事演習も延期され、

 アメリカが、「イランを刺激するのを避けた」という見方が広がっ
ています。



 同日。

 EU(欧州連合)の高官は、いまの段階において、イランとの協議
に応じる考えがないことを、あらためて強調しました。

 イランのサレヒ外相が1月18日に、1年前から中断していた
核開発をめぐる6ヶ国協議(5常任理事国+ドイツ)について、

 「近く再開できると思う」と述べるなど、協議再開に前向きな姿勢
を見せていましたが、それを受けたものです。



 同1月20日。

 アメリカのクリントン国務長官は、

 核開発をめぐるイランとの協議再開について、「真剣さと誠意を
伴ったものか見極めている」として、イラン側の出方を慎重に見守
りたいという認識を示しました。

 そして、「われわれは対立を望んでいない」と述べ、イラン側が
前提条件を付けないのであれば、協議再開は可能だと呼びかけ
ました。

 その一方で、イランが国際社会の懸念である核問題に対処しな
ければ、さらなる圧力と孤立に直面すると警告しています。



 同日。

 中国の呉外務次官補は、

 北京を訪れている、イラン政府の核開発交渉を担当する最高
安全保障委員会の高官と、会談をしました。


 呉外務次官補は、「関係各国は対話によって平和的に問題を
解決するべきで、制裁や武力行使は根本的な解決につながらな
い」と強調しました。

 その上で、「当面の急務は、イランの核開発についての6ヶ国
協議の早期再開と、IAEA(国際原子力機関)との協力の強化だ」
と述べました。


 これに対してイラン側は、

 協議再開などに前向きな姿勢を示す一方で、核の平和利用の
権利についても主張したということです。



 同日。

 IAEA(国際原子力機関)事務局が、加盟国向け新年会の発言
録を公表しました。

 それによると、天野事務局長は、

 「2012年の主な優先事項は、イランの核開発が平和目的で
あるとの国際的な信頼を回復することに向けて事態の進展を図る
ことだ。主要な保障措置(核物質管理)問題のなかで最も重要な
課題だ」と強調しています。

 また、IAEA事務局はこの日、

 査察部門のトップ、ナカーツ事務次長が率いる高官級調査団が、
イランを訪問することを正式に発表しました。


            * * * * *


 1月21日。

 イランの精鋭部隊である「革命防衛隊」の高官は、

 ホルムズ海峡で、1ヶ月以内に大規模な軍事演習を行う方針
であることを、あらためて示しました。

 しかし、その一方で、イランの近くの海域に、アメリカが2隻の
原子力空母を展開させたことについては、

 「アメリカは長年にわたってこの地域に駐留しており、空母の
派遣も通常の任務で、新たな問題ではない」と述べて、冷静な
反応を示しました。

 イランは今月の初め、アメリカ軍の空母にペルシャ湾に入らな
いよう警告していましたが、
 それに対してアメリカ軍は、武力行使も辞さない考えを見せて
いました。



 同日。

 アメリカのパネッタ国防長官は、大西洋に展開している原子力
空母「エンタープライズ」の艦上で、

 「イランには外交を通じて、われわれと交渉する方が賢明だと
いうことを分からせる」と述べて、イランを強くけん制しました。


            * * * * *


 1月22日。

 アメリカの原子力空母「エイブラハム・リンカーン」は、イギリスや
フランスの艦船とともに、無事にホルムズ海峡を通過し、ペルシャ
湾に入りました。

 アメリカ海軍の、中央軍司令部は、

 空母リンカーンが「海上治安任務に向け、通常航行どおり海峡
を通過した」という声明を発表しています。


            * * * * *


 1月23日。

 EU(欧州連合)は、ベルギーのブリュッセルで外相会議を開き、

 イラン産原油の、EU域内への輸入禁止を、正式に決定しま
した。


 また、イラン中央銀行がEU域内に保有する資産の凍結も決め、

 金や貴金属の取引き、石油化学製品の輸入、石油化学関連施設
や技術の輸出も禁止しました。


 原油の禁輸措置については、

 ギリシャやイタリアなど、イラン産原油に多くを依存している国に
配慮して、
 新たに契約を結んで原油を輸入することは即刻禁止としましたが、
既存の契約に基づく輸入は、7月1日から全面禁止とすることに
なりました。

 また、核問題へのイランの対応を見て、原油の禁輸を継続する
かどうかを、5月1日までに判断するとしています。


 EUのアシュトン上級代表は、記者会見で、

 「制裁が目的なのではなく、圧力と対話という2つの路線を同時に
進めるEUの政策の一環だ。イランが交渉の場に戻ることを求める」

 と述べ、イランが条件をつけることなく、欧米諸国との中身のある
対話に応じるよう、あらためて呼びかけました。



 同日。

 フランスのサルコジ大統領と、ドイツのメルケル首相、イギリスの
キャメロン首相は、共同で声明をだし、

 「イランにたいし、核開発を中断し、国際社会における義務を遵守
するように求める」と述べ、国連の決議に従うように改めて求めまし
た。

 そのうえで、「イランが交渉の場に戻らないかぎり、われわれは
一致して核開発の資金源を断つための対策を強化し、平和と安全
を脅かした報いが、どれほどのものとなるか思い知らせる」

 として、イランが核開発を中断しなければ、制裁をさらに強化して
いく考えを強調しました。



 同日。

 アメリカのオバマ大統領は、

 EU(欧州連合)が、イラン産原油の輸入禁止を決定したことに
ついて声明をだし、

 「イランの核開発がもたらす深刻な脅威にたいする国際社会の
結束の表れ」として、EUの決定を歓迎しました。

 また、オバマ大統領はこの声明で、

 「アメリカは圧力を強化するために新たな制裁を加える。イラン
が進路を変えて国際的な義務を果たさないのならば、圧力を加え
つづける」と述べました。


 またこの日、アメリカのガイトナー財務長官と、クリントン国務
長官も、共同で声明をだし

 「イランへの圧力を劇的に強めようという国際的な努力が続く
なかで、新たな大きな一歩となる。イランの指導部は、国際的な
義務に背くことで、より大きなコストを支払うことになる」

 として、EUが、イラン産原油の輸入禁止を決定したことを歓迎
しました。そのうえで、国連安全保障理事会の決議を無視して
核開発をつづけるイランの姿勢を、あらためて批判しました。



 同日。

 イスラエルのネタニヤフ首相も、

 EU(欧州連合)の、イランにたいする制裁決定を、「正しい方向
への第一歩だ」として、歓迎する意向を示しました。



 同1月23日。

 イラン議会外交・安全保障委員会の、コサリ副委員長は、

 「原油取引に関して何らかの支障が生じた場合、ホルムズ
海峡を必ず封鎖する」と、明言しました。



 アリ・ファラーヤン元イラン情報相は、

 「禁輸措置が完全実施される前に、(EUに対する)原油輸出を
自ら即時停止するのが最善の方法だ」と主張し、

 EUが代替調達先を確保する前に原油輸出を停止し、原油高で
ヨーロッパの景気を下押しすることが、望ましいという考えを示し
ました。


 イラン外務省の、メフマンパラスト報道官は、

 「理にかなった国(イラン)に対する脅しや圧力、不公平な制裁と
いった手段は失敗に終わる」
 「この制裁によって、われわれが獲得した権利が妨げられること
はない」

 と述べて、あくまでも、核開発をつづけて行く考えを示しました。


 NIOC(イラン国営石油会社)は、

 「EUの決定は拙速で自らを傷つけるものだ。イランには多くの
選択肢があり、すでに新しい顧客を見つけた」という声明を出しま
した。


 イランの石油省は、

 「制裁は、ヨーロッパ経済だけでなく、世界経済にも打撃を与える
だろう」という声明をだしました。


 モスレヒ情報相は、

 「禁輸制裁は何の脅威でもない。敵国は(中東)地域における
イランの影響力を、押さえ込みたいだけだ」と非難しました。


 イラン議会、エネルギー委員会のアドヤニ委員は、

 「(EUの決定は)欧州の政治家の自己満足によるもので、イラン
経済に影響は与えない」と強調しました。



 同日。

 ロシアのラブロフ外相は、

 「一方的な禁輸措置では、問題は解決しない。われわれは
どの国にたいしても、強硬な動きをとらないように求めていく」

 と述べて、あらためてEUの禁輸措置を批判しました。そのうえ
で、

 「対話がすぐに再開されることを強く望んでいる」と述べ、イラン
と6ヶ国(5常任理事国+ドイツ)の協議再開にむけて、ロシアが
全力で取り組む考えを示しました。


 またこの日、ロシア外務省は声明をだし、

 EUの制裁強化は、「イラン経済の全部門をひっ迫させる試み」
であり、

 「このような圧力下では、イランがいかなる譲歩や政策修正に
も応じることはない」と述べ、イランとの対話継続の必要性を強調
しました。



 同日。

 IAEA(国際原子力機関)は、

 1月29日〜31日に、調査団がイランを訪問することを確認し、

 イランの核開発疑惑に関連した、「すべての実質的な未解決
問題の解決」を、目指す意向であることを示しました。

 IAEAの天野事務局長は、声明をだし、

 「調査団は、建設的な精神を持ってイランに向かう。イランも同じ
精神で、われわれに協力してくれると信頼している」と述べました。


 またこの日、アメリカのヌーランド報道官は記者会見し、

 「今回の(IAEAの)調査だけで、完全かつ中身のある協力と透明
性を確保するのは難しい」と述べ、
 1回かぎりの調査を認めるだけでは、不十分だという認識を示し
ました。

 さらには、「今後IAEAが必要のある施設への立ち入りが認めら
れるかや、情報を得られるかどうかを見極める必要がある」と述べ、
 イラン政府にたいして、国際社会が求めている情報を提供する
ように、あらためて求めました。



 同日。

 アメリカ政府は、

 イランへの制裁強化を図るため、新たにイラン国内3位の、国営
テジャラート銀行と、その系列銀行を、金融制裁の対象に加えま
した。

 制裁対象には、ベラルーシにある系列銀行の、トレード・キャピ
タル・バンクも含まれます。


 アメリカのコーエン財務次官は、声明をだし、

 「(追加制裁は)国際金融市場におけるイランの孤立を深めると
ともに、同国の交換可能通貨の獲得を一層困難にして、違法な
核兵器の開発を行う資金力を弱める」との見方を示しています。


            * * * * *


 1月24日。

 イラン外務省は、

 EU(欧州連合)の議長国デンマークの、駐イラン大使を呼び
出して、イランへの制裁は「非論理的で正当化できない」と、
抗議をしました。

 イランのアスカルハジ外務次官は、デンマークのホウガード
駐イラン大使に向かって、

 「(イラン産原油の禁輸)は、米国追従だ」と語り、「EU内の一定
勢力が、対イラン関係を緊張させようと動いている」と、非難しま
した。

 イランの核開発については、「平和目的で正当な権利。欧米の
圧力には今後も屈しない」と強調しています。



 同日。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、

 「自国防衛のためには、単独行動(イランへの単独軍事
攻撃)も辞さない」という考えを示しました。



 ネタニヤフ首相は、議会で行った演説のなかで、

 EUが決定した、原油の禁輸などイランへの追加制裁を歓迎し、
「存在する脅威に立ち向かうためには、イスラエルはできるだけ
多くの国々と同盟を築くべきだ」と述べました。

 その上で、ユダヤ人600万人の命を奪ったホロコーストの
「大きな教訓を忘れるべきではない」と指摘し、

 「自分たちの運命は、人の手(他国)に委ねるべきでない」と、
強調しました。



 同日。

 アメリカのオバマ大統領は、一般教書演説を行いました。

 その中で、イランが国際社会から孤立し、「致命的な」制裁に
直面していることを指摘し、

 「アメリカは、イランの核兵器入手を阻止する決意であり、その
目的達成のためなら、あらゆる選択肢も排除しない」と強調して、

 今後も、イランへの圧力を強めていく姿勢を明確にしました。

 ただ、「平和的な解決はまだ可能であり、イランが方針を転換し、
責任を果たすのであれば、ふたたび国際社会の一員になれる」
とも述べており、平和的な解決の可能性も残しています。



 同日。

 オーストラリアのラッド外相は、

 EUの、イランへの追加制裁決定について、「オーストラリアは
自国のために、足並みをそろえた行動をとっていく」と述べて、

 EU(欧州連合)に、歩調を合わせていく立場を表明しました。

 しかしながら、オーストラリアにおけるイラン産原油の輸入量は、
「極めて小規模」であることも強調しています。



 同日。

 玄場外相は、閣議後の記者会見で、

 今後のイラン産原油の削減量について、「(日本が過去5年間
で削減した)4割以上の削減をする方向で検討している」と、述べ
ました。

 アメリカの有力議員らが提示している、輸入額で年18%以上
の削減案については、
 「そういう考え方も参考にしながら日米間で協議中だ」として、
目安の一つにする意向を示唆しました。

 EUが、イラン産原油の輸入禁止を決定したことについては、
「一定の効果はあると思うが、即時停止は非常にドラスチックで、
日本とは違う」と述べています。


             * * * * *


 1月25日。

 国連のパン・ギムン事務総長は、

 「IAEA(国際原子力機関)によれば、イランは核の軍事利用を
進めている疑いがあり、懸念を抱いている。平和目的というので
あれば、IAEAの査察などに全面協力し、そのことを証明するべき
だ」と、あらためて懸念を表明しました。

 また、イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性を示唆している
ことについては、
 「国際貿易にとって非常に重要なホルムズ海峡を、船舶が自由
に通過することは保障されなければならない」と述べて、海峡の
封鎖はあってはならないという考えを強調しました。



 同日。

 アメリカ国防省のヌーランド報道官は、

 これまでに日本をはじめ10ヶ国に、高官を派遣したことを明らか
にし、
 「イランの石油に依存しないよう求めるだけでなく、ほかの産油国
に供給量を増やすよう働きかけている」と述べ、
 制裁が効果的なものとなるように、アメリカが全力を挙げている
ことを強調しました。

 しかしながら、イラン産原の輸入を継続すると表明したインドに
ついては、「突っ込んだ協議を続けている」と述べるにとどまり、調整
に苦慮していることをにじませました。



 同日。

 IMF(国際通貨基金)が発表した、世界経済の課題についての
報告書によると、

 欧米各国が制裁を発動すれば、イランからの原油の供給が、
1日あたり150万バレル減少する可能性があると言うことです。

 これは、1970年代の第1次石油ショックや、昨年のリビア情勢
の緊迫で原油の供給に混乱が生じたときに匹敵する、原油供給
の減少量だとしています。


             * * * * *


 1月26日。

 イランのアハマディネジャド大統領は、

 核問題をめぐる6ヶ国との協議(5常任理事国+ドイツ)について、
「妨害するための口実をつくるのはいつも欧米側だ」と強く非難し、
イラン側が協議再開に応じる意思があることを示唆しました。

 アハマディネジャド大統領は、「欧米は協議を遅らせているのは
イランだとしているが、それは違う」と述べ、イランに協議を避ける
理由がないことを強調しています。

 また、欧米諸国がイランへの制裁を強化していることにたいし、
「彼ら(欧米)は、イラン国民を狙ったものではないとウソをついて
いる。国民が対象になっているのは明らかだ」と主張しました。

 さらには、「EUとの貿易額は全体の1割ていどに過ぎず、この
制裁は、われわれに打撃を与えるものではない」と述べ、制裁に
よる大きな影響は受けないとして、強気の姿勢も見せています。



 同日。

 中国の外務省は、

 EUの、イランへの禁輸措置について、「単純に圧力をかけ、
制裁を課すのは建設的なアプローチでない」として、

 「中国は、地域の平和と安定につながる措置が講じられること
を望む」と表明しました。



 同日。

 NATO(北大西洋条約機構)のラムセン事務総長は、

 「イラン側の発言に懸念を深めている」とした上で、「イラン指導
部にたいし、国連の決議に従って核兵器開発につながるウラン
の濃縮を直ちに停止するとともに、ホルムズ海峡における航行の
自由を保障するように求める」

 と述べて、イランをけん制しました。


             * * * * *


 以上、1月19日〜26日までの動きを見てきました。


 一時的に緊張が和らいでいたものの、1月23日に、EUがイラン
への追加制裁を決定してから、ふたたび緊張が高まっています。

 イランの強硬派議員は、「原油取引に関して何らかの支障が生じ
た場合、ホルムズ海峡を必ず封鎖する」と明言し、

 イスラエルのネタニヤフ首相も、「自国防衛のためには、単独の
軍事行動も辞さない」という考えを示しています。



 しかしながら、

 イランのアハマディネジャド大統領が、核問題について6ヶ国との
協議に応じる考えを見せているので、

 平和的な解決の可能性が、まだ完全に排除された訳では、あり
ません。



 そうではありますが、

 中国やロシアが、欧米によるイランへの制裁を非難して、「冷静
な対応」を呼びかけているにもかかわらず、

 アメリカやEUは、イランが核開発を止めないかぎり、制裁を情け
容赦なく、どんどんエスカレートさせる構えです。



 そして一方、(イラン側は、制裁の影響を否定していますが)、

 欧米の経済制裁により、イラン通貨のリヤルが値下がりし、物価
や食料の高騰が起こり、失業者が増えて、イランの人々の生活が
苦しくなっています。

 おそらくイランの指導部は、その国民の不満を、欧米諸国に向け
るように、誘導するに違いありません。



 なのでイランが、あくまでも核開発を放棄しなければ、

 欧米の制裁強化による対立の激化と、イラン国民の不満が頂点
に達し、

 近いうちに「軍事的な衝突」へと発展する可能性が、とても高くなっ
ているように思います。



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