千葉県で57.5マイクロシーベルト
                          2011年10月30日 寺岡克哉



 福島第1原発から、およそ200キロ離れた千葉県の柏市で、

 57.5マイクロシーベルト/時 という、きわめて高い放射
線量が検出されました。

 1年間の線量に換算すると、504ミリシーベルトにもなり
ます。(57.5×24×365=503700マイクロシーベルト)



 今回は、

 この件に関する経緯を、ひととおり見たあと、

 それについて私の思ったことや、考えたことを、お話したいと
思います。


            * * * * *


 新聞各社の報道や、柏市のインターネットサイト、文部科学省
の報道発表資料をみると、

 この件に関する経緯は、だいたい以下のようになっていました。



 10月18日。

 柏市根戸の市有地に隣接する道路を、簡易測定器を持った
市民が散歩していたときに、

 「高い線量」の場所があることに気がつき、市に通報しました。



 10月21日。

 千葉県の環境財団が、あらためて、その場所を測定しました。

 その結果、

 線量が高いところの地面を、30〜40センチ掘った地中で、

 57.5マイクロシーベルト/時 という、きわめて高い線量が
検出されました。



 線量が高かったのは、半径およそ1メートルの範囲内であり、

 10メートル以上離れたところでは、0.3マイクロシーベルト/時
以下にまで、線量が低くなっていました。

 そのような「局所的な現象」のため、

 この時点で柏市は、「福島第1原発事故の影響とは考えにくい」
と、判断していました。

 「放射性物質が埋っている可能性もある」とみて、現場の土を
採集して調べることにしました。



 10月22日。

 柏市は、現場の地下30センチの土壌から、1キロあたり27万
6000ベクレルの、放射性セシウムが検出されたと発表しました。

 市のインターネット公式サイトには、測定値のさらに詳しい内容
として、以下のデータが掲載されています。

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検体  採取場所  セシウム134  セシウム137   合計

A     地表      70200     85100   155300

B1  地下30cm    87000    105000   192000

B2  地下30cm   124000    152000   276000

             ※数値の単位は、ベクレル/キログラム
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 このデータについて文部科学省は、

 採取された土壌に含まれる、セシウム134とセシウム137
の比率が、福島第1原発事故で汚染された土壌と似ており、

 「現地の地形などの詳細調査が必要だが、原発事故との
関連は否定できない」
という見解を示しました。

 しかしながら、

 原発から大気中に放出されたセシウムが、自然に降り積もっ
たと考えるには、濃度が高すぎることなどから、

 「汚染土壌が外部から持ち込まれた可能性もある」と、
みていました。



 10月23日。

 文部科学省による「現地調査」が行われました。

 平成23年10月23日付けの、文部科学省の報道発表資料に
よると、以下のような調査結果になっています。

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・地表面から1m高さで最大毎時2.0マイクロシーベルト、地表面
 から50cm高さで最大毎時4.5マイクロシーベルト、地表面で
 最大毎時15マイクロシーベルトを測定した。

・周辺の平均的な空間線量率は地表面から1m高さで毎時0.3
 マイクロシーベルトであり、地表面から1m高さで周辺より毎時
 1マイクロシーベルト以上高い地点のあることを確認した。

・空間線量率の高い地点脇の側溝(深さ約30cm)に約50cm
 幅の破損が発見され、この箇所が半減期約2年の放射性セシ
 ウム134が確認された地点に近いことから、東京電力(株)福島
 第1原子力発電所の事故による放射性セシウムを含んだ雨水
 が側溝の破損口から漏れ込み、当該地点で放射性セシウムが
 土壌に濃縮され、蓄積されたと推定した。
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 この調査結果にたいして、文部科学省・放射線規制室長の
中矢隆夫さんは、

 「一般的に、雨どいの下の線量が高くなるように、雨水が集まる
場所では線量が高くなる傾向がある。似たような場所は(首都圏
で)他にもあると思う」

 と、述べています。

 また、放射性物質で汚染された土壌や焼却灰の投棄の
可能性については、「少ない」
と話しました。



 10月24日。

 千葉県柏市は、「放射線量の測定体制」を強化することに、

 決定しました。


             * * * * *


 以上が、おおよその経緯ですが、

 この件に関しては、いろいろと考えさせられることが多かった
ように思います。



 まず、福島第1原発から200キロも離れた場所で、

 57.5マイクロシーベルト/時 もの、きわめて高い線量が
検出されたというのは、

 行政当局にとって、なかなか信じられない出来事でした。



 その証拠に、柏市は当初、

 「福島第1原発事故の影響とは考えにくい」

 「(原発事故とは関係のない)放射性物質が埋っている
可能性もある」


 という見解を示していました。



 そしてまた、文部科学省も当初は、

 半減期が短い「セシウム134」が検出されたことから、原発
事故との関連が否定できないとしながらも、

 放出されたセシウムが、自然に降り積もったと考えるには
濃度が高すぎることから、

 「汚染土壌が外部から持ち込まれた可能性もある」

 という見解を示していたのです。



 しかし、調査が進むにつれて、

 「原発事故による放射性セシウムを含んだ雨水が、側溝の
破損口から漏れ込み、それ(放射性セシウム)が土壌に濃縮
され、蓄積された」


 という見解に変わって行ったのでした。



 文部科学省の調査関係者は、

 「似たような場所は(首都圏で)他にもあると思う」

 「放射性物質で汚染された土壌や焼却灰の投棄の可能性
については、少ない」


 という、コメントを残しています。



 これらのことから、

 「原発事故によって、首都圏においても、きわめて高濃度
の放射能汚染が起こっていた!」

 という、
行政当局にとって信じられない(つまり認めたく
ない)ような、


 ものすごく深刻な事態が「発覚」したことが分かります。


            * * * * *


 たしかに、

 このたびの件のような「ミニ・ホットスポット」だと、汚染の
範囲が狭いので、

 現場から10メートルくらい離れれば、問題は無いでしょうし、

 「除染」も、比較的に容易にできるでしょう。



 そうではありますが、しかしながら、人口が密集している首都圏
において、

 このようなミニ・ホットスポットが、「人に知られずに存在して
いる」というのが大きな問題です!


 そんな状況だと、知らず知らずのうちに、多くの人々が「無意味
な被曝」
をしてしまうでしょう。

 しかし、

 ミニ・ホットスポットの場所さえ分かれば、そのような無意味な
被曝を、避けることができるのです。



 そしてまた、

 小さな子供の場合は、どんな行動(遊び)をするのか、まったく
分からない面があります。

 ミニ・ホットスポットの場所が特定できなければ、その場所で
子供たちが、

 たとえば泥遊びをしたり、水たまりに手を入れたり、遊んでいる
間に手を口に入れたり・・・

 そんなことを、日常的にやっているかも知れません。

 ほんとうに子供は、大人の見ていない所で、何をするのか
分からないのです。



 以上のことが心配されるので、

 ミニ・ホットスポットの探査や特定というのは、たいへんな作業に
なるでしょうが、

 細かい場所での放射線量のチェックは、とても大切だし、すごく
必要だと思います。


             * * * * *


 ところで、

 「福島県内」のミニ・ホットスポットも、すごく気になります!



 なぜなら、福島第1原発から200キロも離れた千葉県でさえ、

 57.5マイクロシーベルト/時 という、きわめて高い線量の
ミニ・ホットスポットが存在したのです。



 なので、

 原発にもっと近い福島県内、とくに福島市や郡山市などの
都市部にも、

 100マイクロシーベルト/時 を超えるような、ミニ・ホットス
ポットが存在しているかも知れません。



 そんな心配をしていた矢先の、10月27日。

 JR郡山駅前の、植え込みの土から、

 80マイクロシーベルト/時 もの、きわめて高い線量が
計測されたという報道がありました。



 福島県内には、その他にも、

 きわめて高い線量のミニ・ホットスポットが、多数存在して
いる可能性が大いにあり、早急な調査が必要です。


 (現地の方々には言わずもがなだと思いますが)福島県は、
ただでも全体的な空間線量が高くなっています。

 なので、

 ミニ・ホットスポットによる、「避けようとすれば避けられる
被爆」は、できる限り避けるべきです。



            * * * * *


 しかしさらに、このたびの件ではまた、

 寒気がして、身の毛がよだつほどの「懸念」が示唆されました。

 それは、「不法投棄の問題」です!



 なぜなら文部科学省は当初、

 「汚染土壌が外部から持ち込まれた可能性」を、

 ごく当然のように指摘したからです。



 私は、ずいぶん頭が「平和ボケ」していたので、

 初めてその記事を目にしたとき、愕然(がくぜん)と、してしまい
ました。



 しかしながら、粗大ゴミや産業廃棄物などの、不法投棄の問題
をちょっと思い浮かべれば、

 このさき、放射能汚染物を不法投棄をする人間や業者が、
かならず出てくるでしょうし、


 もう既に、人知れず不法投棄されている可能性も、けっして
否定できないでしょう。




 しかしながら、そのような「人為的な放射能拡散」は、絶対に
阻止しなければなりません!


 放射能汚染物の不法投棄に関しては、法律による重い罰則
を、早急に設ける必要があります。




 放射性物質で汚染された、土壌や、瓦礫や、焼却灰・・・


 これらの不法投棄は、それこそ「放射能拡散テロ」とまで
言い切っても、
けっして過言ではないほどの、

 ものすごく悪辣(あくらつ)な行為なのです!




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