本末転倒!     2011年9月11日 寺岡克哉



 原発を減らすために、

 風力などの「再生可能エネルギー」を拡大させるの

 ではなく・・・



 原発を維持するために、

 「再生可能エネルギー」の拡大を阻止している。



 私の地元にある「北海道電力」は、

 そのような「本末転倒」した態度を、示しているように

 思えてなりません!


 今回は、そのことについて、お話したいと思います。


          * * * * *


 前回のエッセイで、すこしだけ触れましたが・・・


 再生可能エネルギー特別措置法 第5条1の二で、

 「電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがある
とき」には、

 電力の買い取りを拒否できるという、「例外規定」が設け
られています。



 北海道電力は、

 この、「電力買取の義務付け」にたいする「例外規定」を
根拠にして、

 風力発電の新規買い取りを、拒否する方針を示している
のです。



 その主張を、わかりやすく簡単にまとめると、およそ以下の
ようになります。



 ・・・風力発電が36万キロワットを超えると、電力の供給が
過剰になり、システム上、「停電」をひき起こす恐れがある。

 これは、再生エネ特措法第5条の、「電気の円滑な供給
の確保に支障が生じるおそれがあるとき」に該当する。

 だから風力発電は、36万キロワットまでしか買い取れない。

 しかしながら、

 36万キロワットの「買い取り枠」は、2010年4月の時点で、
すでに満杯になっている。

 なので、もう、新規の風力発電による電気は、買い取ること
ができない・・・


            * * * * *


 しかしなぜ、

 風力発電が36万キロワットを超えると、「供給過剰」になる
のでしょう?



 それは、次のように説明されています。



 まず、

 北海道の「電力需要」は、季節や時間帯によって変動します
が、

 2010年の実績で、285万キロワット〜579万キロワットに
なっています。



 つまり北海道では、

 電力をたくさん消費する時は、579万キロワット必要ですが、

 電力をあまり消費しない時は、285万キロワットしか必要と
しません。



 一方それに対して、原子力発電や地熱発電などのように、

 いちど発電施設を稼動させたら、ず〜っと一定出力の運転
を続けなければならず、出力の調整ができない電力。

 つまり「ベース電力」と言われるものが、248万キロワット
あります。

 この248万キロワットは、電力の需要量に関係なく、1年中、
昼も夜も、つねに発電しているわけです。



 そして、あとの足りない分は、

 火力発電や水力発電などの、出力が調整できる電力。

 つまり「調整電力」と呼ばれるものによって、補われている
のです。



 さて、2010年の実績によると、

 電力需要が最小だったのは、春の夜間のときで、285万
キロワットでした。

 このうち、「ベース電力」が248万キロワットなので、

 「調整電力」が入り込める余地は、37万キロワットしかあり
ません。



 もしも、このようなとき、

 調整電力が37万キロワットを超えてしまうと、電力の供給
が過剰になって、

 システム上、「停電」を引き起こす恐れがあるそうです。



 ところで、

 火力や水力などの発電能力は、295万キロワット以上ある
はずです。

 もし、そうでなければ、

 2010年の最大需要のときの、579万キロワットの電力を、
供給することが出来ないからです。



 しかしながら、

 火力発電や水力発電は、電力の需要が無いときには、出力
をゼロにすることが出来ます。

 だから発電施設の能力が、このように大きくても、供給過剰が
避けられるわけです。



 ところが「風力発電」は、

 風の強さによって出力が左右されるので、出力をゼロにした
いときに、それが出来ない可能性があります。

 だから、

 風力発電の施設をたくさん作れば、供給過剰に陥ってしまう
可能性があり、停電になる恐れがあると言うわけです。



 もしも、電力が最小需要(285万キロワット)のときに、

 強風が吹いて、風力発電が最高出力になったとしても、
電力の供給過剰に陥らないためには、

 ベース電力が248万キロワットであることを考慮すると、
(285−248=37)なので、

 風力発電の能力を、36万キロワット程度にしておく必要が
あります。



 それで北海道電力は、風力発電の「買い取り枠」を36万
キロワットと定めており、

 その枠がすでに埋っているので、新規の風力発電の買い
取りを、拒否する姿勢を示しているわけです。


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 ところで・・・

 このように、風力発電の新規導入を阻んでいる「ベース電力」
は、248万キロワットありますが、

 その内の207万キロワット、つまりベース電力の大部分が、
「原発」によって占められています。



 泊 原子力発電所には、3つの原子炉がありますが、

 1号機の出力は、57万9000キロワット。

 2号機も、57万9000キロワット。

 そして3号機は、91万2000キロワットの出力で、

 これら3つの原子炉を合わせると、207万キロワットもの
出力に、なっているのです。



 つまり、

 原発による発電量が「多すぎる」ために、

 新規の風力発電が、導入できないのです!




 逆に言うと、原発を止めれば、

 風力発電(を含めた再生可能エネルギー)を、

 大量に導入できるわけです。



 たとえば、

 いま定期検査で停止中の、1号機と2号機を、このまま
稼動させなければ、

 115万8000キロワット(現在の導入枠の3.2倍)もの
風力発電が、新規に導入できるわけです。


         * * * * *


 私は思うのですが、

 北海道には、原発は必要ありません!



 原発があるから、再生可能エネルギーを導入する枠が、

 無くなってしまうのです。



 北海道には、再生可能エネルギーが、本当にたくさんあり
ます。

 土地が、だだっ広いので、風力だけでなく、太陽光発電も
大規模にやれます。

 酪農の牛糞や、農業廃棄物、間伐材などの、バイオマス
もたくさんあります。

 小水力や地熱発電も、北海道のあちらこちらで、やれる
でしょう。



 その一方で、

 北海道の電力需要は、そんなに多くありません。

 最大でも579万キロワット、最小だと285万キロワットしか、

 電力の需要が無いのです。



 それなのに、北海道に原発が存在するというのは、

 ナンセンス極まりません!



           * * * * *


 北海道は、農業、酪農、漁業などの一次産業が盛んで、

 「日本の食糧基地」となっています。

 そのように大切な、海と大地を、「放射能汚染のリスク」に
さらすと言うのは、

 ものすごく馬鹿げています。



 これから近い将来、

 地球温暖化による、「干ばつ」や「洪水」などの気候変動の
ために、

 世界中の穀倉地帯で、食糧生産が減少することが心配され
ています。

 とうぜん、日本の食料輸入にも、影響が及んで来ますし、

 もうすでに、「食料高騰」などの影響が現れ始めています。



 そんな状況のなかで、

 日本の北海道は、気温の上昇や、降水量の増加により、

 反って「食糧生産が増加する」と、予測される地域になって
います。



 このように、世界的にも恵まれた貴重な土地を、

 必要も無い原発を抱えることによって、放射能汚染のリスク
にさらすと言うのは、

 北海道にとって、「自殺行為」以外の、なにものでもないよう
に思えてなりません。



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