再生エネ特措法が成立
                           2011年9月4日 寺岡克哉


 8月26日。

 第177回通常国会において、「再生エネルギー特別措置法」
(再生エネ特措法)というのが成立しました。

 ちなみに、この法律の正式名称は、

 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する
特別措置法」と言って、とても長ったらしいものです。



 この、再生エネ特措法は、

 太陽光、風力、バイオマス、地熱、小規模水力の、5分野を
中心とした、

 「再生可能エネルギー」による発電の普及を、うながすため
に作られたものです。



 この法律の柱は、「固定価格買い取り制度」の導入であり、

 事業者が、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」に
よって発電をした場合、

 その電力の「全量」を、決められた固定価格で買い取るよう
に、電力会社に義務づけています。

(家庭用の太陽光発電については、今までと同じように、余剰
電力のみの買い取りとなります。)



 以下に、

 再生エネ特措法の「骨子(こっし)」を挙げると、およそ次のよう
になっています。

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       再生エネルギー特別措置法の骨子

1.電力会社に、再生可能エネルギーによる電力の買い取りを
 義務づける。

2.エネルギーの形態や、発電の規模ごとに、買い取り価格や、
 買い取り期間を設定する。

3.価格の決定に際して、第三者機関を設置する。

4.買い取り費用は、賦課(ふか)金として、家庭や企業の電気
 料金に上乗せする。

5.東日本大震災の被災地は、賦課金を当面のあいだ免除する。

6.この法律は、2012年7月1日に施行する。

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 再生エネ特措法について、最初に私が感じたことですが・・・


 まず第1に、

 地球規模の大問題として、「温暖化」を抑制するために、

 二酸化炭素の排出を、削減しなければなりません。



 そして一方、

 これまでは「原子力発電」が、その一翼を担うのではない
かと、

 日本だけでなく、世界的にも期待されていました。



 しかし!

 福島第1原発の事故によって、

 ものすごく大きな、しかも取り返しのできない被害が発生し、

 日本において、原発をさらに推進させることは、もはや不可
能となってしまいました。

 (福島第1原発の事故をうけて、ドイツ、スイス、イタリアなど
の国々でも、「脱原発」の方針を打ち出しています。)



 その結果、

 二酸化炭素の排出を削減するためには、

 「再生可能エネルギー」を拡大させて行くしか、選択肢が
無くなったのです。



 このように、

 地球規模の大きな視点から見ると、「再生エネ特措法」の
成立は、

 これから将来に向けた、「原発に頼らない温暖化対策」
の第一歩
として、

 歓迎したいと思います。


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 以上のように、私の基本的なスタンスとしては、

 「再生エネ特措法」に期待している訳ですが、

 しかし問題点が、まったく無いわけではありません。



 たとえば、再生エネ特措法の「第5条」で、

 「電気の円滑な供給の確保に、支障が生じるおそれがある
場合」には、

 「電力の買い取りを拒否できる」という、項目が設けられて
います。



 このような、

 「電力の買い取り」にたいする義務付けの、「例外規定」
を根拠にして、

 たとえば北海道電力は、風力発電の新規買い取りを、

 拒否する方針を示しているのです。


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 また例えば、

 民主、自民、公明の3党による、法案の修正協議により、

 電力の「買い取り価格」の決定に際して、第三者機関
設置することになりました。



 が、しかし・・・ この第三者機関の人選には、

 経済界(の中にいる原発推進派)の意向をうけた人間が、

 任命される可能性もあるのです。



 もしも、そのような人選がなされ、

 買い取り価格が抑制されるなどの、再生エネ特措法の
「運用面における骨抜き」がすすめば、

 反って、再生可能エネルギー拡大の、足を引っぱること
になり、

 「原発依存体質」から、脱却できなくなる恐れもあります。



 第三者機関の設置は、

 これまで原発を推進してきた自民党が、言い出したこと
なので、

 いま上で話したような、「骨抜きに対する疑惑」が生じた
としても、

 まったく不思議ではないでしょう。


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 ところで、経済産業省の試算によると、

 再生可能エネルギーの電力を、買い取るための賦課(ふか)
金は、

 一般の家庭で、1ヶ月に150円ていどに、なるみたいです。



 私は、

 1ヶ月に150円くらいの賦課金ならば、目をつぶりたい
と思います。

 150円といえば、500ミリリットルの缶ビール1本よりも、
安い値段でしょう。



 それくらいの支払いで、ほんとうに、

 「再生可能エネルギー」を拡大させることができ、

 「脱 原発依存社会」を実現することが出来るのならば、

 「安心して住める未来社会」を築くための投資として、

 ずいぶん安いものだと思います。



 原発事故の甚大さや、悲惨さに比べれば・・・

 何十年も人が住めないような、不毛の土地を増やして
しまうことに比べれば・・・

 放射能汚染に脅えて、生活しなければならない不安に
比べれば・・・



 1ヶ月に150円(しかも1人あたりでなく、1家庭あたりで)
というのは、

 十分にペイする支払いだと、皆さんも思いませんか?



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