子供は5ミリシーベルトで避難!
                            2011年8月21日 寺岡克哉


 10歳以下の子供は、

 1年間の積算線量が、5ミリシーベルトを超えるような
場所から、


 可能なかぎり避難させなければなりません!



 なぜなら子供は、

 平均的な大人より、4倍も大きく、放射線の影響を受ける
からです。

 だから大人でも、1年間の積算線量が20ミリシーベルトで、
避難しなければならないと言うのなら、

 子供の場合だと、その4分の1の、5ミリシーベルトで避難
させなければなりません。

 つまり、

 子供の5ミリシーベルトの被曝は、大人の20ミリシーベ
ルトの被曝に相当するわけです。




 子供を避難させなければならない場所・・・

 つまり1年間の積算線量が、5ミリシーベルトを超える恐れ
のある場所は、

 福島第1原発から北西部の60キロ圏内や、

 原発から80キロほど離れた、福島市や郡山市の市街地を
含みます。

 さらには、福島第1原発から140キロほど離れた、日光市
の一部にも、そのような場所があります。



 対象となる地域がとても広いので、避難させなければならな
い子供の数も、たいへん多くなります。

 しかし可能なかぎり、1人でも多くの子供たちを、そのような
場所から避難させなければなりません。



 以下、

 ここまでの話について、もうすこし詳しく説明していきましょう。


           * * * * *


 まず下の表は、

 それぞれの年齢の100人が、100ミリシーベルトの被曝を
した場合に、ガンで死亡する推定人数です。

 これは、前回のエッセイで紹介したのと、おなじ元データ
ですが、

 前回の数値は、「1000人」が100ミリシーベルトの被曝を
した場合だったのを、

 今回は、「100人」が100ミリシーベルトの被曝をした場合
の数値に、直してあります。



       −−−−−−−−−−−−−
           0歳    15.17人
           5歳    13.34人
          10歳    10.52人
          15歳     5.11人
          20歳     4.51人
          25歳     4.47人
          30歳     3.89人
          35歳     2.78人
          40歳     1.72人
          45歳     0.76人
          50歳     0.07人
          55歳     0.05人

        全年齢平均   3.73人
       −−−−−−−−−−−−−



 このデータは、アメリカのJ.W.ゴフマン博士による推定
値ですが、全年齢の平均が3.73人になっています。

 つまり平均的には、

 100ミリシーベルトの被曝をすれば、100人中およそ4人
(およそ4パーセント)が、

 ガンで死亡すると推定されるわけです。



 一方、

 「原発推進派」などによって、よく主張されているのは、

 100ミリシーベルトの被曝で、ガンの発生率が1パーセント
というものです。



 なので、

 ゴフマン博士による推定は、原発推進派の推定よりも、

 4倍ほど大きな値になっています。


          * * * * *


 さらに次の表は、平均的な大人と、子供とに分けて、

 原発推進派の推定(※1)と、ゴフマン博士の推定とを、
比較したものです。

 (原発はいらない 小出裕章 著  幻冬舎ルネッサンス
 新書 p184)



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         100人が100ミリシーベルトの被曝をした
         場合の、ガンによる推定死者数

            ゴフマン博士     原発推進派

 平均的な大人     4人          1人

   子供        16人          4人

子供/大人       4倍          4倍


※1
 原発推進派の推定は、国際放射線防護委員会(ICRP)
と、米国科学アカデミーの米国研究審議会が設置する
電離放射線の生物影響に関する委員会(BEIR)が、示す
基準に従ったものです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 この表で、いちばん重要なことは、

 ゴフマン博士の推定でも、原発推進派の推定でも、

 子供と大人の比は、同じく「4倍」になっている!

 と、いうことです。



 つまり、原発推進派でさえも、

 「子供の被曝は、大人の被曝よりも、影響が4倍大きい」

 ということは、認めているのです。



 このように、

 子供の被曝の影響が、大人の影響よりも4倍大きいことは、

 原発推進派をも含めた研究者たちの、「共通認識」になって
います。

 なので、ガンによる死亡率が、被曝量に比例するとすれば、

 子供の被曝限度は、大人の限度の、4分の1にしなけれ
ばなりません!




 つまり大人が、1年間の積算線量が20ミリシーベルト以上の
地域から、避難しなければならないのなら、

 子供の場合は、1年間の積算線量が5ミリシーベルト以上
の地域から、避難させなければならないのです!



           * * * * *


 ところで、

 1年間の積算線量が、5ミリシーベルトというのは、

 1時間あたりの空間線量にすると、0.57マイクロ
シーベルトになります。
(5000/365/24=0.57) 



 つまり子供の場合は、

 1時間あたりの空間線量が、0.57マイクロシーベルトを

 超えるような地域から、避難させなければならないのです。



 そして一方、文部科学省は7月27日に、

 「文部科学省及び栃木県による航空機モニタリングの
測定結果について」

 と、いうのを発表しました。



 それに載っている、

 「文部科学省がこれまでに測定してきた範囲及び栃木県南部
における空間線量率」というマップと、

 「栃木県内の空間線量率」というマップによると、

 7月16日現在において、地表面から1メートルの高さの、
1時間あたりの空間線量が、

 0.5〜1.0マイクロシーベルトの地域
(つまり、0.57マイ
クロシーベルトを超えている恐れがある地域)は、

 およそ以下のようになっています。



 福島第1原発の、北北西〜北西の方向にかけて、およそ
45〜80キロまでの圏内。

 原発の、北西〜西の方向にかけて、およそ80〜60キロ
までの圏内。

 原発の、西〜西南西の方向にかけて、およそ60〜30キロ
までの圏内。

 原発の、西南西〜南の方向にかけて、およそ30〜40キロ
までの圏内。

 その他、

 原発から80キロほど離れた、福島市や郡山市の市街地
や、須賀川市。

 さらには、

 原発から110キロほど離れた、栃木県 那須塩原市
の一部。

 原発から140キロほど離れた、日光市の一部などにも、
そのような場所があります。



 以上のように、

 対象となる地域がとても広いので、避難させなければなら
ない子供の数も、たいへん多くなってしまいます。

 しかし可能なかぎり、1人でも多くの子供たちを、そのような
場所から避難させるべきです。



 そして、

 こんな事態になった根本の原因は、原発(事故)だという
ことから、決して目をそらしてはなりません。

 原発(事故)さえ無ければ、子供たちを、こんな危険な目に
あわせることは、絶対になかったのです。

 すべては、「原発」というものが存在することが、このような
事態を招いているのです。



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