セシウム汚染牛肉が拡大!
                          2011年7月17日 寺岡克哉


 福島県産の牛肉から、「放射性セシウム」が検出されて、

 世の中が騒然となっています。


 私の住む北海道でも、そのような牛肉が流通していたので、

 ものすごく心配です。


 なので今回は、そのことについて、レポートしたいと思いま
した。


            * * * * *


 まず、事(こと)の始まりは、

 7月8日に、1頭の「黒毛和牛」の、首の部分の肉から、

 1キロあたり2300ベクレルの、「放射性セシウム」が検出
されたことでした。

 これは、国の暫定基準値(1キロあたり500ベクレル)の、
4.6倍に相当します。



 この牛は、

 福島県南相馬市の、緊急避難準備区域内の生産者から、

 東京の港区にある食肉処理場(都立芝浦と場)に搬入さ
れた、

 食用の牛(黒毛和牛)11頭のうちの、1頭でした。



 さらには7月9日までに、のこる10頭の検査をしたところ、

 その全ての牛から、1530〜3200ベクレルの、放射性
セシウムが検出されたのです。



 そのため、これら11頭の牛肉については、

 東京都が、食肉処理場の施設内に保管して、流通させない
処置をとりました。


          * * * * *


 ところが・・・

 上の11頭の黒毛和牛は、すべて「同一の生産者」から出荷
されたわけですが、

 じつは、

 おなじ生産者が、5月と6月に出荷した6頭の黒毛和牛が、

 すでに全国的に流通していました。



 7月13日に東京都が発表した、流通状況の最終調査結果
によると、

 6頭の牛すべてから、国の基準(1キロあたり500ベクレル)
の、およそ4倍〜9倍弱の放射性セシウムが検出されており、

 8都道府県(北海道、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、徳島
高知)において、

 合計およそ438キロの牛肉が、食用として消費されたものと
みられます。


           * * * * *


 福島県は、

 この南相馬市の生産者にたいして、立ち入り検査を実施しま
した。



 その結果、

 飼料にしていた「稲わら」から、1キロあたり7万5000ベク
レルの、放射性セシウムが検出されたのです。

 水分量を補正した値(上のは乾燥した稲わらの値)でも、
1キロあたり1万7050ベクレルに達しており、

 国の暫定許容量(1キロあたり300ベクレル)の、およそ57
倍にもなります。



 この「稲わら」は、

 福島第1原発事故発生後、4月の上旬まで、緊急避難準備
区域内の水田に、「野ざらし」で置かれていました。

 生産者によると、1頭あたり、1日におよそ1.5キロの稲わら
を、牛に食べさせていたと言います。

 「震災後に配合飼料が手に入らなくなり、食べさせてしまった」
とのことでした。


           * * * * *


 ところが!

 上の、南相馬市の生産者だけでなく、

 福島第1原発から60キロほど離れた、福島県浅川町の
生産者も、

 放射性セシウムに汚染された稲わらを、牛に与えていた
ことが分かりました。



 浅川町の生産者は、

 使用しているのが汚染された稲わらだとは知らなかったが、

 南相馬市の問題が明らかになったあと心配になり、7月12日
に県に連絡したといいます。



 7月13日に、県が稲わらを調べた結果、高い放射線量が
測定されました。

 乾燥した稲わら1キロあたり、最大で97000ベクレルの、
放射性セシウムが検出されており、

 これは、水分量を補正した値にすると、1キロあたり22050
ベクレルになり、

 国の基準値(1キロあたり300ベクレル)の、およそ74倍にも
なります。



 この浅川町の生産者は、問題の稲わらを、4月から牛のエサ
として与えはじめ、今月までに42頭を出荷していました。

 その内訳は、

 4月8〜20日にかけて、横浜市へ14頭。

 5月11日に、千葉県へ5頭。

 4月21日〜6月16日にかけて、東京都へ13頭。

 5月23日〜7月6日にかけて、仙台市へ10頭。

 の、合計で42頭であり、このうち問題の稲わらを食べさせた
のは35頭だといいます。


          * * * * *


 福島県によると、浅川町で問題になった稲わらは、

 避難の対象地域となっていない、福島第1原発から南西に
およそ80キロ離れた、白河市の7戸の農家から集められ、

 原発事故が発生した3月11日から、少なくても4日間は、
屋外に置かれていました。



 稲わらは、その後、

 こん包した状態で、白河市内の農家の倉庫に保管され、

 4月の上旬に、浅川町の肉牛生産者が購入しました。



 ところで、これと同じ稲わらが、

 福島県内の、ほかの3戸の肉牛生産農家にも、販売されて
いました。

 しかし、これまでの県の調査にたいして、

 2戸の農家は、牛舎に敷くわらとして使うなど、エサとして
与えていないとしており、

 のこる1戸は、エサとして与えていた牛は、飼育の途中なの
で、まだ出荷していないとしています。


          * * * * *


 7月15日に東京都は、

 浅川町の生産者が出荷した牛の1頭(仙台市に出荷した
10頭のうちの1頭)から、

 国の基準値を超える、1キロあたり650ベクレルの放射性
セシウムが、検出されたと発表しました。



 また、福島県が、

 山形県酒田市の業者が購入していた牛肉を検査した結果、

 1キロあたり694ベクレルの、放射性セシウムが検出されま
した。



 なので、

 浅川町の生産者が出荷した、42頭の牛の一部については、

 国の基準値(1キロあたり500ベクレル)を超える肉がある
ことが、判明してしまいました。



 たしかに、

 神奈川県と埼玉県で検査された牛肉は、国の基準値を下回っ
ていたので、

 42頭の牛のすべてが、国の基準値を超えている訳ではありま
せん。



 しかしながら、

 そのような、放射性セシウムに汚染された可能性のある牛肉が、

 7月15日までの時点で、

 東京、千葉、神奈川、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨、新潟、長野、
宮城、山形、岩手、秋田、福島、愛知、岐阜、三重、石川、福井、
静岡、大阪、京都、兵庫、広島、愛媛、香川、福岡の、

 合わせて28の都府県の、卸売り業者やスーパーマーケットに販売
されたことが、確認されているのです。



 さらには7月16日の時点になると、この42頭の牛肉が、

 北海道から九州まで、33の都道府県の卸売業者やスーパー
マーケットなどに、

 流通していたことが判明しています。


          * * * * *


 ところが、さらに・・・


 福島県は7月16日。

 新たに、郡山市、喜多方市、相馬市の畜産農家、合わせ
て5戸でも、

 放射性セシウムに汚染された稲わらを、肉牛に与え、

 原発事故発生後の3月28日から、7月13日までに、

 合計84頭を、5つの都県に出荷していたと発表しました。



 5戸の畜産農家の内訳は、郡山市が2戸、喜多方市が2戸、
相馬市が1戸です。

 県の立ち入り調査により、

 農家に残っていた稲わらから、それぞれ以下の表のような、
放射性セシウムが検出されました。

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     乾燥した稲わら1キロあ  水分量を補正  国の暫定基準の
     たりの放射性セシウム

郡山市     50万         11万4000      380倍

相馬市   12万3000        2万7950       93倍

喜多方市  3万9000          8860        30倍


          ※ 数値の単位はベクレル
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 また、

 これらの稲わらが与えられた84頭の牛が、出荷された
食肉処理場は、

 東京都が53頭、福島県が19頭、埼玉県の川口市が8頭、
山形県が2頭、仙台市が2頭です。



 そこから先の、

 卸売り業者や、スーパーマーケットなどの流通先について
は、

 7月16日の時点において、まだ全容が分かっていません。


         * * * * *


 ほんとうに、大変なことになって来ました!


 この先、どこまで汚染牛肉が拡大して行くのか?

 セシウム汚染牛を出荷したのは、これらの畜産農家
だけなのか?

 牛肉以外の、ほかの食品についてはどうなのか?


 それらのことが、ものすごく気になって、仕方がありません!



 しかしながら、

 原発(事故)さえ無ければ、こんな思いをして暮らすはめに
ならなかったことだけは、絶対に確かです!


 根本的な原因のすべては、福島第1原発の「放射能もれ」
にあるのです。



 本当に、とんでもない世の中に、なってしまいました。



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