5時間後にメルトダウン!
                         2011年6月12日 寺岡克哉


 6月6日。

 経済産業省 原子力安全・保安院は、

 福島第1原発 1号機〜3号機のすべてで、メルトダウン(炉心
溶融)が起こり、

 いちばん早くに起こった、1号機の場合では、

 東北地方 太平洋沖地震(東日本大震災)が発生してから、
およそ5時間後に
メルトダウンした!

 との、分析結果を発表しました。



 また、6月7日。

 政府の原子力災害対策本部は、

 1号機〜3号機の核燃料が溶けて、原子炉の「圧力容器」の底
に落下するメルトダウンにつづき、

 さらには、

 溶けた燃料の熱によって、圧力容器の底をも溶かし、その外側
を囲っている「格納容器」にまで燃料が落下してしまう、

 「メルトスルー(溶融貫通)」が、起きた可能性も考えられる
という報告書をまとめ、

 IAEA(国際原子力機関)に提出しました。


             * * * * *


 ところで・・・

 「東北地方 太平洋沖地震 (東日本大震災)」が発生したのは、

 3月11日の14時46分です。



 そして、原子力安全・保安院の分析によると、

 1号機の場合、

 炉心の露出が開始したのは、3月11日の16時40分ころ(地震
発生からおよそ2時間後)。

 炉心の損傷が開始したのは、おなじ日の18時ころ(地震発生
からおよそ3時間後)。

 圧力容器に破損が生じた(つまり完全にメルトダウンした)のは、
おなじ日の20時ころ(地震発生からおよそ5時間後)。

 と、なっています。



 ところが!

 1号機の半径2キロの住民に、避難指示が出されたのは、3月
11日の20時50分(地震発生から6時間04分後)。

 福島第1原発から、半径3キロ以内の住民に避難指示が出さ
れたのが、おなじ日の21時23分(地震発生から6時間37分後)。

 避難対象地域を半径10キロに拡大したのは、3月12日の5時
44分(地震発生から14時間58分後)。

 避難対象地域が、半径20キロに拡大されたのが、おなじ日の
20時20分(地震発生から29時間34分後)

 だったのです。



 だから、

 「メルトダウン」が完全に起こっていた、まさにその時点に
おいて、


 原発の近くに住んでいる人々は、だれも避難していなかっ
た!


 と、いうことになります。



 もしもメルトダウンのときに、何らかの爆発が起こって、

 大量の放射性物質が、放出されたかも知れない可能性を
考えると、

 ものすごくゾッとします。


            * * * * *


 ところでまた、

 1号機に「海水」が注入されたのは、3月12日の20時20分
です。



 これは、

 地震が発生してから、29時間34分後。

 1号機が「完全にメルトダウン」を起こしてから、およそ24時間
20分後。

 そして、1号機が「水素爆発」を起こしてから、およそ4時間40分
後です。



 ここまで、海水の注入が遅れたのには、

 「廃炉を懸念して、海水の注入を躊躇したからだ!」

 という疑惑が、いまでも根強く持たれています。

 (原子炉に海水を注入すると、復旧が不可能になって、廃炉に
するしかなくなります。)



 もしも、それが本当なら、

 「人命よりも、経済的な損失を避けることを優先した!」

 という批判を浴びてしまうのは、絶対に免れないでしょう。


          * * * * *


 それにしても・・・

 原発事故が発生してから、3ヶ月ちかくも経ってやっと、

 「じつは地震発生の5時間後に、メルトダウンが起こっていた」
ことを発表するとは、

 あまりにも日本国民が、バカにされ過ぎているようで、

 憤りを隠すことができません!



 もしも、

 事故発生当初に、メルトダウンが起こっていたと分かって
いながら、

 その事実を「国民に隠して」いたのなら、

 国民の生命安全にたいして、ものすごい大問題となる、

 「隠蔽(いんぺい)事件」だといえるでしょう。



 その逆に、まったく隠蔽などしていないと言うのなら、

 メルトダウンが起こっても、その時点では(つまり、リアル
タイムでは)、状況を把握することが全くできないという、

 「きわめて不完全な原発技術」しか、
日本は持っていない
ことになります!




 上のどちらにしても、

 原発事業にたいして、「ものすごく大きな不信感」が湧き起こ
るのは、当然のことです。

 今のままでは、とてもとても、「原発の維持」でさえ賛成するの
は難しいですし、

 ましてや、

 「原発の推進」を認めることなど、絶対にできません!



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