汚染水増加の危機!
2011年5月1日 寺岡克哉
いま現在、福島第1原発では、
毎日、毎日、「高レベル汚染水」が増え続けています!
4月18日の時点で、
1号機〜3号機の、タービン建屋の地下や、「トレンチ」と呼ばれ
る坑道には、
合計で、6万7500トンもの、高レベル汚染水が溜まっています。
その6万7500トンの汚染水に、含まれている放射性物質
の量は、
チェルノブイリ原発事故で放出された、放射性物質の量の、
67%にも達しています!
そんなに、ものすごい問題のある「高レベル汚染水」が、
いま現在も、毎日、毎日、
1日あたり、およそ500トンのペースで、増え続けているの
です!
このままでは、
「高レベル汚染水」が地上にあふれ出して、海に流出してしまう
かも知れません。
あるいは、どうすることも出来なくなって、
高レベル汚染水でさえも、意図的に海へ放出しなければ、ならなく
なるかも知れません。
これは、まさに危機的な状況です!
今回は、
福島第1原発が、そのような「危機的な状況」にあることについて、
見て行きたいと思います。
* * * * *
東京電力は、4月18日。
福島第1原発 1号機〜3号機の、タービン建屋の地下や、トレンチ
(坑道)に溜まった高レベル汚染水が、
1号機では、2万500トン、
2号機では、2万5000トン、
3号機では、2万2000トンの、
合計で、6万7500トンになったと発表しました。
4月5日の時点では、
1号機〜3号機で、それぞれ各2万トンの、合計6万トンと発表して
いましたから、
4月18日までの13日間で、7500トンの「高レベル汚染水」が
増加したことになり、1日あたり577トンの増加となります。
いま現在も、
1号機〜3号機の原子炉には、合計で、1日あたり約500トンの
真水が注入されているので、
おそらく今後も、毎日それくらいの量で、「高レベル汚染水」が増え
続けて行くものと思われます。
前回のエッセイで、見積もりましたように、
1号機の、2万500トンの溜まり水に含まれる放射性物質の量は、
「ヨウ素131等価」の換算値で、10万9675テラベクレルです。
2号機の2万5000トンの溜まり水は、同じくヨウ素131換算で、
332万5000テラベクレル。
3号機の2万2000トンの溜まり水は、5万6320テラベクレルです。
これら、1号機〜3号機のを合計すると、349万995テラベクレルと
なり、
チェルノブイリ原発事故で放出された、ヨウ素131換算で520万
テラベクレルの、67%にも相当します。
そんな凄まじい汚染水が、これからも、どんどん増え続けて行くわけ
です。
* * * * *
ところで、1号機〜3号機のなかでも、
とくに2号機の汚染水の、放射性物質の濃度が、ものすごく高く
なっています。
そのため、
2号機の高レベル汚染水を、最優先にして、集中廃棄物処理施設
のタンクへ移送しています。
この汚染水の移送は、4月19日の朝から始められ、その経過は
下の表のようになっています。
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2号機トレンチ 移送した汚染水
の水位低下 の合計量
4月19日 朝 移送開始 0センチ 0トン
4月20日 午前7時 1センチ 210トン
4月21日 午前7時 3センチ 450トン
4月22日 午前7時 6センチ 690トン
4月23日
4月24日
4月25日 午前7時 8センチ 1410トン
4月26日 午前7時 9センチ
4月27日
4月28日
4月29日 午前9時すぎ 2400トン
4月29日 午前11時 9センチ 2400トン
4月30日 午前7時 5センチ 2400トン
5月 1日 午前7時 6センチ 2560トン
※4月29日の午前9時すぎに、点検のため移送作業を
いったん停止し、4月30日の午後から再開。
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2号機の「高レベル汚染水」は、1日あたり約240トンのペース
で、移送されました。
その結果、
移送を開始した4月19日の時点では、2号機トレンチ(坑道)の
水位が、地上の出口から80センチの深さでしたが、
それから7日経った、4月26日の午前7時では、地上の出口から
89センチの深さまで下がりました。
しかし、上の表を見れば分かりますが、
4月19日から4月22日までは、順調に水位が下がっていた
のに、
4月23日以降から、水位の下がり方が鈍っています。
4月26日以降になると、水を汲み出しているにもかかわらず、
水位が下がらなくなりました。
4月29日の午前9時すぎに、点検のために移送作業をいったん
停止したので、4月30日の午前7時では、水位が下がらないどころ
か、逆に上がっています。
4月30日の午後から移送作業が再開され、5月1日には水位が
1センチ下がりました。
しかし結果的には、4月22日から5月1日まで、1870トンの水
を汲み出したのに、2号機の「高レベル汚染水」は、まったく減って
いないことになります。
そしてまた、
肝心の、2号機タービン建屋の地下に溜まった水は、
4月25日の時点においても、移送を開始した4月19日から、
まったく水位が下がっていません。
(なので5月1日現在でも、タービン建屋地下の水位は、おそらく
下がっていないと思われます。)
つまり、
高レベル汚染水を、汲み出しても、汲み出しても、
ぜんぜん減らないという、まるで「地獄絵図」のような状況に、
なっているのです。
汚染水を移送しても、水位が下がらない原因として、
現在、2号機の原子炉へ、1日あたり約160トンの真水を注入
していますが、それが漏れ出していることと、
2号機のタービン建屋やトレンチ(坑道)に、「地下水」が入り込ん
でいることの、
二つが考えられています。
ところで当初は、
集中廃棄物処理施設に、3万2000トンの汚染水が収容できる
と、していました。
しかし、そんなに多くの量を収容すると、汚染水の水位が、地下水
の水位よりも高くなってしまいます。
そうすると、汚染水の圧力が、地下水の圧力よりも高くなり、「汚染
水が地下へ漏れだす」恐れがあります。
そのため、
汚染水の水位が、地下水の水位よりも高くならない程度の、1万トン
ほどの量しか、収容できなくなりました。
つまり、集中廃棄物処理施設に、
もともと2号機の地下に溜まっていた、2万5000トンの高レベル
汚染水を、
すべて収容できる訳では、なくなってしまったのです。
* * * * *
その一方で、
3号機の「高レベル汚染水」も増加しており、トレンチ(坑道)の
水位は、下の表のように上昇しています。
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3号機トレンチ(坑道)
地上の出口 4月20日から
からの深さ の水位上昇
4月20日 午前7時 108センチ 0センチ
4月21日 午前7時 107センチ 1センチ
4月22日
4月23日
4月24日
4月25日 午前7時 101センチ 7センチ
4月26日 午前7時 98センチ 10センチ
4月27日
4月28日
4月29日 午後6時 93センチ 15センチ
4月30日 午前7時 92センチ 16センチ
5月 1日 午前7時 90センチ 18センチ
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上の表をみると、
4月26日の午前7時には、汚染水の水位が、地上の出口から
98センチの深さとなり、
東京電力が移送を始める目安としていた「1メートル」を、切って
しまいました。
また、東京電力は4月25日。
3号機タービン建屋地下の、「高レベル汚染水」に含まれる放射
性物質の濃度が、
3月下旬からの1ヶ月で、2倍以上に上昇したと発表しました。
なので、前回のエッセイで見積もった、
3号機の、2万2000トンの「溜まり水」に含まれる放射性物質
が、5万6320テラベクレルというのは、
じつは「3月26日に採取したデータ」を使って求めましたので、
この数値も、大ざっぱには、2倍以上になると考えられます。
とにかく、3号機の汚染水は、
トレンチ(坑道)の水位が上がりつづけており、
さらには、「放射性物質の濃度」も上がってきたので、
このまま放っておくわけには、行かなくなりました。
このため東京電力は、
3号機と、集中廃棄物処理施設を、ホースでつなぐ作業を進め
ており、
高レベル汚染水の「移送」を検討しています。
* * * * *
そして、さらには・・・
4号機の、タービン建屋の地下や、トレンチ(坑道)にも、
おそらく2万トンの「高レベル汚染水」が、溜まっているものと
思われます。
というのは、各種報道が4月27日から、
「1〜4号機のタービン建屋と坑道(トレンチ)には、8万7500
トンの汚染水がある」
という表現に、変わったからです。
それまでは、
1号機〜3号機の汚染水が、合計で6万7500トンと言われて
いましたから、
それを差し引くと、4号機の汚染水は、「2万トン」という計算に
なるのです。
ところで当初、この4号機の溜まり水は、「低レベル汚染水」
でした。
しかし、4月21日の調査によって、
ヨウ素131が、4300ベクレル/立方センチ
セシウム137が、8100ベクレル/立方センチ
セシウム134が、7800ベクレル/立方センチ
という濃度の、放射性物質が検出されたのです。
前回の、3月24日の調査にくらべて、
ヨウ素131が、およそ12倍。
セシウム137とセシウム134は、いずれも、およそ250倍
に濃度が上昇しており、
移送や処理が優先される、「高濃度(高レベル)」の水準に
達したのです。
また、4号機タービン建屋地下の水位は、
4月13日では90センチでしたが、
4月26日の午前7時には、1メートル15センチになり、
2週間ほどで、25センチ上昇しています。
このように、
4号機の汚染水が増えたり、放射性物質の濃度が高くなった
理由として、
3号機と4号機のタービン建屋は、構造上つながっているので、
3号機の原子炉を冷やすために注入している水が、4号機に
まで流出している可能性がある
と、東京電力は説明しています。
東京電力は、この4号機の汚染水にたいして、
「ゼオライト」という鉱物を使い、放射性物質を取りのぞく処理
を、行う方針です。
また、4月18日には、
4号機の(タービン建屋ではなく)原子炉建屋の地下で、
4000トンの「低レベル汚染水」が、見つかっています。
* * * * *
以上、見てきましたように、
1号機〜4号機の、タービン建屋の地下や、トレンチ(坑道)には、
8万7500トンという、大量の「高レベル汚染水」が溜まっています。
しかしながら、
2号機の汚染水は、移送をしても、なかなか減らすことができず、
3号機と4号機では、汚染水が増加しつづけています。
このままでは本当に、
「高レベル汚染水」が地上にあふれ出して、海に流出してしまう
かも知れません。
あるいは、どうすることも出来なくなって、
高レベル汚染水でさえも、意図的に海へ放出しなければ、ならなく
なるかも知れません。
そんな危機感を持ってしまうのは、けっして、私だけではないで
しょう。
しかし、「高レベル汚染水」の流出や放出は、絶対に避けな
ければなりません!
もしも、数万トンという量の「高レベル汚染水」が、海へ放出され
てしまったら、
おそらく太平洋沿岸の漁業は、「壊滅的な被害」を受けてしまう
でしょう。
次回は、
このように、どんどん迫っている、「ものすごく大変な危機」に
たいして、
現在、どのような対策が行われており、
あるいは今後、どんな対策が考えられているかについて、
見て行きたいと思います。
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