リビアについて      2011年2月27日 寺岡克哉


 いま現在・・・

 北アフリカのリビアで、反政府デモが激化しており、

 まるで内戦のような状態になっています!




 カダフィー大佐による独裁政権は、反政府勢力にたいして、

 戦闘機による空爆や、ミサイルや重火器による、容赦のない
弾圧を加え、

 2月24日までに、死者が最大で2000人に達しているという
報道もあります。



 一方、

 反政府勢力の側も、武器を手に入れて戦っているようで、

 すでにリビアの東部一帯が制圧され、西部にある首都のトリポリ
にまで迫っています。

 このように、リビアは現在、ほぼ「内戦状態」になっていると言え
ます。



 ところで、今まで私は知らなかったのですが、

 リビアの「石油」は、アフリカで最大の埋蔵量だと言われており、

 この情勢悪化によって、石油の供給にたいする支障が懸念され
ています。



 また、

 たしかリビアは、アメリカから「テロ支援国家」に指定されていると
思っていたのですが、

 現在では、テロ支援国家の指定も解除されて、欧米との関係を
改善していたみたいです。



 このように、今まで私は、

 リビアの情勢に疎かったので、この国について、ちょっと調べて
おきたいと思いました。


            * * * * *


 リビアは、地中海に面した北アフリカに位置し、

 これまでの反政府デモによって政権が崩壊した、チュニジアと
エジプトのちょうど間にあります。

 面積は176万平方キロで、日本の4.7倍もありますが、人口は
640万人しかいません。



 第2次世界大戦の前、リビアは「イタリアの植民地」でしたが、

 イタリアが戦争に負けると、イギリスとフランスの共同統治領と
なりました。

 その後、3州からなる連合王国として独立しましたが、1963年
には、1つの王国にまとまっています。



 しかしその後、1969年に軍事クーデターが起こり、

 カダフィー大佐を最高指導者とする共和国が、突如として成立
したのです。

 この時からカダフィー大佐は、およそ42年もの長い年月にわたっ
て、リビアの政権を掌握(しょうあく)していることになります。



 1970〜90年代。カダフィー政権のリビアは、

 ヨーロッパやアメリカ、イスラエルなどで、数々のテロをひき起こし、

 さらには「核兵器の開発」も、秘密裏に行っていました。



 このためリビアは、

 ヨーロッパやアメリカなどから「テロ国家」として非難され、

 1986年には、アメリカ軍による「空爆」も受けました。

 また、

 1992年〜1999年まで、「国連による経済制裁」も受けてい
ます。



 しかし近年では、リビアの態度が軟化していました。

 2003年には、核兵器の開発をしていたことを認め、即時かつ
無条件の廃棄を表明し、

 IAEA(国際原子力機関)の査察も、すなおに受け入れるように
なりました。

 それ以降、アメリカとの関係改善もすすみ、

 2006年には「テロ支援国家」の指定が解除されています。



 このように、

 かつてリビアは、強硬な反米国家だったのですが、

 最近では、あるていど親米的になっていたみたいです。

 (なので、反政府勢力によってカダフィー政権が倒された場合
は、リビアが現在よりも反米色の強い国になる可能性も考えら
れます。)


            * * * * *


 ところで、

 独立する前のリビアは、まずしい農業国でしたが、

 独立後に油田の開発が進められて、「産油国」となりました。

 石油の埋蔵量は443億バレルで、アフリカ最大といわれて
おり、

 世界でも8位の埋蔵量を誇(ほこ)っています。



 このようにリビアは、

 石油が豊富に存在し、その一方で人口が640万人と少ないため、

 「1人あたりのGDP(2010年)」は、1万2062ドルであり、けっこう
高い値になっています。



 ちなみに、

 2010年における中国のGDPは、5兆8786億ドルで世界第2位
ですが、
 1人あたりのGDPでは4421ドルと、リビアに比べても、ずいぶん
低い値になってしまいます。

 また、

 日本のGDP(2010年)は、5兆4742億ドルで中国に抜かれまし
たが、
 1人あたりのGDPでは4万2431億ドルで、中国の9.6倍ほどに
なっています。


            * * * * *


 以上、ここまで見てきましたように、

 リビアは、1人あたりのGDPが1万2062ドルと、けっこう経済的に
恵まれているので、

 チュニジア(2010年の1人あたりのGDPは4160ドル)や、エジプト
(同2771ドル)と違って、

 食料価格が高騰しても、直接の死活問題にはならないはずです。



 しかし、それなのに、

 戦闘機やヘリコプター、ミサイル、重火器、機銃などを使用した、
カダフィー政権による強硬な弾圧にも屈せず、

 人々が武器をとり、内戦の様相を呈してまでも、反政府デモが広がっ
ているのは、

 リビアの民衆が、カダフィー政権にたいして、そうとうな不満を持って
いたと言うことなのでしょう。



 2月26日までに、

 地中海沿岸に連なる主要都市が、首都のトリポリを除いて、すべて
反政府側の支配下に入ったもようです。

 しかし政府側も、

 トリポリで体制支持の市民に武器を配っており、徹底抗戦の構えを
見せています。

 なので今後、

 首都のトリポリでは、一般市民をも巻き込んだ市街戦が発生する
おそれもあり、すごく緊迫した状況になっています。


             * * * * *


 ところでまた、リビアは産油国なので、

 この国が混乱すると、石油の供給に支障がでる恐れがあります。



 リビアの1日あたりの原油生産量は、160万バレルで、世界の
生産量のおよそ2%に過ぎません。

 しかしそれでも、原油市場は敏感に反応しており、とくにヨーロッパ
で、原油がずいぶん値上がりしました。

 (リビアの産油量160万バレルのうち、およそ130万バレルが、
おもにヨーロッパに輸出されています。)



 2月24日。

 ヨーロッパの代表的な指標である「北海ブレント原油先物相場」
は、1バレル119.79ドルまで上がり、およそ2年半ぶりの高値に
なりました。

 また、

 アメリカの国産標準油種(WIT)の先物相場も、1バレル103.41
ドルまで値上がりしています。



 こうなって来ると、

 わが国の日本も、まったく無関係であるとは言えなくなるでしょう。



 一方、

 リビアの影響による原油生産の低下は、1日あたり40万〜120万
バレルと見積もられていますが、

 そんな状況の中、

 サウジアラビアが、1日あたり70万バレル以上の、原油の増産を
決定したみたいです。

 この決定は、ヨーロッパやアメリカなどの石油消費国(の圧力)に、
配慮したものと見られます。



 このため、原油の値段はすこし下がって、落ち着いてきたようです。

 2月25日の終値では、

 北海ブレント原油の先物が、1バレル112.14ドルで、

 アメリカ国産標準油種(WIT)の先物は、1バレル97.88ドルと
なっています。


            * * * * *


 今回いろいろ調べてみて、私は思ったのですが・・・


 もちろん「地球温暖化対策」が、いちばんの目的なのですが、しかし
それだけでなく、

 日本が、以上のような中東のゴタゴタに巻き込まれないようにする
ためにも、
 (さらには、「ピークオイル」と呼ばれる石油の枯渇に対処するため
にも、)

 太陽光発電などの新エネルギーの拡大を進めて、日本のエネル
ギー自給率を高めて行くことが、

 いよいよ、ものすごく重要になって来たのではないでしょうか。



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