中東情勢の悪化と地球温暖化 1
                         2011年2月13日 寺岡克哉


 近ごろ・・・

 エジプトやチュニジアなどの、中東や北アフリカの国々で、

 「暴動」「反政府デモ」が、相次いで発生しています。



 そのような情勢悪化の、直接的な「引き金」になったのは、
「食料の高騰」だと言われています。

 そして食料高騰の、直接的な「キッカケ」になったのは、昨年
から世界各地で起こっている「異常気象」であり、

 その異常気象の背景には、「地球温暖化」が影響していると
見られています。



 つまり、

 中東や北アフリカで、連鎖的に発生している暴動や反政府
デモには、


 その背景として、「地球温暖化」が影響していると考えられる
のです。




 しかしながら、こんなことを言うと、

 「あまりにも強引なこじつけだ!」と、感じる人も多いかもしれま
せんね。

 もちろん、暴動や反政府デモが相次いでいるのには、その他にも、
さまざまな要因が複雑に絡んでいます。

 しかしまず、私がこれから言いたいことを、分かりやすくするため
に、話の流れをすごく単純化してみたのでした。



 それでは次に、

 中東や北アフリカで、暴動や反政府デモが連鎖的に起こっている
さまざまな背景について、

 もうすこし詳しく見て行くことにしましょう。


            * * * * *


 1月14日・・・

 チュニジアで起こった、暴動や反政府デモによって、

 ベンアリ大統領が、出国・亡命する事態となりました。



 そして2月11日・・・

 エジプトで起こった暴動や反政府デモにより、ムバラク大統領が
辞任する事態となっています。

 ここに、29年間も続いた長期独裁のムバラク政権が、崩壊する
こととなったのです。



 そのほか最近では、

 ヨルダン、シリア、イエメン、アルジェリア、モロッコなど、

 中東や北アフリカのさまざまな国々で、暴動や反政府デモが
連鎖的に起こっています。



 このように暴動や反政府デモは、さまざまな国々で起こって
いるので、

 その原因については、それぞれの国によって、いろいろと厳密
には異なるでしょう。



 しかしながら、

 各種のマスコミ報道や、コラム、インターネットのブログや、
掲示板の議論などを見ると、

 中東や北アフリカの情勢悪化にたいして、ひろく大ざっぱに
共通する背景としては、


 独裁政権の長期化による政治の腐敗。

 貧富の差の拡大。

 高い失業率。

 物価の上昇。

 アメリカ経済の低迷による、中東への影響力低下。

 イスラム原理主義組織などの、反米勢力の台頭。


 などの要因が、挙げられていたように思います。


           * * * * *


 それら上のような、さまざま要因が背景として存在する中で、

 物価の上昇、とりわけ「食料の高騰が、直接的な引き金に
なった」


 と、分析する専門家がいます。



 たとえば、

 金融危機を予測したことで知られる、アメリカ ニューヨーク大学
の、ヌリエル・ルービニ教授は、

 スイスのダボスで開かれた「世界経済フォーラム」において、

 「チュニジアの事態はエジプトへ飛び火し、モロッコ、アルジェリア、
パキスタンでも暴動が起きている。」

 「これは高い失業率や富の不均衡だけでなく、食料と商品価格の
急騰にも起因する。」

 と、指摘しています。



 また、

 国連の世界食糧計画(WFP)は、エジプトで起こった反政府デモ
にたいして、

 「食料価格の安定がいかに重要かを警告している」との声明を
発表しました。

 WFP(国連世界食料計画)の、シーラン事務局長は声明で、

 「チュニジアやエジプトの反政府デモの背景には、食料価格の
高騰や食糧確保に対する不安の高まりがある」

 と、指摘しています。



 さらにまた、

 日本総合研究所(三井住友フィナンシャルグループのシンク
タンク)は、「日本総研リサーチ・アイ(No.2010−065)」という
レポートで、

 チュニジアやエジプトの動揺は、経済的視点からみると、「食料
の高騰が起点」
だと指摘しています。

 これらの両国とも、

 主食の原料である小麦の大半を輸入に依存し、貧困層が多く、
とりわけ若年層の失業率が高水準になっており、

 食料価格の上昇が国民生活を直撃して、「国民の不満が政治的
な行動につながりやすい」としています。

 そしてさらに、

 こうした特徴は、チュニジアやエジプトに限らず、産油国以外の
中東各国において、ほぼ共通して見られると分析しています。

 (つまり食料価格が高騰すると、中東では暴動や反政府デモが
連鎖的に起こりやすいと言うことです。)



 私は思うのですが、

 貧困層が多く、失業率が高いところにもって、

 食料価格が高騰すれば、まさしく「生死の問題」に関わって
きます!


 そんな状況では、暴動やデモが起こらない訳がないでしょう。



 それに比べて一方、

 政治の腐敗や、貧富の差、高い失業率、アメリカの影響力低下、
反米勢力の台頭などは、

 これまでにも存在していたことで、とくに最近において、急に発生
した訳ではありません。



 なので、

 ここ最近になって急に、暴動や反政府デモが連鎖的に起こった
直接的な原因として、

 「食料の高騰が引き金になった」とする分析には、かなり納得
できるものがあります。


             * * * * *


 2月3日。 国連食料農業機関(FAO)は、

 今年1月の、世界の食料価格指数が231となり(2002〜04
年を100として)、

 統計を開始した1990年以降で、最高になったと発表しま
した。



 だから、

 最近において、世界の食料価格が高騰しているのは、
間違いのない事実です!


 この食料価格の高騰が、中東や北アフリカの国々における
情勢悪化の、

 「直接的な引き金」になっているわけです。



 それでは、

 「なぜ最近、食料価格が世界的に高騰しているのか?」と
言えば、

 それには大きく、3つの原因が考えられています。



 まず1つ目は、

 昨年からの「世界的な異常気象」で、これが直接のキッカケに
なっています!


 昨年夏のロシアの「干ばつ」では、小麦の生産が激減し、輸出の
禁止措置が現在もつづいています。

 また、

 オーストラリアの洪水や、南米の雨不足なども、価格上昇の要因
になっています。



 そして2つ目は、

 中国やインドなどの新興国が、経済の成長にともなって、

 「食料の需要を拡大させている」ことです。



 3つ目は、

 先進国の低金利政策であぶれた金が、「投機マネー」として穀物
市場に流れ込み、

 「食料の価格をつり上げている」ことです。

 (命に関わる食料を、マネーゲームとして弄ぶことは、決して看過
できるものではありません!)



 さらに懸念材料としては、

 このたびのエジプトでの混乱を受け、ほかのアラブ諸国が同様の
混乱を避けるために、

 食料の輸出を制限して、備蓄する動きを見せています。

 このことによって、さらなる食料価格の高騰をまねく「悪循環」に、
陥ってしまう可能性があります。



 以上のように、

 いま起こっている「食料価格の高騰」には、たしかに複数の原因
が存在します。

 しかしながら、その中でもとりわけ、

 「世界的な異常気象が、直接のキッカケになった!」

 というのは、多くの人が認めざるを得ない「事実」となっているの
です。


             * * * * *


 申し訳ありませんが、この続きは次回にお話したいと思います。



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