新燃岳(しんもえだけ)の噴火
                           2011年2月6日 寺岡克哉


 1月27日。

 新燃岳(しんもえだけ)という山が、

 52年ぶりに、「爆発的な噴火」をしました!




 新燃岳(しんもえだけ)は、 

 九州の南部にある「霧島連山」の、中央部に位置しており、

 標高が1421メートルの「成層火山」(富士山のような円錐形
の火山)で、

 山頂には、直径750メートル、深さ180メートルの「火口」が
あります。



 ずっと昔から、火山活動が続いている「活火山」であり、

 これまでにも、火口内では噴気が観測されることもあって、しば
しば登山禁止の措置がとられていました。

 しかしながら、

 「爆発的な噴火」が起こったのは、52年ぶりのことだったのです。


            * * * * *


 福岡管区気象台の、火山監視・情報センターが、

 1月27日に発表した、「霧島山(新燃岳)の火山活動解説資料」
によると、


 「1月27の15時41分には、中規模の爆発的噴火(※1)が発生し、
噴煙が火口縁上2500mまで上がり雲に入りました。」

 「地震の最大振幅は、新燃岳南西(新燃岳より南西約1.7km)の
観測点で3327μm/s(※2)でした。」

 「空振(※3)の最大振幅は湯之野(新燃岳より南西約3km)の観測
点で39.7Pa(※4)でした。」

 「新燃岳で爆発的噴火が発生したのは1959年以来、52年ぶり
です。」


 と、なっています。



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(※1)
 爆発地震をともない、空振計で一定基準以上の空振を観測した
場合に「爆発的噴火」としています。


(※2)
 この資料では、地震の大きさを、地面が揺れたときの「最大速度」
で表しています。
 3327μm/sは、1秒間に3327マイクロメーターの距離を移動
する速度です。1マイクロメーターは、1000分の1ミリなので、これは
1秒間におよそ3.3ミリ動いた速度になります。


(※3)
 「空振」とは、火山が爆発的な噴火をするときに、火口において
急激な気圧変化による空気の振動が発生し、衝撃波となって空気中
を伝播するものです。


(※4)
 空振の大きさは、気圧の単位であるPa(パスカル)で表します。
 100Paの大きさを超える空振に見舞われると、窓ガラスが割れる
などの被害が出ると言われています。

 ちなみに、標準の大気圧である「1気圧」は、101325Paと定義さ
れます。
 一方、天気予報で気圧を表すのに使われるhPa(ヘクトパスカル)
とは、100Paのことなので、
 1気圧 =101325パスカル =1013.25ヘクトパスカルと、なり
ます。

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 新燃岳は、

 1月27日から2月3日までに、合計で9回もの「爆発的な噴火」を
起こしました。



 しかし、その中でも、

 2月1日の午前7時54分に起こった、「4回目の爆発的噴火」が、
けっこう大規模なものでした。

 このときの噴火では、458パスカルの「空振」が観測されており、

 鹿児島県 霧島市内の、病院や学校、ホテルなどの99ヶ所で、
少なくても284枚の窓ガラスが割れたのです。



 2月1日。

 赤外線の映像による観測では、火口内は依然として高温であり、
火口の北東と南東の方向に、噴石があるのが確認されました。

 また、

 およそ3.2キロ離れた霧島市では、縦横50〜70センチの大きさ
もある噴石が見つかりました。

 その発見場所は、木がなぎ倒されて、土が飛び散り、熱で焼けて、
うっすらと煙が上がっていたと言うことです。

 この噴石は、噴火から約3時間たった後でも、触れたり、掘りだし
たり出来ないほど、熱を持っていたそうです。


             * * * * *


 2月3日。

 火山噴火予知連絡会(※5)が、臨時の拡大幹事会をひらいて、

 「新燃岳の火山活動に関する見解」を発表しました。



 それによると、

 「新燃岳では、活発な噴火活動が続いており、当分の間(ここ
1〜2週間)は、現在と同程度の溶岩を吹き飛ばす爆発的な
噴火を繰り返すと考えられます。」


 「これまでの噴出物量は、4千万〜8千万トン程度と推定されま
す。」

 「1日あたり1万トン以上の二酸化硫黄の放出が観測されており、
火山ガスの放出活動も活発です。」

 「18世紀のマグマ噴火では、2年程度噴火活動が続いています。
今回の火山活動は、約300年ぶりの本格的なマグマ噴火であり、
活動の推移を注意深く見守る必要がありますので、今後観測体制
の強化が必要です。」

 「噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に警戒
が必要です。」

 「風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)
に注意が必要です。

 「また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要です。」

 「降雨時には泥流や土石流に注意が必要です。」


 などと、なっています。



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(※5)
 「火山噴火予知連絡会」は、政府の火山噴火予知計画に基づいて、
1974年に設置されました。

 火山学者や、気象庁などの関係組織の専門家で構成されており、
現在の会長は、藤井敏嗣(ふじい・としつぐ)東京大学地震研究所
名誉教授。

 1年に3回の定例会を開いて、全国の観測機関から集まったデータ
を基に、火山活動を総合的に検討しています。

 しかし、噴火などが起こった非常時には、臨時の幹事会を開いて、
必要な場合は統一見解を出しています。

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 火山噴火予知連絡会の、藤井会長は、

 地下にあるマグマの減少を示す山の収縮が、1月31日から急に
鈍化したことを指摘しました。

 その一方で、噴火活動は収まっていないので、「下から(噴火に)
見合うマグマの供給が続いているのではないか」と説明しています。

 今後2週間ていどに起こり得る噴火の規模については、「1月26
日や27日のような大きなマグマを出すものは想定していない」と
コメントしました。

 また藤井会長は、

 「現在の段階を過ぎても、江戸時代の(噴火が2年ほど続いた)
例を考えれば、そのまま沈静化するとは考えづらいが、観測体制
をきちんとした上でないと見極めできない」と述べています。



 ところで・・・

 新燃岳は現在、溶岩が火口に蓋(ふた)をしている状態になって
いて、その蓋ごと吹き飛ばすような大規模噴火で、「火砕流」
起こることが心配されています。

 そのことに対して藤井会長は、

 「あるていど(山の)隆起が戻ってからだと思う。現状ではそれは
数週間、1ヶ月間は可能性が低いだろう」とコメントしています。

 しかし、火砕流が起こった場合は、

 「300年前の大噴火を参考にすれば、火口から3キロぐらいまで
到達する可能性がある」としています。



 さらにまた、藤井会長は、

 「火山灰が大量に蓄積しており、少しの雨でも土石流や泥流
が起きやすい」

 
と、警戒を呼びかけました。


             * * * * *


 私は、このたびの噴火について調べていて、

 そしてまた、「地球温暖化による気象災害」について調べている
ときにも、

 すごく思うのですが・・・



 大自然が、いったん猛威を振るい始めてしまったら、

 もはや人間の力では、どうすることも出来なくなります!



 私たち人間に、かろうじて出来ることと言えば、

 たとえば「噴火」については、観測体制を強化して、人的被害が
出る前に早めの避難をすること。

 そしてまた、

 「地球温暖化」については、可能なかぎり迅速に、温室効果ガス
の排出を削減して、

 できるだけ小さな気温上昇(産業革命前にくらべて2℃以下の
気温上昇)で、温暖化をストップさせること。

 人類として、何とか手が打てることは、事実上それしか無いの
では、ないでしょうか。



 もしも地球温暖化によって、4℃以上の気温上昇が起こって
しまったら、

 熱波、干ばつ、豪雨、洪水、台風などによる災害が、手に負え
ないほど甚大になり、さらには頻発するようにもなって、

 もはや人類には、どうすることも出来なくなってしまうような、

 そんな気がしてなりません。



 世界各地で起こっている異常気象や、このたびの噴火のこと
を調べていると、

 そのような身に迫る思いが、ひしひしと湧き起こってきて、

 「どうしようもない気持ち」に襲われてしまうのです。



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