北朝鮮と韓国が砲撃戦!
2010年11月28日 寺岡克哉
11月23日の、午後2時30分ごろ、
北朝鮮の軍隊が、韓国領の延坪島(ヨンピョンド)という島に向け
て、大砲を撃ちました。
一方、それに対して、
韓国の軍隊も、大砲で応戦したため「砲撃戦」が発生しました!
北朝鮮による砲撃は、1時間以上にわたって行われ、
韓国軍の兵士2人が死亡し、16人が重軽傷を負ったほか、
民間人も2人が死亡し、4人が負傷しました。
また、
住宅20棟と、倉庫2棟が炎上し、10ヶ所で山火事が発生しました。
炎上した林野は、25ヘクタールに上ると推定されています。
砲撃をうけた延坪島(ヨンピョンド)は、
朝鮮半島の西側、仁川市の西方およそ120キロの海上(黄海)に
ある、面積がおよそ7平方キロの島です。
この島は、ワタリガニ漁などの漁業が盛んで、およそ1700人の
民間人が住んでいます。
そのため、北朝鮮の砲撃によって、民間人にも被害が及んだわけ
です。
* * * * *
このような、
民間人をも無差別に巻き込んだ「砲撃」に対して、
世界各国からの厳しい非難が、北朝鮮に向けられています。
まず、攻撃をうけた韓国は、
ミサイル発射など追加攻撃の動きがあれば、北朝鮮の軍事基地を
攻撃することも視野にいれて、「断固たる措置」を取る方針です。
韓国の、李明博(イミョンバク)大統領は、
「北朝鮮は依然、攻撃態勢を維持しており、さらなる武力挑発も
予想される」とした上で、
「何倍もの兵力で北朝鮮を懲らしめる必要がある」と強調しました。
また、韓国と同盟国であるアメリカは、
北朝鮮を「強く非難する」という声明を発表し、同盟国の韓国を防衛し、
地域の安定を維持するという、アメリカの「強い決意」を表明しました。
日本の、仙谷由人 官房長官は、
「砲撃は許し難く、強く非難する。挑発行為を直ちにやめるよう求める」
と批判し、韓国への全面的な支持を表明しました。
さらには、北朝鮮に対する追加制裁を検討する考えも示しました。
中国は、
「朝鮮半島の平和と安定に有利となるよう行動することを希望する」
と、冷静な対応を求め、
事態を注視していく考えを示しました。
ロシアは、
「(砲撃を)開始した者は、重大な責任を負わなければならない」
として、
直接の名指しは避けたものの、事実上、北朝鮮を非難しました。
イギリスは、
「北朝鮮による、韓国へのいわれのない攻撃を強く非難する」との
声明をだし、
北朝鮮にたいして、攻撃の停止と、朝鮮戦争休戦協定の順守を
つよく求めました。
フランスは、
北朝鮮を「最も断固たる態度で非難する」との声明を発表しました。
* * * * *
ところで・・・ 北朝鮮では11月20日に、
核兵器を製造するための、「ウラン濃縮」が行われていたことも
表面化しており、
もはや、このまま手をこまねいて見ていることは、まったく出来ない
状況になっています。
なので、
日本としても、北朝鮮にたいして、かなり強い態度を示さなけれ
ばならない
のは、当然でしょう。
しかしながら、
たとえば日本と北朝鮮との、大規模な武力衝突をも辞さないという
ような、
あまりにも強硬な態度は、日本にとって、得策にならないと思います。
(そんな可能性は低いと思いますが)もしも日本と北朝鮮との間で、
かなり大きな武力衝突が起こってしまったら、
日本国内には、北朝鮮と深い関係をもつ人々もたくさん住んでおり、
そのような人たちが、日本国内でいろいろな行動を起こすことを、
覚悟しなければ、ならないでしょう。
* * * * *
また、
たとえば1950年の「朝鮮戦争」のときのように、韓国と北朝鮮との
武力衝突が拡大したら、
戦争による「特需」が起こって、日本の景気が良くなると思う人がいる
かも知れませんが、
しかし、経済がグローバル化した現代においては、そんなことには
ならないだろうと思います。
近年では、
韓国よりもGDPがずっと小さな、ギリシャの国家財政に問題が起こっ
ただけでも、
世界経済に影響が出るようになって来ました。
もしも、
けっこう大きなGDPをもつ韓国と、北朝鮮が「戦争状態」になったら、
まず第一に、韓国の株が暴落するでしょう。
また、かなりの戦費を強いられることになるアメリカも、株が下がる
でしょう。
そして、近隣の国である日本の株も、おそらく相当に下がるでしょう。
さらには、それらが引き金となって、
リーマンショックをはるかに超えるような、世界的な株価の下落と、
景気の後退が起こるかも知れません。
* * * * *
以上から、
日本と北朝鮮との間で、大規模な武力衝突が起こることや、
韓国と北朝鮮との武力衝突が、さらに拡大することは、
やはり、「好ましいことではない」と判断せざるを得ません!
しかし、だからと言って、
ただ手をこまねいて静観しているだけでは、
たとえば、第2次世界大戦初期のドイツ(※注1)のように、
北朝鮮の行動が、どんどんエスカレートしてくる可能性があるで
しょう。
※ 注1
ドイツとの戦争を恐れた、イギリス・フランス側の妥協的な「宥和
(ゆうわ)政策」が、ナチス・ドイツの侵略を容易にさせたと言われて
います。
また、その逆に、
北朝鮮にたいして、軍事的な圧力や、経済的な圧力をかけすぎても、
たとえばABCD包囲陣(※注2)に囲まれた、当時の日本のように
追い詰められて、
北朝鮮の行動が、いきなり「暴発」してしまう可能性もあるでしょう。
※ 注2
Aはアメリカ、Bはイギリス、Cは中国、Dはオランダ。
これらの国々に存在していた「日本の資産」が凍結されたり、日本へ
の石油の輸出が止められたため、
せっぱ詰まった日本は、「太平洋戦争」という暴挙に出てしまった
わけです。
このように、北朝鮮への対応は、
静観してはならず、圧力をかけ過ぎてもならないので、
なんとも難しく、とても微妙なものになってしまうのは、
べつに弱気という訳ではなくて、どうしても仕方が無いことなの
だと思います。
目次へ トップページへ