現実化してきた温暖化被害
2010年9月26日 寺岡克哉
今年の夏に、ロシアで起こった、
少なくても1万5000人が死亡した「熱波」。
ロシア全土の作付面積の、4分の1が壊滅したとされる「干ばつ」。
推定で700件も発生し、森林、草原、泥炭地を合わせて、100万
ヘクタールを焼失した「山火事」。
パキスタンで起こった、
2000人以上が死亡し、2000万人が被災したと言われる、
最悪の「大洪水」。
中国で起こった、
死者1435人、行方不明330人の、大規模な「土石流」。
中国全国の被災者が、のべ2億3000万人に上っている、
相次いだ「洪水(土石流も含む)」。
そして日本で起こった、
熱中症による死者が500人以上、救急搬送が5万人以上
にも上った「猛暑」。
今年に発生した、これら異常気象による被害は、
もはや、「地球温暖化によって現実化してきた被害」だと、
認識するべきではないかと、私は思っています。
* * * * *
たしかに・・・ 専門家による分析では、
これらの異常気象が起こった「直接的な原因」は、
偏西風の蛇行(ブロッキング現象)。
インド洋における海水温の上昇。
そしてエルニーニョ現象も、関係しているとされています。
さらに、それに加え、
地球温暖化によって、産業革命前から近年までの間に、
世界の平均気温が0.76℃上昇していることが、重なっている
のでしょう。
このような分析状況なので、
たとえば気象庁の報道発表(9月1日付け)では、日本の夏が
記録的な猛暑になった原因について、
「背景として二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う、
地球温暖化の影響が現れているとみられる。」
と、いうような、
地球温暖化の影響に関しては、すこし控えめな表現をしている
のだと思います。
* * * * *
しかしながら、
1000年に1度とも言われる、ロシアの異常高温や干ばつ。
アジアで過去最高の、53.5℃を記録したパキスタンの熱波、
そして大洪水。
被災者が2億3000万人にも上る、中国各地で起こった洪水。
そして、過去112年間でもっとも高い気温となった、日本の猛暑。
これら、
過去の記録を塗り変えるような「すさまじい異常気象」は、
偏西風の蛇行や、エルニーニョ現象などの、「定期的に起こって
いる自然変動」だけでは、
なかなか説明が出来ないのではないかと、私は思います。
たしかに、
30年に1度くらいで発生する、(いわゆる普通の)異常気象ならば、
偏西風の蛇行や、エルニーニョ現象などの、「定期的に起こる
自然変動」だけで、
説明ができるかもしれません。
しかし、それらの自然変動だけでは、
今までの記録を塗りかえた、100年に1度以下しか起こらない
ような「すさまじい異常気象」が、
しかも世界各地で多発していることに対して、まず説明ができない
でしょう。
しかしながら、定期的に発生する自然変動に加えて、
地球温暖化によって世界の平均気温が、産業革命前にくらべて
0.76℃上昇していること。
そしてまた、
上で挙げた、世界的な異常気象の「直接的な原因」についても、
「インド洋の海水温上昇」には、とうぜん地球温暖化が関係している
でしょうし、
また「偏西風の蛇行」も、地球温暖化によって、より頻繁に起こるよう
になると考える専門家もいます。
つまり、
ふつうなら30年に1度くらいの異常気象で済んだところが、
地球温暖化との「相乗効果」によって、
100年に1度以下しか起こらないような、「すさまじい異常気象」に
なったのだと考えられます。
逆に言うと、
「地球温暖化の影響」が全くなければ、
これほどの「すさまじい異常気象」には、ならない可能性が大き
かったわけです。
このように考えると、
100年に1度以下しか起こらない「すさまじい異常気象」が、
世界各地で多発したことの「本質的な原因」は、
やはり、「地球温暖化による影響」なのだと言えるでしょう。
* * * * *
ところで・・・
たとえば、「堤防」や「防波堤」などのインフラは、
100年に1度くらいでしか起こらない、すごく大きな規模の
自然災害には、
あまり耐えられないように設計されていると、聞いた覚えが
あります。
それは、堤防や防波堤を作っている、
「鉄筋コンクリート」の耐用年数が、50年とされているからで
しょう。
そのため、
100年に1度しか起こらない規模の自然災害に、完全に耐える
ような設計をしても、
50年後には老朽化して、けっきょく作り替えなければならず、
あまり意味がないし、不必要なまでに、たくさんの金がかかるから
でしょう。
つまり、堤防や防波堤などのインフラは、
30年に1度くらいの、ふつうの異常気象(豪雨や高潮)には耐え
られるけれど、
100年に1度くらいしか起こらない、すさまじい異常気象には、
耐えられません。
そして一方、地球温暖化による「相乗効果」が、
自然変動だけなら30年に1度で済むような異常気象を、
100年に1度以下しか起こらないような、すさまじい異常気象に
しています。
このように考えて来ると、地球温暖化による「相乗効果」が、
インフラの耐性能力を超えてしまうような、すさまじい異常気象
を発生させているのであり、
地球温暖化の影響が、自然災害による被害を大きくしている
「本質的な原因」だと言っても、けっして過言ではないでしょう!
パキスタンで、2000万人の被災者を出した大洪水。
中国で相次ぎ、のべ2億3000万人もの被災者を出した、洪水や
土石流。
そして日本でも、ちょっとした低気圧や、前線や、台風が接近して
きただけで、
土砂崩れ、洪水、土石流などの被害が、出るようになってきました。
もう今では、かなり多くの人々が、
「堤防や防波堤、下水道、がけ崩れ防止、土石流対策などのイン
フラを、強化しなければならない!」とか、
「信頼性の高いハザードマップを早急に作り、危険な箇所や、安全
な避難場所が知りたい!」と、
心の底で、うすうす感じているのでは、ないでしょうか。
つまり、
豪雨による洪水、土砂崩れ、土石流などの自然災害に対して、
これまで安全だと思われていた場所が、だんだん安全ではなく
なって来たわけです。
それがまさに、地球温暖化による被害が現実化してきたことの、
たしかな証拠のように思えます。
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