アメリカ上院 17%削減を先送り
                            2010年8月8日 寺岡克哉


 7月28日。

 アメリカ上院、民主党のハリー・リード院内総務は、

 地球温暖化対策に関連する「新たなエネルギー法案」を、

 提出したと発表しました。



 しかしながら、この法案からは、

 「2020年までに温室効果ガスの排出量を、2005年にくらべて
17%削減」というのと、

 「排出量取引制度の創設」というのが、

 削除されてしまいました。



 昨年の6月に、アメリカ下院で可決された温暖化対策法案では、

 「温室効果ガスの17%削減」と、「排出量取引制度の創設」が、

 明記されていたのにです。



 このたび民主党が、それらの明記を見送ったのは、

 共和党の反発が強くて、法案可決のめどが立たないから
です。




 つまり、

 アメリカにおいて、温暖化対策の足を引っ張っているのは、

 ひとえに「共和党」だと言えます!



            * * * * *


 これに対して、オバマ大統領は、

 温室効果ガスの削減目標や、排出量取引制度の創設などを盛り
込んだ法案の成立を、

 ひきつづき目指していくことを強調しています。



 また、スターン気候変動問題担当特使も、

 「アメリカ政府は昨年提示したものから後退させようとしていない」
と述べ、

 温室効果ガスを2020年までに、2005年比で17%削減する目標
を、堅持していると強調しました。



 しかしながら、

 アメリカにおける温暖化対策が、「後退」しているという印象は拭い
きれず、

 国際的な温暖化交渉にたいしても、影響が避けられないというのが、

 正直なところでしょう。


              * * * * *


 ところで、

 このたび発表された法案の名称は、

 「クリーンエネルギー雇用と石油会社の責任に関する法案」
といい、

 じつは、

 メキシコ湾で起きたような原油流出事故の対策を、

 強化することが、おもな目的になっています。



 この法案によると、

 原油掘削をする企業が、流出事故を起こした場合、その賠償責任
について、

 これまでの制度だった7500万ドル(およそ65億円)という上限が、
撤廃されます!




 そして、この法案が成立した場合、

 イギリス石油メジャーのBPが起こした、メキシコ湾の原油流出事故
に対しても、

 遡(さかのぼ)って適応されます。



 皆さんも、私と同じように感じることと思いますが・・・

 今までの制度では、石油会社がどんなに大きな流出事故を起こし
ても、

 およそ65億円以上の金額を賠償することは、絶対に無かったの
です。

 なんとも、ふざけた制度です!



 オバマ政権は、

 まず第一に、このことを、何とかしたかったのでしょう。


           * * * * *


 このたび私が、

 各種の報道から、「事の流れ」を読み取ったところでは・・・



 まずオバマ政権は、

 メキシコ湾の原油流出事故を契機にして、

 石油に依存した社会からの脱却をはかり、温室効果ガスの削減を、

 目指していたと思われます。



 そのため、

 事故を起こした石油会社の、賠償責任を厳格にするとともに、

 「温室効果ガスの17%削減」や、「排出量取引制度の創設」を
盛り込んだ法案を、

 アメリカ上院で可決させたかったのでしょう。



 しかしながら、共和党の強い反対に遭って、

 「17%削減」と、「排出量取引制度」を、削除するはめに、

 なってしまいました。



 オバマ政権は、それらを後回しにしても、

 メキシコ湾で流出事故を起こした、イギリスBPの賠償責任を、

 厳格にしたかったのでしょう。



 しかし・・・ 

 それでもなお、共和党は反対の姿勢を示し、

 法案の審議入りを、9月以降に先送りすることになってしまい
ました。



 その理由について、

 アメリカ上院、民主党のリード院内総務は、

 「共和党が有意義な議論を進めることを拒んでいるため」

 と、述べています。



 アメリカ共和党は、

 どこまでも、「石油企業の思惑に沿った政策」をやろうとし、

 断固として、「地球温暖化対策を妨害するつもり」なので
しょう。




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