北極海氷の現状 2010年6月20日 寺岡克哉
いま現在、
北極の海氷が、急激に減少して来ており、
この時期(6月中旬)にかぎって言えば、
2007年よりも面積が小さくなっています!
ちなみに、2007年の9月といえば、
北極の海氷面積が、1978年から人工衛星による測定を
始めて以来、
「観測史上最小」になった年です。
つまり現在は、
それを上回るペースで、海氷が減少しているわけです。
* * * * *
私が、このような情報を知ることができるのは、
JAXA(宇宙航空研究開発機構)という研究機関が、
北極の海氷を、人工衛星によって毎日モニターし、
その面積を公表しているからです。
たとえば検索サイトで、
「北極 海氷面積」というキーワードで検索してみれば、
海氷をモニターしているサイトが、すぐに出てくるので、
興味のある方は、調べてみるのも良いでしょう。
ちなみに、いま「JAXA」といえば、
小惑星探査機の「はやぶさ」が、トラブルに見舞われつつも、
無事地球に生還できたという話題でもちきりですね。
小惑星「イトカワ」のサンプルを、入手することが出来たかどうか、
とても興味深いところです。
* * * * *
ところで・・・
6月15日の、気象庁の発表によると、
今年の3月〜5月における、世界の平均気温(速報値)は、
1998年と並んで、1891年から測定を開始して以来、
「観測史上最高」になりました!
そのような状況も考えると、
今年は、このさき海氷がどこまで減少するのか、まったく分かり
ません。
海氷が減少する具合は、
「風」や「海流」の状況によっても大きく変わるので、一概には言え
ませんが、
もしかしたら今年の9月には、2007年の最小記録を更新する
かも知れません。
* * * * *
このように海氷が減少することで、いちばん心配なのは、
「地球温暖化をさらに加速させてしまう!」 ことです。
なぜなら北極の海氷は、
地球に降りそそぐ太陽の光を、宇宙に反射させることにより、
「温暖化を防いでいる」からです。
しかし海氷が減少すると、
そのぶん太陽光が反射されずに、吸収されるようになり、
地球を暖めてしまいます。
そうすると、ますます北極の海氷が解けて減少し、
それによって、ますます太陽光がよく吸収されるようになり、
さらにそれによって、ますます地球が暖められてしまいます。
このような「悪循環」が形成されることにより、地球温暖化が
どんどん加速してしまうわけです。
* * * * *
いま上で話したような、
「地球温暖化を加速する悪循環(正のフィードバック)」が、すでに
起こっているとする研究結果を、
今年の4月28日に、オーストラリアのメルボルン大学の研究者たち
が、イギリスの科学誌「ネイチャー」に発表しました。
ちなみに、
1989年から2008年の間に、地球の平均気温は0.5℃上昇した
のですが、
北極域における気温上昇は、2.1℃にもなっており、地球上で
いちばん急激なものでした。
その原因については、
曇天の増加や、海流の変化や、風の変化など、
さまざまな説が出されて、科学者たちの間で激しく議論されています。
が、しかし、
メルボルン大学の、ジェームズ・スクリーン氏と、イアン・シモンズ氏
は、そのようなことが主な原因ではなく、
「北極域における急激な気温上昇のおもな原因は、氷に覆われた
面積の減少であることが明らかになった」と、しています。
そして、
「気候変動の影響で北極の氷冠が減少し、それがさらに温暖化を
促進させるという”正のフィードバック”が、地域的な規模ですでに発生
している」
と、主張しています。
* * * * *
以上のように、北極域において、
地球温暖化を加速させる悪循環(正のフィードバック)の影響が、
すでに現れているとすれば、
今まで行われてきた気候変動の将来予測が、「過小評価」になっ
ている可能性が大いにあり、
ものすごく気になるところです!
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