日本の絶滅状況 2    2010年6月13日 寺岡克哉


 エッセイ212を書いてから後、日本における絶滅危惧種のリスト(環境省
レッドデータブック・レッドリスト)が改訂されましたので、遅まきながら、ご紹介
したいと思います。


 さっそくですが、2008年8月現在で、以下のような状況になっています。
(出典: 環境年表 平成21・22年 国立天文台編 丸善 p263)

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 分類群      評価対象   絶滅   野生絶滅   絶滅のおそれの
             種数                   ある種と割合(%)

哺乳類        180      4      0       42 (23)
鳥類        約700     13      1       92 (13)
爬虫類        98       0      0       31 (32)
両生類        65       0      0       21 (32)
汽水・淡水魚類  約400     4      0       144 (36)
昆虫類      約30000    3       0      239 (0.8)
貝類        約1100    22      0       377 (34)
その他の
無脊椎動物    約4200     0      1       56 (1.3)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
維管束植物    約7000    33      8     1690 (24)
蘚苔類       約1800     1      0      229 (13)
藻 類       約5500     5      1      110  (2)
地衣類       約1500     5      0       60 (4)
菌 類      約16500    30      1       64 (0.4)
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 上の表で「野生絶滅」というのは、たとえば鳥の「トキ」のように、野生の
状態では絶滅しましたが、飼育や栽培などの「人工的な環境」で生存して
いる種です。

 また、いちばん右側のカッコ内の数字は、
 (絶滅のおそれのある種数)÷(評価対象種数)×100 として、私が
計算して求めた値なので、出典には記載されていません。



 つぎに下の表は、絶滅のおそれのある種、たとえば哺乳類の42種に
ついて、さらに詳しく調べた結果です。

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 分類群    絶滅のおそれ    絶滅危惧T類     絶滅危惧U類
          のある種数   (TA類   TB類)

哺乳類        42       15     20          7
鳥類         92        21    32          39
爬虫類        31        3     10         18
両生類        21        1      9         11
汽水・淡水魚類  144       61     48         35
昆虫類       239          110            129
貝類         377          163           214
その他の
無脊椎動物     56           17             39
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
維管束植物   1690       523    491        676
蘚苔類       229          118            111
藻 類       110           89             21
地衣類       60            41            19
菌 類        64           39             25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ここで使われている用語の意味は、つぎのようになっています。

 絶滅危惧T類: 絶滅の危機に瀕している種。
 TA類: ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種。
 TB類: TAほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性
       が高い種。
(※たとえば哺乳類の項目のように、絶滅危惧T類が、さらにTAとTBに
 分類されているものは、数字が2つ書いてあります。)

 絶滅危惧U類: 絶滅の危険が増大している種。



 また、「環境省レッドデータブック・レッドリスト」には、ここまで述べで来た
ものの他に、以下のような項目もあります。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 分類群      準絶滅危惧    情報不足    絶滅のおそれの
                                 ある地域個体群

哺乳類         18          9          19
鳥類           18         17          2
爬虫類         17          5           3
両生類         14          1           0
汽水・淡水魚類    26          39         17
昆虫類        200         122          2
貝類          275         73          7
その他の
無脊椎動物      40          39          0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
維管束植物     255          32          −
蘚苔類         22          33          −
藻 類         40          37           −
地衣類         39          48          −
菌 類         17          54           −
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 上の表で、

 準絶滅危惧: 存続基盤が脆弱な種。
 情報不足: 評価するだけの情報が不足している種。
 絶滅のおそれのある地域個体群: 地域的に孤立している個体群で、
絶滅のおそれが高いもの。

 と、なっています。


              * * * * *


 以上が、改定された「環境省レッドデータブック・レッドリスト」の概要
です。



 その中でも、やはり一番の要点は、

 哺乳類の23%、鳥類の13%、爬虫類の32%、両生類の32%、
汽水・淡水魚類の36%、貝類の34%、維管束植物の24%、蘚苔類
の13%

 に、「絶滅のおそれ」があると言うことでしょう。



 まさに、恐るべき状況だと言えます!



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